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んー書くの難しいですね。笑


え?何がって?今回の話を見ればわかります。


ようやく話を進めます。




 ー明朝ー



「ッ・・・!!!はぁ・・はぁ・・くそっ!」


 目が覚めた俺は朝から最悪の気分だった。

 暑くもないのに全身に汗をかいている。


「やっぱり夢だったか・・・まて、どんな夢だった?」


 呟きながら先ほど見た夢を整理しようとするが、見た夢の内容を全く思い出せない。

 わかっているのは『妙な夢を見た。』という事だけ。


「そうだ!あの本は!?」


 昨夜見つけた本をもう一度読もうと探す。


「本が・・・無い・・・・?」


 だが、その本は見当たらない。

 昨日は確かにスタンドライトの側に置いたはずだ。


「・・・まぁいいか。それよりも今は何時だ?シュティ。」


 しかし、思考を切り替え、今日為すべき事を成す為に時間を確認する。


 《はっ。現在時刻05:30です。》


「そうか。ありがとう。」


 《これしきの事礼には及びません。主様。》


「それでもだ。」


 《有難う御座います。》


 やたらと、腰の低い普段通りのシュティに少し安心する。


 《それにしても主様。かなりうなされていたようですが。》


「ああ、結構嫌な夢を見たよ・・・それだけは覚えてる。」


 《左様で御座いますか。》


「ああ・・・あまり時間が無いな。さっさと着替えて準備しないと・・・」



 カーテンを開けて空を見る。

 まだ、陽は登っていないがそうでなくては困る。

 交渉に持ち込むには早朝から仕掛ける必要があるからだ。

 日の出まで後1時間もないだろう。


 早朝に仕掛ける理由は後でわかる。


 とりあえずシャワーを浴びてスッキリする。


「服は・・流石にジャージはダメだな。黒と白のツートーンでいいか・・・」


 とりあえず上着とズボンと靴を黒に、シャツだけは白の格好に着替える。


 靴はまだ履かないけどな、家の中だし。


「ま、服装に関してはよくわからんが。」


 残念ながら俺にはお洒落などの美的感覚が無い。

 なので、『とりあえず黒白のツートーンにしとけば何とかなるだろう。』という物凄い雑な考えである。


 怒られそうだけど・・・


「あとは飯食ってサティとフェルに挨拶だな。」


 朝食は絶対に欠かさない。

 1日の始まりにご飯を食べないと頭が働かないし、生死を賭けた交渉という普通なら体験しないような事をしに行くのだ。

 食わないという選択肢は無い。


「とはいえ、おにぎりと味噌汁と漬け物だけどな。あと、チョコ。」


 ご飯でも糖分は足りているだろうが、念の為にチョコレートも食べておく。


 シャワーを浴びて朝食を済ませ、歯を磨いた後はサティとフェルに挨拶するだけだ。

 玄関から出た俺は庭先に寝そべっている二頭に声をかけた。


「サティ、フェル。朝早くにごめんな。」


「・・・グル。」「・・わふ・・・」


 どちらも眠そうにしている。

 サティは目を開けるだけで、フェルは欠伸している。

 とりあえず俺は二頭に伝える事を伝える。


「ちょっと出掛けてくる。いつ帰れるかわからないから先に肉は置いておくぞ。」


 その後にいつもあげているブロック肉を地面に置く。


 すると、眠そうにしていたフェルが飛び起きた。


「ガウ!」


『自分も連れて行け。』


 散歩に行くと思ったのかフェルがそんな風に吠えた。

 そんな様子に俺は和みながら言う。


「悪いけど今回はダメだ。」


「クゥン・・・」


 フェルは悲しそうな顔をして訴えてくる。


「そんな顔してもだ。わかってくれ。」


 フェルの頭を撫でながらあやす様に言うと、フェルは


「ガウ・・・」


 残念そうに引き下がり、また寝そべった。

 全長三mはあろうかという狼がここまで素直なのは何とも可愛いらしい。


 少し良いものが見れた気がした俺は更にフェルをわしゃわしゃと撫でる。


「えらいぞー。ありがとな、わかってくれて。」


「クゥ・・・」


 交差した前脚に顎を乗せ、悲しげな目で此方を見てくる。『やっぱり行きたい。』そんな思いが伝わって来た。


「中々の威力だ・・・って早く行かないと。」


 時間を忘れそうになり、『サティには言葉だけで大丈夫だろう。』と先を急ごうとすると


「グル・・・」


 不満げな目で見られた。

 それはもうじっとりと不満たっぷりな目で。


 まるで『何故私は撫でないのか。』と訴えているかのような目だ。


「・・わかったよ。ごめんな、(ないがし)ろにして。」


 苦笑しつつ謝ってからサティも撫でようとすると、向こうから近づいて来た。

 可愛い奴め。

 大体フェルと同じくらい撫でると満足したのか自分から離れ、また地面に寝そべった。


「よし、じゃあ今度こそ行ってくるよ。」


「グル。」「ガウ。」


 そして、俺は二頭に見送られながら転移した。



 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



 ー野営地ー




 空が暁に染まる少し前の事。



『ソレ』は空を飛んでいた。



 編隊を組み、飛びゆくその様は正に威風堂々。


 灰色の鳥、カーキ色の鳥、水色と茶色の二色の鳥達は悠々と空をゆく。



 ブロロロロッッッ………



「おい、何だ?この音は?」


「さぁな?昨日の連中が言ってた例の鳥じゃないか?」


「まさか・・お前本気で信じてるのか?」


「いやいや、言ってみただけさ。」


「だよな。」


 西側に位置する場所に立っている二人の警備兵が雑談を交わす。




 猛々しく唸りを上げ飛翔する鋼鉄の鳥達。



『ソレ』はこの世界において完全に不自然な存在。



 何十と空を覆わんばかりの大編隊がそこには居た。




「なぁ、ところで何だが・・・」


「どうした?相棒。」


「いや、この音なんか近づいて来てないか?」


「・・奇遇だな、俺も丁度そう思っていたところなんだ。」


「なら、空をみて見るか?」


「ああ、せーの、でいくぞ?」


「了解。」


「「せーの!」」


 二人が空を同時に見上げる。




 陽が昇り、空が朝焼けに照らされる。



『ソレ』は、野営地の上空を我が物顏で闊歩していた。



 空を覆い尽くす程の黒い影達。


 鳴り響くその声は空を震わせる。



 ブルウゥゥゥブロロロッッッ・・・




「お、おい!何だあれ!!」


「あれはっ・・・まさか!!」


 二人の見張りの兵が音とその姿に気付き、敵襲の合図を出そうと動く。


 しかし、それの時にはもう手遅れだった。


「何だ!?様子がおかしいぞ!?」



 ブルルルロロロロ・・・・



「おい、おいおいおい!!ふざけんな!!突っ込んで来るぞ!!!」




 陽に照らされ煌き


 唸り声を上げる鳥達は姿勢を傾け、一斉に急降下する。


 それらは速度を上げながら空を滑る様にして突っ込んできた。




 ブルルルウウウウゥゥゥゥゥゥウウゥゥゥウウウウゥゥゥゥウウゥゥウウゥウウゥウウゥゥキィィィィィィィィィィィ・・・!!!!!



 

 空気を切り裂くような奇声を発し、突き進む鳥達は編隊を崩す事なく綺麗な形を維持したまま、野営地の外側へと何かを投擲(とうてき)した。



 次の瞬間




 ドッッゴォォォォォゥゥォォッォォッッ!!!!!!

 ドガァァァァァァァンンン!!!!

 ドゴォォォォォ!!!!ドガァァァ!!!




 凄まじい爆発音と振動が響き渡り、野営地はまたしても混乱へと追いやられる事を余儀なくされた。


 騎士団野営地に怒号が飛び交う。


「敵襲!!敵襲ーー!!!!」「総員起こし!!!総員起こしだ!!!」「見張り!!何やってんだ!!」「キレんな!!そんな事より状況報告だ!!」「警備兵!!状況報告です!!」「端的に伝えろ!!」「先日の鳥による攻撃です!!数多数!!詳細不明!!!!」「くそったれ!!!」「冒険者に協力要請!!!被害状況も調査しろ!!!」



 早朝にも関わらずその動きは迅速だった。


 一方、冒険者野営地は


「くそ!!今度はなんだ!?」「敵だ!!」「昨日のあいつらだ!!!」「でも形が違うぞ!?」「んなこたどうでもいいんだよ!!!」「起きたらさっさとあの鳥を落とすぞ!!」「きゃあぁあ!!」「なんなのです!?」「またかよ!!」「おい!騎士団から協力要請だ!!」



「承知した!おら!聞いたか!いくぞテメェら!!」



「「「「「「「おう!!!」」」」」」」



 こっちはこっちで非常に動きが非常に早かった。



 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––




「本日天気晴朗ナレドモ風強シ。なんてね。」


 さて、皆様おはようございます。


 俺です。爆弾の炸裂する良い音ですね?


 爆弾の目覚ましに、レシプロエンジンの心地良い音色、大気を震わすかの様な振動、またこの大編隊は素晴らしい。

 壮観でございます。



 はい、お待たせしました。


 今回転移以外に使う策はこちらのレシプロ機でございます。


 レシプロ機とはプロペラで飛ぶ航空機の事です。


 まずはザッックリと使用機体の紹介を


 ・Fw(フォッケウルフ) 190Aー8

 愛称ヴュルガー

 ・武装

 13mmMG131機銃を2艇搭載

 20mmMG151/20機関砲を4艇搭載



 ・零式艦上戦闘機 二一型

 通称零戦

 ・武装

 20mm機銃を2丁搭載

 7.7mm機銃を2丁搭載



 ・Ju87 Dー3

 愛称シュトゥーカ

 ・武装

 7.92mmM81機銃を2艇搭載

 500kg爆弾を3つ搭載



 以上三種類の機体を使います。


 また、三種類の機体は全て第二次世界大戦時の物を()した物です。



 機銃及び機関砲の弾には鉄のそれではなく、拘束魔術式弾というオリジナルの魔力で構成された弾を使用する事に。


 実弾の使用は一切致しません。


 尚、爆弾だけは本物を使います。



 というか使いました。



 編成機数は四機一編隊


 一編隊の飛行隊形はフィンガー・フォーと呼ばれる形を採用です。


 図にするとこうなります。


 ------------------△---------------

 ---------------△---△-------------

 ------------△---------------------


 先頭が【一番機】

 右の三角が【二番機】

 左の三角が【三番機】

 左下の三角が【四番機】となります。


 あまり細かい事は気にしないで下さい。



 一編隊を1小隊と呼称


 ・Fw190Aー8

 64機

 小隊にして16小隊


 ・零式艦上戦闘機二一型

 48機

 小隊にして12小隊


 ・Ju87Dー3

 32機

 小隊にして8小隊


 総数144機

 全36小隊の大編隊で御座います。



 戦術は

 四機1小隊で各方位2小隊ずつのシュトゥーカが、東西南北の四方位より急降下爆撃を敢行。


 ◇←このひし形の4つそれぞれの頂点から反時計回りに頂点と頂点を結ぶ様に爆撃しました。


 尚、この際に野営地には被害を出さないのがミソです。



 するとあら不思議!野営地の周囲全てに爆弾の雨が!

 なんとも豪華な目覚ましなんでしょうか!



 そして、零戦は四方位各位に3小隊ずつ。


 シュトゥーカの離脱を低空より支援、もしワイバーンが来れば迎撃に当たります。


 しかし、速度が遅めの零戦でさえワイバーンにとっては速すぎる為、零戦の旋回時間を稼ぐ為にFwによる一撃離脱を行い、旋回までの時間を稼ぎます。


 Fwは各方位につき4小隊ずつになります。



 Fw(フォッケウルフ)は死角からの一撃離脱を


 零戦は低空戦闘を


 シュトゥーカは急降下爆撃を


 以上が第一次攻撃の流れになります。



 では、第二次攻撃の要項です。


 シュトゥーカが戦線離脱後、零戦とFwによる機銃掃射を敢行。



 まず、零戦を6小隊ずつの2分隊に分割。


 第1分隊が3時の方向から9時の方向に


 第2分隊が6時の方向から12時の方向へ


 飛び抜けながら交互掃射。


 イメージとしては『十』を描くように飛びます。



 次に、Fwによる8小隊ずつの2分隊に分割。


 第3分隊が7時の方向から1時の方向に


 第4分隊が5時の方向から11時の方向へ


 飛び抜けながら交互掃射。


 イメージとしては『X』を描くように飛びます。



 一巡するのに計四回の機銃掃射が行われます。

 旋回し終えた分隊各位は、今度は来た道を引き返し反対方向へ抜ける。



 これをひたすら繰り返し、討伐隊大多数の拘束を図ります。


 合計112機による機銃掃射完了後、俺が交渉の為に降り立ちます。


 尚、魔力弾は俺からの魔力供給の為に弾切れを起こさないという鬼畜モードです。


 最後に全ての航空機はシュティに操縦を任せています。


 以上です。



 さて、おふざけはここまでにして。


 では、今回なぜ機械を使ったのか?という事に関してだ。


 人は己の知らないものに恐怖し、自分たちには理解できないものは受け入れられない。


 音、匂い、見た目、未知の機械(生物)


 それが自分達に牙を剥くというのならなおさらの事。


 全てが恐怖などの負の感情の根源となる。


 そして、このファンタジーな世界において科学技術の結晶たる飛行機は存在しないはず。

 ワイバーンに乗っているのが良い証拠だ。



 なので機械を使った。


 言い換えると、『相手の常識に当てはまらない様にする。』という事だ。



 シュトゥーカを使ったのは、ジェリコのラッパと言われ、悪魔のサイレンなどの名前を持つ、急降下の際に独特の音を出す機体だった為。


 Ju87シリーズは殆ど音が鳴るので、Dー3を選んだのはなんとなくだ。


 Fw190Aー8は一撃離脱能力とその異常な火力を瞬間的に発揮できる為に採用。


 零戦はその低空戦闘能力の高さから選んだ。

 二一型なのは俺が一番好きだから。


 別に四式戦闘機「疾風(はやて)」や紫電二一型でも良かったのだが、それなりに低高度で旋回し、速力は低めがいい事を考えれば零戦の方が都合が良かった。



 では、何故レシプロ機なのか?


 戦闘機ならジェット機でもいいのではないか?

 爆撃ならもっと色んな方法があったのではないか?


 そんな疑問をお持ちのあなた!


 それは目に見える速度で動いて貰わねば困るからだ。


 つまり、ジェット機では速すぎる。

 確かに音は凄いがそれだけだ。


 ヘリや爆撃機は?

 否、精密爆撃が必要不可欠であり、ヘリのロケットでは迫力不足なのだ。



 無骨にThe爆弾で質量任せの第二次大戦時の物がぴったりだったのだ。



 なので、レシプロ機とその装備を使った。

 ドイツ機と日本機なのは折角なので組み合わせてみただけ。


 ちなみに、昨日マンティコアに使ったのは1小隊分の零戦だ。



 そして、最後に早朝の時間を選んだ理由だ。


 まず、殆どの人が起きていない時間帯に爆撃する事で強烈なインパクトを与える。


 そして、印象付けるのだ。

『いつでも襲えるのだ。』

『お前達の敵は一人ではないのだ。』

『君達の知らない物を私は使える。』と。


 何より、起きたばかりの人間は動きや思考が鈍くなる。

 そこを交渉という頭の使う場面に利用する事で、普段なら思いついたり、考えを巡らせられる事に辿り着けない様にするのだ。



 そうして、恐怖心や不安感を煽り、『交渉材料』として、これらをいつ何時(なんとき)であろうと使う事が可能だと示す。



 強烈な印象を与え、早朝からの襲撃により混乱した中で壊滅し、消耗した後に交渉。



 これにより、交渉を有利に進められるように状況を作り出す。

 これが高校生だった俺が考えうる限りで最も成功率が高いと思い至った作戦だ。



 そんなわけで、俺は野営地を上空から眺める。


 地上は結構な混乱に陥っているらしい。

 第一次攻撃が効いたようだ。


 流石と言うべきかこんな中でもしっかりと行動できている者も居るが、あの高速で飛び交う航空機を地上から撃墜するのはまず無理だろう。



 《主様、全ての急降下爆撃機(シュトゥーカ)隊の戦線離脱を確認。》


「了解。では、第1分隊から第4分隊への編成変更は?」


 《完了済みです。》


「流石だな。ありがとう。」


 《いえ、勿体無き御言葉。》


「よし、では全航空機及び全隊に告ぐ!我らの興廃この一戦にあり!全機一層奮闘努力せよ!!そして・・・」



 俺は一度深呼吸をして息を整え、命令を下す。




「殲滅せよ。」



 《承認》



 シュティが俺の命令を承認し、全機が空を駆け巡る。


 俺は命令をかけた後、地上の様子を見ながらほくそ笑んでいた。


 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



 ー地上ー



 スガガガガガッッッ!!!


「ぎゃあぁああ!!!」「いやぁ!!いやぁぁぁぁ!!!」「助けてくれ!!!!」 「クソ!!こんな所で!!」


 ブゥゥゥゥウウゥゥゥンンン・・・



 銃撃音と悲鳴の入り交じる野営地。


 空を駆け回る鋼鉄の鳥達は縦横無尽に空を舞い、地上を蹂躙する。


 一瞬にして戦場と化した野営地で、一人の女性が声を荒げて場を指揮していた。


 茶色の長髪をたなびかせ、凛々しく指揮を執る。



「総員!迎撃始め!魔法が使える者は隊列を組んで!当てずっぽうでもいいわ!!とにかく撃って!!弾幕よ!!!ねぇ!戦空隊の準備はまだ!?」


「もうすぐであります!」


「完了次第報告して!私も出る!次!3時の方向から来るわ!!!」


「はっ!!」



 女性は部下らしき人物にの報告を受けながら指示を出す。


 そこに冒険者達が集い、代表者らしき男が声をかける。



「指揮官さんよ!来たぜ!」


「冒険者諸君!よく来てくれたわ!ありがとう!そこ!!後方直上!!!悪いけど手を離せないの!!簡潔に言わせてもらうわ!!5時の方向より急降下!!来るわ!!」


 冒険者達に礼を言う手間すら惜しいほどの猛攻を受けながら彼女は言葉を口にする。


「魔法の使える者は隊列に加わって!!そうでない者は周囲の状況確認や被害状況を!!!」


「わかったぜ!野郎ども!!聞いたな!!やるぞ!!!」


「「「「「「「おう!!」」」」」」」



 その言葉を機に一斉に冒険者達が行動を開始する。


 しかし、それでもなお状況は劣勢だ。


 飛来する謎の鳥達は昨日よりも数は格段に増えている。


 何より、明らかに動きが組織的なのだ。


 編隊を組み、規則的に動きながらフォローし合っている。

 どう見ても自然な動きではない。


 着々と騎士団員と冒険者達が減らされていく。


「何なんなの!?一体!何で・・・何で殺さないの!?」


 しかし、これ程の圧倒的な数と戦力を誇ってなお、死者は出ていない。


 先日のマンティコアは一瞬で始末された。たった4羽によって。


 だが、今回あの鳥達が撃っているのは魔法だ。しかも、あの『拘束魔法』。


「まって、拘束魔法!?まさか!!」


 またしても脳裏によぎるあの名前。


『どうして気が付かなかったのか。』と後悔と焦燥に駆られ、彼女がその『名』を口に出しそうになった時だった。


「副団長殿!!戦空隊準備完了であります!!!」


 部下からの報告が入った。


「っ!わかったわ!!私も出る!地上の指揮は任せたわ!!」


「はっ!!」


 その声で我に返った彼女は愛騎のワイバーンに騎乗し、空へと飛び立つ。


「総員!飛翔!中隊単位での各個撃破を目標とする!!指揮は各中隊長が出して!!」


「「「ハッ!!」」」


 3人の中隊長がそれに応じ、全員が一斉に飛び立つ。

 しかし、それを狙ったように灰色の鳥がこちらに向かって凄まじい鳴声と共に魔法を放つ。


 ブゥゥゥゥウウウウゥゥゥウウンンン!!!!



「敵9時の方向より飛来!!」



 ズドドドドドドッッッッ!!!!



「あぁあぁぁぁ!?」「きゃあぁ!!」「うわぁぁぁ!!」



 ブゥゥゥゥウウゥゥゥウウゥゥゥンンンン・・・・



「ぐっ・・・!!被害報告!!」


 自身直属の小隊の状況を確認する。


「被撃墜3!!健在9!!!」


「ぐっ!!散開!!小隊同士の連携を重視して!!絶対に固まらないで!!」


 指示を出しながらどうするべきかを考える暇もなく、部下が報告する。


 ブロロロロロロッッ!!



「6時の方向!!来ます!!!」


「私の小隊が囮になるわ!!2分隊は左右から挟撃!!!」


「「ハッ!!」」



 生き残った3小隊はそれぞれの役割を全うするべく散開する。


 しかし、一切の迷いなく灰色の鳥達は彼女の小隊めがけて接近していく。



「速すぎる!!すぐに追いつかれてしまう!!」


「隊長!!敵が・・!?」


「どうしたの!?」


「二番騎墜落!!」


「っ!三番騎!!付いて来て!!間違ってもぶつからないでね!!!」


「ハッ!!」



 彼女とその三番騎は不規則な機動を行いながら、魔法に当たらないように逃げ、チャンスを伺う。


 そして低空で鳥が後ろに付き、射撃体勢に入った時。



「今よ!!撃ち込んで!!!」


『『『『『『『空よ、風よ、今我が眼前に在る敵を貫け!!ウィンドランス!!』』』』』』』



 2つの小隊が左右後方から鳥に向かって魔法を放つが、鳥はまるで見えているかのように軽々と避け、当たるのは地面だけ。


「もう!!何であんなに速いのよ!?」


 後ろから魔法が放たれ、彼女は急激に進路を反転して鳥の上を取る。


 そこである事に気付く。



『?、何で?魔法が鳥の正面直線上にしか飛んでいない?』



 疑問に思い辺りを見渡すと全てあの鳥の前に入った者達に魔法が飛んでいた。



『・・・そうか!あれは正面にしか撃てないんだ!』



 それを伝えるべく通信魔具に魔力を込め、力一杯叫ぶ。



「あの魔法は直線にしか飛ばない!!!後ろに付かれないように飛んで!!!」


 《なるほど!了解!!》《ハッ!!》《そういう事か!!》


 各中隊長に通信を入れ、直属の部下にも同じ事を伝える。


「聞いたわね!?後ろに付かれないで!!あれは正面にしか飛ばない!!」


「「「「「「ハッ!!」」」」」」


 1つ明らかになった事実に喜ぶ暇もなく、確実に部下の数が減っている事に歯噛みする。


「隊長!!!危ない!!!」


「えっ・・!?」


 苛立ちを抑えようと注意がそれた彼女の横から鳥が飛来し、魔法を放つ。

 三番騎が隊長騎を庇うようにして入り、堕とされた。


「馬鹿!!私なんて庇わないで!!!」


「隊長が堕とされたら誰が指示を出すんですか・・・」


 笑いながら失速していく部下に、彼女は


「ごめん!恩にきる!!」


 しかし、現実は非情だ。


 またしても鳥達が襲いかかってくる。

 それを巧みな飛行技術で(かわ)しながら何か策は無いかと考えを巡らせる。


『ぐっ・・・逃げているだけでは全滅してしまう!何か!何か無いの!?』


「うわぁあぁあぁっ!!隊長!!」《申し訳・・ありません・・・》「あがっ!?」「いやっ!いやぁぁぁぁ!!!」


『ごめん!本当にごめん!こんな無能(おろかもの)を許して・・・』


 無残にも次々と撃墜されてゆく部下達に彼女は無茶を承知である行動に出る。


「こうなったら・・・!!」


「隊長!?無茶です!!やめて下さい!!」


「うるさい!もうこれしか無いの!!」


「しかし・・!!」


 頭に血が上り、冷静な判断が出来なくなった彼女は制止しようとする部下を振り切り、あえて鳥と正面からかち合うように進路を変える。


『空よ、風よ、今我が眼前に在る敵を貫け!!ウィンドランス!!』



 そして、鳥が撃つよりも先に魔法を放つ。

 真っ直ぐに鳥を捉え、風を纏った槍が突き進む。

 鳥は慌てた様に上昇して避けるが、槍が纏った風に煽られバランスを崩し、隣の鳥へとぶつかった。

 ぶつかった鳥同士は火を噴き、独特の悲鳴を上げながら墜落する。


「やった!!でも、どうして?直撃はしていないのに・・・」


 直撃していないはずの魔法で鳥を倒せた事に疑問を抱き、先ほどの光景を思い出す。


「あれは・・・・煽られた?そっか!!風よ!!風に弱いわ!!!」


 そして、彼女はすぐに正解へと辿り着く。


 《全騎士及び冒険者に告ぐ!!鳥は風に弱い!!繰り返す!!鳥は風に弱い!!鳥に魔法を当てる事は考えないで!!風をぶつけるの!!》


 通信魔具を使用し、弱点を伝えると地上や空で風魔法が連発される。

 確かに鳥は何羽かが堕ちる。



 しかし、それに気付くにはあまりにも遅すぎた。



 既に殆どが魔法の餌食となり、残った人員はごく僅か。

 懸命に魔法で対応するが意味を成しているようには見えない。


 更に、鳥達はすぐに弱点を見抜かれたとわかったらしく、固まって攻撃してくる事はなくなり、数羽が多方面から時間差で攻撃を仕掛けるようになった。

 それも、撃つと見せかけて魔法を撃たせると進路を反転し、後方や直上から別の鳥に襲わせたりなど。


「何で!?もうだめなの!?」


 決死の覚悟で見出した光明がすぐに閉ざされた事に絶望する。


「隊長!!!!直上!!!!」


「え・・?あ・・・・」


 またしても注意が逸れ、部下が撃墜した鳥が真っ直ぐ彼女めがけて落ちてくる。


『だめ・・!!間に合わない・・・!!!』


 すぐに進路を変更しようと手綱を引くが、鳥は目と鼻の先だ。


『私・・死ぬの・・・?』


 走馬灯のようにゆっくりと時間が流れ、戦闘で麻痺していた感覚が蘇る。


『嫌っ・・怖い・・・死にたくない・・・!!』


 想いは無意識のうちに口から零れ出る。


「嫌ぁっ!!死にたくないっ!!」



 ドガァァァァァアアァァァァンンン!!!



 そして、火を噴く鳥と共に彼女は爆炎に包まれた。


「隊長!?隊長ーーーー!!!!」


 部下の悲鳴が木霊する。



 そして、いつの間にか全ての鳥が攻撃を中止し、鳥の嘶きだけが空に響いていた。




作者「空中戦とか書くの難しすぎない?」


隊長「自分で選んだんだろうに。」


作者「間違いない・・・あ、それと『零戦が灰色』『シュトゥーカがカーキ色』『Fwが茶色と水色』の塗装です。」


あまりにも空白が多かった為に修正しました。

(2018/4/4 14:36)

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― 新着の感想 ―
[一言] AIM-7…出してくれないかな…
[一言] オーバーテクノロジーで世界を壊す者(笑)すなわち邪神?悪神?(笑)
2020/01/15 16:07 退会済み
管理
[一言] そっか。魔王や邪神になって世界を壊すのか。
2019/11/27 18:13 退会済み
管理
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