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あ、これヤバイやつだ


皆様こんばんは。遅くなりました。

文化祭が迫る今日この頃です。なお、我が校はほぼ男子校状態です。一体、誰が楽しみにするのでしょうか?


それはさておき、唐突ではありますが、今回の話で少し答え合わせをしましょうか。

なんの答え合わせかは読んでからのお楽しみです。

それと先日、またご質問頂いたのですが……それが今回の件に触れていて非常に驚かされました。

素晴らしい着眼点だと思います。(謎の上から目線ですみません。)


 


 ー風呂場ー



 風呂へとやってきた俺は湯船に浸かりながらゆったりと過ごしていた。


「あ〜……生き返る〜………風呂は心の洗濯とは上手く言ったもんだな……」


 《左様ですか。》


 すると、俺の独り言にシュティが反応した。


「あぁ……精神的に疲れたんだ……」


 ゆったりと肩まで浸かり、ぼー っとしながらシュティに言葉を返す。


 《そのようですね。ですが、主様に思慕(しぼ)の念を寄せる美しき女神達に囲まれての生活は素晴らしいものでしょう。》


 俺の返しにシュティは今現在の状況を再認識させてきた。てかこれ風呂入る度にやってない?


「まぁ、うん…………あれ?今さらだけど、これで理性保てる俺って凄くね?」


 だが、よくよく考えてみれば、いつでも手を出せてしまう状況において俺はいまだに理性を保てている、という事になる。


 《すごいです。もはや、男色なのかと疑う程です。》


「やめろ……別にそっち側の人を否定する訳じゃないが、俺は女の人がいい。」


 《左様ですか、ではヘタレですね。》


「こいつ…………あ、そうだ。そういえば、女神繋がりで思い出した。ベルの事なんだが、いいか?」


  ちょっとした会話を交わす中で、俺は一つの疑問を思い出した。


 《はい、なんでしょうか?》


「俺の世界でいう悪魔と、本来の在り方の悪魔……いや、黒き神々か?それの違いってなんだ?」



 そう、疑問とはベルを招喚した時にシュティが言っていた『悪魔の本来の在り方』とやらだ。



 《あぁ、その事ですか。

 そうですね……一つ確認しますが、主様の世界において悪魔とは人間を誘惑し、堕落へと誘う魔物という解釈ですね?》


 すると、俺の質問にシュティはそう答える。


「んー、たしかそんな感じだった気がする。」


 しかし、俺は詳しくは知らないし、ラノベ系でちょっとかじった程度なので、ぼんやりとした印象しかない。


 《左様ですか……では、僭越(せんえつ)ながらご説明させて頂きます。》


「おーう、よろしくー。」


 《まず、大前提として悪魔とは『人間が勝手につけた呼称』に過ぎません。

 そして、本来の呼び名は【黒き神々】です。》


「なるほど。」


 シュティの説明に頷く。

 だが、シュティの次の発言によって俺は驚くことになる。



 《では、黒き神々の『本来の在り方』とは何か?

 その答えは【人々の助力】、つまりは【願いを叶える事】です。》




「…………は?ちょっと待て。助力?要は『人の手助けをする』って事か?」


 《はい、その解釈で問題ありません。》


 シュティの発言に俺は理解が追いつかない。


「どうしてそうなる?悪魔……いや、黒き神々は人を堕落させるのが仕事じゃないのか?」


 《それは主様の世界においての『勝手な解釈』や『人間の都合』により『捻じ曲げられた概念』です。

 【真実】ではなく、単なる【常識】であって【虚実】です。


 さらに言えば、黒き神々が人々を『物理的に助け』、白き神々は人々の『精神的な支え』となる存在なのです。》


 俺の疑問にシュティは淡々とそう答えた。


 …………だめだ、理解が追いつかない。

 前の世界で神の信仰などしていなかったからそっち系統の知識はないが……これがかなり異質なんだという事だけはわかる。


 そうして頭をひねる俺にシュティはこう付け加えた。


 《単純に言ってしまえば『存在意義の違い』です。》


 ごめん、もっとわかりやすく。


 しかし、残念ながら俺はそれでも理解できない。


 《【見守る派】なのか【手助けする派】なのか、という神による派閥の違いです。》


 すると、シュティはさらに付け加える。


 ……なるほど、つまり?


 単純かつ明快な説明のおかげで多少は理解が出来た。

 それが正しい理解なのかを確認する為に俺はシュティに質問する。


 《悪魔というのは偏見であって、本来は【手助け派】の神達の事を指します。》


 ……マジで?


 《はい、マジです。》


 結果としては理解した通りだったのだが……なんだか俺の中での悪魔のイメージがガラガラと音を立てて崩れ去ってゆく。


 ……願いの対価に魂とか抜き取られるのに?


 よくある『願いの対価が自らの魂』つまり、『悪魔に魂を売る』という話を持ち出すと……


 《黒き神々はあくまでも【等価交換】によって願いを叶えます。人の願いが大きく、過剰なほどにその対価も膨れ上がるだけの話です。

 要するに、人は望み過ぎなのです。

 黒き神々はそれによって『過ぎたる願いはその身を滅ぼす』という教訓を与えているだけなのですから。》


 シュティはバッサリとそれを切り捨てた。痛いところを突いてくる。


 うぐ、言われてみれば確かに……


 《ですが、主様もベルとの契約において【契約条件】という形で対価を支払っていますよ?》


 うん、そういえばそうだったわ……けど、それだったら契約条件がかなり簡単な気がするんだけど……?



 すると、シュティはベルとの契約時のことを持ち出してきた。



 《主様、よく思い出して下さい。二つ目の契約条件は【ベルの望み】です。

 そして、あの場合、主様の願いは彼女との『契約』と解釈されます。そこで、主様は彼女から持ちかけられた【二つ目の契約条件】を承諾しました。

 よって、【互いに願いを叶える】という『等価交換』が成立しています。》


 ……そういう事か……やられたな。


 ここでベルとの契約における本当の意味を理解した俺は天井を仰ぐ。


 《はい、今現在ベルは簡易契約といえども等価交換を『一方的に済ませている状態』です。なので、主様が二つ目の条件を達成できない限りこちらからの契約破棄ができません。》


 ……まぁ、そこはほら、こっちからの一方的な契約破棄はなしって言ってるから大丈夫だけど……下手したら下克上とかあり得る?


 《あり得ます。簡易契約の場合、一方的な破棄の手段は口頭での契約破棄宣言、あるいはどちらか一方の死亡によるものです。》


 ……それでさっき後ろから刺されるなんて言ったのか。


 《左様です。ですが、主様の実力ならばまず負けはしませんのでご安心下さいませ。

 それに、私が全身全霊をもってお守りいたします。たとえ、この身尽き果て、魂が消え去る事になろうとも必ずや最後まで主様の盾となりましょう。》


 お、おう……まぁ、頼りにしてるよ。


 《はい、どうぞご安心を。》



 いつも妙な意気込みを見せるシュティに内心苦笑しつつも、なんとも言えない安心感に包まれる。


 そこでもう一つ思い出した。


「そういえば……ラウが言っていたローナやラウとベルの違いってこの事だったのか……支える派のラウやローナと違ってベルは願いを叶える派だから、『自分たちが本当に必要なのか不安になった』と。」


 《肯定です。》


「あぁ、やっぱり……それでベルを紹介した時にラウが『今度はそっち?』なんて言い方をしたのか……そりゃ不安になるわな。」


 後でもう一度謝った方が良さそうだ。


 スキルと会話しながら疑問を解消し、のんびりと風呂に浸かる。



 そんなゆったりとした時間を過ごしていたのだが……




「タケシ?入るわね?」


「おにーさん、まだ上がってないよねー?」




 その平穏は無情にも突如として崩れ去った。




「!」


 テコーン!と某スニーキングサバイバルゲームのアラート音が頭の中に響く。


「えっ!?ちょっ!?」


 驚きながら視線を風呂場の入り口に向けると、そこにはローナとラウがこちらに向かって歩いている姿が見えた。


 ……一応言っておくと二人はタオルを身にまとっている。ちょっと残念……ってそうじゃない!


「あ、居た居た。おにーさん、背中流すよー?」


「は、恥ずかしいけど……わたしも……その……頑張るわ!それに、前にタケシと入るって約束したもの!」


 俺の側までやってくると、ラウは悪い笑顔で、ローナは恥ずかしそうにそう言った。


「……」


 HQ、HQ、こちらDT1!女神二人の侵入を確認!増援求む!繰り返す!増援求む!オーバー!


 《こちらHQ。HQよりDT1へ、増援は認められない。現状戦力で対応せよ。繰り返す、増援は認められない。現状戦力で対応せよ。アウト。》


 ちくしょう!


 《落ち着いて下さい。理性崩壊の危機なだけです。》


 死活問題だ!


 《最悪の場合はわたくしが精神状態を安定させます。》


 ……俺が風呂から上がるって選択肢は?


 《ありません。》


 デスヨネー



「なにしてるのおにーさん!早く!」


「私たちが背中を流すから一度上がって?」


 シュティとそんなやりとりをしているうちに、ローナとラウは俺の手を引く。


「いや、俺はもう体洗ってるから……」


 俺は少し抵抗を試みるが


「いいから、はやくしてよおにーさん。」


 ラウには笑いながら一蹴され


「……嫌なの?」


 ローナは心の底から悲しそうに言う。


「……お願いします。」


 結局、俺はなす術なくシャワースペースへと連行されていった。





「おにーさんどう?」


「痛くないかしら?」


「全く問題ありません。」


 俺は今、ほぼ全裸同然のローナとラウに挟まれている。一応、二人は体にタオルを巻いているが……それでも目の毒だ。

 あと、俺も腰にタオル巻いてる。


「あははっ、おにーさんなんで敬語なの?」


「ふふっ、変なタケシ。」


「……左様ですか。」


 いや、さっきのは正しくないな。正確には二人に俺の体を洗われている……素手で。


 いや、なんでだよ!せめてタオル使えよ!

 この二人の手がすべすべなんだよ!はっきり言って気持ちいいんだよ!

 ちくしょう!かれこれ10分近くこの状態だよ!

 鏡ごしに見える二人がほぼ裸なのも色々と……なんかこう……くるんだよ!


 内心、一人でツッコミながら気を紛らわしていると、ローナが不意にうっとりとした声で呟く。


「タケシの腕ってたくましいわね……結構筋肉質だけど意外としなやかだわ。」


 そして、俺の腕をローナの滑らかな肌が滑った。


「っ!」


「あははっ!おにーさんがビクッてした!」


 それに反応した俺にラウが笑いながらそう言った。


「ラウちゃんも触ってみたらわかるわ。」


 さらに、ローナがラウにそう勧める。


「うん……あ、本当だ。ちゃんと触ったことってなかったけどおにーさんの腕すごく太いね。」


 ラウがペタペタと俺の腕を触っているのを感じていると


「えぇ、それに背中も大きくて安心するわ。」


 急に、ふわり、と香る甘い香りと背中に柔らかいナニカがおし当てられた感覚がした。


「ちょ!?ローナ!?なんか背中が全体的に柔らかいんですけど!?」


 なんか……やわらかいんですけど……それに後ろからいい匂いするし、ぬるっとしてるし……あ、ボディソープ?

 てか、もしかしなくてもこれってアレですよね……ローナさん、体に巻いてたタオルは?


 《主様の左後ろに畳まれた状態で置かれています。》


 すると、シュティが即座に反応する。


 おいこらやめろ。俺の疑問に答えるな。


 《ふふっ、主様の気持ちが少し理解できました。》


 そっちへの進化はしなくていいから!?


 人をからかう事に少しだけ目覚めたシュティに気を取られていると、ローナが俺の胸元に手を回して耳元で囁く。



「ねぇ、タケシ……痛くない?」



「!?」


 さらに背中で上下に動き始めた。


 あ、ちょっと待って!今、ゾワゾワってした!息が耳にかかってる!それに背中で動かないで!?あとすごいデジャヴのデジャヴ!


「……んっ///」


 おまけと言わんばかりにローナは艶っぽい声を出す。


「………ヤバイな。」


 脳髄を溶かされそうな甘ったるい声と匂い。

 サラサラしながらも少し湿気を帯びた白い髪が俺の背中を流れ、柔らかく少しだけひんやりとした二つのソレが激しく存在を主張する。


「むぅ……わたしはローナさん程おっきくないから出来ないかなぁ……」


 俺の横では、それを見ていたラウが腕に抱きつきながらそう言った。


 ……いや、だからって俺の腕を抱き込む必要あった?腕にあたる感触が全体的にすべすべなんですけど!?

 目の前で着替えようとした時に顔真っ赤にしてたかつてのラウはどこにいったんだ!?


「なぁ、ラウ……お前さんいつ羞恥心捨てた?」


 クラクラとする頭を無理に動かし、自分でもわかる程にひきつった笑顔を浮かべてラウに視線を向けることなく聞いた。


「え?だって、おにーさんに一度襲われかけたし……」


 すると、ラウはとんでもない発言をしてくれやがりました。


「えっ……」


 その瞬間、ピタリ、とローナの動きが止まる。


「そういう誤解を招く言い方はやめようか!?」


「……否定しないのね。」


 そして、ローナがいつもより少しトーンを落とした声で呟いた。


 ほーら、言わんこっちゃない……導火線に火がついたじゃないか。


「ローナさん?あの、できれば……「言い訳しないで。」」

「はい。」


 俺がぎこちない動きで後ろを向こうとすると、回された腕の力が強まる。

 背中全体から彼女の体温が伝わってくる。それに、ちょっとだけ冷たかったアレがじんわりと温かくなってきた。


 ……余計に押し当てられて背中で形が変わってるのがわかる。なんだろう……自分の鼓動がうるさいし、顔がひどく熱い…………静まれ!我が鼓動!我が欲情!我は理性の王なり!理性無くしてなにが王か!!


 《欲望と理性の狭間で冷静になろうとするとそうなるんですね。》


 訳がわからない状況で思考が明後日の方向に向かった俺にシュティが納得したように言った。


「ねぇ、タケシ……未遂だからどうしてそうなったのかまでは聞かないわ。でも……わたしが一番だからね?」


 そして、ローナは後ろから抱きついた状態で俺の耳元で囁いた。


「はい、わかっております。」


「そう、ならいいの。」


 すると、ローナは満足したのか腕の力を緩めた…….



 そう、緩めただけであって『離してはくれない』のだ。



 現状で理性のタガが外れてない自分を賞賛したい気分だ。


 《では、ここで讃美歌を一つ。》


 いらない。


 《主様はいけずです。》


 可愛く言っても無駄。



「……ローナ、ちなみにこれは誰から教わった?」


 とりあえず思考をそらす為になんとなく質問してみた。

 前々からこういったローナの行動にはどこぞの最上位神が絡んでいるのだ。


「え?あの子と一緒に見たアニメでやってたからだけど……それに、あの子も『スキンシップの一環だ』って……間違えてたかしら?」


 すると、また動きを止めたローナが不安そうな声で答えた。


 はい、それ見せた最上位神はお仕置き確定。

 必ず二、三発は殴るが……今度おススメのアニメかゲームでも紹介してやろう。


 《見事に欲望と理性が混ざり合ってますね。》


 うるせぇ。



 閑話休題



 ともかく、ローナの解釈は否定させてもらうぞ。


「……うん、違うな。まず、男と一緒に入る時点で違う。」


「えっ……」


 ローナが間の抜けた声で驚き、三度(みたび)動きを止めた。


 よし、これでなんとか軌道修正を……


「あれ?そうだったんだ……でも別にいいじゃん!普通でもそうじゃなくても私たちはおにーさんにしかしないし!」


 そう思っていた矢先、ラウが笑顔でのたまった。


「……えぇ、そうね。普通じゃなくても、私たちだけの特別なら問題ないわ。」


 すると、ラウの言葉にローナも同調した。


「……」


 俺がにらむようにラウの顔だけに視線を向けると


「ん?なに?おにーさん?」


 ()()()()()()()()()を浮かべる。


 こいつやりやがった!確信犯だ!!


「いや、なんでもない。それよりも、お二人さん?そろそろ……」


 非常に、非常に名残惜しいが……流石に色々と辛いので『そろそろやめてくれないか。』と提案しようとした時だった。


「じゃあ、次はわたしだね。おにーさん、泡流したらそこどいてね。」


「ふふ、じゃあわたしは最後ね。」


 シャワーヘッドを手に取りながらラウがそう言い、ローナは俺の背中から離れた。


「ア、ハイ。」


 ジーザス!神は死んだ!!いや近くに女神が二人いる!けど今その二人は理性を刈り取る死神だ!!


 またしてもなすがままに俺は泡を流され、今度はラウを洗う事になった。





「おにーさん、たぶん時間かかるから髪の毛だけでいいよ。」


 今度はラウが再び体にタオルを巻いた状態でイスに座り、俺に背を向けてそう言った。


「おう。」


 ……当たり前だこの野郎。ここまで無防備な状態さらされて肌なんぞ触ってみろ……確実に俺の理性が死ぬわ。


 《わたくしというセーフティはありますけどね。》


 確実に突破する自信がある。



「とりあえずお湯で流すぞ。」


「うん、よろしくー♪」


 ラウは俺の言葉に弾むような口調で返事をして、足をぶらぶらさせる。


「わたしもやるわ。二人でやった方が早いし、あんまり長いと風邪ひいちゃうかもしれないから。」


 するとローナが手の平にシャンプーを乗せながら俺の横に来る。……またタオルを体に巻いた状態で。

 別に残念とか思ってないヨ。


「うん、ありがとうローナさん。」


「気にしないで。わたしがやりたくてやるんだから。」


「……よし、とりあえず髪洗うぞ。」


 気を取り直してシャワーヘッドを手に、ラウの後ろに回り込む……


「……」


 が、改めてラウを後ろから見ると、彼女の体格の小ささが際立つ。


 ラウの身長はだいたい160cmあるかどうかだったと思うが……ラウってこんなに小さかったのか。


「? おにーさん、どうしたの?」


 俺が動かなかったのが不思議だったのだろうか?

 ラウはこちらに振り向いて聞いてきた。


「いや、なんでもない。」


 俺はラウに笑いかけながら答えた。


 なぜかはわからないが、ラウの後ろ姿を見ると不思議と穏やかな気持ちになったのだ。

 なんというか、こう……庇護(ひご)(よく)みたいなものが湧き上がってきた。


 先ほどまで本能と格闘していたのがまるで嘘のようだ。


「お湯かけるぞ。」


「うん、早くー」


 お湯がラウの髪の毛を濡らし、清流のように流れてゆく。


「俺は髪洗う知識なんぞないからテキトーでいいか?」


「えー……女の子の命をぞんざいに扱うのー?」


 俺が一応ラウに確認を取ると、彼女は不満そうに言った。


「そう言われてもなぁ……ない袖は振れないぞ。」


 ラウの反応に俺も困り果てる。


「あはは、冗談だよ。おにーさんに洗ってもらう時点でそこは期待してないから。」


 すると、ラウは手をひらひらさせて笑いながら言った。

 よほど俺にいじられたいらしい。


「言ったなこの野郎!」


「あっ!痛い痛い!おにーさん!頭ぐりぐりするのはダメ!ごめんなさい!」


 ラウのこめかみを軽くぐりぐりと押し込むと、あっさりと降伏した。


「わかればよろしい。」


「むぅー……ひどい。」


「自業自得だ。」


 ラウは頰を膨らませながら不満を表現しているが、自分でまいた種だ。オレ、ナニモ、ワルクナイ。


 そうして、こんなくだらないやりとりをしながらもラウの髪を手で丁寧に梳きながらお湯で流していく。


 ラウもそれなりの長髪なのに指が全く引っかからないのには驚きだ。艶もあって、シルクのように滑らかな触り心地でクセになりそう。


「うふふ、ラウちゃんとタケシって二人の時はいつもこんな感じなのかしら?」


 俺がお湯で流し終えると、次はローナがシャンプーを手で伸ばしながらラウの髪を洗い始め、嬉しそうに言った。


「うん、そうだね。だいたいこんな感じかな。」


 それに対してラウは苦笑しながら


「まぁな。」


 俺もシャンプーを手に取ってラウの髪を洗いつつ、笑いながら答えた。


「そうなのね……うふふ、嬉しい。」


 ローナは本当に嬉しそうに優しい微笑みを浮かべている。


「なんでローナが嬉しそうなんだ。」


 そこで俺が聞くと


「え?だって、タケシとラウちゃんが仲良くしてくれてるから……」


 ローナからは純粋な答えが返ってくる。


「……本当は少しだけ独占したいと思ったりもするけどね。」


 しかし、その直後にローナは小さな声で呟き、少しいたずらっぽく笑う。


「……そうか。」


 なんか、照れるなこんちくしょう……あと破壊力すごいからやめてほしい。だって、絶世の美女がタオル一枚の姿でこの言葉だぜ?やばいだろ。


「むぅー……ローナさんはいつもおにーさんといい雰囲気になるのに、なんでわたしの時はいじられるのかなー……」


 すると、ラウが不満そうな表情で静かに言葉を漏らした。


「単なる愛情表現だ。」


「っ!?……もぅ、なんでそういう事をストレートに言ってくるかな……嬉しいけど。」


「本当の事を言ったまでだ。」


「……あ、ありがとう。」


 鏡越しに見たラウはバツの悪そうな表情で、顔が少し赤くなっていた。


「てか、今さらだけど痛くないか?」


 話題を変えるついでに本当に今さらな事を聞いてみた。


「んー?心配しなくても気持ちいいよー……」


 俺の疑問にラウはリラックスした声で答えた。


「それは重畳(ちょうじょう)。」


 そうして、俺たちはラウの髪を洗い終えるまで雑談を交わしていた。




「ほい、終わりだ。次はローナだな。」


 俺とローナは少し時間をかけてラウのシャンプーとトリートメントし終えた。


「はーい。ありがとう、ローナさん、おにーさん。」


 立ち上がったラウは笑顔でお礼を口にする。


「気にするな。」


「えぇ、そうよ。」


 俺たちも笑いながらそう言うと


「なんか、おにーさんとローナさんが夫婦でわたしが子どもみたい……」


 急に(へこ)むラウ。


 ……こいつ、本当にころころと機嫌が変わるな。


 《女心と秋の空、ですね。》


 俺の語彙力では出ない言葉だな。


「ふふ、ラウちゃんもわたしと同じだから安心して?」


「うん、ありがとうローナさん。」


 どうやら、俺がシュティと話しているうちにローナが解決してくれたようだ。ローナ様様(さまさま)だな。


「さて……じゃあ、次はローナだ。」


「えぇ、お願い。」


 そして、ローナが目の前に座ったのだが……


「…………」


 やべぇ……ローナはやっぱりスタイル良すぎ……足の方が長いのかイスに座ると彼女も小さく見える。

 しかも、後ろから見下げると胸元と少し上気した白い肌とのコントラストが……あ、マズい、また本能が……総員!合戦準備!


 《パパパーパパパーパッパララパー♪パパパーパパパーパッパララパー♪》


 あ、うん、ラッパをありがとう。でもそれ多分伝わらないからな?


 《主様にのみお喜び頂ければそれで構いません。》


 そりゃどうも、それにちと気も紛れた。ありがとう。


 《はい。》



「ローナ、お湯で流すぞ。」


「うん。」


 そして、ローナの新雪のような髪に手をかけると、手に吸いつくようなしっとりとした触り心地だった。

 ラウとはまた別の触り心地でこれまたクセになりそうだ。


「わたしもやるよ。お礼の意味も込めて。」


 ちょっとした感動に浸っていると、ラウが俺の隣に来て言った。


「おう、よろしく。」


「ありがとう、ラウちゃん。」


「うん、気にしないで。」


 しっかし、絵になるなぁ……この二人……っと、早く始めようか。


「さて、シャンプー始めるぞ。」


「えぇ。」


「うん。」


 今度はラウと二人でローナの髪を洗う。


「……ふふ、タケシの手、優しい。」


 すると、すぐにローナがそんな事を口にした。


「そうか?」


「えぇ、そうよ。ね?ラウちゃん?」


 聞き返す俺にローナはそう答え、さらにラウに同意を求める。


「うん、おっきくて、優しい手つきだったよ。」


 ラウはそれを受けて褒め言葉を俺に送り


「タケシの優しさが伝わってくる。」


 ローナがさらに付け足す。


「……そうかい。そりゃどうも。」


 どうにも背中がかゆくなった俺は無愛想に返事をした。


「うふふ、そんなに照れなくても。」


「中々見ないおにーさんの表情だね。」


 だが、二人には見抜かれてしまったようだ。


「……うるせぇ。」


 すると、シュティが口を開いた。


 《わたくしもわかっておりますよ。》


 張り合うなバカ。

 お前は俺の中にいるんだからわかって当たり前だろ。


 《主様、主様、今のもう一度お願いします。》


 え?なんで?


 《何も疑問に思わずお願いします。後半の言葉を切望します。》


 お前は俺の中にいるんだから当たり前だろ……これがどうした?


 《感謝申し上げます。主様の中に居る、それを直接仰って頂けて非常に興奮します。》


 こいつバカじゃない!文字通りただの変態スキルだ!!


 《あぁ……至福です……アカシックレコードに記録しましょう。》


 やめろ!もう喋るな!つか、こいつ話を聞いてないな!?



 結局、俺はシュティの成長に頭を悩ませながら逃げるようにしてローナの髪を無心で洗うのだった。



 ー少ししてー



「よーし、終わりだ。」


 ローナはラウよりも髪が長いのでさっきよりも少し時間がかかったが、なんとか終わった。


「ありがとうタケシ、ラウちゃん。」


「どういたしまして。」


「ううん、気にしないで。」


 よし、じゃあ、俺はこれで上がれるな。


 そう思い、さっさと上がろうと


「んじゃあ、後は二人でゆっくり……」


 そう言った時だった。


「なに言ってるの?おにーさんも一緒に入るんだよ?」


「湯冷めしちゃったでしょ?風邪ひかないように一緒に入りましょ?私たちは体洗うから先に入ってて。」


「えっ……」


 二人は不思議そうに、そして、純粋にそう言い放った。


「えっ、じゃないよ。ほら、はやくあっち行ってて。」


「お、おう……?」


 そして、ラウに背中を押されて俺は湯船に戻る事となった。



「ローナさん、洗いっこしよっ!」


「あら、いいわね。」


「やった!じゃあ、わたしが先に洗ってあげる!」


「じゃあ、お願いするわ。」


「うん!」



 後ろにいる二人の楽しそうな声を聞きながら……



 《主様、おめでとうございます。混浴ですよ、混浴。》


 なんだろう……嬉しいんだけどちょっと怖い。これ以上、俺にどうしろと?


 《なにもしないことですね。》


 あぁ、うん、確かにな……まぁ、なんとかなるさ……多分。



 そして、これから訪れるであろう苦難に諦めをつけて。




作者「そういえば、前回の後書きの影響なのか、いつもより増えるブックマーク件数が多かったです。

ふふ、そういう欲に忠実な姿勢……私は好きですよ?

あと、二分割にしたのは単純に思ったより長くなったからです。何気に一万字超えちゃったので……あんまり長いと読むの疲れますから。」


隊長「……そんな事より今回シレッと重要な事を書いたな?」


作者「えぇ、そうですね。


私の作品においての神と悪魔の存在意義は世間一般のソレではなく、私個人の解釈に基づき、物語用に改変しております。

故に、それが物語の中で重要なのは言うまでもありませんが、読者の皆様方の常識に当てはまらないかも知れませんのでご容赦を。


これらは私の創る世界です。

どうか、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。」


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