閑話 【親として領主として】
最近書く気が失せてきた作者です。
更新は3日〜4日を目標にしていますができるかはわかりません。
ご了承ください。
あと、iPhoneのメモ帳じゃなくて初めて小説執筆ページを使って書いてみました。
ーとある領主館ー
「それじゃあ、よろしくね!」
そう言い残してオレンジ色の髪を持った人物は部屋を後にした。
「ふう……」
それを見送った赤髪の人物は背もたれに背を預けながら息を吐いた。
彼はこの館の主 ルイス・リンドブル。
「セル爺。」
「はい。」
ルイスが執事の名を呼ぶと、その執事はどこからともなく現れた。
「ちょっと探して欲しい人がいるんだ。」
恭しく一礼するセルディアスは主人に問う。
「承知しました。して、どのように?」
ルイスはその意を汲み取って穏やかな口調で話す。
「あくまでも穏健にね。
特徴は茶髪で茶色目の一般的な青年で服装も普通。
年は18前後で丁寧口調だそうだよ。
身長は170より上。
最後に見かけたのは昨日の昼頃の冒険者ギルドだって。」
「お名前は?」
「わからないらしい。聞くのを忘れたみたい。」
ルイスは肩をすくめてそう言った。
「左様ですか。」
「うん。アンさんも探しているみたいだけど見つからないそうだよ。」
さらにそう続けたルイスの言葉にセルディアスは眉を少しひそめた。
「彼女の力を持ってして発見に至らないというのはいささか不可解ですな。」
「うん、そうだね。だからこそ僕たちにも協力してほしいみたいだ。」
「その旨承りました。」
もう一度礼をしたセルディアスにルイスは声をかける。
「うん、ありがとう。」
「いえ、礼には及びません。」
「それでもだね。」
「ふふ、ありがとうございます。」
セルディアスはその表情を少し綻ばせると、何かを思い出したかのように言った。
「それと一つ、言伝が御座います。」
「うん?誰からだい?」
「シミズ様からです。」
「え?もう帰っちゃったのかい?」
先ほど模擬戦を行った相手の名前にルイスは残念そうに言った。
「はい、その際に『お世話になりました。あと、俺の願いはまたここに来るときに家族を連れてくる許可。』だそうです。」
「そんな事のために……それくらい普通に言ってくれればいいのに。」
その言葉にルイスは驚き、ため息をつきながら呟いた。
「シミズ様は礼儀を重んじているご様子でしたな。」
「うん、でもそうだからこそ感じる壁もあったけどね。」
それはセルディアスも理解している。
ルイスもセルディアスとの共通認識として、あの青年はどこか人との繋がりを避けているような気がしたのだ。
「リーシアお嬢様はその壁を超えたご様子でしたが。」
「……それが幸いかな。あの子には出来るだけ幸せになってほしいからね。」
ルイスは自身の愛娘とあの青年の関係が今後良い方向へと進展していくことを期待する。
「申し訳御座いません。原因の究明を急いではいるのですが、やはり進展はあまりなく……薬でどうにか抑制する以外には。」
セルディアスは申し訳なさそうに謝る。
「セル爺が謝ることはないよ、前例がほぼ無いに等しいからね。仕方のないことだよ。
むしろ抑制できる薬があるアン&レヴィ商会には頭が上がらないよ。そのおかげで今は安定してるからね。」
ルイスはそれに対して笑いかけながらこたえる。だが、その笑みには悲しみの色が混じっている。
「心中お察し致します……では、わたくしは件の青年捜索を手配して参ります。」
「うん、よろしくね。」
「はい。」
そうして最後に一礼してセルディアスは部屋を後にした。
「……。」
【先天性慢性魔力欠乏症】
彼の脳内によぎるのは愛娘が生まれ持った病の名。
原因はいまだ不明であり、慢性的に体内の循環魔力が不足している事が特徴である。
体内の魔力が枯渇すればそれは生命に関わるほどのまさに死活問題と言えるものであり、常に死と隣り合わせの状態。
ましてや体内の魔力を使用して発現する魔法など言語道断。それ故に、彼女は魔法が使えない。
あえて不幸中の幸いと表現するならば彼女が先天的に魔力を見ることができる事であろうか。
その能力があったからこそ彼女は明るく育ってくれたのではないか。
だが、それだけが支えであるとするのならば彼女にはもっと強固な支えとなる存在が必要だろう。
それほどまでに世界において魔法が使えないというのは致命的なのだ。生活にも深く根をはり、魔具も基本的には魔力を込められてはいるが一度魔力がなくなってしまえば捨てるか、自分で魔力を込めなおすしかない。
だが、最近になって娘にとっての大切な存在となりえる人物が現れた。
それがルイスにとっての何よりも得難い僥倖であった。
「結局、彼は何者だったんだろうね……。」
ルイスは突然あの森に現れた不思議な青年に考えを巡らせる。
「何かわかったようで彼自身のことは何もわからなかったな。」
彼はシミズ・タケシと名乗った。とても礼儀正しい人物だったね。
彼が興味を示した事はすべて一般常識の範囲内だったのは正直困惑したけれど、わざとそれを知らないフリをしていたのか、本当に知らなかったのかもわからない。
だけど、彼は逆に僕たちが知らない事を知っているようだった。
それは『あの御方』の事。
それについて彼は何も答えてはくれなかったけれど『何かを知っている。』それだけでも僕たちにとっては価値のあるものだ。
彼は貴族ではないと自ら言っていた。だけど僕がこの館に泊まるように引き留めた時の答え方はかなり場慣れしているような答え方をした。本当は貴族なんじゃないかと疑ったくらいだよ。
でも、貴族らしい欲も彼から出てくる事はなかった。
そういえば彼が僕に向けて質問してきた内容。
『貴方はわたしの敵ですか?それとも味方ですか?』
それは多分だけど彼にとって何か重大な意味があったんだろうね。
もし、あの時に僕が答えを間違っていれば彼と友好的な関係を築くことは出来なかっただろう。最悪の場合は敵とみなされてしまったかもしれない。
その証拠として僕の答えに彼は名前で呼んでほしいと自分からそう言ってきた。それが彼にとっての表現の仕方なんだろうけれど、その回りくどさは貴族特有のそれと似ている。
やっぱり彼は貴族だったんじゃないかな?今は貴族ではないというだけで。
それと、彼は家族を大切にしている。
僕自身も家族は大切だし、守るのは当然だと思っているけれど彼はかなり極端な方だろう。
ペットを家族と呼び、もしもの話で殺気立つほど大切にする。
僕でさえ危機感を覚えるほどの変わりようというのは何が彼をそうさせているのかな?
でも、だからこそ僕は彼にならリーシアを任せてもいいと思ったし、実際今もそれは変わらない。彼に守られることほど心強いものはない。
彼の事を知ろうとすればするほど謎が増える。
彼は一体何者か?
その単純な疑問の答えは見つかる事なく、それどころか謎がさらに深まったのは模擬戦の最中だった。
ソレは唐突だった。
『君は・・・本当に人間なのかい?』
『はい、人間ですよ。紛れもなく。』
僕が彼を殺すつもりで放った一撃。
それは彼の本当の姿を顕現させるに至った。
笑みを浮かべた彼はその対になった純白の翼を交差させて僕の剣を見事に受け止めた。
その時に僕の脳裏に浮かんだ言葉は
『下位神様』
それはこの世の絶対的存在の僕。
もし、彼が本当にそうだったとすれば僕たちはとんでもない無礼を働いたことになる。
だから僕は賭けに出た。
『サンスクリード王国リンドブル領が領主にして剣聖、ルイス・リンドブル。』
その賭けとは名乗りを上げること。
彼に敬意を表すると共にそれは神聖な存在にとって重要な意味を持つ。
『深淵の森が住まいにして深淵の狩人が通り名、清水武。』
そして僕は賭けに勝った。
だけど結果は散々だったよ。
彼の全力は引き出せなかったことは明白だね。
だって、彼があの森に来たと思われる日に観測された魔力はここまで届くほどだった。
けど、あの戦いで彼が示した魔力の大きさは明らかにその観測されたものには届かない。
つまり、僕は手加減されて惨敗したんだ。
王国最強とか剣聖なんて言われてるけど僕より強い存在はたくさんいるんだ。そして、それが今日また一人増えた。それだけさ。
少なくとも僕は知っている。
人族なんて簡単に滅ぼせる存在を。
「もっと強くならないとね。」
領主として僕はこの領地を守る義務がある。
親としてリーシアにも幸せになってもらいたいという願望がある。
だから、僕は彼をこちら側に引きこむ必要がある。
作者「書く気は失せかけだけど書きたい話はたくさんあって早くそこに話を持っていきたいというジレンマ。」
隊長「貴様はつくづく救えんな。」
作者「趣味でやってますので。」
隊長「じゃあ、さっさと話を進めたらどうだ?」
作者「駄目だ、ネタがすぐに尽きちゃう。それに新しい登場人物だからどの辺りで出すか決めないとめんどい事になる。」
隊長「ならアレはどうだ?」
作者「アレは本編数話くらいで発生しますけど、その間を書くのがクソめんどくさいです。はい。」
隊長「なるほど、貴様バカだな?」
作者「いまさら?」
感想でご指摘頂きました部分を修正しました。
(2018/3/17 22:08)