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なんかめっちゃモフられた


こんにちは……いえ、こんばんは!

もう19時だというのにまだまだ明るいこの季節、夏が近づいてまいりましたね!


ちなみに私は先週の金曜に体育大会があったんですが、日焼けがもはや軽度の火傷でお風呂が辛かったです!


これも余談ですが、昨日投稿の閑話でブクマが結構増えました。ありがとうございます!

エルフ幼女恐るべし……


それではどうぞ!


 



 ー夕方ー


 フェルとの狩りを終えた俺は自宅へと帰ってきた。


「あぁ……なんか精神的に疲れた……」


 森の悪路で虫にひたすら追いかけ回されたり、フェルがめっちゃ強くなってたり、心配事が増えたり……これで身体的な疲労感を感じないというのだから恐ろしい。


「あ、おにーさんおかえりー」


「タケシお帰りなさい。お疲れ様。」


 げっそりしながらリビングに入るとローナとラウが出迎えてくれた。

 二人ともなんだかとても機嫌が良さそうだ。


「グル。」


 あとサティも。


「おう、ただいまー」


 俺はサティを撫でてから一度手を洗いに行き、リビングのソファへともたれかかると


「……よし、ローナ!」


「は、はい!」


「カモン!」


 俺は両手を広げてローナに期待の視線を送る。


「えっ……」


「おにーさん……」


 ローナはいきなりの発言に固まり、ラウが『うわぁ……』と冷たい視線を送ってきているのは気にしない。そう、気にしてはいけないのだ!


 《主様はジャイアントGとの徒競走によってかなりの精神的ダメージを受けているようですね。》


 ああ、そうだ!俺は癒されたい!せっかくだし女性に!


 《それでしたら私が……》


 ごめん!ローナがいい!色々と豊満だから!


 《泣きたいです。》


 ごめん!


 《いえ、私は御身の側に在ること自体が至上の喜びです。これ以上は望みません。》


 やめて、シュティの健気さに俺の心が折れそう。


 シュティとの会話でさらに精神的にダメージを負っていると、ローナが再起動する。


「……えっと、あ、う、うん……いいのね?」


「カモン!ハリーアップ!カモン!」


 確認など不要だ、と言わんばかりに俺がローナに強く催促すると


「う、うん……それじゃ、いくわね?」


 なぜかローナの方が緊張した面持ちでハグしてくれる。

 正面から抱きついているために、ローナの豊満な体が俺にダイレクトアタックしてくる。


 柔らかでありながらすべすべとした肌にたわわなソレが押し当てられる感覚、耳に当たる吐息、鼻腔を満たす甘い香り、伝わってくる鼓動が一日の疲れを癒してくれる。


「あぁ〜心が癒される〜……浄化されそう。」


「そ、そう?なら良かった……えへへ。」


 ローナの嬉しさと恥ずかしさの混じった声が耳を打つ。


「あ、それやばい。耳元で囁かれるのすっげぇゾクゾクする。」


「そう?じゃ、じゃあ、もうすこしだけね……」


 俺の言葉を受けてローナが同じことをしようとしてくれるが、それは色んな意味でまずい。


「あ、それはいい。色々とマズイ。」


「え?あ、うん……」


 断るとローナの嬉しそうな声が一転して少し落ち込んだ。

 心が痛いが、これ以上それを続けられると俺がオーバードライブしそうなので我慢だ。


「どっちかっていうとおにーさん今は浄化どころか不浄の存在になってるよ……ローナさんが羨ましいなぁ。」


「否定できない自分がいるのが悔しいぞ……」


 ラウはこの状況の痛いところを的確に突いてきた。

 けど、なんかちょっと羨ましそうなのが気になる。


「……よし、ありがとうローナ。」


「もういいの?」


 少し……いや、かなり名残惜しいが体を離してもらうと、ローナが若干不満そうに言った。


「おう、ありがとな。」


「!、うん。」


 笑いながら礼を言うと彼女は思わず見惚れそうなほどに美しい笑顔を見せてくれた。


「oh……ローナ様マジ女神……」


「ふふっ、神様です。」


「むー……私も女神なのになぁー……」


 俺が膝を折って祈る姿勢をとると、ローナは胸を張って誇らしげに答えた。ローナの後ろでラウがなんか言っているが知らん。


「でもね……?」


「ん?どうした?」


 ローナが何かを呟いたので顔を上げると


「えっ?ちょっと、ローナさん?」


 視線を上げた先にはローナが顔を近づいてきていた。


「俺、まだそういうの早いかなーって思うんです?……あの?聞いてます?」


 あまりに唐突すぎる事態に流石の俺もうろたえる。


 そんな俺の言葉にローナは微笑みを浮かべて何も答えない。

 いつもの子どもっぽさはどこへやら、その美しく太陽の様な彼女がいつも以上に眩しく見えた。


 次第にその距離が縮まっていき


「えっと……やぶさかではないけどやっぱり……ってちょ……え?」


 ローナは俺の口元を通り過ぎ



「私は『タケシだけの女神様』だからね?」



 耳元でそう囁いた。


「え、えっと……うん……ありがとう……」


 勘違いした恥ずかしさか、それともその言葉の意味の恥ずかしさなのか、俺は顔がひどく熱くなっているのが自分でも嫌という程よくわかった。


「……あぁ、もうだめ……!やっぱり恥ずかしぃ……」


 だが、それはローナも同じだったようだ。瞬く間に顔を赤くして両手で隠してしまった。

 けどね、ローナさんや……今のあんた女神っていうより悪魔ですわ。俺は今現在理性崩壊の一歩手前ですぜ?


「あははっ!おにーさん顔が真っ赤!ローナさんすごい!」


 するとその様子を見ていたラウがものすごく笑っていた。


「くっ……!ラウに見られてるの忘れてたっ……!」


 いつもなら俺がラウを翻弄しているだけに、今回この失態を見られたのは大きい。


「ねぇ、おにーさん?今どんな気持ちかなー?ローナにナニされると思ったの?教えて?ねぇ、わたしわかんないなぁー?ねぇ?」


「このっ……!」


「はぁうっ……!」


 それみたことか。

 いつもの仕返しのつもりなのか、ここぞとばかりにラウが全力でおちょくってきた。

 あとローナに流れ弾飛んでるぞ?いいのか?一応は上司だろ?


 しかし、ラウがそういうつもりならば俺にも考えがある。


「よろしい、ならば戦争だ!ならテメェに実践してやるよ!覚悟しとけこの野郎!」


 俺はラウに向かってゆっくりと歩み寄る。


「えっ!?ちょ、冗談だよね?ローナさんいるよ!?見てるよ!?」


 それにしたがってラウもジリジリと後ずさりするが、そのまま行けば後は壁しかない。

 ラウも言葉で必死の抵抗をしてくるがそれを無視してそのまま進む。


「やかましい!大人しくしてろ!」


「タケシが決めたことなら……うん、タケシの意のままに……うぅっ……」


「ほら!おにーさん!ローナさんを見て!ものすごく落ち込んでるから!落ち込んでるから!」


 だが、ここでローナを話題に出されると反応せざるを得ない。


「ローナがなんだって?……あ」


 ラウの言葉を受けてローナを見ると、明らかに落ち込んでいた。


 あ、ヤベェ……ローナがちょっと泣きそうに……!あくまでもお仕置きと伝えねば、と俺の勘が警報を鳴らしている!

 というか、もはや泣く一歩手前だ。女神様メンタル弱すぎだろ!


「ローナ?あくまでもちょっとした冗談だから、な?本当にしないからな?」


 俺は急いでローナの方へと歩み寄り、落ち着かせるために言葉をかける。


「……ほんとう?」


 ローナが上目遣いで涙目

 どこかで見たことある気がするが、放っておけば拗ねそうなのでとにかく安心させる。


「うん、本当本当。だから、な?」


「うん……」


 ローナはまだ少し不安なのか ひしっ と抱きついてきた。


「よしよし……勘違いさせてごめんなー……」


 とりあえず頭を撫でながらもう少し落ち着くまでこうしていようと考えていると


「うん……正妻は私だからね……?」


「うんう……ん?ごめん、いまなんて?」


「正妻は……私……」


 なんと彼女自ら爆弾を抱えて突撃してくれやがりました。


「え……」


「えっ……わたしじゃ……だめ?」


 さらに目に涙を浮かべて聞いてくる彼女。

 先ほどよりも至近距離なので破壊力は抜群。

 おにーさん理性崩壊(メルトダウン)までもう半歩手前です。


「いや、そういうわけじゃ……なくて……それってハーレムOK?……ってか、それだとラウが側室みたいな言い方なんだけど……?」


 必死に理性を保ちながらローナに問うと


「そうだよ……?」


「   」


 彼女はあっけからんと肯定した。もはや言葉どころか反応すら出来ない。


「ラウちゃんもその気だよね?」


 ローナが当たり前の様にラウに視線を向けると同時に俺も全力でラウの方を向いた。


「……。」


 だが、ラウは顔を赤くしながらそっぽ向いたままで何も答えない。

 今までに類を見ない赤さだ。


「お、おい……ラウ……?な、なんか言ってくれよ……?」


 恐る恐るラウに質問すると


「……どうぞごゆっくり。」


 彼女は静かにリビングから出ていこうとした。


「まてこら、逃がさねぇぞ!権能《劔》盾作成!」


 だが、逃がさない。行かせてたまるかってんだ。


 俺は真っ白な盾を作ってリビングの出入り口全てを塞いだ。


「おにーさんなにこれ!?わたしの権能で新しい能力創らないでよ!?劔なのに盾とか矛盾してるよ!?」


 ラウは悲鳴の様な声で驚きながら文句を言う。


「うるせぇ!誰が上手いこと言えつったよ!?それに、もう第三者がいねぇと俺の権能が暴走しそうなんだよ!」


 俺もそろそろ理性のタガが突破されそうなので必死になって言い返す。


「おにーさん最低だね!?せっかく空気読んで退出しようとしてるのに!」


「それをされると困るからやってんだ!空気読み間違えてんだよ!」


「それはおにーさんの方だよ!?乙女に恥かかせる気なの!?」


「俺の気持ちに整理がついてないんだよ!昔のことも忘れられてないから俺はまだラウやローナに答える資格なんてない!

 つか、乙女って……お前ら神様の中でも結構な古株だろ!?」


「それはっ……!……そうだったね……おにーさん……それはともかく最後のは失礼だね?」


「……すまん。あと、その件に関してもごめん、ほんとごめん。」


 俺とラウが黙るとローナが口を開く。


「ねぇ、タケシ?ちょっと痛い……」


 耳元でローナの少し苦しそうな声が聞こえた。


「……あ、ごめん……」


 どうやらローナを抱きしめたままラウと口論をしていたらしく、無意識に力んでいたようだ。


「ううん、いいよ。」


「ありがとう。」


 それを咎めることもなく許してくれる彼女。


「……で、ラウ?お前はなに?俺にライクなの?ラブなの?」


 それでキッカケをもらった俺はラウに問いかけると


「……それ言わせるの?ヘタレなの?」


 遠回しながらも明確な答えが返ってくる。

 ……うん、ヘタレだよ。俺はヘタレさ。


「いや、今はいい。過去に整理がつくまで待ってくれ。」


「結局は言わせる気なんだね……まぁ、別にいいんだけど。」


 呆れたようにそう言ったラウだが、嫌悪感、というよりは『仕方ないなぁ。』というニュアンスだった。


「言葉もない。」


 俺はその優しさに自らへの情けなさを隠しきれなかった。


「私はラブだよ?」


 しかし、ここでローナがしれっと答えた。


「あ、うん、かなりあっさりと言ってくれたな?……その割にはずいぶんと顔真っ赤だけど大丈夫か?」


 俺がローナに問うと


「ううん、大丈夫じゃないわ。恥ずかしすぎて神界に帰りたいくらい。」


 彼女は熟れたトマトのように赤い顔をしてそう答えた。


「じゃあ、なんでそんなにあっさり言ったんだ……」


 俺が漏らしたその言葉に


「だって『伝える事が大切』でしょう?」


「っ!……あぁ、そうだな。」


 返ってきた彼女の言葉が俺の心に突き刺さった。それはもうピンポイントに。

 伝えられなかった想い(過去)が痛みを加速させる。

 ……やはり、これを掘り返している時点で俺はまだこの二人に答える資格はない。


 そんな俺の内心を察したのだろうか


「だからね?私、タケシを待ってる。ずっとずっと待ってるから。」


 自然と上目遣いになった状態でローナは笑みを浮かべながらそう言ってくれた。


「あぁ、ありがとう。俺もローナにいつかはっきりと伝えるよ……それまで待っていてくれ。最低な言葉だけどな。」


 感謝と共に彼女をもう一度優しく抱きしめて俺はそう告げた。


 自分でもわかっている。俺はひどく最低な人間だと。

 過去の折り合いなどさっさとつけてしまえばいいのだ。けれども、それが出来ない自分への情けなさと自己嫌悪の感情……そして、彼女たちの好意をあくまでも『ライク』として捉えようとしていたこと。

 彼女たちの優しさに甘えきってしまっていること。


「おにーさん……」


 ローナと話しているとラウが何か言いたげに服の端を摘んでくる。


「私も……待ってるから……その……お願い。」


「あぁ、わかった。」


 ラウもまたその気のようだ。

 恥ずかしいそうにしている彼女を見て俺は笑いながら頭を撫でる。


「ん……どうして笑ってるの?」


「いやぁ、恵まれてるなぁ……と。」


 今度こそは絶対に笑顔を見せてもらえるようにしなければならない。

 必ず幸せにする。


 そんな想いが俺の中で芽生えた。


「……。」


 だが、ここでその返答を出来ないという事実が殊更(ことさら)に俺自身への嫌悪感を強めていった。


 それほどまでに過去という名の楔はは俺の中に深く、鋭く突き刺さったままなのだ。


 彼女たちへの返答はとうに決まっている。

 けれどもう少しだけ、もう少しだけ時間が欲しい。


 俺が過去に折り合いをつけたその時、必ず君たちに笑顔を最高の咲かせてみせよう。


 この想いはきっと成就させる。

 今度こそは俺自身の手で掴み取ることが出来るのだから。







「あ、そういえばラウ。こっちきやしんせ。」


 決意を新たにしたところでラウをちょいちょいと手招きする。


「どうしたの?おにーさ……えっ……?」


 無警戒に近寄ってきたラウをスッと抱きしめる。


「ど、どうしたの……?こんな……急に……」


 驚きながらラウは俺の突発的な行動の意図を探る。


「……まぁ、その、なんだ……さっきローナにしてた時にな?ちょっと羨ましそうだったなーって……」


 俺も特に言い訳する事ではないので正直に答えた。


「……そっか……おにーさんってやっぱりずるいよね……ヘタレなのに。」


 その返答を聞いたラウはクスクスと笑いながら体を俺に預けるようにしてもたれかかってきた。


 俺にはあまりにも小さい彼女の体は、少し力を込めれば折れてしまいそうなほどでだった。

 それでも彼女の体温や鼓動が直に伝わってくる。

 それに新緑のようなどこか落ち着く香りがした。淡くも甘い、風が吹けば消えてしまいそうな……そんな香り。


「……うっせぇ。」


 視線を下げた先には俺を見上げる深緑の瞳と目があった。


「あははっ……顔、真っ赤だね……」


 そして、俺を見上げたシアに言われて自分でもわかるほどに顔が熱くなっていることに気がつく。


「……シアこそ顔が真っ赤だぞ。」


 そう言った彼女もまた耳まで赤くなっているのがよくわかった。


「……うん……ここでその名前を出すのもずるいよ……」


「嫌だったか?」


 顔をうずめたシアの声がわずかに震えていたので不安になったが


「……ううん、嬉しい。」


「……そうか。」


 嫌だったわけではないらしいので一安心。


「……ねぇ、おにーさん……?」


「どうした?」


「……もう少しだけこのまま。」


「もちろんだ。」


 シアの要望に応えるべく、数分間俺たちはその甘い時間を過ごした。




 ー数分後ー



「なるほど……あれがあの子の言っていた砂糖製造空間というものね……」


 ローナがソファで紅茶を片手にしみじみとそう呟いた。

 俺はその向かい側で頭を抱えている。


「……誰だ、そんな事をローナに吹き込んだやつ、誰だ。」


 俺は濁流のような羞恥心に駆られながらもローナに変な知識を吹き込んだバカを恨んだ。


 何を隠そうあの時間をローナは紅茶を嗜みながらじっくりと観察されていたのだ……つい盛り上がってしまったとはいえ、その事に気がついたラウといったら……



『……うん、もういいよ。』


『あぁ。』


『あら、もういいの?』


『『え?……あっ』』


『?、二人ともどうしたの?そんな世界の創る順番間違えた、みたいな顔して?』


『あ、あぁ……えっと……その……』


『ラウちゃん?』


『お、おにーさんのばかぁぁぁぁ!!』


『ぶっ……!?なんで俺!?』



 って感じで逃げるようにして世界樹に帰った。

 しかも、あいつ俺に一発ビンタくらわせて行きやがったぞ。


 俺?俺はもう気にしない事にした。別の言い方をすると諦めた。


 《(わたくし)が主様の感情に介入して羞恥心を一時的に抑えたんですけどね。》


 うん、ものすごくありがたかった。

 穴があったら入りたいどころか穴を開けて入りたいくらいだったし。


 《やめてください。この森に底の見えない大穴を開けるおつもりですか。》


 マジでそうしようかと思った。


 《力の無駄遣いもいいところです。》


 確かにな……あれ、サティとフェルは?


 《その二頭なら今現在は主様の足下に。》


 あ、ほんとだ……ってめちゃくちゃ不機嫌だ!?


 《当然かと。》


 なんで!?


 《ご自身の胸に手を当てて下さいませ。》


 ……わかんねぇから直接聞くか。


 というわけで、たった今最高に不機嫌なサティとフェルのご両名にご機嫌伺いをすることに。


「サティ、フェル?なんでそんなに不機嫌なんだ?」


「……。」


「……。」


 けれど、二頭に言葉をかけても一切反応しない。それに目すら合わせてくれないぞ。

 フェルなんか普段は目をキラキラさせてくれるのに……寂しいぞ。


「おーい……サティさん?フェルちゃん?」


 二頭に声をかけながら左右の手をそれぞれ伸ばすと……


「……グ。」


「……がう。」


「えっ……」


 サティには尻尾で手を弾かれ、フェルには避けられた。

 いつもなら向こうから手に頭を当てにくるほどなのに今日はひどく冷たい。


「……やべぇ、泣きたい。なぁ、これって俺が悪い?」


「……。」


「……。」


 俺が質問すると、二頭は『そうだけど?』と言いたげに視線だけを俺に向けた。


「心当たりがなさすぎる……」


 何が原因で拗ねてるのか見当もつかない。

 飯はまだだし、昼飯はあげた。一日交代のブラッシングも済ませてある……だめだ、絶望的な状況だこれ……原因がわからなくては機嫌の直しようがない……仕方ない、ここはひとつ好きなようにさせてみるか。


「えっと……じゃあ、俺をサティとフェルの好きなようにしていいから……」


「!」


「!!」


「反応はやっ!?」


 その瞬間、俺が言葉を放ち終える前にサティとフェルが俺に飛びついた。


「えっ!?えっ!?なに!?ほんとこれどういう状況!?」


 サティが左に、フェルが右にそれぞれ俺の肩に頭をのせてきた。


 皆さん、今の絵面を想像してみてほしい。

 青年の両脇に巨大な虎と狼がいて、さらに真ん中にいる青年の肩に顎をのせているのである。


 その状態になる為のサティとフェルの姿勢を考えればかなりシュールではないだろうか?


「グル……ク、クゥ……」


 すると、サティが可愛らしい声を出した。

 あのサティが、である。少しためらったのかちょっと詰まり気味だったのもちょっと可愛いと思ってしまった。


「ちょっと待って今の声なに?聞いたことないんだけど!?」


 俺がサティの鳴き声に驚いていると


「がう……」


「あっ、フェ、フェル?耳を噛みちぎらないでね?頼むぞ?ほんとに頼むぞ!?」


 フェルが耳たぶを甘噛みしてきた。流石の俺でもこれは怖い。

 フェルの口のサイズを考えれば俺の耳など簡単に持っていかれてしまう、それに犬歯が軽く当たってるのがさらに心配にさせる。


「……クゥ………」


「……ガウ……がう……」


 極力動かないようにしながらサティの珍しい鳴き声とフェルの行動を邪魔しないように頭をひねる。


「……しかし、結局のところ原因はなんだったんだ?」


 最終的に原因もわからずじまいであった。

 疑問に頭をひねりながらこの後もサティとフェルにめっちゃモフモフされた。







作者「言い忘れてたけど……俺ってシリアス嫌いなんだよね……」


隊長「そうか、それで今回こんな内容なのか。」


作者「シリアス書いたら甘いの補給したくなるんだよね。」


隊長「そうか……ところで貴様、あの閑話はどういうつもりだ?予定ではもう少し先のはずだったが?」


作者「我慢できなかった!反省はしている!だが後悔はしていない!!」


???「くっ!私があの少女よりも早く登場するはずがっ……!」


作者「も、もう少ししたら出せるから……多分……てかなんでいるの?」


隊長「去年からの予定を今年作った人物に奪われるとは運がなかったな。」


???「……。」


作者「……お、怒らないで?」


???「……。」


作者「あ、ちょっ!あ、アァアアアアっっ!!!?」


隊長「おお、これは中々に……」


???「スッキリしましたので私はこれで。」


作者「ちゃ、茶番に付き合って下さった方…ありがとう…ござい…ま…す……」


隊長「うごかない、ただのしかばねのようだ。」



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