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黒い本と着信


やっとこさ更新!

でませい!最新話!

流石に話を進めましょう。


それよりブックマーク200件!?

ありがとうございます!


 



「さてと、明日は何をしますかねー……あ。」


「ガウ?」


 夕食を済ませ、風呂に入った俺は寝るためにフェルと一緒に自室へと戻ってきていた。ちなみに時刻は夜の8時過ぎだ。


 夕食にはラウもちゃっかり戻ってきていたのだが、一言も喋らずなんとも気まずい空気の中での食事となってしまった。それでも俺の料理を食べにくるあたりよほど気に入ったらしい。

 それと、昨日ローナと一緒に風呂に入ると約束してしまったので『いつ突撃してくるのか?』と、戦々恐々としていたが、気を使ってくれたのか特に何事もなかった。……残念とか思ってないぞ。ほんとだぞ。


「いつの間に……?なに?この世界って妖精の不思議な配達員さんでもいるのか?」


 ふと視線を向けたベッドの上には見覚えのある一冊の本が置かれている。


「これは……あの時の?」


 それは黒い表紙にまるで聖書のように分厚く重厚な雰囲気を醸し出している本だった。


「さて、中身はどんなだったか……」


 手にずっしりとした重みを感じながらテキトーにパラパラとページをめくる。


「うん、やっぱり最初のページ以外は何も書いてないな。」


 だが、やはり見た限り全てのページは白紙だった。


「……って、なんか内容増えてるな。」


 しかし、何気なく一ページ目を開いてみると、以前は一ページ目の半分までしかなかった文章が一ページ目を埋め尽くしていることに気がついた。


「内容は……」


「クゥン。」


 ベッドに腰掛けながら読み進める。


 内容はこうだ



 『光在りて闇在り

 されど

 闇在りて光在らず

 光、(いにしえ)より生み出されしモノ(なり)

 光、世を生み出せしモノ(なり)

 光、偽りにして偽り成らざるモノ(なり)

 光、(ことわり)にして(ことわり)()らざるモノ(なり)



 とまぁ、ここまでは前に見た通りだ。

 だが、ここから先が追加されている。



 『闇、(いにしえ)より在りて光生み出せしモノ(なり)

 闇、生み出せしものに在りしモノ(なり)

 闇、不可視なれど常に側に在りしモノ(なり)

 闇、即ち世の(ことわり)(なり)



 光、()(すなわ)ち創造(なり)

 闇、其れ即ち破壊(なり)


 光、白く在りて支えとならん

 闇、黒く在りて助けとならん』



「……うん、やっぱりわからんぞ。なぞなぞか?支えと助けって何が違うんだ?」


 本の内容にまたしても疑問が増える。考えてもまったく理解できないが。


「実は二ページ目になんか書いてたりしてない?……あったよ。」


 冗談めかして呟きながらページをめくると、二ページに文章が載ってあり、三ページ目には魔法陣の様な絵が大きく描かれていた。


「……。」


 二ページ目の内容は以下の通り



 『ドキドキ!?これであなたも招喚術使いに!?

 魔法陣に魔力を込めて使い魔を招喚してみよう!

 どんな使い魔が招喚されるかはあなた次第!

 オリジナルの呪文で楽しく招喚!


 さぁ!興味があるなら今すぐ招喚を!』



 ……うん、まぁ、あれだよね。


「うさんくせぇ!なにこれ?悪質商法かなにかか!?」


「クゥ?」


 突然叫びながらツッコミを入れた俺にフェルが首をかしげる。


「あぁ、いや気にしなくていいぞ。先に寝てていいからな?」


「クゥ……」


 気にしなくていいとフェルを撫でてやりながらもう一度本を読んでみると



 ※なお、これは招喚術のみを保証するものであって招喚した対象との契約、並びに命の保証をするものではありません。

 


 と、下の方に小さく注意書きされてあった。


「やっぱり悪質商法と同じ手口だ……!?い、いやらしい……いやらしすぎるぞこれ……!?」


 ネット上での詐欺でよく見られる下の方に小さく注意書きがされているという、いかにもな内容に呆ざるをえない。


 《書かれているだけまだマシかと。これは別段書いていなくても法に触れることはありませんので。

 それにこれはあくまでも単一の招喚術式です。招喚魔法ではありません。》


 そう言われてみれば確かに……って、なるか!……なぁ、招喚魔法と招喚術式って何が違うんだ?


 《この世界においての招喚魔法は詠唱しながら魔力を込める事によって魔法陣を作成、その魔法陣に込められた魔力量に見合った魔獣などをランダムで招喚、契約するまでをプロセスとして組み込まれているいわば確実に主従契約を結ぶためのものです。


 しかし、単一の招喚術式での招喚となればその機能は対象を呼び出す事のみに限定されます。それ以降の契約の交渉などは自身で行う事になります。

 メリットとしましては魔力を込めるのは必要最低限のみでよい点です。

 デメリットとして何が出てくるかは出現するその時まで不明ということでしょうか。》


 つまりは素人向けは招喚魔法で、熟練向けが招喚術式と?


 《簡潔に言えばそうなります。


 自身の実力に見合った契約がしたいならば招喚魔法です。自分の込める事が出来る量に見合った対象が出てくるという事はそれだけ実力が近い者を呼び出せますから。》


 なるほどねぇ……じゃあ、招喚術はコストは低いけど運次第なんだな?


 《左様です。ピンキリと言ってもよろしい程には。

 そもそも、術式のみの運用は本来ならば術式を組む事から始まりますのでその術者の腕が問われますが、組み上がっている術式を使用するとなれば話は別です。ただ、魔力を込めればいいだけですから誰でも使用可能となります。》


 たとえば?


 《招喚魔法ではスライムしか呼び出せない筈の召喚者が招喚術式での招喚を行うと龍すら呼び出せる可能性がございます。あくまでも運次第ではございますが。》


 うわぁ……引くわぁ……


 《おや、では主様は招喚術というものに興味がおありではないのですか?》


 いや、めっちゃ興味ある。招喚術とかロマンだろ。


 《流石でございます。それならば試してみる価値はあるかと。》


 そうだな……でも、それならシュティのでいいんじゃないか?


 《いえ、私もこの本の内容に少し興味があります……せっかくですのでこの本に載っている術式で試してみるのもまた一興かと。》


 へぇ?シュティが何かに興味を示すとは珍しいな?


 《主様に進言など恐れ多いことですが、この本は少し特殊ですので。》


 この本について何か知ってるのか?


 《…いえ、わかりかねます。ですが、だからこそ特殊なのです。》


 ……そうか。まぁ、確かにシュティなら大抵の事は知ってたり、わかったりしそうだしな。


 《この身に余る御言葉、恐れ入ります。》


 よし、思い立ったが吉だ!いっちょやってみるか!


 《今からですか?》


 おう、とりあえず後回しにしてても仕方ないしな。それに、明日にはもう消えてるかもしれないだろ?前はそうだったんだからさ。


 《確かにそうですね。では………む、主様、一つ宜しいでしょうか?》


 ん?どうした?


 《着信です。回線を開きますか?》


 着信?なんで……って、あぁ、リーシアか。そういえば贈り物として携帯電話あげたな。

 よし、回線を開いてくれ。招喚術は後だ。


 《承知しました。回線開きます。》


 シュティの宣言と同時に、俺のFPSもどきの視界に長方形のディスプレイが映し出された。


【……あれ?不思議な音がなくなりました。繋がらなかったのでしょうか……?】


 そこに映るのは不思議そうに首をかしげるリーシアが映っている。


「いや、聞こえてるし、繋がってるぞ。」


 俺はひらひらと手を振りながら彼女に声をかける。


【きゃ……!お兄様!?……ほ、本当にお兄様が見えます!すごい……】


 俺の視界に映った彼女はかなり驚いた様子で俺の方をまじまじと見つめる。


 彼女の声もクリアに聞こえ、画面に映し出された映像も驚くほど繊細で目の前にいるのではないかと思うほどの画質だ。


 俺が彼女に贈った携帯を使ってくれたというのはなんだか嬉しいものだな。

 これは余談だが、このまえ贈った携帯電話は冗談抜きでリーシアの持っている物しかこの世に存在しない。


 俺?俺はシュティが携帯の代わりをしてくれるから必要ない。

 だってそうだろ?緊急用の通報機能つけたのに俺が携帯持ってなかったから気がつかないとか最悪だ。

 それに、別に俺が持っていなくてもシュティが電話を機能として追加してくれているお陰で持つ必要もない。

 シュティさん万歳!もうシュティがいないと生きていけないぜ!もう何回言ったかわからんけどな。


【……はっ!し、失礼しました……わたくしったらなんてはしたないことを……】


 すると、画面の向こうでリーシアが驚いた表情だったのが恥ずかしそうにそっぽ向いてしまった。


「いやいや、そんな気にしなくていいぞ?」


【いえ、わたくしが気にいたします!】


 すかさずフォローを入れたが、結構食い気味に返されてしまった。失敗だったか?


「そ、そうか、それは悪いことしたな。」


 少しばかり反省しながら言葉を返すと


【あ、いえっ、そのっ!す、すみませんお兄様。わたくしったらまたお兄様にご迷惑を……】


 向こうもさらに萎縮しながら謝ってきた。


「あはは、本当に気にしなくていいからな?」


【ありがとうございます。】


 まるで日本人同士の会話のような内容でいくらばかりか懐かしい気分になる。


「それで……」

【あの……】


【「あっ……どうぞ。」】


「えっ……?」

【えっ……?】


「……。」


【……。】



 え、何この付き合ったばかりのカップルの電話みたいな雰囲気。

 すごい気まずいんだけど……とはいえ、ここは兄らしくリードしてあげないといけないな。


「リーシアからどうぞ、俺は大丈夫だから。」


【は、はい……ありがとうございます。お兄様。】


 ひとまずはレディファーストでリーシアに譲る。


【今さらではありますがお兄様、お時間は大丈夫でしょうか?】


「あぁ、大丈夫だ。ありがとな。」


 すると彼女はまず俺に時間の不都合がないかを確認してきた。初めての電話でこんなに気が使えるとは……本当に良い子だ。


【それなら良かったです……それとお兄様、その……次はいつこちらに来られますでしょうか?】


 ホッとした様子の彼女だったが、すぐに緊張感を漂わせてそう言った。


 ……言われてみればまったく決めてなかったな。とりあえずまた来ると約束したものの詳細な予定はまだだったな。


「んー……じゃあ、5日後とか大丈夫か?」


 そんな訳で今決めた。

 流石に明日急に押しかけるのも悪いからちょっと長めに設定してみる。


【5日後ですか?今からお父様にお聞きして参りますのでお待ちください。】


「急がなくていいぞー」


 そう言うやいなや彼女はすぐに行ってしまった。おそらく俺の声も聞こえていなかっただろう。



 ーしばらくしてー



【お兄様?聞こえていらっしゃいますか?】


「おう、聞こえてるぞ。」


【お父様にお聞きしたところ5日後は予定で埋まってしまっているそうです。】


「そうか、わかった。ありがとう。」


 流石、貴族なだけあって予定もすぐに埋まるのか……ならどれくらい先ならいいんだろうか?


【なので明後日なら空いているそうです。】


「あ、そうなんだ。」


 いや、5日後の予定埋まってて明後日がヒマってなんだよ。ていうかそれって、もしかしなくても貴重な休日なんじゃ……?


【はい、ですから明後日なら大歓迎だそうです。明後日以外認めないとおっしゃっておりました。】


「そこまで!?」


【ふふっ……お兄様は面白い反応をして下さいますね。】


 口元に手を当てて上品にクスクスと笑う彼女。だが、かなり楽しそうに笑っている。


「そうか?」


 俺が聞くと


【そうですわ。】


 すぐに肯定の返事が返ってくる。


 そして、画面に映るリーシアはこう言った。


【それにしてもこのケイタイという物は素晴らしい物です。あんなにも遠いはずのお兄様がこんなに近くに感じられるなんて。】


「まぁ、それが携帯の役目だしな。」


 苦笑しつつも俺はそれを肯定する。

 そんな中、リーシアはポツリとこう零した。


【……でも、やっぱりお兄様にお会いしたいです。お兄様、早く来てくださいませ。】


 その表情は印象に残っている明るいものではなく、少し寂しそうでどこか儚い印象を俺に植えつけた。

 声も少しか細くて非常に心を揺さぶられた。


「よっしゃ、明後日行くから待ってろ。」


 そんな彼女の様子を見て何も考えずに口走る。

 ……流石にここで『一昨日会ったばっかりだろ。』なんて言うほど俺はバカではない。


【!、はい!お待ちしておりますお兄様!】


 だが、彼女の表情は明るくなり、とても嬉しそうな笑顔になった。


【そういえばお兄様のご用事は何かございましたでしょうか?】


「いや、リーシアの元気な姿が見れて満足だ。」


 まぁ、俺としても彼女からの電話は正直嬉しかったしな。離れて暮らす妹みたいな存在だし。


【お、お兄様……恥ずかしいです……それでも、嬉しいですわ。】


 すると彼女は頰を赤らめながらもはにかんでそう言った。


「なるほど、これが天使か……」


 その様子に微笑ましく思いながらそう呟くと


【それは恐れ多いです……下位神様と同等だなんて天と地が入れ替わってもありえません。】


 彼女は否定的な態度を示した。


「いいや、天使だな。俺が保障しよう。」


 しかし、俺はそれを認めはしない。実際、見た目も言動も可愛いから誰も否定しないと思う。

 なんならローナに認定してもらうのもアリだな。


 《主様、それはシャレになりません。主様のお願いとあらば彼女は本当にこの少女を神格化してしまいます。》


 ごめん、失言だった。


 《はい、主様は発言一つで世界に影響を与える可能性がある事をご自覚ください。》


 なんだろう、ちょっと面倒だなって思ってしまった自分がいるぞ。


 《前にも申しましたが、そこで世界征服などを考えないのが主様の美点で御座いますね。》


 管理とか絶対めんどいからやだよ。俺はみんなとのんびり暮らせればそれ以外には何もいらないからな。

 無論、シュティも一緒だからな?これは命令だ。


 《承知しております。》


 そっか、ならいいんだ。ありがとう。


 《はい。》


 そんないつも通りの会話を脳内でしているとリーシアが話しかけてくる。


【お兄様。】


「ん?どうした?」


【あ、いえ、少し気になる事があるのですが……】


「何でも言ってみ?出来る限り答えるから。」


 少し遠慮気味に言った彼女に俺は笑顔でそう答えた。


【はい、ありがとうございます。では……その、お兄様の飼われている魔獣の子を少し見せてくださいませんか?】


「それならお安い御用だ。今ちょうどフェンリルが横にいるからそれでいいか?」


 俺と同じく動物が好きらしい彼女は魔獣が見たかったようだ。


【はい!是非!】


 その証拠に今とてもいい笑顔で元気な反応が返ってきた。


 シュティ、フェルを映してもらえるか?


 《承知しました。》


 シュティが俺の言葉を受理すると視界の中にもう一つディスプレイが表示される。

 そこにはフェルの顔が映し出されていた。


【す、すごいです……初めて見ました……これがフェンリルなのですね……】


 それを確認したらしいリーシアは驚きと感動の混じった声色で呟いた。


「フェル、起きてるか?」


 彼女のそんな声を聞きながら俺はフェルに声をかける。


「クゥ……」


「はは、少し眠いか。」


 すると、フェルは前脚で顔をぐしぐしとかきながら薄く目を開いた。


【うふふ、可愛らしい子ですね。お兄様、その子のお名前はなんというのでしょうか?】


「フェルだ。フェンリルからとってフェルって名付けた。かなり安直だけどな。」


「クゥ?…がう……♪」


 フェルのあごを撫でてならながら彼女に応答する。


【素敵な名前です……では、その子は女の子なのでしょうか?】


「お、よくわかったな。」


 そして、その様子を見ながらリーシアはフェルの性別を見事に言い当てた。


【はい、お名前から察するにそうかな、と。】


「あぁ、フェルともう一頭別の魔獣もメスだ。だから、多少はそれっぽい名前にしてあげた方がいいかなって思ったんだ。」


「♪」


 フェルが嬉しそうにパタパタと尻尾を振っているのを見て俺も自然と笑みがこぼれる。


【むぅ、羨ましいです……あんなに撫でて頂けるなんて……】


「そうか?まぁ、どっちも特異個体で珍しいみたいだし、魔獣好きなら尚更かもな。」


【あっ、いえ……はい、そうですわ。】


「?」


 なんだか釈然(しゃくぜん)としない返事だったが気にしなくてもいいか……?


【フェンリルとは別の子は今はどちらに?】


 リーシアは姿の見えないサティにも興味があるようだ。


「下の階にいるから見に行こうか?」


 俺はそう提案したのだが


【いえ、そこまでお手数をおかけするわけにはいきません。それに、また後日ご一緒に来てくださるのならその時を楽しみにしております。】


 笑顔で大人の対応をされてしまった。

 この子ほんとにしっかりしすぎじゃない?


「そうか?リーシアはまだ子どもなんだからわがままくらい言ってくれてもいいんだぞ?」


【……はい、ありがとうございます。】


 その言葉に彼女は複雑そうな表情をほんの一瞬だけ見せ、すぐに表情を戻したのを俺は見逃さなかった。


 あれ?俺なんか間違えた?


 《そうですね。間違えてないようで少し間違えましたね。》


 ちなみに何を間違えたかは……?


 《ご自身で答えを導き出して下さいませ。わたくしは主様の望みを叶える事が喜びとはいえ、無作為に叶える訳にはいきません。ご容赦下さいませ。》


 いや、むしろシュティが俺が暴走しないようにブレーキをかけてくれるのならそれ以上のことはない。


 《望外の喜び。》


 ありがとう。感謝に尽きない。


 《ああ!それ以上はおやめください!消えてしまいます!》


 シュティ!?消えるなよ!?


 《くっ……!な、なんとか……っ!し、しばらくお時間を……》


 わ、わかった……そっとしておこう……


 予想外にシュティがダメージを受けているので時間を置いておく事にしよう。


【お兄様お兄様。】


 すると、彼女の声が俺の耳元で囁くように木霊した。


「っ!?」


【お兄様?どうされました?】


 ちょっ!?さっきまで普通だったのになんか感度が凄いことに!?ほんとに耳元で囁かれてるみたいだ!?まさかシュティが動揺したからこっちまで影響が!?

 ごめん!やっぱ戻ってきてシュティ!……だめだ、シュティからの応答がない。


【お、お兄様……?】


 リーシアが心配そうに再び声をかけてくる。


「うっ……!うん?……ど、どうかしたか?」


 両耳を同時に声で舐められるかのような感触が襲うが、どうにか取り繕う。


【いえ、お兄様のご様子が少しおかしい様な感じがいたしましたので……】


「いや、なんでも…ないぞ?」


 しかし、彼女にも俺の様子がおかしいことは伝わってしまっているようだ。それに今はその優しさが辛い……これはどうにかして切り抜けないといけないな。


【そう、ですか?でも……】


「お、おう……!?」


 彼女の小さな呟きがくすぐるように耳を撫でる。


【やはり大丈夫ではありませんよね!?】


「いや、ちょっと電話の感度がな……ほんとに気にしなくていいぞ?」


 とにかく落ち着いてもらうしか手はない。俺の為にも。


【だめです!お兄様に何かあったらと思うとわたくしは……わたくしはっ……!】


「あっちょ……!?」


 下手を打った!?泣きそうな声が余計に耳を刺激する……!

 仕方ない!ここは少し無理をしよう!


「落ち着け!リーシア!大丈夫だって言ってるんだ!」


【っ……お兄様……?】


 ちょっとだけ声を荒げて強制的に落ち着かせる。

 あんまりこういった行為はしたくなかったが、このままでは全く前に進まないので仕方ない。


 ……本音はゾクゾクしっぱなしでやばい。なんかもう変な趣味に目覚めそうで怖い。


「俺を信じろ。」


 画面の向こうにいる彼女を真剣に見つめる。


【……信じてもよろしいのですか?ほんとうに?】


「あぁ。」


【……わかりました。では、お兄様を信じます。】


 その甲斐あってか彼女は素直に頷いてくれた。


「ありがとう。」


【!、はいっ!】


 俺が礼を言うと彼女も可愛らしい笑顔で応えてくれた。



 その後、結局シュティが復帰することはなく、リーシアの声に悶えながら電話を続ける事となった。



 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



 《主様、ただいま戻りました。》


 リーシアとの電話が終わってから少ししてシュティが戻って(?)きた。


「あ、うん……おかえり。」


 《ひどくお疲れのようですね。》


「おかげさまでな。」


 《わたくし、ですか?》


「あぁ、まぁ、シュティは悪くないな。うん、ごめん。」


 《?、ならば安心ですか……それはそうと召喚術はよろしいのですか?》


「疲れた。やっぱ明日にする。」


 《本が無くなってしまうかもしれませんが……》


「その時はごめん。シュティには悪いけど本が無くなったらシュティに術式組んでもらう。」


 《承知しました。》


「おやすみ。」


 《おやすみなさいませ。》


 結局、予定をずらして召喚術は明日にすることにして眠ることにした。






???「私の出番はまだですか?」


作者「帰ったんじゃなかったの!?」


???「なんだか更に予定が延長された気がして戻ってきました。返答によっては処します。」


作者「……あと二話ほどでどうです?次の次で出番というのは?」


???「よろしい。ならば、信じましょう。」


作者「ありがとぅ↓ごぉざいまぁ↑す!」


???「……」



話の冒頭での主人公の発言を修正しました。

(2018/6/17 23:29)



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