剣聖
春休みなので書き放題です。(バイトはありますが・・・)
その影響なのか話の切りどころを一度逃しました。長めです。
ヤッタネ(白目)
まずい。非常にまずい。
俺は今現在ルイスさんとの模擬戦の最中だ。だが、非常にまずい状況に陥っている。
ルイスさんの雰囲気が変わった・・・というより豹変した。さっきまでは柔らかい雰囲気だったのが険しくなった。
あれだ。例えるとすれば二月下旬に暖かい日がきて油断してたら次の日はめっちゃ寒いやつ。・・・なんか違うな。まぁいいや。
それはともかく、『アレは危険だ。』と俺の勘が警報を鳴らしている。纏う空気も殺伐としていて乾燥しているような錯覚すら覚える。
ルイスさんの剣はシンプルだった。
ただひたすらに速く、重い。だが、それゆえに強い。
「それじゃ、いくよ。」
その一言を機にルイスさんは一切の音を立てずに姿を消した。
ゴォッ!
次の瞬間には轟音と共に振りかざされた剣が瞳に映る。
「ッ!?」
驚いた俺は思わず転移を使って後方に逃げる。
ゴォォォンンン!!!!
ただ剣を振っただけにも関わらず轟音が鳴り響く。
(何あの威力!?しかも目で追えなかった・・・いや、それよりも音を置き去りにした?)
明らかに踏み込んだ音が後から聞こえてきたのだ。凄まじい脚力だ。
シュティ、俺の今の身体能力は制限しているのか?
《はい。魔力制限と魔力秘匿に伴いある程度まで落としております。》
ちなみにどれくらい?
《5%程に絞っております。》
魔力制限無しの状態を100%としての数字か?
《左様です。》
了解。また指示を出すからとりあえずは10%まで引き上げてくれ。
《承知しました。》
ありがとう。
シュティとの会話を終えて前を見ると、ルイスさんは今の一撃で決めるつもりだったのか驚いた表情をしている。
しかし、それでもまずい。想像以上にまずい。このままでは穏便に倒すなど夢のまた夢だ。
なぜ、俺が本気で戦わずにここまで苦労しているのか。それは一重に『目立ちたくないから』だ。
下手に実力を見せてしまえば危険視されるのは間違いないだろう。まぁ、元々関わる気などなかったのだが、フェルとサティを連れてまた来るというリーシアとの約束がある。
同じ動物好きとしてそれくらいは叶えてあげたいが、もし俺が本気でやれば晴れて危険人物として指定された挙句に二度として会えなくなるかもしれない。
だからといって負けるつもりもない。
『なんでも言うことを一つ聞く』という条件を飲んでしまった以上は少しでも俺の家族にとって危険因子となる可能性があるならばそれ断たなければならない。
クソ・・・やはり受けるんじゃなかったか。
だが、後悔先に立たずだ。
「どうかしたのかい?来ないならこっちからいくよ。」
ルイスさんはそう言ってまた姿を消した。だが、次はなんとか目で追えるくらいには見える。
剣を決して直接受けないようにひたすら逃げる。
ズガァ!!ドゴォォォ!!!ズンン!!!
避けて避けて避けて避けて避けて避ける。
ひたすら当たらないように、剣で受けないようにしながらチャンスをうかがうが全く隙がない。
「逃げてばかりだね?」
剣を肩に乗せ、ルイスさんが少し呆れたように言うが気にしない。
「当たれば危ないですからね。」
苦笑しながら返してはいるが内心焦っている。
こうなれば牽制程度にしかならないかもしれないが魔力秘匿を解除しよう。
「魔力秘匿解除。」
《了承。》
「ッ!?」
魔力秘匿を解除した瞬間、今度はルイスさんが飛び退いた。
「どうしました?」
「ううん、なんでもないよ。」
そう言ってまた戦闘を始めるが、明らかに先ほどとは違って警戒している。
そしてルイスさんがまた攻めてくる。
ズン!ガッッ!!ズッ!!
「・・・ここ!」
踏み込みが浅くなった足元を狙って突きを出す。突きをよく出すのは斬撃よりも突きが強いらしいから。
「甘い。」
「ぐっ!?」
それでも所詮は素人の突きだ。俺の剣は弾き飛ばされ、武器がなくなってしまった。
「チッ・・・!」
思わず舌打ちをして転移で剣を取りに行き、拾い上げる。
「『剣よ』 」
拾い上げると同時にルイスさんが何かを呟いてこちらに剣を振る。
(ッ!?)
俺は咄嗟の判断で剣を眼前で構え
ザグッ!!ガギィィーーン!!!
次の瞬間、重い衝撃と剣が軽くなる感覚。木剣から鳴るはずのない音と共に剣先が宙を舞う。
「は・・・?」
頰から血がつたう。
「おや、剣が真っ二つだね。どうするんだい?降伏するかい?」
ルイスさんが冷静な表情と柔らかな声で聞いてくる。
しかし、俺は理解出来なかった。いや、正確には目の前の光景を理解出来なかった。
ルイスさんは木剣をナニカで叩き斬ったのだ。
俺の剣は見事な断面を晒している。直線的で滑らかな断面がその威力を物語っている。
俺たちの持つ剣は木製のロングソードだ。
そもそもこのタイプの剣は本来骨を折るための武器のはず、なのに直接触れることもなく斬ってしまった。直接当たればタダでは済まないだろう。
「・・・しませんよ。」
だが、降伏はしない。
「へぇ・・剣はなくなったけど、どうするのかな?」
「剣ならまだここに。」
折れた剣を構えて笑う。
「!、良い答えだね。」
ルイスさんが少しだけ笑みを浮かべてそう言った後、剣を構えなおして呟いた。
『龍狩り』
またしても空気が変わる。しかし、今度はルイスさんの持つ剣が何かを纏う。素人でもわかるピリピリと肌を刺すような危険なソレ。
「ああクソっ・・・」
危険な匂い、濃厚な死の予感。
鳥肌がとまらない。
「死なないでね。」
ルイスさんは一言そう言ってただ真っ直ぐに突っ込んできた。先ほどよりもさらに速い速度で。
(回避が間に合わなっ!?)
俺は負けを覚悟した。
『これ程までの実力ならば負けても良いのではないだろうか。』そんな考えが脳裏をよぎる。
「お兄様っ!!」
唐突に横から聞こえた悲鳴のような声。
視線を横に移すとそこにはリーシアが居る。俺を心配しているのだろうか?必死に叫んでいるようだ。
「お兄様!負けないで下さい!」
身を乗りださんばかりに声をあげる。
なぜ俺を心配する?なぜ俺に声援を送る?
疑問に思う。が、それを聞いて俺の中の何かに火がついた。
スドォォォォォンンンン!!!!
この日一番の轟音。耳をつんざくような音がけたたましく鳴り響く。
誰もが青年の負けを確信していた。
しかし、そこには
「!」
「・・・」
無傷の青年と剣を受け止められたルイスの姿があった。
「君は・・・本当に人間なのかい?」
目を見開いて聞いてくるルイスさん。
「はい、化物ですよ。紛れもなく。」
「とてもそうは見えないんだけどなぁ・・・」
「あはは。」
苦笑するルイスさんに俺も苦笑するしかない。
俺は無意識に翼を展開し、剣を受け止めていた。翼は俺の前で交差する形で展開されている。
(もう、いいか。)
・・・ここまで本気で戦おうとしてくれたのだ。これはもう印象だなんだと細かい事を気にしている暇はない。
それに可愛い女の子が声援を送ってくれている。負けるわけにはいかないだろう。
覚悟を決めよう。そして認めよう。
「ルイスさん、一つ謝らせて下さい。」
「・・・何かな?」
この人は強い。だから魔力制限を解除しよう。
「貴方を完全に舐めきっていた事を。」
いくらクレアが強いと言っていても心のどこかでは魔力制限を解除しなくても良いだろうと高を括っていた。だが、実際にはそんな単純ではなかった。
「それは心外だね。そんなにも僕が弱いと?」
「ええ、正直言ってなんとかなるだろうと思っていました。」
「悲しいなぁ・・・でも、今は嬉しいかな。それって君が僕を認めてくれたって事だよね?」
「はい、上から目線で申し訳ありませんが。」
「そうか・・・それなら良かった。これで君も全力を出してくれるかな?」
「そうですね。」
本当にそんな事したら《弓》の一矢でこの街が吹き飛ぶかもしれないので少し嘘をつかせてもらう。必要だから仕方ない。ラウとの約束はラウ『に』嘘をつかない事なので問題ない。
「ですから、死なないでくださいね?」
「大丈夫さ。」
お互いに笑みを浮かべて言い合い、一度距離をとる。
「ちょっと待って下さいね。」
「うん、いいよ。」
その前に一つ言わなければならない事がある。
「リーシア!」
彼女に礼を。
「は、はい!」
「君のおかげだ。ありがとう。」
俺は笑いながらそう言った。
「はい!」
それに対してリーシアも笑顔で応える。
彼女に見せてあげよう。化け物の力、その断片を。
「《安全制御機構》一段階目解除。」
《了承。解除。》
俺の中で枷が一つ外れるような感覚。体の奥底から力が湧き上がってくるようだ。
俺の中で爆発的に湧き上がった魔力が体中に溢れ、外に漏れ出す。
「っ・・・」
リーシアの方を見ると両手を口に当てている。たぶんドン引きしてるんだろうな。ま、そうなるわな。
「それが君の・・・」
驚いた表情で俺に聞いてくるルイスさん。
「ええ、覚悟して下さい。」
「面白くなってきたね。」
笑みを浮かべたルイスさんのその表情はいつもの柔和なそれではなく、いつになく好戦的な笑顔だった。
「《弓》よ。」
俺は弓を番え、ルイスさんは剣を正眼に構える。
「サンスクリード王国リンドブル領が領主にして剣聖、ルイス・リンドブル。」
ルイスさんが名乗り、目線で何かを訴えてくるが・・・なるほど。
「深淵の森が住まいにして深淵の狩人が通り名、清水武。」
意を汲んだ俺は同じように口上を述べた。
「「いざ、参る!」」
そして、両者の本当の戦いが始まった。
それからは誰の目にも捉えられないほどの高速での戦闘となった。
弓を放ち、それを避けたルイスが肉薄する。
それを回避した青年がまた弓を射る。
ドゴォォォォォンン!!ズガァァァァァ!!!ガン!!ボゴォーン!!!
「あははっ!いいね!君は最高だよ!」
「ありがとうございます。だが貴方も強い!」
俺はこの戦いを楽しんでいるのだろうか。一瞬の油断が命取りになるこの戦いを。
「それは嬉しいな!『剣よ』!」
「『弓よ、落とせ』!」
飛んでくる斬撃を弓矢で撃ち落とし、さらに追加の矢をルイスさんに向けて放つ。
「無駄だよ!」
ルイスさんはそれをただの木剣で叩き斬る。やはり先ほど呟いたのは何かの魔法なのだろう。
「それが意味わかんねぇ!」
思わず悪態を吐く俺に今度はルイスさんが仕掛けてくる。
「これはっ!どうかな!」
「あぶねぇ!?」
複数の斬撃が多方向に分裂して飛んでくる。それに対して回避運動をとるが、さらに斬撃が飛んでくる。
「『剣よ』!」
「『弓よ』!」
弓を放ち、転移し、飛んでくる斬撃を躱し、また弓を放つ。
おそらく俺はこのやり取りを楽しんでいる。生きているのだと実感が湧いてくるからだろうか?
「楽しいけどっ!そろそろ決めようか!」
「ええ!そう、ですねっ!」
空に上がった俺は体を地面と平行にし、矢をルイスさんに向けて番える。
ルイスさんは剣先を下にして迎撃する態勢をとり、唱える。
『弓よ、我が今此処に命ずる。』
『剣よ、我が願い聞き届け賜え。』
二人は同じタイミングで詠唱を開始する。
『我が好敵手は今此処に在り!我が一矢を以って其れを射よ!』
「いけぇぇぇぇぇ!!!」
俺の弓に魔法陣が展開され、閃光のような一矢が放たれる。
『我が眼前に在る敵を斬り賜う!龍狩り!』
「はぁあああああああ!!!」
ルイスさんの持つ剣が輝き、そこから繰り出される巨大な光の斬撃が俺の一矢を迎え撃つ。
光り輝く二つのソレは空中でぶつかり、せめぎ合うかと思われた。
だが、ソレはあまりにも呆気なく弓の一矢が斬撃を貫き通してしまった。
「あっ、やりすぎた。」
俺の間抜けな一言は誰にも聞こえる事なく霧散する。
「ッ!?」
巨大な閃光がルイスへと一直線に飛翔していった。もはや転移を使って庇う暇すらない。
「指名手配が妥当かな・・・」
なんとも無責任な事を呟きながら俺は色々と諦めていた。
ズガァァァァァァァンンンン!!!!
凄まじい爆発音が鳴り響き、修練場が土煙に覆われる。
「お父様!」「領主様!!!」
観戦していた人たちから悲鳴ような声があがっている。
「どうしよう・・・リーシアになんて言おうかな。いっそ何回か刺されるか?」
完全にルイスさんが死んでしまった場合の対処で頭がいっぱいだ。かなり頭が痛いがこればっかりは自己責任なのでとりあえず地上に降りる。
「ほっほっほっ。」
すると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「?、セル爺さん?」
疑問符が浮かぶなか、土煙が晴れるとそこには・・・
「全く、いつまでも元気なのは喜ばしい限りですが少しは身体を労って頂きたいものですな。」
「あはは、ごめんねセル爺。あと、ありがとう。やっぱりセル爺には敵わないや。」
「主人に仕える使用人たる者、いつ如何なる時でも主人を守るのが役目というもので御座いますれば。」
「うん、それでもだね。」
土ぼこり一つ付いていないセル爺さんと無傷のルイスさんが立っていた。
ルイスさんはピンピンしているし、セル爺さんに関してはいつの間にあそこに立っていたんだ?セル爺さん何者?
「おお!!さすがセル爺だぜ!」「領主様ー!ご無事でーー!!」「まさか・・あの領主様が負けた・・・?」
うるさい外野をよそに俺が頭を悩ませていると
「ほっほっほっ、それにしてもシミズ様。」
「あ、はい。」
セル爺さんから声をかけられた。
「お見事で御座います。今回の模擬戦は貴方様の勝利に御座います。」
「あ、ありがとうございます?」
なんか褒められた?
「お父様!お兄様!」
戸惑っていると今度はリーシアが駆け寄ってくる。
「お父様、ご無事でなによりです。」
「うん、ありがとう。でも、やっぱり負けちゃったよ。」
いつもの様子に戻ったルイスさんが柔和な笑みを浮かべながら言った。
「そうですわね。お父様が負けるとおっしゃられた時は信じられませんでしたが、本当だったのですね。」
いまだに信じられないといった様子のリーシア。
「そうだろうね。ね?だから言っただろう?彼は僕より強いって。」
「はい。」
ルイスさんは満足した顔でリーシアの頭を撫でた。
「ルイスさん・・・」
俺もルイスさんの方に歩み寄る。
「ん?あぁ、謝らなくていいよ。僕たちは全力を尽くしたんだ。むしろ賞賛されるべきだろう?」
「えっ?どうしてわかったんですか?」
「申し訳ないと顔に書いてあるからね。」
「そうですか。」
謝ろうとしたことが完全に見透かされていて苦笑するしかない。それに、この人はやはり懐が広いな。
「あの・・お、お兄様?」
「・・・どうした?」
少し怯えた様子、というよりは戸惑った様子でおずおずとこちらに来たリーシア。
「あ、あの・・・その・・とても言いにくいのですが・・・・」
「気兼ねなくなんでも言ってくれ。」
さぁ、どんな言葉が出てくる?化け物?怪物?それとも気持ち悪いとかか?
俺が内心ドキドキしながらリーシアを待っていると
「そ、その翼を!触らせて頂けないでしょうか!」
「・・・は?」
え?そこ?
頭を下げて『翼を触らせて欲しい。』と頼んできた。
まさかの展開である。これは流石に予想していなかった。
「やっぱり・・ダメ、ですよね・・・」
間抜けな声を出したまま固まっている俺に勘違いしたらしく、残念そうに肩を落として彼女はそう言った。
「いや、別にいいけど?」
「ほんとうですか!?」
うおっ!眩しっ!?
笑顔が輝いて見える!?
一瞬で笑顔を咲かせた彼女だったが、あまりにもいい笑顔なのでつい聞いてしまった。
「この翼を見ても何も思わないのか?」
「?、どうしてでしょうか?」
「いや、だってこれ完全に化け物の見た目だろ?」
俺が自虐気味に言うと
「そんなことありません!とても素敵です!たとえ化け物でもわたくしはそんなお兄様も素敵だと思います!」
めっちゃ食いつかれた。あとそれって褒めてんの?けなしてんの?
「お、おう・・・ありがとう。」
「はい!」
しかし、ここまで面と向かって褒められるとかなり照れくさい。とりあえず翼を触らせておこう。
「ほい、どうぞ。」
翼を動かして彼女の前に差し出す。
「ありがとうございます。で、では・・・」
それに緊張した面持ちでゆっくりと手を伸ばす彼女。
「あ・・ふかふかでとても良い触り心地です・・・クセになりそう。」
うっとりとした様子で触り始めたのだが・・・なんかくすぐったい。
まさか翼に神経が通っているとは思わなかった。そういえば自分で触ったことなかったな。
「・・・・」
あ、なんか慣れてきたのかちょっと気持ちいい。
やべぇ、このままだと美少女に翼を触られて喜ぶ変態になりかねん。やめさせた方がいいな。
「なぁ、リーシ「タケシ君。」
「あ、はい。なんでしょうかルイスさん。」
ちくしょう!なんでこのタイミングなんだルイスさん!
「おめでとう。君の勝ちだ。」
「ありがとうございます。」
とにかく早く話を終わらせたい。
「そこで君の願いを聞きたいと思うんだけど何がいいかな?リーシアならいつでもあげるよ。僕より強い子なら安心だ。」
とてもいい笑顔で言うルイスさん。あんたこの期に及んでまだ言うか。リーシアがまた怒るぞ。
「はぁ・・・ずっと触っていたいです・・・・」
うん、リーシア話聞いてないね。うん。
リーシアに視線を移すと完全に自分の世界に入り込んでいた。
仕方ないので自分で対処することに。
「あはは、それは彼女の意思があればということで・・・」
お兄さん個人の自由を踏みにじることは許しません。
「言ったね?言質はとったよ?」
ルイスさんはしてやったりと勝ち誇ったような表情をして言った。
「え?」
なにそれ?ちょっとまって?なんか墓穴掘った!?
「セル爺、言質とったよね?」
「はい、この爺やしっかりと聞き届けましたぞ。」
笑顔で確認し合う二人。
ダメだ、なんかやってしまった感があるぞ・・・そうだ!リーシアに話を!あと、なんか気持ちいいからやめさせないと!
「試合に負けて勝負に勝てたね。」
「左様ですなぁ。」
二人が何か言っているが気にしない。それよりもリーシアだ。
「あの、リーシア。」
「ふふ・・へ?・・・な、なんでしょうか!?お兄様!」
あかん、今完全に油断してたなこの子。顔が緩みきってたぞ。
「えっと、ルイスさんがまたリーシアを賭けの対象みたいに言ってたんだけど・・・」
俺がそう言うとリーシアはスッと手を止めて目を合わせる。
「ご報告ありがとうございます。お兄様。」
やったぜ。リーシアの目が据わった。これでルイスさんに向かうはずだ。
「少し席を外しますわ。」
「おう。」
計画通り。
「ありがとうございます。では・・・」
とてもイイ笑顔のリーシア。
「おや、リーシアどうしたんだい?・・あれ?なんで目が据わっているんだい・・・?」
「お父様?またシミズ様に昨晩のような話を持ちかけたとお伺いしたのですが。」
「・・・あぁ、それはね。リーシア、耳を貸してごらん?」
スタスタとルイスさんに歩み寄るリーシアだったが、ルイスさんがリーシアに耳打ちをしている・・・あ、なんかリーシアが真っ赤になってこっちに戻ってきた。
「お、おおお、お兄様!?」
「どうしたんだ?」
「先ほどの話っ!お兄様が・・わた、わたくしの意志次第とおっしゃったというのは本当なのですか!?」
なんかリーシア混乱してない?大丈夫?
「えっと・・・まぁ、うん。」
「ッ〜〜〜〜〜!?!?」
「ちょ!?大丈夫か!?リーシア!」
俺が肯定するとリーシアはさらに赤くなり、こっちに倒れかかってきた。
「おい!しっかりしろ!」
リーシアを受け止め、体を揺らさないように声をかける。念のために翼で日光を遮っておこう。
「お、お兄様がこれほど近くに・・・きゅう。」
こちらを見るなりぐでっと気を失うように体の力が抜けたリーシア。
「ちょっと待て!?ルイスさん!セル爺さん!リーシアが!リーシアが!」
ルイスさんに助けを求めると
「あ、今日はもう修練場使っていいよ。」
「はっ!」
騎士団員と何か話している。ならセル爺さんは!?
「こことあそこの修復をお願いします。」
「はっ!」
あんたもかぁぁぁ!!!?リーシアが倒れたんだぞ!?もっと焦れよ!てか気づけよ!セル爺さん!あんた使用人だろ!?それにルイスさんに至っては実の娘だろ!?なんか扱い雑じゃない!?かわいそうだろ!?
「ルイスさん!」
「・・なにかな?」
やっとこっちに気がついた。
「なにかな?じゃなくてリーシアが!」
「あぁ、その子かなり純真だから気をつけてね。」
もう既に手遅れな気がしますけどぉぉ!?てかそこじゃねぇだろ!
「それじゃ、僕は執務があるからこれで。」
そう言って背を向けるルイスさん。
「は?ちょっと待って下さい!えっ、本当に行きやがった!?」
実の娘をどこぞの馬の骨に預けるとか正気か!?俺がペドだったらどうする気だ!
「セル爺さん!」
「おや、いかがなされましたかな?」
「リーシアが倒れたんです!すぐに安静にできる場所に!」
「おや、それは大変ですな。案内いたします。」
よかった・・・この人はまだ大丈夫だった・・・
翼を消してセル爺さんの後ろをついて行く。
「ここで御座います。」
「ありがとうございます。」
修練場に備え付けられているらしい部屋に入り、リーシアをベッドに寝かる
「では、わたくしめはこれで。」
「はい・・・」
疑問に思う前にバタンと扉が閉じられた。
「えっ・・・えっ?」
結局俺かよ!?なんでそんな簡単に人を信用するわけ!?もっと警戒心持ちなさいよ!貴族の使用人だろうが!?
「はぁ・・・」
仕方なくベッドの端に座る。
「んっ・・・」
あ、起きたか?
「すぅ・・・」
うん、寝てるな。
「まったく・・・どうしてこうなった。」
「すぅ・・・すぅ・・・」
ぶつくさと文句を垂れながらリーシアの方を見る。
「可愛いもんだな。妹がいればこんな気分になったのかね・・・」
なんとなくラウを撫でる時と同じ気分になったので撫でてみる。
「サラサラだ・・・はっ!」
いかん。無防備に寝てる小さな女の子の髪を触るなど客観的に見てアウトだ。
これでは変態の称号を欲しいままにしてしまうではないか!
「でもまぁ、可愛いよな。」
あくまでも妹としてだが。
静かな空間で眠る彼女を見て脳裏をよぎる古い記憶。
『いいか?猛士、よく聞ぃとけよ?ほんまに自分の守りたいもんの為なら命すら捨てれる。だから、『自身の守りたい者の為に命を尽くせ。』家族でも友達でもおんなじや。お前もそれを見つけいや。』
いつの日か聞いた父の覚悟の一言。
『どっかに掴まってろ!!あとすまん!!』
父の最期の言葉。
「・・・」
『大丈夫、お母さんは大丈夫やから。安心してな?』
俺が安心できるように笑いかけながらそう言った母。
『この子を・・お願いします。』
『愛してる・・・』
『行ってください!はやく!』
母の最期の言葉。
当時の俺にとっては裏切りの言葉にしか聞こえなかった。でも、今ならその行動の意味がわかる。
「・・・」
なぜ、今思い出すのだろう。父の言葉と母の言葉を。どうして今なのか。
「やっぱりリーシアか?」
原因はおそらく彼女だけではないだろう。本当は自分でもわかっている。
あまりにもあっさりと実の娘を第三者に、それも男の俺に預けたルイスさん。そして、同様に主人の娘を俺に預けたセル爺さんもだ。
「なんでっ・・・なんで、そんな簡単に家族をっ・・・」
はっきり言って彼らの印象は俺の中でかなり下がった。
理由は簡単だ。さっきも言ったように、あまりにも簡単に自身の娘を俺に預けたこと。
もし俺がこの子に手を出したら?誘拐したら?人質に交渉したら?そんな可能性を考慮しないはずがない。
こんなに可愛い子の親なら親バカくらいにはなっていて欲しい。
「クソっ・・・」
そもそもは俺のトラウマから始まる。家族を失った『あの日』。最悪の日だった。
兄弟など居なかった俺はその一日のうちのたった一瞬で父さんも母さんも・・・やめよう。思い出しても辛いだけだ。
「・・・」
それからは気を紛らわすようにずっとリーシアの頭を撫でながら彼女が起きるのを待った。
ー30分後ー
「ん・・お兄様?」
目を覚ましたらしい彼女はすぐに俺を認識した。
「起きたか?」
「はい・・・はれ?」
少し寝ぼけてるようだが大丈夫そうだな。
「どうした?」
起きるなり、ばっ、と身を引いた彼女。
「ど、どどどうしてお兄様がわたくしの部屋に!?」
あわあわと焦った様子で聞いてくる。
うん、今完全に起きたな。
「リーシアが倒れたからここまで運んできたんだよ。」
「あっ、そうでした。ご迷惑をおかけしましたお兄様。」
先ほどの事を思い出したらしく、そう言いながら彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
「いや、気にしなくていいぞ。半分は俺の責任だし。」
「?」
本人はわかっていないかもしれないが、ルイスさんの方に行くように仕向けた結果なので若干の罪悪感が俺の中にある。
「さて、リーシアも起きたことだし俺は帰るよ。」
俺は立ち上がりながら言う。
「え・・・」
すると、絶望の淵に立たされたような顔でこちらを見るリーシア。
「そんな顔されると俺も困るぞ。」
苦笑しながら言った。
俺も後ろ髪を引かれる思いだが、家に帰りたい。そろそろフェルとサティも寂しがってるかもしれないし。・・・そうであって欲しいという俺の願望だがな。
「また来るさ。」
「・・・」
む、無言だと・・・お兄さんどうしたらいいのかな!?
「こ、今度は家族も連れて来るから。な?」
「・・・」
目を伏せる彼女の姿に心が痛い。
「えっと、リーシアさん?」
「はい・・・」
あ、反応した。よし、ちょっと直接的に説得してみようか。
「リーシア。」
「は、はいっ!?」
ベッドに座ったままの彼女の手をとって目線を合わせる。
「また来るよ。約束だ。こんなにも可愛い妹ができたんだ、必ずまた会いにくる。それに、俺にも帰る場所があるんだ。」
安心させるように笑みを浮かべる。
「・・お兄様、それは反則ですわ・・・そんな事を言われてしまっては引き止められません。」
「偉いな。」
頭を優しく撫でる。
「あ、そうだ。いい事を思いついた。」
「どうなされました?」
「んー?聞き分けの良くて賢いリーシアには、心ばかりだがプレゼントをあげようと思ってな。」
「贈り物、ですか?」
「おう。・・・よし、できた。」
「そっ、そんなっ・・・お兄様からだなんて・・・」
肯定すると両手を頰に当てながら照れる仕草を見せる彼女。
「遠慮すんなって。」
俺はそれを微笑ましく思いながらある物を取り出す。
「てれれれってれ〜、携帯電話〜」
あの有名な青いたぬきのようなダミ声でそれを取り出した。
「えっと・・・お兄様?大丈夫でいらっしゃいますか?」
突然俺が変な声を出したことに若干引いてるリーシア。
「すまん、今のは忘れてくれ。」
「は、はい・・わかりました。」
恥ずかしさを抑えながら彼女の手にケータイを持たせる。
「お兄様、これは一体どういった品物なのでしょうか?不思議な形をしていますが・・・カードでしょうか?」
彼女は薄い長方形の物体を不思議そうに手にとって眺める。
「いや、それは携帯電話といってな?遠くにいる相手と話ができる優れものだ。」
携帯電話というか正確にはiP○oneだけどな。ちなみにこれは改造してあってテレビ電話機能と電話機能しかなく、バッテリーも魔力を充填する異世界仕様となっている。
「あ、お兄様の魔力がたくさん・・・」
「よくわかったな・・・って魔力が見えるんだったな。」
「はい。」
バッテリーは初回サービスとして俺の魔力を込めてある。
「ほい、あとこれな。」
角の丸い長方形の物体を取り出す。真ん中には傾斜のついたくぼみがある。
長方形のサイズは200mm×150mm×20mmとまぁまぁデカイ。
「これは?これもお兄様の魔力がけいたい、でしたでしょうか?それ以上に入っていますが。」
「これはな。このケータイの充電、つまりは魔力が無くなった時にこれの上に置いておけばまた魔力が込められる仕組みになってるんだ。」
「なるほど。それではこのけいたいはどうしたらよろしいのでしょうか?」
首を傾げながら聞いてくる彼女。可愛い。
「その前に説明させてくれ。」
「わかりましたわ。」
「このケータイは同じ物がもう一つないと使えない。」
「わたくしのは一つしかありませんが・・・」
「おう、そりゃそうだ。もう一つは俺が持ってるからな。」
俺がそう言った瞬間
「それではこれでいつでもお兄様とお話が出来るのですね!?」
「お、おう。察しが良くて助かる。」
彼女は一気に理解した。すごいな。
「それで操作方法はシンプルだ。まずこの薄いケータイの横にあるスイッチを一回押してみてくれ。」
「はい・・・あ、何かが表示されましたお兄様!」
ケータイが起動し、それにはしゃぐリーシア。やっぱり可愛い。とても癒されるぞ。
「おけ、その次は親指を下の方にある丸い部分に軽く押し当ててくれ。目安としては5回くらいかな。」
「わかりましたわ・・いち、に、さん、し、ご、できました!」
わざわざ声に出さなくてもいいのに。だが、癒される!
「よし、次は自分の名前を画面に向かって言ってくれ。」
「はい、リーシア・リンドブル。」
【機構構築完了(Systembuilding complete.)】
「わっ・・・」
【ようこそ。リーシア・リンドブル様。】
ケータイから音声が再生される。
「できたみたいだぞ。よかったな。」
「お兄様!この声はどなたの声でしょうか?」
「あ、そこは俺の最高機密だから言えないけど知り合いとだけ。それと、もうそれはリーシアだけのケータイになったからリーシアにしか使えないようになってるぞ。」
先ほど彼女にしてもらった作業は指紋認証と音声認識とその登録だ。
「わ、わたくしだけの・・・」
よほど嬉しいのか胸元にケータイを持っていき、ギュッと大事そうに抱きしめる彼女。
「そう、君だけのものだ。」
この子の反応はいちいち可愛らしい。
ちなみにこのケータイは今俺が魔力で作った。
音声にはシュティの声を使ってもらった。本人(?)はちょっと渋ったけどな。
《あぁ・・主様だけのスキルでありたかった・・・》
・・・気にしてはいけない。
話を戻そう。
で、機能はテレビ電話と電話だけ。ただ、もう一つだけ別の機能があるのだがそれは使う機会が無いことを祈りたい。
使い方は教えるけどな。
「よし、動作チェックするからちょっと貸してくれ。」
「わかりました。」
彼女からケータイを受け取り画面を確認する。とは言ってもテレビ電話か普通の電話を選択するためのアプリしか入ってないけど。
もし要望があれば機能を追加しようと思う。
「・・・うん、大丈夫そうだな。」
俺は彼女にケータイを返却する。
「それでこれはどういったように使うのでしょうか?」
彼女の問いに俺はケータイの画面を指差して言った。
「まず、この小さい四角のやつがあるだろう?」
「はい。」
「じゃあ、それを指で押してみてくれ。」
「わかりました・・・なにか開きました!お兄様!」
電話アプリを開くだけでこの反応である。
「おう、それで文字が表示されるはずだ。」
「本当です・・てれびでんわ、ですか?それと・・でんわ?これは一体なにが違うのでしょうか?」
「それはな?遠くにいる相手の顔を見ながら話すことができるのがテレビ電話で声だけを届けるのが電話だ。そのどっちかを選んでまた指で押せば俺に繋がるから好きな時にかけてくれ。
また使いたい時に画面が黒くなってたら横についてるボタンを押して指を丸い部分に押し当てると開くから。」
「わかりました。でも、それならばテレビ電話だけでよろしいのでは?」
もっともな疑問を呈する彼女。
「それはちと問題があってだな。」
「問題ですか・・・?」
「ああ、テレビ電話は魔力を大量に消費するからな。6時間しか連続稼働しないんだ。」
「ろ、6時間もお兄様とお話が出来るんですか!?」
いや、電話機能だけで6時間とか結構短いと思うけど?魔具とかあるんだしそれくらいなら大丈夫だと思ってテキトーに作ったんだけど・・・それに
「電話だと12時間だぞ。」
「12時間!?」
「そんなにびっくりすることか?」
魔具とかあるんだし多少は似たようなもんあるだろ。
「既存の通信用魔具なら三時間しか持ちません!」
「えっ・・・」
やばい・・・コレ、ヤラカシチャッタ?
「お兄様!これは革命です!このような物まで作れるお兄様は流石です!」
ちょっと待て、なんかリーシアの中で俺の株が急上昇してるぞ。
「これをお父様にお見せしても!?」
それは文明崩壊とか引き起こしそうだからだめ!ツテのある商会があるって言ってからなおさらだ。
「だめだ。」
「どうしてでしょうか?」
「・・・・」
ええっと・・・ここでなんとか誤魔化さないといけないな。あ、そうだ!
「リーシア。」
俺はケータイを持ったリーシアの手に自分の手を重ねる。
「お兄様・・・?」
「これは『君の為だけ』に作った『特別』なものなんだ。」
「わたくしのためのとくべつな・・・」
重ねた手を見つめるリーシアの瞳は揺れている。もう少しだな・・・
「そう、特別だ。だから安易に他の人にその存在を知られては俺が困るんだ。(文明崩壊的な意味で)」
「そ、そんな・・お兄様はそこまで(わたくしの事を)・・・」
「ああ、そうだ。」
文明に過ぎた品は破滅をもたらす。
「だからこれは君と俺だけの秘密だ。」
「・・・ッ〜〜!」
お?説得できたか?
「はいっ!わかりました!」
「うん、ありがとう。」
いい返事だ。
「お兄様のお気持ち、しっかりと受け取りましたわ!」
「あれっ・・・?」
まって?すごいまって?ねぇ文明崩壊の危機は回避したけど別の危機が迫ってない?気のせい?気のせいだよね!?
「リーシア?」
「はい!なんでしょうか!」
キラキラと輝く瞳に気圧される俺。
「いや・・・なんでもない。」
なにも言えない。言えるわけがない。
「あ、そうだ。最後にもう一つ機能がある。」
「なんでしょうか?」
「この電源をつけるボタン、あるいは丸いボタンを連続で早めに5回押してくれ。どっちか片方で良いぞ。」
カチカチカチカチカチ、とボタンを押した彼女。
「はい・・・?何も起きませんが・・・」
ボタンを押しても何も起きないことが不思議なようだ。
「いや、大丈夫だ。しっかりと機能した。」
俺の視界ではとある表示がされている。
「そうなのですか?」
「おう。ちなみにこれは本当に緊急時の時だけ使ってくれ。」
この機能は本当に危機が迫った時のためのものだ。
「緊急時とは?」
「たとえば・・そうだな。この前、リーシアが盗賊に襲われてたことあっただろ?」
「はい、お兄様に助けて頂いた時の事ですね。」
「ああ、その時みたいにリーシアが危険な目にあいそうな時や命が危ない時、他にも君自身にとって怖いことが起きた時にこの機能を使ってくれ。
そしたらこのケータイから俺に向けて直接通報がいくようになってる。リーシアの現在地の情報と一緒にな。
そしたら、俺が君を助けに行くよ。」
言い終わると彼女は感動したようにこう言った。
「お兄様は本当に優しいお方です。」
「どうかね。」
正義の味方も見方次第、なんて言うしな。
「お兄様が望まれるならわたくしは・・・」
急に熱っぽい視線になった彼女にいつもの勘が働き
「んじゃあ、そろそろ帰るな。ルイスさんにも挨拶しないとだし。」
俺はこの場から逃げるようにそう言った。
シミズはにげだした!
「でしたらわたくしが案内いたしますわ。 」
「あ、うん。ありがとう。」
しかし!まわりこまれてしまった!
「セル爺、お願いしますわ。」
「承知しました。」
「うおっ!?」
いきなり現れたセル爺さんにびっくりしたりしたが、それから館までは馬車で行くことになった。
そして、ルイスさんに会いに行ったのだが・・・
「うん、またいきなり来たんだね。」
「今回はボクからのお願いさ!」
「今日は空いてるからいいよ。何かな?」
「そっちで人を探してほしいんだ!もちろんボクたちも探しているけどね。」
「特徴は?」
「それはね––––」
どうやら先客がいるようだった。
「申し訳御座いません。わたくしめが連絡を怠ったばかりに・・・」
セル爺さんは申し訳なさそうに言う。
「あはは、別にいいですよ。では、ルイスさんに言伝をお願いしても?」
とりあえず伝言だけは伝えてもらおう。
「はい。」
「『お世話になりました。あと、俺の願いはまたここに来るときに家族を連れてくる許可。』でお願いします。」
「その旨、承りました。」
綺麗なお辞儀をするセル爺さん。流石、貴族の使用人だ。すごく様になっていてカッコいい。
「ありがとうございます。では、わたしはこれで。」
踵を返そうとするとリーシアが話しかけてくる。
「お兄様。」
寂しそうな表情を見せる彼女。
「・・・またなリーシア。」
少し罪悪感に駆られるがここは甘やかしたい衝動を我慢しよう。
「はい、またのお越しを心待ちにしておりますわ。」
しかし、すぐ笑顔になる彼女。
「ありがとう。じゃあな。」
それを見て安心した俺は歩いて館を出た。
さぁ、帰ろう。我が家に。
《主様、ご報告がございます。》
ん?どうしたシュティ。
《吉報です。主様自らの目でお確かめになられることを強く具申いたします。》
へぇ?シュティがそこまで言うならさっさと帰ろうか。
《感謝致します。》
おう、こっちこそありがとな。
《有難き幸せ。》
シュティと会話をしながら俺は路地裏へと入り込んでいった。
「転移、座標指定。深淵の森中心地。」
《承知。》
そうして俺は帰路についた。
作者「やっとまったりとした日常が書けるよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
隊長「気分で模擬戦なんぞ入れるからだバカめ。」
作者「だって戦闘描写練習したかったんだもん。」
隊長「貴様!男が『だもん。』とかやめろ!虫唾が走る!」
作者「うるせぇ!キノコ狂いが!テメェはマ○オか!あ!?」
隊長「キノコが好きで何が悪い!」
作者「度が過ぎるんだよ!キノコヘルメットに上下キノコ柄の服とか見てて頭おかしくなるわ!」
申し訳ありません。
一部文章に間違いがございましたので訂正させて頂きました。(2018/3/7 0:08)
文書に間違いがありましたので訂正させていただきました。(2018/3/24 10:53)