動物好き
隊長「結局今日投稿するのか。」
作者「別に今日投稿しないとは言ってません。」
隊長「まぁ、たしかに。」
「結構広いな・・・10帖以上は確実にあるだろ。」
ゲストルームらしき場所に案内され、備えつけてあったベッドに腰掛けながら俺はそんな感想を漏らした。
「・・・しっかし、ラウにあんな過去があったとはな。」
先ほど聞いたよく家に、というか毎日訪ねてくる精霊の話を思い出す。
「『嘘はつくな』、か・・・」
出会って少しの時にした『約束』とその時の表情の意味。今になって理解した、その『重さ』。
彼女の人間嫌いや嘘嫌いの理由はそれだったのだろう。果たして彼女にとっての『特別』とは何を意味していて、『約束』とはどれほどまでに重要で大切ものなのだろうか。
「まぁ、約束は約束だしな。嘘はつかないというのは破らないとしても・・・ラウ『も』独りだったのか。」
クレアが前に言っていたのはこのことだったんだな。
自らを犠牲にしてまで守りたかった平和は確かに訪れている。しかし、あまりにも皮肉ではないだろうか。
『自身が守りたいモノの為に命を尽くせ。』
父さんがかつて言っていた言葉を思い出す。
父さんは確かにそれを身をもってして俺に示した。でも、それは当時の俺を絶望のどん底に突き落とすものでしかなかった。
母さんだってそうだ・・・まったく、あの時に子を一人残して逝くなんて両親は二人してカッコつけすぎだ。
少しばかり哀愁に浸っていると、コンコンコン、と扉をノックする音が聞こえる。
「シミズ様、いらっしゃいますでしょうか。」
リーシアの声だ。なにか用だろうか?
「はい、いますよ。どうぞ。」
「失礼します。」
中に入るようにうながすと彼女は少し緊張した様子で部屋に入ってきた。
「どうぞ好きな場所に座ってください・・とこの館に住んでいる人に言うのも少しおかしな話かもしれませんが。」
俺は苦笑しながら言う。
彼女は俺の隣に腰掛けながらこう言った。
「そうでしょうか?わたくしはシミズ様にこの館を自分の家だと思って頂きたいのですが。」
わりと真顔で言うリーシアにどう反応するべきか迷うが、とりあえずはお茶を濁す。
「あはは、ありがとうございます。」
「あら、わたくしは本気ですよ?」
しかし、なぜか引き下がろうとしない彼女に俺は困り、押し黙ってしまった。
「・・・」
「・・・で、ですから・・敬語はやめて頂けませんか?あ、あと、その・・名前も呼び捨てで構いませんので・・・」
こちらの顔色を伺いみるようにおずおずとお願いしてくる彼女。
まいったなぁ・・・これって気を遣われてるのか?小さな女の子に気を遣われるというのはなんというか、あれだ、情けなく感じる。
そうでなくとも、ここまでお願いされて断るのも罪悪感で色々とやばい。
そう結論づけた俺は承諾する事にした。
「えっと、お嫌でしたら・・断っていただいても構いませんので・・・」
俺が黙ったままだったのが不安を煽ったのだろうか。
「・・・はぁ、そこまで言われたら断れんだろ。」
俺がそう言った瞬間、彼女の表情が一気に明るくなった。
「ほんとうですか?」
「いや、君が提案したんだろ。」
笑いながら俺が言うと彼女も、ふふふっ、と上品に笑いながら
「そうでした。」
そう返した。
そのとても可愛らしい表情と仕草に少しだけ妹が欲しくなってしまった。仲の良い妹が居たらこんな感じなのだろうか?
リーシアはこちらをまじまじと見つめながら言う。
「本来のシミズ様はそのような口調なのですね。」
「ん?あぁ、まぁな。ていうかリーシアも別にそんな丁寧に話さなくていいぞ。」
「これがわたくしの元々の口調ですわ。」
『ですわ』、って何気に初めて聞いたかもしれない・・・それに、貴族の標準ってやっぱこういう口調なんだな。
あ、そうそう俺も頼みたい事あったわ。
「そか、そういえばその様付けやめてくれないか?」
「どうしてでしょうか?」
「違和感しかないから。すごい背中がムズムズするから。」
「ふふふっ、おかしな人です。」
もともと様付けなんてふざけながらやるくらいで、本当の意味で使う事など前の世界ではなかったしな。
俺がああ言った後、リーシアは少し考える仕草をするがイマイチピンとこなかった様だ。
「では、どの様にお呼びすればよろしいでしょうか?」
「んー・・・リーシアの好きなように呼んでいいぞ。」
俺も少しばかり考えてみたが、『シミズさん』とかそんなんしか出てこなかったので向こうの好きなように呼ばせる事にした。
「・・・で、ではタ、タケシ・・さん・・・」
強張った声で震えながら途切れ途切れに言うと、彼女はうつむいてしまった。
いや、別にそんな無理しなくてもいいからな?
「あー・・・なんだ、そんなに無理しなくてもいいからな。リーシアの呼びやすい呼び方でいいよ。」
俺が苦笑しながら言うと
「そ、そうですよねっ!焦ることもないですよねっ!」
けっこう食い気味に反応する彼女。慌てて話を合わせてきた。
「ああ、だから好きなように呼んでくれ。」
「ど、どうしましょう。困りました・・・」
頰に両手をあてて悩む彼女。
め、めちゃくちゃ悩んでるぞ・・・どうして呼び方一つでこんなに悩むんだ?逆にすごいな。話題を変えるか?
「まぁ、それはまた何か浮かんだ時でいいんじゃないか?」
「・・・いやです。」
えぇ・・・なんで?まぁ、仕方ないか。
「そっか、時間はあるから好きなだけ考えたらいいと思うぞ。」
「はい!」
わぁーお、すごく良い返事だー
「・・・むぅ、やっぱりだめです。」
「・・・」
あれから10分以上は悩んでいるのではないだろうか。いまだに呼び方が決まっていない。
「なんならお兄ちゃんとかでもいいと思うぞ?」
冗談でなんとなく言ってみると
「それです!」
バッ、と顔をあげたリーシア。
俺が覗き込むようにして言ったせいで顔との距離がかなり近い。
「お、おう。案外アグレッシブなのな・・・」
「へ?・・・あっ・・・〜〜〜〜ッッ!!」
俺がのけ反ってそう言うと何かに気がついた様に、ぽんっ、と効果音がしそうな程の勢いで顔を赤くする。
「も、申し訳ありません!」
そして、今度は両手で顔を隠しながらうつむいてしまった。忙しい子だなぁ。
「あんなにも男性の顔に近づくなどはしたない・・・それもシミズ様に・・・あぁ・・・でも、かっこよかったです・・・ってそうではなくてですね・・・」
最後には、なにやらブツブツと独り言を呟いている。そんなに大きい声を出したのが恥ずかしかったのだろうか?
話をもどしてあげるか。
「それで?呼び方は決まったか?」
「・・・え?あ・・はい。」
「それじゃあ、どうぞ?」
俺が新しい呼び方を催促すると
「お、お兄様・・・」
「あ、そっちね。」
「え?」
「いや、気にするな。」
「はい・・・」
がっかりなんてしてないぞ。うん、貴族だもんな。上品だもんな仕方ないよな。
「お、お兄様・・・?」
「ぐはっ・・・!!」
「お、お兄様!?どうされました!?」
紅潮したままの顔で服の端をちょこんと摘んで少しだけ引っ張ってきたのだ。それに加えて金髪碧眼であの一言だ。
可愛いったらありゃしない。
「すまん、可愛い妹ができたな、と思ってな。」
「か、可愛いだなんてそんな・・・!」
照れる姿も可愛いらしい。
自然と頰が緩む。
「あっ・・・」
「ん?どうした?」
「いえ、お兄様の魔力が・・・」
「え?」
今、魔力って言った?シュティ!俺って魔力秘匿解除したっけ?
《しておりません。解除したのは認識阻害のみで御座います。》
あ、そうなんだ。わかった、ありがとう。
《このシュティ、もう消滅しても悔いは御座いません・・・》
うん、やめてね?シュティが居なくなると俺が困る。
《・・・主様はスキルたらしです。》
そんな言葉初めて聞いたわ。
《主様はスキル殺しです。》
それは全く別の意味になるよね!?
《申し訳御座いません。わたくしごときでは主様の素晴らしさをを形容する言葉が見つかりません。》
なんでスキルがこんなになっちゃったんだろうか?
《も、もしわたくしが不要になりましたらお申し付け下さいませ。わ、わたくしはいつでもあるじ、さまの・・・お望みのとおりにっ・・・》
ああ、もう!泣くなって!シュティは大事な俺の一部だから!要らなくなるなんてことないから!
《ほ、ほんとうでしょうか?》
君は主人を疑うのか?
《いえ!そんな事は創造神様に誓って御座いません!》
お、おう。それにしてもなんで魔力が関わってくるのだろうか?
《権能を御使いになってステータスをご覧頂ければ判明するかと。》
それはだめだ。人のステータスを勝手にのぞき見るのは嫌だし。
《申し訳御座いません。》
おう。
どうも面倒な成長を遂げているスキルと話しているとリーシアが話しかけてきた。
「お兄様、お兄様?」
「ん?」
「急に反応がなくなりましたが大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。それよりリーシアは俺の魔力がどうしたんだ?」
呼びかけに応え、気になったことを聞いてみる。
「いえ、より一層温かでとても素晴らしい魔力に変化したとお伝えしたかったのですが・・・」
「?、ごめん。まったく理解できない。」
「それは仕方のない事です。わたくし力はそれ本来のモノとは違いますから。」
「へぇ、そうなのか。」
「はい。」
微笑みながら肯定する彼女。
「わたくしは先天的に魔力が見えるんです。」
シュティ、それってすごいのか?
《凄いです。》
そうか、わかった。
「へぇ、ちなみにどんな風に見えてるんだ?」
「えっとですね・・・言葉には表しづらいのですが、一番近いのは色のついた水でしょうか?」
「なるほど。」
首を傾げながら言葉を探す彼女は最も近いらしい表現を引き合いに出す。
「その基準でいくと俺はどんな魔力だ?」
俺が聞くとむむむ、とこちらを見つめてから言った。
「・・・朝焼けに照らされた淡いオレンの果実、といった感じでしょうか。」
「そ、そうか。」
だめだ、まったく分からん。朝焼けに照らされた、ってなに?お兄様にはそんな感性ないよ・・・
俺があまり理解していないのを感じとったのだろう、リーシアが慌てたように言う。
「と、とにかく!温かくて心地いいんですっ!」
「そうか、ありがとう。」
「あぅ・・・はい。」
礼を言うと彼女はまたしても顔を赤くしてうなずいた。
「お兄様。」
「なんだ?」
「お兄様の飼われている魔獣はどのような子なんでしょうか?」
突然サティとフェルについて聞いてきた。
・・・これって特異個体とか言わない方がいいのか?まぁ、そこはこの子を信じるか。
「特異個体のサーベルティーガーとフェンリルを一頭ずつだ。」
俺がそう言うと、彼女は少し固まって静かにこう言った。
「・・・えっと、お兄様?わたくし耳が悪くなったのかもしれません。もう一度お願いできますでしょうか?」
「特異個体のサーベルティーガーとフェンリルを一頭ずつだが?」
すると、ふるふると震えたかと思えば次の瞬間には目をキラキラさせながら
「そ、それは本当でしょうか!?わたくしその子たちに会ってみたいです!」
びっくりするくらい食いついた。
「お?なんだ?リーシアも魔獣好きか?」
にやにやしながら聞いてみると
「はい!それはもう!」
これまた元気の良い返事だ。
うん、この子は悪い子じゃない。動物好きに悪い子はいないからな。もちろんこれは持論だが。
動物保護団体?あれはなんていうか・・・純粋な動物好きからすると迷惑だ。
誤解されやすいので言っておくと動物保護団体とは総称であり、様々なグループが存在する。その中には理性的とは言えない団体もあり、その一部の団体のせいで『動物保護団体=犯罪・悪』といった偏見が向けられている。
実際には一度は飼い主に捨てられた動物を保護し、躾などの訓練をさせたり、怪我の治療・メンタルケアなどを施して新しい飼い主のもとへ送り出している正規の団体も存在する。
しかし、保護団体・個人ボランティア・団体になどに入っている場合の一時預かりボランティアには動物取扱業の登録が義務付けられている。現実にはそれを守らない人が多く、さらには保護犬の畜犬登録などもしない場合が多い。
この他にも様々な問題があり、その結果として動物保護団体には誤解や偏見が数多く生まれている。
個人的な意見でしかないが、何事もほどほどにってね。世の中、善意だけで動けば良いってものじゃないんだ。
不公平?違うな。
世界は最も公平だからこそ不公平に思うだけだ。
だが、万人が納得できる意見など存在しないし、万人に対して共通認識である意見も存在しない。
というわけで論外。
「そんなに会いたいか?」
「はい!それに特異個体とフェンリルの組み合わせとは・・!わたくし気分が高揚します!」
先ほどとはまた違う彼女の一面が見れてすごく微笑ましい。
「そうか、それなら今度また来るな。あいつらも一緒に連れて。」
「ぜひお願いします!お兄様も魔獣がお好きなんですか?」
「おう、大好きだ。」
昔は別にそうでもなかったが、とある出来事があってから動物が大好きになった。
「わたくし魔獣が好きでよかったです・・・」
「?、どうしてだ?」
「いえっ、なんでもありません!」
取り繕っているのがバレバレだ。なぜ取り繕う必要があるのかわからないが、微笑ましいので気にしない事にした。
コンコンコン
また扉をノックする音が聞こえる。
「はーい。」
「シミズ様、ご夕食の支度が整いました。」
セル爺さんだ。
もうそんな時間か、すっかり話し込んでしまった。
「わかりましたー」
「お嬢様もご一緒にお越し下さいませ。」
「わかりましたわ。」
どうやら彼女も一緒に食事を摂るらしい。
「それじゃ、行くか。」
「はい。」
そうして俺は異世界貴族の夕食を頂くことにした。
作者「ただし、話が進むとも言ってないし、量も少ない。」
隊長「さすが、作文力5のゴミだな。」
作者「ヒドラ茸食わせるぞ。」
隊長「あれは刺激的な味がして好きだぞ?」
作者「ちくしょう!この悪食が!」
隊長「なんだと!?貴様!キノコをバカにしたな!?」
作者「してねぇよ!」
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