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正気

台詞パクリあります

ちょっとだけ変えてますが


今回に限った事でもありませんけどね笑



 


「さて、小便は済ませたか?神様へお祈りは?木陰でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」



 いつぞやの吸血鬼、或いは老練の執事の様な台詞を吐きながら残った三匹のマンティコアに向かって歩みを進める青年。



「まぁ、命乞いしたところで許さんけどな。」



 優しく微笑みながら歩く彼はマンティコア達にはどう映るのだろうか。


 悪鬼か、悪魔か、死神か、それとも・・・


 いずれにせよ、彼らにとってこれは死の宣告に等しいものに他ならない。



「第二幕のかいえ〜ん・・といきたいところなんやけど。さっき、ええ事思いついてん。」



 青年は三匹のマンティコアの前にしゃがみ込み、そう言うと


 マンティコアの内の一匹が恐怖のあまりに粗相をしてしまう。


 青年はそれを見てニコニコと微笑みながら口を開く。



「・・・・何、晒しとんじゃボケェ!!!」



 彼が立ち上がり、粗相をしたマンティコアの顔面を蹴り上げると



 ドッッパァァァァンン!!!



 鈍く弾ける音と共にマンティコアの顔面が消し飛んだ。


 首の無くなった胴体から噴水のように血が飛び出し、頭に含まれていた血潮が飛び散る。



「あーあぁーあー・・・死んでも汚ったないなぁ・・・・」



 青年が着ている服にもそれが飛び散り、彼の機嫌を一気に悪くさせる。



「とりあえず、さっき思いついた事で殺したるから覚悟してや?」



 ニッコリと笑う青年は準備を始める。



「丁度いい予行演習や。精々気張ってや!」



 青年はそう言うとマンティコアのリーダーであろう個体とは『別の』小さい方を何処かへ飛ばしてしまった。


 その様子に残されたマンティコアは驚き、ガタガタと震えながら青年を見る。


 その様子に、青年は



「ん?あぁ、さっきのゴミは人間の何処へ送って晒しもんにしたったよ?丁度近くに人間の野営地あるからなぁ。あ、苦しめ方は内緒やで?ただまぁ、今の奴が一番楽に死ねるんちゃうんかな?」



 悪戯っぽく笑う青年の口にする内容は全くもって笑えるものではない。



「人間のとこへ送ったんは・・まぁ、練習とメッセージも兼ねてやな。今頃、大騒ぎになってんで〜。」



 ククク、と笑いを押し殺す様に笑う彼。


 マンティコアは最早諦めた様で、『殺すならば殺せ。』と首元を差し出し


 青年はポカンとした顔でそれを見る。



「・・何諦めてんの?・・・・ハァ・・興が削がれた。やっぱ、お前も晒しモンになって死ね!さっきの五匹のゴミのヤツ全部詰め込んだるわ!!」



 そう言って青年はリーダー格のマンティコアも討伐隊の野営地の側へと送ってしまう。



 そうして、あまりにも呆気なく、唐突に、狂気の幕は閉じられた。




 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––




 ーその頃の野営地周辺ー



 日没が迫り、探索から帰還した者達がそれぞれ過ごしていた。



 いつもならば。



 しかし今日この日、野営地は混乱に陥っていた。



 突如として冒険者野営地の外れに現れたマンティコア。


 それに、呼応するようにして唸り声をあげながら飛来した四羽の謎の鳥達。


 たった1匹のマンティコアに群がったその鳥が凄まじい鳴き声をあげると、あっという間にマンティコアが絶命した事。


 その鳥は旋回しながらこちらの様子を伺っている。



「一体なんなんだ!今のは!?」「きゃぁあぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」「くそ!状況報告急げ!!」「総員!迎撃用意!!」「ダメです!ワイバーンが飛び立ちません!!」「なら、空に魔法でもなんでも撃ち込め!!!」「冒険者なめんな!!」「意地を見せろ!!」



 野営地に居た人々が口々に叫び、その鳥を迎撃せんとしたその時だった。




 ガァァアアアァァァアアアア!!!!!!




 またしても咆哮が木霊する。



「今度はなんだ!?」



 一人の男が叫ぶと別の男がある場所を指差した。



「お、おい・・・あれ・・・・。」


「なんだ・・よ・・・ひっ・・・・!」



 そこに居たのは、もう一頭のマンティコア。


 人々の間にどよめきが走る。


 それもそのはず、ソレは冒険者達の知るマンティコアとはかけ離れた外見をしていた。



「ガギァァアアアァァァァ!!!!ギギギィィィギャギィイイイイィィ!!!」



 苦しみの声をあげ、もがき苦しむソレ。


 人面の頭部は半分がドロドロに溶け、もう半分は無数の何かが皮膚を突き破っている。


 四肢は燃え、胴体は肉を削ぎ落とされながら、尻尾はねじ切れそうな程曲がり、口から何かを吐き出している。


 段々と体を削ぎ落とされ、筋肉が露出していくが、全く血が出ていない。



 その異常な光景に流石の冒険者達も戸惑いを隠せない。



「な、何だよ・・・あれ・・」


「・・・・・うっ・・・あたしちょっと休んでくるわ。」


「ああ・・そうした方がいい・・」



 冒険者の内、一人の女性が気分が悪くなった様ですぐにその場を離れる。


 それを見てハッ、とした冒険者の一人が大声で叫ぶ。



「おい!気の弱いヤツ!こういうのに慣れてない奴等!今すぐに此処から離れろ!!これは刺激が強すぎる!!!」



 騒ぎを聞きつけた騎士団の副団長も到着する。



「何があったの!!」



 その問いに冒険者が答える。



「わからん、ただいきなりマンティコアが現れたと思ったら、あの鳥が現れた。その次にアレが・・・」



 そう言って冒険者が指差した先に居たモノを見た彼女。



「何なのアレは!?警備兵!この周辺に異常は無かった!?」


「ハ、ハッ!有りませんでした!」


「くっ・・ならばどうして!・・・先程から伝わってくるあの気配が原因なの・・!?」



 報告を受けた彼女は独り呟きながら、考えを整理する。


 此処は森の入り口から2kmほど離れた場所に設置しており、更に周りは平原である。

 そんな中、突如として現れたこの魔物達はどこから?

 警備兵の目を掻い潜るにしても巨大なマンティコアがああも簡単にそんな事が出来るのか?

 そして、森から伝わってくる強烈な殺気と魔力。


 しかし、一向に答えが出てこず、今の状況を改善する事に重きを置く。



「総員!周辺警戒を怠らないで!帰還した戦空隊は上空より周囲を偵察!休みの人員も出して!警備兵は冒険者と連携して地上からの脅威に備える!!」



 矢継ぎ早に指示を出す。


 この状況にあって尚、混乱する事なく指示を出せるこの人物は優秀と言っても過言ではないだろう。


 彼女は更に指示を出す。



「それと、アレは刺激が強過ぎる!一刻も早く楽にしてあげて!」


「ハッ!」



 探索隊指揮官の指示で我に戻った騎士団員達の動きは早い。


 それぞれが役目を全うすべく動き始める。


 そして、マンティコアにもトドメを刺そうとした時だった。


 森より【矢】が飛来した。



「なっ・・・!?」



 ソレはマンティコアを貫き、一瞬で絶命させた。

 あまりにも突然の事態にまたしてもその場に居た全員が固まる。



「な、何なの?・・・これは一体・・・森・・から矢が・・・?」



 ハッ、とした指揮官は森の方へと視線を向ける。

 そこにはいつの間にかあの強大なまでの気配は消えており、空に居たはずの鳥達も姿を消していた。


 彼女の脳裏にとある言葉が浮かぶ。


 そして、それを口に出さずにはいられない。



「【深淵の狩人】・・・これは・・あなたが・・・?」



 まるでそれは自分達の未来を見せられたかの様な錯覚に陥る。



「ああ・・あなたは一体・・・何者なの・・・・?」



 この日、探索隊からは数名の脱落者が出たという。

 精神的ショックを受け、暫くの間は養生せざる得ない程に。




 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––




 《魔力の減衰を確認。安全制御機構(セーフティシステム)を再起動します。》



 マンティコアを野営地の外れに送り、ふと冷静になった俺は



「おぇぇぇぇぇぇ・・・・!・・ゲホッ・・!あぁ・・」



 木陰で吐いていた。


 それはもう驚くくらい。



「な、何だったんだ・・?今のは・・・・?」



 自分が自分では無くなった様な『あの感覚』。

 頭の中に粘りつく様に、こびりつく様に聞こえたあの『声』。



『殺セ・・殺セ・・コロセ・・コロセ・・』



 一体何だったんだ・・・?

 アレが聞こえてから俺は自分でもわかるくらいにおかしくなった。


 それに、あの『口調』だ。

 確かに俺は生まれ育ったのは関西圏だった。


 しかし、それは小学6年生までの話だ。


 中学からは諸事情により関西圏を出て、別の地方で住むことになった。

 しかし、そこでは関西弁はあまりにも言葉としてキツすぎた。

 だから、あんなにもしっかりと関西弁を使う機会など無かったのだ。


 なにより、俺はその関西弁を矯正したのだ。

 たまに、少し混ざる事もあったが基本的にはいつものこの口調が普段使うものとして定着していた。


 なのに、何故?何故、今更・・・?


 友人からは怒ると手がつけられないとは言われた事があったがアレほどまででは無かった。


 自分自身が知らなかった己の狂気じみたあの思考。


 怖い・・・怖い怖い・・・怖い・・・


 自分の中にナニカ底知れぬものが潜んでいる様な気がしてならない。


 まるで、『もう一人の自分』が居るのではないかとさえ、考えてしまう。



「グル・・・」「クゥン・・・」



 俺の様子に気付いたのかサティとフェルが気遣う様に側に来てくれた。



「ありがとうな、サティ、フェル。もう、全部終わったから・・安心していいぞ・・・?」



 俺は少しばかり無理をして微笑みかける。



「クゥ・・・」


「ん?なんだ・・あははっ・・・くすぐったいよフェル。」



 すると、フェルが俺の口元をペロペロと舐めてきた。



「こら、今舐めたらダメだぞ・・吐いちゃってるんだから・・・ダメだって・・・」



 言っても聞かないフェル、サティに止めて貰おうとそちらを見ると



「え・・ちょ・・・サティ・・お前もかよ・・・・」



 サティの顔が真近にあり、サティもまた俺の顔を舐めだした。



「あははっ・・・くすぐったいなぁ・・・本当に・・くすぐったいよ・・・」



 俺は二頭の頭を撫でながら座り込もうとするが



「あ、そうだ・・あのマンティコアを早く楽にしてあげないと・・・」



 俺は座るのをやめ、フェルとサティを止めてから《弓》をつがえ


 俺は小さな声で一言だけ



「ごめんな。」



 そう呟いて《弓》を放った。


 《弓》を放ち、マンティコアが死んだのを確認した俺はその場に座り込み、サティとフェルを撫でていた。


 あと、口もゆすいだ。

 流石に吐いた後に口の中に味が残っているのも辛い。



「なぁ、サティ、フェル。色々とごめんな?」



 謝りながら頭を撫でる俺に二頭は



「グウ・・」「ガウ・・・」



『気にしなくていい。』

 そんな風に唸り、俺の横に座りながら頭を俺に擦りつける。



「ッッ・・・!そうか・・お前らは優しいな・・・」



 俺は何となくそう言ってもらえた様な気がしてサティに体を預ける。



「あったかいなぁ・・・」



 サティの体は暖かく、とても安心できる。

 安堵していると、フェルが何故か悲しそうにこちらを見てくる。



「そんな顔すんなって、ほら、俺の隣においで?」



 苦笑しながら俺がそう言うとフェルは俺の側に来て腹に頭を乗せる。



「ははは、可愛いヤツめ。」



 その仕草に俺はフェルを撫でる。

 すると、フェルも気持ち良さそうに目を細めて



「クゥ・・・」



 と鳴いた。



「全く・・・一瞬でよくもまぁこんなに懐いたな・・・」



 前は明らかに嫌われていたはずのフェルにここまで懐かれるというのは何というか、すごく嬉しい。



「あぁー・・このままずっとこうしていたい・・・」



 俺はこの状況を満喫しながら、沈みゆく夕陽を眺めていた。




 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––




「さて、そろそろ帰るか。」



 しばらくまったりと過ごした俺は暗くなってきたので帰ることにした。



「それじゃ、またな。サティ、フェル。」



 俺が立ち上がり、帰るために声をかけたその時だった。



「・・・」



 フェルが俺の服を噛んで行かせまいと引っ張ってきた。



「どうした・・・・?」


「クゥン・・クゥ、クゥン・・・」



 服が千切れない程度に引っ張って鳴くフェルに戸惑う。


 そこで、何となく聞いてみた。



「一緒に来るか?」


「ガウ!!」



 連れて行って欲しかったようだ。


 それにしても、何ともまぁ元気な返事だろうとか。


 そこで、サティにも聞いてみる。



「サティ、どうする?お前も一緒に来るか?」



 俺が問うと、サティは黙って俺に頭を擦りつける。



「ええと・・・イエスって事かな?」



 ゴロゴロと音を鳴らしているので、そういう事なのかな?



「じゃあ、帰ろうか。我が家へ。」



 俺はサティとフェルにそう言って共に転移した。




作者「やっと、いつも通りの日常が書けるね!」


隊長「おい、探索隊はどうするんだ?」


作者「ちゃんと考えてあります。」


隊長「珍しいな。」


作者「酷くね?ていうか、主人公の口調やあの豹変ぶりにもちゃんと理由があるんだよ!

ある程度は考えて話作ってるよ!」


隊長「ある程度は、な?」


作者「・・・」(顔逸らす



野営地での女性指揮官の口調を訂正しました。

すみません、完全に別の人にしてました。笑

(2017/12/12 21:43)



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― 新着の感想 ―
[一言] 我狂気に飲まれた蛮勇なり(笑)
2020/01/15 16:01 退会済み
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