表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/154

閑話【とある二人の飲み会】


おはようございます!

本編ではありませんが、楽しんで頂ければ幸いです!


それと、総合18万PV突破ありがとうございます!

これからも誠心誠意綴って参りますのでご愛読のほどよろしくお願いします!


 


 ー冒険者ギルド・リンドブルム支部ー



 冒険者ギルドの酒場にて、金髪の人物が食事をとり、オレンジ髪の人物が酒を片手に会話を交わしていた。


「おかしい……おかしいよっ!!」


 オレンジ髪の人物が酒の入った杯を ダンッ! と机に叩きつけながら声をあげる。


「もぐ……んにゅ?……ごくっ……急にどうしたんすか?」


 それに対して金髪の人物は食事の手を止めて隣に座る人物に聞いた。


「どうしたもなにも!レヴィの言ってた人が探しても探してもまだ見つからないのさ!」


 オレンジ髪の人物は喰らいつくような勢いで金髪の人物に向かって言い返す。


「あぁ、そのことっすか……別に急いでないからいいっすよー……はむっ……」


 その言葉を受けてレヴィと呼ばれた人物はひらひらと手を振りながらそう言った後、食事を再開する。


「いやだ!何がなんでも探し出してみせるんだ!ボクの持てる全てを使っても見つけ出せないなんて屈辱だよ!

 それに!君に美味しいと言わしめた食べ物を持ってるなんて……これは絶好の商機(しょうき)だよ!?」


 オレンジ髪の人物は瞳を鋭く光らせながらレヴィに言った。


「そうすか、じゃあ頑張ってくださいっす。ウチはウチで勝手に探して、またここに来てくれるのをのんびり待つっす……あむ。」


 レヴィはそれを軽く受け流す。

 捜索を依頼した本人とは思えないほどテキトーである。


「……レヴィはそれでいいのかい?君が『初めて』まともに『味を感じられた物』を持ってた人なんだよ?」


 オレンジ髪の人物は真剣な表情でレヴィに聞く。


「………ごくっ……アン、ウチは知っての通り『諦めるのに慣れてる』んすよ?

 それに、そこまで急がなくたってウチらが死ぬわけじゃないんすから。」


 レヴィはアンと呼んだオレンジ髪の人物に向かって力の抜けた笑みで笑いかける。


「……でも、彼が死んじゃうかもしれないじゃないか。」


 レヴィの言葉にアンは別の可能性を提示する。


「ウチだって使えるモノは全部使ってるっす。

 ウチとアン、それに加えてリンドブルム家の力を使っても見つからないって事は……もう既に、なんて。」


 そして、アンの提示した可能性をレヴィは否定せず、むしろその可能性がかなり高いことを示唆(しさ)する。


「それは困るよ。ボクの商会はそれなりに大きいけど新しいモノはいつだって大歓迎さ。……なにより、友達からの珍しいお願いなんだから叶えてあげたいじゃないか。」


「まだデカくする気なんすか?もうほとんどの事業の頂点じゃないすか……それにそこまではっきり言われると……んー……なんか嬉しいような、恥ずかしいような……なんて言うんすかね……ま、いいっす……はむっ。」


 アンの言葉に呆れた様子でレヴィは呟いた後、友人からの言葉に表情を漂わせた。


「うーん、レヴィの悪い癖だね。なんでもすぐに諦めちゃう。」


 そんなレヴィの様子にアンは困った笑みを浮かべる。


「そうは言っても仕方ないじゃないすか。ウチが諦められないなんて事になったら大惨事っすよ?」


 アンの言葉にレヴィはイタズラっぽく笑いながら冗談めかして言った。


「うっ……たしかに……レヴィってけっこう嫉妬心が強いからね……嫉妬通り越して憎しみ抱くレベルだし。」


 しかし、アンは顔を青くして納得し、酒に口をつける。

 どうやら冗談ではないらしい。アンの様子から察するに、よほどの事があったようだ。


「そうっす、だから、何事も諦めが肝心なんすよ……はぐっ。」


 そんなアンを横目に、レヴィは一言そう言った。


「納得いかない……でも、そうしてくれないと困る……うぅ、ジレンマだよ……」


「ごくっ……あのっすね?ウチから言わせてもらうと、アンは欲をかき過ぎなんすよ。」


 レヴィは頭を抱えて悩み込んだアンに対して呆れ気味に言い放つ。


「だってボクは商人だからね!欲がない商人なんてそれは商人失格だよ!」


 すると、アンは『それだけは譲れない』と言わんばかりに言い返した。


「あぁ、うん、そうっすね……もぐ。」


「そうさ!」


 元気なアンの行動にレヴィは興味なさげに一瞥した後、食べ物を口にする。


「んぐ……まぁ、でも、ウチ的にはあのお兄さんに親近感湧いたんで生きていて欲しいな、程度には思ってるっすよ?」


 だが、一転してレヴィはそう言葉を漏らした。


「へぇ、レヴィが人に感想抱くなんて珍しいね。あ、そういえばあの結晶をもらった時も『不思議なお兄さん』なんて言ってたね。」


 酒を嗜みつつ、からころと笑いながらアンが答える。


「基本的に他人には興味ないんすよ……あと結晶は……これっすね。」


 すると、レヴィは懐から小さな袋を取り出してみせた。その中には透明感のある黄色の小さな結晶が詰め込まれていた。


「そう、それそれ。また一つもらっていいかな?」


「いいっすよ。」


「ありがと!」


 アンはレヴィの了承を得て袋の中から結晶を一つ取り出し、口に含んだ。


「うん……優しい甘さだね。」


 アンはふふ、と優しい笑みを浮かべながら言った。


「ねぇ、これをボク達で作れないかな?」


 そして、すぐにそう提案する。


「うーん……アンの商会なら似たようなのは作れると思うっすけど……そのままは無理じゃないすかね。」


 すると、レヴィは少し悩んだ後にそう言った。


「だよね……これまで色んな食べ物を君の為に作ったけど、どれも口に合わなかったからね。」


 レヴィの回答にアンはひどく落胆したように肩を落として言った。


「申し訳ないっす。」


 アンの様子を見てレヴィは少し申し訳なさそうに謝る。


「あぁ、いや、なにも君が謝る事じゃないさ。仕方のないことだからね。」


 レヴィの謝罪を受けてアンは即座に顔を上げ、笑みを浮かべながら言った。


「そう言ってもらえるとありがたいっすね……もぐ。」


「うん。……そういえば、この結晶ってあまりお酒には合わないね。」


 アンはふと、思い出したかのようにそんな事を口にする。


「……ケチつけるならもうあげないっす。これはウチにとって唯一味の感じられる食べ物なんすから。」


 すると、レヴィはジトッと視線をアンに向けて不満そうに言い、結晶の詰まった袋を隠すように遠ざけた。


「あはは、ごめん、ごめん。別に文句が言いたかった訳じゃないよ。ただの感想さ。」


「まぁ、いいっすけど…………んー、なんかこの話してたらあのお兄さんにもっと色々貰っておけば良かった、って思い始めたっす……」


 そして、レヴィは正面に向き直り、背もたれに背中を預けて天井を見上げた。


「ごめん。『アレ』だけはほんとにやめておくれよ?」


 すると、アンが早口にまくし立てた。


「あはは、流石にそこまでしないっすよ。そんなに執着するつもりもないっすから。」


 ひらひらと手を振って答えるレヴィに


「それならいいんだけど………レヴィが本気で何かに執着しようものならどんな手段でも使うからね……そこが怖いんだ。」


 アンは少しだけ引きつった笑みでそう言った。


「見つかってもないのにどうしろって言うんすか。」


 そんなアンの様子にレヴィは不満げに頰を膨らませながら言った。


「確かにそうなんだけど……でも、『アレ』だけはほんとにダメだよ?」


「そんなに心配しなくても大丈夫っすよ。ウチが『アレ』使う機会なんてもうないっす。」


 心配そうに言ったアンに対してレヴィはけらけらと笑いながら答えた。


「ほんとかな……?」


 いぶかしむアンに


「ほんとほんと、『また』あんなの使ったらアンにも迷惑かけちゃうっす。」


 レヴィは軽い雰囲気で言う。


「いや、迷惑どころか大損害なんだけどね……」


 その発言にアンは頭を抱えて本気で落ち込んだ表情をみせた。


「いやー、その節はお世話になったっす。」


 頭をかきながらレヴィはまたけらけらと笑いながら礼を口にする。


「ほんとだよ……もうやめてね?」


 今度はアンがジトッと睨むようにして釘を刺す。


「わかってるっすよー」


 すると、レヴィはどこ吹く風と涼しげな表情で返事をした。


「ほんとにわかってるのかな!?」


 レヴィの生返事にアンは顔に焦燥の色を浮かべて問いただす。


「むぅ……しつこいっすね。」


 それに対して少し煙たそうに答えたレヴィに


「君の返事が軽いからだよ!?」


 アンが叫ぶように言い返した。


「あー……はいっす。すみません、もう二度と使わないっす。」


 レヴィは非常にめんどくさそうな表情を浮かべた後にしっかりとした返事をする。


「そう、それが聞きたかったんだよ。……ごくっ。」


 すると、アンは満足そうに頷き、杯を傾ける。


「はぁ……酒には合わないんじゃなかったんすか?」


 それを見てレヴィはそう指摘するが


「ん?あぁ、もうなくなったからね。」


 アンは肩をすくめながら答えた。


「そうっすか……ウチも今皿にある分なくなったら食べよ……はぐっ、もぐ、あぐ……ごくっ。」


 レヴィはその返答に納得しようだ。

 そして、小さく呟いた後に皿に残った料理を全てたいらげた。


「今さらだけどレヴィってさ、それだけ食べてなんで太らないの?」


 その様子を見ていたアンは不思議そうに聞いた。


「……知ってるクセに本気で聞いてるんすか?」


 すると、結晶を袋から取り出そうとしたレヴィがピタリと動きを止めてアンを睨みつけた。


「ごめんってば、そんなに怒らないでおくれよ。知ってても不思議なんだってば。」


 それに対してアンは明るく笑いながら釈明する。


「はぁ……アンって本当にガンガン人の領域に踏み込んでくるっすね……ぱくっ。」


 レヴィはそんなアンの様子を見て、ため息をつきながら呟き、袋から結晶を一つ取り出して口に放り込む。


「商人だからね。誰かに気なんて使ってたら死んじゃうよ。」


 レヴィの呟きにアンは冗談めかして笑いながらそう言った。


「そのうち痛い目みても知らないっすよ?」


 レヴィはコロコロと飴を口で転がし、横目でアンを見ながら言った。


「大丈夫さ。ある程度はわきまえてるつもりだからね。」


 すると、アンはからころと陽気に笑って答える。


「いや、ウチに対してわきまえられてる気がしないんすけどね……」


 アンの返答にレヴィが呟くと


「友達だからさ。」


 アンは表情を変えずにはっきりと言い放つ。


「……そうすか、それはありがたいっすね。」


「あれ?もしかして照れてる?」


 ぷいっ、とそっぽを向いたレヴィにアンは頰をつつきながら笑う。


「そんなわけないっす。あと鬱陶しいんでやめてほしいっす。」


 シッシッ、と虫を払うように手でアンの指を弾いたレヴィに


「つれないなー」


 アンはニヤニヤと薄く笑みを浮かべて茶化した。


「あぁ!もう!その笑い方もなんか気持ち悪いんでやめてほしいっす!」


 本当に嫌そうな表情で言ったレヴィに


「あはは、ごめんね。可愛いからつい。」


 アンは笑いながら言った。


「これほど嬉しくないこともないっす……あむ。」


 レヴィはげんなりした様子でもう一つ飴を口にする。


「あはは……っと、もうこんな時間だね。そろそろボクは行くよ。」


 すると、アンは窓から覗く傾いた日を席を立った。


「そうすか。」


 しかし、レヴィは興味なさげに頷くだけだった。


「うん、じゃあ、またね。今度はいい報告が出来たらいいな。」


 アンはそれを特に気にする様子もなくそう言う。


「ちょっとだけ期待してるっすよ。」


 レヴィはひらひらと手を振って答える。


「あはは、ひどいなぁ。」


「アンもウチが諦めをつけられる方が都合がいいじゃないんすか?」


「それもそうだね。」


 へらっ、と笑ったレヴィにアンも同調する。



「「じゃあ、また今度。」」



 そして、特にタイミングを見計らった訳でもなく、二人の言葉は一言一句違わず重なった。


「ふふっ。」


 すると、アンは満足そうな笑みを浮かべ、(きびす)を返して出口へと向かう。


「……この結晶、ほんとに美味しいっすね。」


 最後に、レヴィは結晶を見つめながらポツリと言葉をこぼした。



 こうして、二人の飲み会は終わりを迎えた。





作者「書きたい話が沢山ある。そして、物語の進捗状況は10%未満である。」


隊長「つまり?」


作者「私もこの作品が完結するまでいったい何年かかるかわからない!」


隊長「バカ者めが。日々の思いつきで話を書くからだ。」


作者「そっちの方が書いてて楽しいんだよ!だから話のストックもないよ!」


隊長「愚か者……(ぼそっ」


作者「聞こえてんぞこらぁ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ