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残虐性


告知通り今回ちょっとグロいです

未成年喫煙の描写があります

苦手な方はブラウザバック推奨です(え


 


 森の中に1人の青年が佇んでいる。


 その青年はただただ笑っていた。


 普段の優しい笑い方であり、何も知らない人間が見れば機嫌が良くも見えるだろう。



 しかし、彼の事を知る人物がもしこの場に居れば必ずこう言うだろう。



 逃げろ、と



 何故か、聞けば必ずこう返ってくる事だろう。



 本気で怒っているからだ、と



 しかし、この場に彼の友人は誰一人として居らず。


 ましてや、その危険性を知る人物など

 この世界の何処にも存在しない。


 故に


 彼を止める


 彼から逃げる事を推奨する


 そんな事が出来る筈が無かった。


 故に


 今此処に


 狂気が幕を開けようとしていた。






「うちの連れが大分世話になったみたいやな。」



 青年はマンティコア達を見据えて話し出す。

 マンティコア達は逃げようともがいているが、拘束魔法がそれを(はば)む。



「なんや、そない遠慮せんでええんやで?ちゃんと礼を受け取って貰わんと。」



 青年が笑いながらそう言うがマンティコア達は恐慌状態に陥っている様でまるで聞こえていない。



「なぁ?聞いてる?なぁ、おいこらボケ。」



 聞こえていないのを承知で言葉を放つ。


 青年は相変わらず笑みを浮かべ



「・・・ま、ええわ。それよりさぁ・・・おどれら何してくれてん?連れが死にかけてたんやけど?アホみたいにボロボロになっててさぁ・・まるでボロ雑巾やで?あぁ、自然界は弱肉強食やしな、そこに口出しはせえへんし、異論もないわ。殺されても文句は言わんよ、しゃあないからな、ただ弱かったそれだけの話やろ。」



 しかし青年はピタ、と笑うのをやめて



「ただな?」



 鋭く刺す様な目つきで



「甚振って楽しむのは・・ちゃうやろ?」



 そう言って五匹のマンティコアに魔法を放った。


 魔法を放った後、青年はまたしても笑みを浮かべる。



「まずはサティが世話なった連中にお礼参りや。遠慮せんでええからな?存分に苦しめや。お前等がうちの連れに手ぇ出した事を後悔して逝け。ただ運が悪かっただけ、そう、お前等は単に運が悪かったんや。」



 ただただ優しげな笑みを浮かべながらマンティコア達に話しかける。




「だから、お前等のやり方で殺したるわ。」




 しかし、その優しげな表情とは裏腹に


 五匹のマンティコアにはそれぞれの苦しみが待っていた。



「それでは第一幕の開演でーす。」



 青年は戯けた口調で宣言し


 ソレは唐突に始まった



 一匹目のマンティコアが苦しみ出した次の瞬間


 全身の骨が急激に成長し、全身から尖った骨が内臓を突き刺し、肉を串刺しにして、皮を突き破り、針鼠の様な見た目へと変化を遂げる。


 脚部から螺旋状に伸び、胴体へと到達し肋骨から満遍なく、顔面の額からは角のように、尻尾の蛇は最早原型を留めていない程に骨が飛び出している。


 全身から骨が飛び出して真っ赤なオブジェと化したマンティコアは地面を転げ回るが、その時に折れた骨が突き刺さって更に状態を悪化させていく。


 骨はグジャグジャと生々しい音を立てて皮を突き破り、肉を抉る。



「ガギャアアギャギャアァァアァ!!!!」


「あはは!!!汚ったない声やなワレ!きっしょい見た目のお前さんによう似合っとるで?」



 青年は愉快なモノを見たと言わんばかりに笑い声をあげるが、その瞳は全く笑っていない。





 二匹目は急激に体が地面に落ちた。


 内側から毒で溶かされ、内臓がドロドロに溶け、内臓を口から吐き出し、胴体の骨や筋肉がグズグズに溶かされ、脚だけはそのままに胴体はブヨブヨの皮の塊と化してしまった。


 まるで蜘蛛の様な見た目だ。


 頭部と脚部だけは残っており、口から出るのは吐瀉(としゃ)物と悲鳴だけで瞳は虚ろである。



「ガギュ・・ッッガポッ!ギャ・・ガギギギ・・ギャ・・・」


「なんや、思ったよりインパクト無いなぁ・・・ただの水風船よりしょーもないわ。てか、あれや・・何か見た事あるなぁっておもうたらでっぷり太ったカオ◯シやん・・・・」



 青年は一転して冷めた目で吐き捨てる。





 三匹目も唐突だった


 突如として全身の血液が沸騰し、徐々に眼球が飛び出し始め、全身の血管とという血管が破裂し、その痛みにのたうち回る。



「ギャ!?ガギャアアァアァァァァアァ!?」


「お前さんの周りの大気圧ゼロになるまでゆっくり下がっていくで〜気ぃつけてやー。あ、でも息は出来るようにしといたったで?感謝してな?」



 ただし、お前さんも弄ったけどな、と青年はボソリと呟いた。


 本来、気圧を0にしたところで窒息死するのだが、色々とシュティに弄らせて死なない程度(・・)の酸素を肺に直接供給し、血液を電子レンジの要領で外部から加熱し、魔力で内部からの圧力を高めてやった。


 そしたらほら、アレの出来上がり。



「当分そのまま楽しんどき?」



 くくく、と笑いを堪えるように呟き、青年はソレから視線を外す。




 四匹目はチリチリとした空気が流れた時だった


 炎が四本の足下から出現し、ゆっくりと上に向かって燃え広がっていく。

 ただひたすらに燃やす、シンプルながらも責め苦として秀でたソレはマンティコアの全身を覆い尽くしていく。

 焦げた匂いが辺りに撒き散らしながらマンティコアは火を消し止めようと転げ回るが全く効果が無い。



「ガガガァァァァァァァァァ・・・!!?!?」



 叫び声をあげれば熱風となった空気が肺へと入り込み内側からも焼き焦がしてゆく。



「ほぉー・・・やっぱ焼き討ちって辛いんやねー。」



 青年は感心したようにソレを眺める。



「うーん、でも最初程のインパクトは無いなぁ・・・」



 しかし、興味が失せたようで、すぐに見るのをやめた。





 五匹目

 マンティコアの周囲を風が覆い尽くし、鎌鼬(かまいたち)のように全身を切り刻む。

 満遍なく行き渡る暴風の刃はマンティコアをゆっくりと削ぎ落としていくかの様に、苦痛を与える事こそ目的であるという事を理解しているように吹き荒れる。



「ガァッ!?・・・ガッッ・・・・!!?」



 何が起こっているのかわからないという様に恐怖と困惑に顔を歪めるマンティコア。



「おお!・・・ゲームで良くある風を使った技って実際は割と地味やけどエゲツないなぁ・・・これ。」



 マンティコアとは対照的に


 青年は一度まるで悪戯が成功した子どもの様な笑みを浮かべ、苦笑まじりにそう漏らした。



「叫びまくれへんあたり根性あるなぁ・・・」



 この場において全く意味をなさない事に関心を寄せながら。



 あたり一帯に五匹の悲鳴が、絶叫が、合唱となって響き渡る。


 阿鼻叫喚とした地獄の様な光景。


 この光景を見て『何故あの五匹が未だ尚生存しているのか。』という疑問が生まれるだろう。


 それは簡単な答えである。


 この青年があの魔法の中に治癒魔法を混ぜ込んだ事に起因(きいん)する。


 簡単に死なせない様に治癒し、致命的な損傷があれば即座に治す。


 傷が治ればすぐに傷ができる。


 それが無制限に繰り返される。


 解除出来るのは青年ただ一人。



 即ち、この青年は簡単に殺す気は無いのだ。


 普段の優しき青年の面影は一切無く


 此処に居るのは、ただひたすらに苦しめて殺す事のみを考え、それを実行に移す狂気を孕んだ人物だけ。



「・・・」



 青年は徐ろに煙草を取り出し



「・・フゥー・・・・」



 ライターがカチッ、という小気味の良い音を鳴らし、煙草に火をつける。



「あーあ・・せっかく禁煙しとったのに・・・・・・くそったれ・・」



 悪態を吐きながらも青年は紫煙を揺らしながら煙を吸い込む。


 何処からともなく取り出した椅子に腰掛け、のんびりとした様子で辺りを見回す。





「ガギギギァァァァ!!!」「ガボボッ・・・!!」「ガギッ・・!!ガギギギァァ!!」「ガアアアアッッッ!!!」「ガァッッッ・・・!!!」




 そこに広がるのは惨劇

 一瞬にして出来上がった地獄絵図



 未だに殺してもらえず苦しみに身を(むしば)まれる五匹のマンティコアを背景に青年は振り向き



「なぁ、お前さんらよ・・・どうや?これがお前らが犯した罪の代償やで?詰まる所、因果応報ってな。」



 残った三匹のマンティコアに笑いかける。


 しかし、その瞳は暗く鋭く酷く冷たかった。



「「「・・ッッ・・・・ッッッ・・!!」」」



 三匹のマンティコアはただその光景と青年の狂気に怯え、声すら出せない。



「・・・声も出えへんか・・・・・ま、ええわ。」



 青年は向き直り煙草片手に鼻歌を歌う。




 その様子を目の当たりにしているサティとフェルもまた戦慄していた。



 突如として自分達の前に現れたあの青年。


 なんの気まぐれか自分達を気に入り


 毎日食料を分け与えてくれたあの青年が。


 少しばかり馴れ馴れしくも優しく笑いながら自分達を撫でていたあの青年が


 これ程までに恐ろしく狂気的な一面を持っていた事


 その事に二頭は恐れ


 それ以上に己の幸運に感謝した。


 サティはあの青年を一目見た時から絶対的な力の差を感じ取っていた。


 それ故に彼女は彼に一切の抵抗を為さずして彼に(こうべ)を垂れた。


 幾度と無くフェルと名付けられた片割れの狼を引き止めた。


 フェルは未熟さ故に圧倒的過ぎるその力に抵抗の意を示したがサティに止められ、逆らう事をやめた。


 それ故に彼女は彼が気に食わなかった。

 彼に挑むべく向かおうとすると必ずサティに止められた。


 しかし、それが今となっては最善の判断だった事が嫌でも理解出来た。




 もし、彼の怒りを買えば自分達があの憐れなマンティコア達の様になっていたのかもしれないのだから。




 いつしか青年の煙草の火が根元まで近づき



「・・・なんや、もう無くなったんか・・・・」



 つまらない、とでも言いたげな表情を浮かべ

 またしても何処からとも無く取り出した灰皿に煙草を押し付けて火を消した。



 それを見た五匹のマンティコアは安堵の表情を浮かべるも



「なにわろとん?まだまだあるで?」



 青年は爽やかに絶望を突き付けた。


 マンティコア達は青年の思惑通りにこの世の終わりを見たような表情を浮かべ、先程以上の絶叫を披露する。



「サービスや、ちょいと痛覚弄らせてもらったから楽しさ二倍や。タダやから遠慮せんでええよ?」



 二本目の煙草に火をつけながら青年はそう言った。



「フゥー・・・ま、タダほど怖いもんは無いけどな・・・」



 地元では有名な文句を最後に付け足して。




 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––




 それから幾らばかりかの時間が過ぎ



「もうええか。」



 青年は一言呟くと椅子から立ち上がった。



「どーれーにーしーよーうーかーなー・・・」



 まるで、運に任せて景品を選ぶかの様な気安さで青年は最初に殺すマンティコアを選ぶ



「・・いーうーとーおーり。」



 そして、本当に雑に決めてしまった。



 最初に選ばれたのは三匹目のマンティコア。



 青年がほいっ、と掛け声をかけると



 更に熱量が増し、加熱された血液が気泡となり、全身の血液が蒸発したその時、全身が風船のように膨らんでいき


 やがて、限界まで膨らんだマンティコアは




 パァァンッッッッ!!!!




 乾いた破裂音が周囲に響いた。


 最早、血液が降り注ぐ事なく、乾いた肉片だけがパラパラと雪の様に空を舞う。



「汚ねぇ花火だ・・・」



 有名な台詞を吐きながら青年はそれを眺める。



「一度言ってみたかったんやけど、まさか本物が出来るとはな・・・」



 何故か少し感慨深く呟く青年



「さてと、お次はだぁ〜れ?」



 機嫌良さげに周囲を見回す青年


 しかし、またしても先ほどと同じ方法で決めてしまう。



 次に選ばれたのは五匹目のマンティコア。


 全身を隈なく削がれ、筋肉が露出し、皮が残っている部分を探す方が難しい状態となっていた。



「そんじゃね〜」



 青年は特に何も思わないらしく

 さっさと始末するべく魔力を込める。



 鎌鼬が強力なものとなり尻尾の蛇を切り落とし、腹を裂き、内臓がぼたぼたとこぼれ落ち、四肢を纏めて切断し、最後に首を刈り取った。



「うわぁ・・・汚ったな・・・」



 的の外れた感想を漏らす。


 そして、三番目に選ばれたのは二匹目のマンティコア。


 毒を強化して更に強力なものへと変える。

 煙を出しながらマンティコアはドロドロと溶けてゆき、最後に人面の頭部だけが残り、溶けた胴体の中へと沈んでいく。



「ガァ・・・グガァァ・・・・・・」



 やがて、完全な液体へと変わり果てたマンティコアだったモノは最後には燃えて無くなってしまった。



「あちゃー・・酸化しすぎて発火したかな?」



 青年もこれは予想外だった様で良いものが見れたと更に機嫌が良くなった。



 四番目に選ばれたのは一匹目のマンティコア。


 直線上に伸びていた骨から枝分かれし、ねずみ算式に増殖する。

 やがてその骨は丸くなり、赤と白の球状の塊となった。


 グジャッッ!!!グジュグジャ!グジャグジュジュ・・・



「ゴァァァァ!!!ゴゴギッッ!!」



 骨が中でマンティコアを貫く音と共に曇った金切り声が響く。


 その中から聞こえる声はやがて小さくなり

 


「ゴアアアア!!!ゴギアァァアア・・・・ァァァァ・・・・・ゴァ・・・」



 やがて完全に沈黙した。



「あはははははは!!!!これは傑作やわ!見た目完全に揺り籠やんけ!!・・ぷっ・・ククッ!あははは!!」



 正に抱腹絶倒と言わんばかりの爆笑っぷりである。


 一体何が面白いのか理解し難いが青年はおそらくこの日一番声を出して笑ったであろう。



「クククッ・・・!はぁ・・はぁ・・はぁー、しんどい。笑い過ぎたわ・・・」



 非常にスッキリした顔で残った一匹に向き直る青年。



 最後に選ばれたのは四匹目のマンティコア。



「ほな、第一幕最後のトリ頑張ってや。」



 青年が魔力を込め直すと


 炎が激しく勢いを増し、熱風が吹き荒れる中心でのたうち回るマンティコア。

 炎はいつしか青い焔へと変わり、幻想的な蒼焔の玉となった。



「おぉー・・・最後を飾るには相応しいなぁ・・・結構綺麗やん。」



 めっちゃクサいけど、などと余計な一言を漏らす。


 やがて、燃え盛るマンティコアは塵となって霧散した。



Dust to(塵は) dust(塵に),ashes to(灰は) ashes(灰に)



 青年は低く冷たい声色で呟き



「第一幕これにて終演。」



 くるっ、と踵を返し


 残った三匹に向かって(おど)けた態度でお辞儀する。




「さて、次はお前らやで?覚悟しぃや?」




 顔を上げながら黒い笑みを浮かべる青年


 狂気の幕は未だ降りない。


 狂った青年は


 たった二頭のお気に入りの()の為に動く


 (イカ)れる彼の舞台は続く。





作者「思ったより長くなってしまった!」


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