閑話【二柱の女神】
どうもこんにちは。作者です。
今週末からテストです。
実習課題が一歩進んで二歩戻りました。ちくせう。
それはともかくとして、更新のペースが落ちてるのはテストやら就活準備やらが原因です。
内定早くホシィです。
しかし、就活が九月スタートなのでしばらくはこのペースで更新すると思います。
ご了承の程、よろしくお願い申し上げます。
追記:総合PV10万突破しました!
ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!
ーとある家ー
これは主人公が狩りに出かけた後の自宅での出来事。
リビングのソファに二柱の女神が向かい合って座っていた。
どうも皆さんこんにちは。
世界樹の精霊ことアルラウネ、またの名をフスティシアといいます。
私は今、どうすればいいのか全くわからない状況にいます。
どうしてなのか?その理由は一つ。
「……。」
「……。」
それは静寂が支配するこの空間に絶対的な忠誠を誓った主たるローナ様と二人きりだからです。
だって、あの創造神様だよ?
この世界どころか全ての世界を創り、幾千万もの神々を生み出した本当の神様。
わかりやすく言うと、神様が崇める神様。
そんな御方と二人きりになるなんて思ってもいなかったよ……うぅ、おにーさん早く帰ってこないかな……あ、おにーさんは『狩りに行ってくるから留守番よろしく。』って言って、ついさっき出て行っちゃった。それにサティちゃんは寝てるし……
さっきまではローナ様と親しく接する事が出来たけど、それはおにーさんっていう共通の話題かあったからだし……もうやけくそ気味だったのもあるかな……
それによく考えたら私はローナ様に一切の断りなくおにーさんと契約しちゃったんだよね……どうしよう……やっぱり怒られるのかな……
少女の姿をした女神は自身が主と崇める女神を前にして、泉のようにとめどなく溢れでる不安を抑えながらただ座して待つ。
「……。」
「……。」
だが、その空間を波打つのは陶器から発せられる小さな音だけ。
うぅ……二人で紅茶を静かに飲んでいるこの状況にもイマイチ理解が追いつかないよ……ローナ様は何も仰せになられないし、私も何を話題にすればいいかわからないし……
しかし、少女にはその小さな音でさえも荒波のように感じてしまうのだった。
普段ならばこの家の持ち主であり、少女の契約者となった青年がいるのだが、その彼は先ほど狩りへと出立して間もない。
すぐに帰ってくる可能性はかなり低いだろう、と少女は理解していた。
「あの……ラウちゃん?」
「っ、は、はい。」
私が思い悩んでいると、ローナ様からお声をかけて下さった。
けど、私はそれに怯える事しか出来ない。
「そんなに固くならなくていいのよ?私はもうただのローナだから……そ、それに、タケシに名前を捧げた……いわば『魂約者仲間』でしょ?だから、その……仲良くしてくれたら嬉しいな……なんて。」
けれど、私はお叱りがくると思っていたのに、予想とは180度違う言葉がローナ様の口から発せられた。
「えっ……?」
私は驚きのあまりにまた硬直する事しか出来なかった。
契約の事は既にご存知だろうとは思っていた。けれど、それを許して頂けるとは思ってなかった。
あまつさえ、ローナ様と同列に扱って頂けると仰せになられるなんて望外の喜びだった。
驚きや喜び、戸惑いなんかが一緒くたに混ざりあって訳がわからなくなっていく。もう頭が真っ白だよ。
「えっ?だって、ラウちゃんタケシに名前あげたのよね?」
「は、はい……畏れ多くも。」
そんな私に戸惑いながらも微笑みながら優しく仰せられるローナ様。そのご様子に私は頷くしかない。
「なら、私たちは……その、タ、タケシのモノ……になった……ということ……よね……?……私も、ラウちゃんも。」
私が頷くと、ローナ様はその美しく整ったご尊顔を紅く染め、尻すぼみにそう仰せられた。
「……そ、そうなりますね。」
『おにーさんのモノになった。』その言葉に私も急に恥ずかしくなってきちゃった。
……おにーさんは神にとって名前を捧げることがどれほどの意味を持っていて、どれ程の覚悟かあまり理解していないと思うけどね。
ちょっとだけおさらいすると、神にとって名前は自分が存在する為の器であり、その存在証明。
それを自分以外の誰かに捧げるという事はその神の命運を握るという事になる。
だから、もしおにーさんがわたしに『死ね』と命令すればわたしは確実に自害するし、おにーさんが『誰かを殺せ』と命令すればわたしはそれを履行する。
……たとえ、私が命令を望まなかったとしても。
一度命令が下されれば、自分の意思に関わらず絶対的な強制力を持ってしてそれを履行するように行動を起こすようになってしまう。
一言で言えば、神を思い通りにできるようになるの。
それが『真名を捧げる』という事。他にもいくつかあるけど、今は特筆することでもないかな。
ともかく、名を捧げるという手段は、相手に最大の信頼と想いがなければ絶対に使わない手段。
そして、その一段階手前に存在するのが自身の『真名を打ち明ける』という事。
それは限定的ではあるけど命令が下せるようになる。でも、限定的と言うのはあくまでも他の生命を断つことが出来ないということのみで、実質的には身を相手に任せるのと同じ。
つまりは神にとっての信頼の証で、親愛の証。
もしくは絶対的忠誠を誓う為の証明手段。
けれど、真名を捧げる事と打ち明ける事の決定的な違いが一つだけある。
それは『ローナ様を例外として、たった一人にしか捧げる事が出来ない』ということ。
理由としては、真名は一つしか存在しないのに加えてその名前で一度契約を結ぶと二度と破棄する事ができなくなるから。
それっぽく言うと、相手の魂に自分の魂を結びつけるの。
……あぁ、そういえば一つ言い忘れてたけど普通の人には私たちのような最上位神や創造神様と契約するなんて無理だよ?魂の格が違いすぎるもん。
言葉に表すとしたら、大きな湖に小石を投げ入れるようなものだからね。
まぁ、名前に関しては神様だけに限った話じゃないんだけどね……
深く考え込んだ私は黙り込んでしまった。
そんな私の様子を見て、ローナ様はさらに続けられる。
「だから……その、ね?私もラウちゃんも、もう序列なんて気にしなくていいのよ?それに、もともと私の次に古い神様なんだからそれほど問題でもないわよ?」
「それは……」
口ごもった私は顔を伏せる。
『それは確かにそうかもしれない……けど、それは出来ない。』そんな思いが私を縛りつける。
この世界はローナ様が一番最初に創られた世界。
つまりここは始まりの世界。現存するどの世界よりも古く、遥かに長い時間をかけて創られた場所。
そして、私はローナ様がこの世界を統治するにあたって一番最初に創り出されたこの世界における一番最初の神。
私の役割は《正義》の名の下に世界の均衡を保つこと。
でも、それは最初からそうだったわけじゃない。これは私と他の最上位神がこの世界を統治することが正式に決まった時に与えられた使命。
って、話が逸れたね。
ローナ様がそう仰せられるなら……でも、やっぱり古くから変わらなかった関係を意識的に変えるというのはそう簡単なことじゃないよ。
私はそれた思考を戻しながらローナ様にどう返答するべきなのかを考える。
「……。」
「……だめ?」
「っ……。」
少し視線をあげるとまるでお願いするように上目遣いで私を見るローナ様の姿があった。
……うん、これは断れないね。
同性である私でも胸がキュンとしたっていうか……こんな捨てられそうな子犬みたいな表情されると断るに断れないよ……あれ、そういえば私の知ってるローナ様とはすごくかけ離れた印象になってる?
私の知ってるローナ様ってもっと威厳があって硬い口調のはずだったんだけど……それがどうしてこんな柔らかい印象に……?
……あぁ、おにーさんが原因か。うん、おにーさんだもんね。なら仕方ないよね。
そう結論づけて私はローナ様に返答するために考えることをやめた。
私はローナ様のご尊顔を拝して口を開いた。
「わ、わかりました……では、そのように致します。」
「……。」
すると、ローナ様は困り顔で頰に手を当てられて一言
「……これはもう命令した方がいいかしら?」
突拍子もないことを仰せられた。
「えっ!?そこまで!?」
私が思わず声をあげて反応するとローナ様は
「えっ?だってラウちゃんまた遠慮しちゃってるし……それなら遠慮がなくなるようにって思ったんだけど……」
逆に驚いた表情でそう仰せられる。
『いい案だと思ったんだけど……』とさらに小さく呟かれる。
そういえばローナ様って天然なところあるんだった……おにーさんも同じこと言うかもしれないけど。おにーさんの場合は多分ワザと言うと思うけどね。
「いや、別にそこまでしなくても……って、あ。」
なんとなくおにーさんの事を考えると、つい気が抜けてしまい、普段の口調が出てしまった。
私は恐る恐るローナ様の方を見る。
「うふふ、やっと普通に話してくれた。嬉しい。」
だけど、ローナ様は花が咲いたようにパァッと笑顔を咲かせていた。
「……。」
はぁ……ローナさんの笑顔を見てたら、なんだかわたしがバカみたいに思えてきちゃった。
なんで一人で頑なに打ち解けようとしなかったんだろ……ローナさんが良いって言ってるんだからもういいよね?
そう思い切ったわたしはもう考えるのをやめて、いつも通りの口調で話しかける。
「あはは、なんかごめんなさい。ローナさんがそう言ってくれるならわたしも普段通りでいくよ。」
「ありがとう、ラウちゃん。」
それに対してローナさんも優しい微笑みを浮かべてそう応えた。
それからわたしとローナさんは二人で和気あいあいとした雰囲気の中で互いの知るおにーさんの事を話し合った。
そして、その途中でこんな話があったの。
「あ、そうそう。
これからももしかしたら私たちみたいにタケシに惹かれる人が増えるかもしれないからその時はラウちゃんも許してあげてね?」
「うん、わかった。でも、わたし自身がローナさんに許してもらった立場だから最初から何も言えないよ。」
苦笑いしながらそう返すと
「うふふ、謙虚ね。あ、でも、それはタケシが望んだらの話だからね?」
「?、どうして?おにーさんなら別に受け入れると思うよ?」
ローナさんが不思議な事を言った。
でも、その理由はすぐにわかったよ。
「タケシの前に居た場所は一夫一妻制が絶対なの。だから、二人の時点でタケシにとってはすでに普通じゃないのよ?」
「あぁ……そういうことなんだ。でも、おにーさんなら『常識なんてぶっ壊せー!』とか言いそうだよ?」
スキルを改造とかしちゃったし。
「ふふ、確かに言いそうだけど、タケシは優しいから……」
「……うん、そうだね。」
ローナさんの言うことは正しい。
おにーさんはいつもふざけたり、とんでもないことをしたり、わたしをからかったりするけど、普段から何気ない気遣いをしてくれている。
お願いも最終的には聞いてくれるし、わたしが本当に触れて欲しくない事とかは自然に話題から遠ざけてくれる。
わたしが泣きながら昔の事を話した時は黙って聞いてくれて、『こうすればよかった。ああすればよかった。』と言うわけでもなく、わたしを責めるわけでもなく、ただ、『頑張った』と認めてくれた。
今のわたしを受け止めてくれた。
それが嬉しかった。嬉しくて嬉しく仕方なかった。
多分、わたしもそういうところに惹かれたんじゃないかな?
「だからもし、タケシが困っていたら私たちでなんとかしましょう?それと私たちで何か出来ることがあるなら二人で一緒に考えてくれないかしら?」
ローナさんは真剣な表情で聞いてくるけど
「うん、わたしも同じ気持ち。」
そんなの考えるまでもないよ。当然のことだね。
「よかった……じゃあ、これからもよろしくね。ラウちゃん。」
「うん、よろしくね。ローナさん。」
わたしとローナさんは笑顔で頷き合う。
そして、おにーさんが帰ってくるまでずっとおにーさんの事で盛り上がっていた。
この日、二柱の女神の間で秘密の協定が結ばれた。
最上位神の内の一柱であるフスティシアとその主である創造神ローナ。
この二柱が協力すればこの世界で出来ないことはないに等しい。
しかし、この時、主人公は巨大なゴキブリと鬼ごっこの真っ最中で助けを求めていた事など二人の知るよしもない。
作者「そういえば第49部《月華の契約》の後書きにて答え合わせのような内容と言いましたが、アルラウネが最上位神だった事が『答えではありません』のであしからず。
答えはいつ出せるかわかりませんが、ほぼ答えが出る話をいつか書きます。」
隊長「答えがわかる方は完全にニュータ○プだな。」
作者「やめなさい。
それはそうと女性の心理なんてわかりません!聞きかじった知識と想像です。こんな簡単に好きになるか!と思われた方、察してください。」
隊長「はっ、健全じゃないか。」
作者「ええ、健全ですとも。学校はほぼ男子校状態ですからね!」
隊長「チェリ「おいやめろ。」




