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会談


皆さま明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


そして、お久しぶりでございます。


 



 今、俺はクレアと名乗った女性と会談の席についていた。

 茶髪の長髪に茶色の目と親近感の湧く容姿をしていて、身長もパッと見た感じ170cmはあるだろう高身長美人だ。


 俺?俺は黒髪で茶色目。身長は175cmだ。でかくて悪かったな。


「そこに座って。」


「失礼します。」


 勧められるがままに席に座る。しかし、本当に物が少ない場所だ。あるのは椅子と机と簡易ベットだけで余計なものは置かれていない。

 そして彼女が俺の対面に座り、俺の目を見る。


「さて、色々と聞きたいことがあるけどあなたはあの森に住んでるというのは本当なの?」


「はい、そうですけどそれがどうかしましたか?」


「・・・あなた、それがどれだけ非常識なことかわかってるの?」


 少し呆れたような顔をして俺に言うクレア。

 なんだかラウにも似たような事を言われたな。『こんな森に住む物好きはそういない。』って。


「お恥ずかしながら理解できていませんね。」


「そう。」


「はい、ですので説明していただいても?」


「いいわよ。でも、その代わりにあなたにも色々と答えてもらうわよ?」


「出来る範囲でなら。」


「わかったわ。」


 了承を得たのでなにを聞こうか迷ったが、一つ別の事が気になった。


「あ、その前にあの部下の方はよかったんですか?副官の方なのでは?」


「違うわよ。」


「あれ?そうなんですか?」


「ええ、彼女は私の直属の部下だけど3番騎、私の副官は2番騎よ。」


『あなたに撃墜されちゃったけどね。』、と軽く言うクレアに若干引く。


「なんかすみません。」


「いいのよ、生きてるしどのみちしぶといから。」


「そう言ってくださるとありがたいです。」


 とりあえずは問題なさそうなので一安心。

 にしてもあの森ってどんな場所なのだろうか?そこから聞いてみよう。


「じゃあ、あの森ってどんな場所なんですか?」


「え?そこから?」


「え?そうですけど?」


 愛嬌のある美人といった感じの女性が驚く様はなんだか可愛らしい。俺自身聞き返されてびっくりしたけど。


「すみません、かなりへんぴなところから来たものでして。」


 テキトーな理由を作っておく。


「ま、まぁいいわ。そうね、あの森は国やギルドが指定している特別危険区域よ。本来は国の許可なくして立ち入ることは出来ないし、ゆういつ立ち入りが自由な冒険者でさえCランク以下はBランク以上の付き添いがなければ立ち入れない。そんな場所よ。」


「なるほど、ではあの森はとても危険で人が住むような場所ではないと?」


「ええ、そうなるわね。」


 そんな危険な場所だったのかあの森。だとするとラウがあんな事を言ったのも頷ける。

 俺が関心していると彼女はこんな事を口にした。


「それに、あの森は特別なの。」


「特別とは?」


 俺の目を真っ直ぐに捉え、真剣な面持ちで語り出す。


「あの森、通称【深淵の森】は歴史的な悲劇の起きた場所。」


「深淵の森?悲劇?」


「ああ、そういえば深淵の森の事は詳しくなかったのね。」


「すみません。」


「さっきからどうして謝るの?知らない事は悪い事ではないと思うけど?」


「癖でして。」


「そう。」


 外国の人はよく日本人は謝りすぎだというが、どうやらここでもそうらしい。


「ええ、ですからどうぞ続けて下さい。」


「わかったわ。でも、森の説明からね。

 深淵の森は三層に分かれていてその最深部〈深層〉と呼ばれるあたりからは昼間でも夜のように暗く、そこに立ち入ったパーティーは全滅するか死者を出して帰ってくるかのどちらかなの。まるで、闇の中に吸い込まれていくような様から【深淵の森】という名がついたわ。

 そして、そこから人知れず他者を助ける謎の存在がいる。だから私たちは派遣されたの。」


「へぇ、なるほど。それで捜索隊が派遣され、その探し人が深淵の狩人なんですね?」


 確かに森の中は薄暗かったけどそんな真っ暗闇というほどではなかった印象だが。

 なんとなく不思議に思いながらもラウに聞いてみよう、と結論を固めて気にしない事にした。


「ええ、そうなの。ただ、もしかしたら・・・という希望もあったの。私個人の願望だけどね。」


 少し視線を下に向け、軽く俯くクレア。


「?・・どういう事でしょうか?」


「『あの御方』ではないかという噂話が原因よ。」


「あの御方とは?」


 なにやら神妙な空気なのでとりあえず聞いておこう。ぶっちゃけ興味ゼロだけどな。


「かつて千年以上も前に起こった二大勢力による世界大戦をとめ、自らに濡れ衣をかぶせ、怒りの矛先を自身に向けさせる事で平和の礎となった方よ。」


 へぇ、立派な人もいたもんだな。ちょっと興味が湧いてきた。


「その真実を私たちの祖先知った時には遅かった・・・全てが無に帰した。いえ、結果的には平和が訪れ、今がある。けれどその平和の中に『あの御方』はいない。」


 ぐっ、と手に力を込めてさらに俯くクレア。そんなにも偉大な人に一体何があったのか少し気になってきたが、その前に大戦について聞きたい。


「大戦とは?」


「魔族対魔族を除く全種族との全面戦争よ。」


「・・・」


 え、なにその終末感が滲み出てくるような字面は。しかも魔族が他の種族全部相手取るの?すごいねこの世界。魔族強すぎるだろ。


「えーっと、それって普通は魔族がすぐに倒されるんじゃ?」


「普通ならそうね。でも、魔族には特別強い者達がいたの。」


「強い者達?魔王とかじゃなくてですか?」


「魔王?そんなのはいなかったけど、そうね、強いて言うならそれが魔王と呼べるのかも知れないわね。」


 どうやらこの世界には魔王というものは存在しなかったようだ。しかし、そうなると別の名称があるはずだ。


「それらはどんな風に呼ばれていたんでしょか?」


「【七魔公爵】よ。」


「七魔公爵?」


「ええ、7人の公爵と名乗る魔族。それぞれが強大な力や戦力を誇っていて、一人で一つの軍勢を相手取り、自身の軍勢で一種族を相手取れるほどだったらしいわ。」


 えぇ、なにそれ怖すぎじゃない?


「名前とかわかってるんですか?」


「いえ、素性に関しては何一つとして情報は残ってなかったわ。名前も性別や容姿など全ての情報が一つたりとも残されていなかった。王家の書庫にならなにかあるかもしれないけどそれが出来るのは上位の限られた貴族か王家の血筋だけだもの。少なくとも低位の貴族では知ることすらできないみたいね。」


「それはすごい情報隠蔽ですね。よほど手際がよかったようで。」


「そうね。本当に大したものよ。」


 やれやれ、といった様子で片肘をついてその手に顎をのせる彼女。

 そんな様子を見ながら俺は思案する。


(いくらなんでも情報が一つもないというのは奇妙だと思うけどなぁ。全く興味ないけど。)


 あと、なんかこの人が貴族みたいなこと言ったけど無視しよう。平和に暮らせればそれでいい、余計な事に首突っ込んで面倒な事になるのはごめんだ。貴族とかその象徴だろ。


 あ、そういえばこの国の名前だけちょっと気になった。シュティ、この国の名前なに?


 《はい、主様。この国はサンスクリード王国というようです。》


 了解、ありがとう。


 《勿体無き御言葉。》


 そんな脳内会話をしながらクレアの話に返答する。


「なるほど、それでその人物ではないかと噂が出てきてその調査の為にここに来たと。」


「そうよ。」


「でも違った。」


「まぁ、そうなるわね。でも良い事もあったから別に気にしてないわよ。」


「そうですか。」


 そこにも触れないようにしようか、なんか後悔しそう。


「じゃあ、私からも聞いていいかしら?」


「どうぞ。」


 さて、何を聞いてくるのやら・・・魔力の大きさか?あの航空機のことか?それとも権能のことか?


「森のどこに住んでいるの?」


「え?」

「え?」


 それ、すごくどうでもよくないかな?いや、まずは簡単な質問からか。


「あ、いや、なんでもないです。すみません、ちょっと驚いただけで。」


「そう?なら教えてくれる?」


「ええ、それくらいならいいですよ。森の中心地です。あ、ちゃんと家もありますよ?」


「ッ!それは世界樹の近くという事かしら?」


「まぁ、そうなりますね。」


「そ、そう。」


 どうしたんだろうか?少し様子がおかしくなった。なんかそわそわし出したぞこの人。


 俺がなんとなく怪しんでいると彼女は意を決したように口を開いた。


「ほ、ほかに誰か住んでない?例えばあなたの家族とか。」


「いえ、別に住んでませんが。しいて言うなら(ねこ)(いぬ)が一頭ずつですかね。」


「そ、そうなの?」


「ええ、まぁ。」


 俺に家族はいない、どこにも。


 ラウは遊びに来る隣人みたいなものなので俺の家に住んでるわけじゃないので除外しておく。

 ただ、彼女はなぜか嬉しいような残念なようなそんな表情をしている。器用な人だ。


「少し残念だけど嬉しくもあるわね。」


 何やら小さい声で聞き取れなかったが、別に関係なさそうだし放置しておくか。


「そうね、ほかに聞きたい事、というよりもお願いしたい事があるのだけど。」


 お願い?なんだろうか?俺が先に質問してしまったので断りづらい。やってしまった・・・


「私たちの領主様に会ってほしいの、つまりは街に来てくれないかしら?」


 あぁー・・・なんというか、街に行ってみたい好奇心はあるがこの人を本当に信用してもいいのだろうか?

 いや、しかし転移や空を飛ぶという手段を使えるし、いざとなれば脱出も街を一つ消すのも可能だろう。行くだけなら問題ないか。


 そう結論付け、笑顔で承諾する。


「構いませんよ。」


「そう、ありがとう。なら二日後のこの時間にまた来てくれるかしら?そこからワイバーンに乗せて街に連れて行くわ。」


「本当ですか!」


「え、ええ・・・」


 俺が勢いよく机に手をつき、身を乗り出して聞き返すと、彼女はビクッと反応しながら肯定する。


 素晴らしい!あのワイバーンに乗れるとは!彼女のあのワイバーン、可愛げと格好良さを兼ね備えていて勝手ながら気に入っていたのだ。

 って、いかん!自分の好きな事になるとすぐに周りが見えなくなるのは悪い癖だ。よく考えたら俺空飛べるじゃん・・・いや、でもワイバーンには乗りたいなぁ・・・


「・・失礼しました。お見苦しいところをお見せしてしまいましたね。」


「ふふ、いいのよ。」


 ぐっ・・なかなか恥ずかしいぞ、こんちきしょう。優しく微笑まれたよ。すっげぇにこにこしてて美人だから余計に恥ずかしい。

 話を変えなければ・・・


「ほ、ほかに聞きたいことはありませんか?」


「ふふ、そうね・・・あなたの能力についてだけど、あれはわざと誰も殺してないの?」


 それみたことか、やっぱりきた。


「そうですね。一応は手心を加えております。」


「どうして?」


「どうして、とは?」


「なぜ殺さなかったの?いえ、なぜ殺さないの?あなたが人を殺したのは最初の盗賊の一件だけ、その他は全て拘束魔法を使っていた。つまり、あなたは私たちを殺す事が出来るのにそれをしなかったのはなぜかしら?あなたの中では私たちはあなたに差し向けられた討伐隊だったのよね?なら、殺せばもっと早く片付いたんじゃない?」


「それは・・・」


 それは多分、俺が日本人だからというのもあるだろう。だが、それ以上に俺の奥底にあるトラウマがそうさせない。

 確かに権能の試験がてらに盗賊を殺した。その事に関しては何も思っちゃいないし、興味はない。


 それでも、家族がいなくなる辛さは俺がよく知っている。大好きだったあの人も・・・よく見たら彼女はあの人に似ているかもしれない。

 そういえばローナもあの人に似てたな・・・なんで気がつかなかったのだろうか・・・っと、いかんな。そんな事はどうでもいい。

 もう会えない人を想ったところで何かが変わるわけではないからな。


 自分勝手だなんだと非難されるかもしれないが所詮はそんなものだろう。世の中にはエゴや身勝手が絡み合っていて、それぞれがうまくバランスを保っている。


 そして、俺は彼女に質問してみる事にした。


「クレアさん、あなたが死ねば悲しむ方はいらっしゃいますか?あなたの死を望まぬ人がたった一人でもいらっしゃいますか?」


「それは当然よ。お父様もお母様も兄さんも悲しむし、それは望まないことよ。実際、騎士団に入る時にものすごく反対されたもの。」


 返ってきたのは当然の反応で、至極一般的なものだった。どうしてそんな事を聞くのか、と言いたげな表情を浮かべている。

 それならよかった。


「・・・そうですか。ならば、それはものすごく幸せだという事です。そして、自身の常識が他者にとっての常識ではないという事。その事をどうか忘れないでください。」


 俺は笑顔でそう言い残し、席を立った。


「それでは、私はこれで失礼します。」


「・・ええ、ごめんなさいね。時間とらせちゃって。」


 はたしてその『ごめんなさいね。』が本当にその事に関してなのかはわからないが、そのまま受け取っておく。


「いえ、平和に過ごすための必要経費と考えれば問題ありません。」


「・・・そう。」


「はい、ではこれで。」


 そうして俺はテントから外に出たのだが、もう一つ聞きたいことがあったので一度戻った。


「あ、すみません。一ついいですか?」


「え?どうしたの?」


 テントに戻って話しかけると、神妙な顔をしていた彼女はまたしても驚いたように聞き返してきた。


「あなたのワイバーンまた撫でていいですか?」


 俺が笑顔で聞くと彼女は


「え、ええ・・いいわよ。」


 変なものを見たかのような表情で快諾した。


「ありがとうございます。」


 礼を言ってまたテントから出る。

 さて、お許しも貰ったのでワイバーン撫でに行くとしますか。


 そうしてクレアとの会談は終わり、俺は思う存分ワイバーンを撫でまくったあと、家路についたのだった。


 ワイバーンも撫でられるのは嫌いではなかったようで、結構懐いてくれた。




作者「また会ったな読者の皆様よ!」


隊長「今年もこの作品を読んでくれると嬉しいぞ。」


作者・隊長「「今年もよろしくお願いします(するぞ)!」」


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