改変
気が付けばテスト一週間前に・・・
更新頻度落ちます・・・・
え?落ちるほど早くない?知ってる
全速力で家に帰ってきた俺は勝手に家上がり込んでコーヒーを啜っているラウを見つけ
「助けて〜〜ラウえもーん!」
どこぞのメガネ少年の如くラウに抱きついた。
「えっ!?ちょっといきなりどうしたの!?おにーさん!大丈夫!?」
割と本気で心配された。
勢いでやって見たものの、中々に恥ずかしかったのですぐに離れる。絵面的にもかなりマズイ状況だしな。
18歳の青年が見た目15歳の少女に抱きついている構図だ。ハッキリ言ってヤバいやつ。
「すまん。ノリでやってみただけだ。」
「ノリ?」
「あー・・・まぁ、勢いでって事だ。」
「ふーん、そうなんだ。でも、結構びっくりしたよ?」
「それに関しては本当にすまん。」
本気で心配されるとは思ってなかったので『少し気恥ずかしい』というのが本音だ。
俺が黙っているとラウが
「それで?何かあったの?」
会話のきっかけをくれた。
「ああ、実はな・・・」
そして俺はラウに先の経緯を説明した。
全て説明し終えるとラウは下を向き、ため息をついてから不意に顔を上げ
「・・・おにーさん?」
「な、なんでしょうか?」
「もういっそ全部あの弓で片付けてきたら?」
笑顔で恐ろしい事を口にした。
「いや、あの・・ラウさん?そうしない為に俺は貴女を頼ったんだよ?ちょーっと短絡的じゃありませんか?」
すると、ラウは不満気に頰を膨らませ
「じゃあ、おにーさんはどうしたいの?」
一応は俺の要望を聞いてくれるらしい。
「出来れば穏便に済ませたいです。それか諦めるまでジッとしてる。」
俺がそう答えるとラウは少し考え込んでから
「うーん・・・穏便に済ませられるかどうかはおにーさん次第だけどー。待ってても討伐隊は帰らないと思うよ?」
「え、マジで?」
「うん、マジで。だって、おにーさんスキルで魔力量抑えてて私と同格だよ?人間からしたら十分に脅威だよ。」
「そっか。」
そうだった、完全に忘れていた・・・
ていうか、その脅威たる対象になりうるラウって・・・
あ、忘れてたと言えばもう一つ
「そういえばその事なんだが、何とか魔力量を誤魔化せないかな?魔力量を抑えるのは良いんだけどそれを感知されたら意味ないから誤魔化すしかないと思ってな。」
「うん?そんな事?それなら出来るよー。」
「本当か!流石ラウ!頼りになる〜!」
ちょっと調子良く煽ててみると
「煽たって何も出ないよ?おにーさん♪」
頬を緩めながら機嫌良さそうにそう答えた。
ヤダッ・・この子チョロい・・・?
そんな事を考えていた矢先にラウが
「でも、おにーさんは出来ないと思うよ?」
「え?そうなの?」
「うん。」
持ち上げて落とされた。
きっとバチが当たったんだ・・・あんな失礼な事考えるから。
「ちなみに、理由をお伺いしても?」
「いいけど、何でそんなに丁寧に聞くの?」
不思議そうに首を傾げるラウ。失礼な事を考えたからなんて言えない。
「ああ、すまん。癖だ。」
「ふーん、変なのー。」
「悪かったな変で。」
嘘は言ってない。丁寧に聞くのは本当に俺の癖だし。
ラウのセンサーにも引っかからなかったのがいい証左だ。
そして、2人でソファに座りなおしてラウから話を聞く。
コーヒーも忘れない。
「えーっとねー、スキルで〈隠蔽〉っていうのがあるんだけど。人間はそれを使うの。」
「ああ、スキルか。」
俺はコーヒー片手に聞いている。
「でも、おにーさんに人間用のなんて使っても意味ないと思うよ?」
「どうしてだ?」
「理由は単純に、おにーさんみたいな存在がが使うようには出来てないから。私が使えないのが良い証拠だね。」
「そうだったのか・・・」
「うん。力が大き過ぎて隠し切れないみたい。」
「そっか・・・」
スキルとはいっても万能じゃないのか・・・というか、前に見たスキルは必要無しと判断ってそういう事だったのか。
使わなくていいんじゃなくて使えないのね・・・
俺が軽く凹んでいるとラウはコーヒーカップを置いてから、こちらに身を乗り出し
「でも!そんなおにーさんに朗報だよ!」
「何か別の手があるのか?」
俺が聞き返すとラウは呆れたように
「おにーさん本気で言ってるの?」
「・・・?本気だが?」
「はぁ・・・おにーさんってちょっと抜けてるよね。」
なんかディスられた。
するとラウは物凄い笑顔で
「ほら!おにーさんにはとっておきの手段があるよ!」
?
そうは言っても本気で心当たりがない・・・
「すまん、ラウ。わからん。」
俺がそういうとラウはスッとソファに座りなおしてコーヒーをすすりながら言う。
「・・・それじゃあヒントね。一つ目、スキル。」
「えっと、それが出来ないから言ってるんだけど?」
ラウは何を言いたいんだ?疑問が疑問を呼び、混乱してくる。
しかし、ラウは気にせず続ける。
「二つ目、おにーさんしか出来ない事。」
俺にしか出来ない事・・・
スキル・・・・・・・俺にしか出来ない事・・・・・スキル・・・俺にしか出来ない事・・・・
「・・・あっ・・・・」
俺が声を上げるとラウは、にぱっと笑い
「わかった?」
と一言。
その一言に俺は
「ああ、わかったよ。確かにラウが呆れるのも無理はないな。」
俺は苦笑しながら阿呆な自身に呆れる。俺専用のスキルがある事をすっかり忘れていたのだ。
そう《固有スキル》の《全知全能》である。
スキルがないなら創ればいいじゃない。
と、思ったのだが
「ちょっと待てよ・・・?」
「ん?どうしたの?おにーさん。」
「ああ、ちょっとな。」
別の疑問も生まれたのだ。
それは
創る事が可能ならばそれを改変する事も可能なのではないか?
つまり、既存のスキルに副次的な効果を発揮できるようにするという事だ。
一度スキルを見てみよう。
「ラウ、ちょっと待っててくれ。」
「うん、わかったー。」
俺はスキル欄をチェックすると
《全知全能》
祖たる術を自在に操る。また、創る事も可能
と前と同じように出ていた。
この自在に操るというのはかなり定義が曖昧だ。
もし、自在に操る事の中に改変する事も含まれていたとしたら?
可能性が出てきた事に頬を緩ませながら俺はそれを実行する為に行動に出る。
「スキル発動。」
俺がそう唱えるとスキルが展開され、俺は望む事を口にする。
「《安全制御》改変」
《スキルの改変を了承》
よし!上手くいった!
《安全制御機構への追加プログラムを構築します》
《追加プログラム要素を提示》
今回も自動的に創ってくれるのかと思ったが、案を提示してくれた。
前にはなかった事だ。
俺はとりあえずそれを確認する。
「どれどれ・・・なるほど・・・・よし、これでいこう。」
《承認を了承》
《追加プログラム構築開始・・・完了》
《安全制御機構へ追加プログラムの統合の為、スキルの解除を要請》
「え、マジでか。」
まさかスキルの解除要請が出てくるとはな。
当たり前と言えば当たり前か。
動かしたまま作り変えるとか無理があるもんな。
仕方ない、ここは一度解除しよう。
その為には一つやる事がある。
「なぁ、ラウ。」
「なーに?おにーさん。」
ビスケットを齧っていたらしいラウは手で皿を作りながらこちらを向く
「いきなりで悪いんだがちょっと席を外してくれるか?」
「えー?どうしてー?」
ラウが不満気に答えるので説明する。
「それがな、新しくスキルに追加要素を加えようとしたんだが、そうするには一回スキルを解除しなきゃいけないみたいでな。」
「あーそういう事なの。別にいいよー?私気にしないし、ちょっとくらい辛くても我慢するよ?」
「いや流石に駄目だろ・・元々ラウに無理させない為に創ったんだから。それに、女の子に無理させるのは俺の気分が良くない。」
「・・・そう言われるとなんか嬉しいな。」
何とも呑気な事だ。しかし、事実なので無理はして欲しくない。
それと、照れられても困るぞ。
「うん、わかった。おにーさんが私の為を思っての事なら仕方ないなー。」
「おう、助かるよ。」
「じゃあ、またスキルが出来たら戻ってくるね?」
「ああ、すまんな。」
「いいよー別にー。」
そう言ってラウはその場で姿を消した。
「そんな事出来たんかい・・・」
そういえばラウって精霊だったな。精霊なら納得か。
俺と初めて会った時も何もない所からいきなり出てきたもんな。
俺はそんな事を考えながらスキルの改変に戻る。
「安全制御解除。」
すると、久々に魔力量の発生量が元に戻った。
「力が湧いてくるようで少し面白いな。」
などと自分も呑気な事を考える。
《安全制御の解除を確認》
《安全制御機構へ追加プログラムの統合を開始・・・完了》
《安全制御機構の更新完了》
《安全制御機構を再起動します》
そして、また魔力の発生量が制限されていき完全にスキルが発動した。
「うーん・・・体感的には全く違いがわからんな・・スキル欄をチェックしてみるか。」
スキル欄をチェックするとこんな感じになっていた。
《安全制御機構》
・三段階に分けて魔力量を制限及び制限解除段階の変更
基本制限解除段階
一段階目解除で35%まで解放
二段階目解除で75%まで解放
三段階目解除で100%解放
現段階魔力解放率10%
・余剰魔力の貯蓄
・全段階緊急解除可能
・魔力量秘匿
・ステータス秘匿及び偽装
と、いうわけで変更点を整理しよう。
まず一つ目
・三段階に分けて魔力量を制限及び制限解除段階の変更
魔力制限量の段階を任意のパーセンテージで決める事が出来る様になった。
例えば、一段階目解除で35%まで解放されるところを20%まで引き下げたり、逆に40%まで引き上げる事が可能になった。
さらに、段階を増やしたり減らしたりする事も可能になっている。
今の三段階を四段階にしたり、二段階にしたりと変更出来る。
次に二つ目
これが今回のメインだ。
・魔力量秘匿
身に纏う魔力を制限或いは完全に秘匿する
simple is best!
素晴らしい!これこそ、今回俺が求めていたモノだ。
これがあればもはや怖いものはない!
この効果を使えば空を飛ぶ時は姿を見られない限りバレないし、街に行きたければ普通の人になりきれる!
・・・言ってて少し悲しくなってきた。
完全に無意識に自虐していた事に気付いてしまったからだ。
気をとりなおして三つ目
・ステータス秘匿及び偽装
ステータスを完全に秘匿或いは任意の値で偽装が可能
これに関してはいつか必要になるだろう。今のところ必要性はあまりない気もするが。
あとは、スキル名がちょっと変わった事くらいかな。
地味に完成した感じがするのは気のせいかな?前は《安全制御》だったし。
確認が終わるとそれを見計らった様にラウが戻って来た。
「おにーさん、終わったー?」
「ああ、終わったぞー。」
「何にも変わってないように思えるけど、ちゃんと出来たの?」
「ああ、一応な。ちょっとやってみるわ。」
「わかったー。」
俺はスキルの中の魔力量秘匿を起動させる。
イメージとしてはスイッチをONにする感じだ。
すると効果はすぐに現れた様だ。
「あ、おにーさんから感じる魔力がなくなった!凄い!どうやったの?」
無事に魔力を隠す事が出来るようになったようである
そして、俺はラウの質問に答える。
「前に創ったスキルを弄って別のスキルに創り変えた。」
「えっ・・・・」
俺が答えるとラウは口を開いたまま静止する。
「どうした?」
「・・・え?あ、いや・・なんでもないよ?ただ、スキルを創るだけでもおかしいのにスキルを創り変えちゃうその発想に驚いただけ。」
「そうか?」
俺が聞き返すとラウはがっくりと肩を落として
「うん。普通はスキルの内容を変えようなんて考えないし、思い付かないと思うよ?例え思い付いたところでどうにもならないだろうし。」
ふふふ、と乾いた笑いをあげるラウ。
「あー、こっちの世界ではそんなもんなのか。」
「そういえば、おにーさん異世界の人だったね・・・」
ラノベとかでよくある展開なので結構簡単に思い付いたけど、普通はそんな事を考えないのか。
固定観念とか先入観からスキルは絶対的なモノとされているのか?
・・・ま、いっか。結果良ければ全て良し。
え?違う?気にすんな。
「さて、こんな事してたらもう昼過ぎてるなぁ・・・腹へった。飯食うか。」
「おにーさんは知らないと思うけど今私の中の常識がまた一つ崩れた瞬間だったよ・・・」
「そうか。」
「うん・・・」
ソレハワルイコトシタナー
ハンセイシテルヨー
全く反省などしていないが心の中で申し訳程度に思っておく。
そして2人で昼食を摂る事にした。
ちなみに俺の昼食のメニューは唐揚げ定食である。
ボリュームたっぷりでサラダや味噌汁などのバランスのとれた内容となっている。
ラウにはイタリアンを提供した。
魚のムニエルやサラダにポタージュスープなどをちょっと少なめの量にしてある。
あんまり多いと食べ切れないらしい。
魔力を使ってご飯が出てくる事の意味がわからないが気にしない事にする。
スキル《全知全能》万歳である。
「しかし、この唐揚げ美味いな。片栗粉で揚げてある俺の好きなやつだ。」
ちなみに白い唐揚げで塩味のシンプルなやつだ。
「おにーさん、私にも一個ちょーだい。」
「おう、いいぞ。皿から好きなのとってくれ。」
「ありがとー。あむ・・・あ、ほんとだ!美味しい!」
「だろ?」
「うん!でも、この魚も柔らかくて美味しいよ!」
「それは重畳。」
俺が作った訳じゃないけどな。
でも、やっぱ一人で食うより二人で食った方が美味しく感じるもんだな。
そんなこんなで食事を楽しんでいるとリビングの窓越しにサティとフェルが見えた。
「ん?サティとフェル?」
「・・・んぐっ・・あ、本当だ。おにーさん今日お肉あげなかったの?」
「いや、既にあげた筈なんだが・・・」
何時もと同じ量をあげたしな。
「じゃあ何でだろうね?」
「さぁな、取り敢えず窓開けるか。」
そう言って俺は立ち上がり大画面の窓を開ける。
・・・普通このサイズの窓って開かないよね?壁一面分の窓だよ?まぁ、いいや。
些事と判断した俺は外にいる二頭に声をかける。
「よぉ、サティ、フェルどうした?」
俺が声をかけるとサティとフェルは何故か俺の匂いを嗅ぎ始めた。
「?どした?」
しかし、二頭は答える事なく匂いを嗅ぎ続けやがて満足したのかそのまま立ち去った。
「何だったんだ?」
俺は二頭の謎の行動に戸惑いを隠せない。
すると、後ろから
「あ!そういえば、おにーさん魔力消したからあの二頭がおにーさんが居なくなったと思ったんじゃない?」
と、ラウが仮説を立てた。
「あーそれだと納得出来るかな?でも、それって少しは俺の事気にしてくれてるって事で良いんだよな?」
俺は勝手にあの二頭を家族認定しているので、そうであればかなり嬉しいのだが。
「どうだろう?でも、来たって事はそうなんじゃない?」
「・・・」
ラウの言葉に俺は無言でガッツポーズした。
あの野生の二頭が気にしてくれるくらいの存在にはなったという事だ。動物好きにはたまらない。
「あはは、おにーさん嬉しそうだねー。」
「まぁな。」
ラウに茶化されながら、俺はとても良い気分で昼食へと戻っていった。
後に、このスキルが原因で俺が大激怒する事になるとも知らずに
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
ー夜ー
世界樹の樹上に一人の少女が座っていた。
だが、少女の見つめる先
そこに星空は無くただ雲が広がっているだけだった。
「ねぇ–––––。今日はね、またおにーさんが凄い事をしたんだよ?何だと思う?」
しかし、少女は前のように哀愁漂う雰囲気ではなく
楽しげな雰囲気であった。
「それはね?スキルを創り変えちゃったんだ。凄いよね、普通そんな事思い付かないもん。それでね、そのスキルを創り変える時に私に向けて『女の子に無理はさせたくない。』だって。笑っちゃうよね・・・誰にもそんな事言われた事なかったよ・・・・『スキルも元々はラウの為に創ったんだ。』だって・・・そんな私の為に何かをしてくれる人なんて初めてだよ?嬉しかったなぁ・・・」
少女はどこか恍惚とした様子で語る。
だが、それは一転して表情が陰り
「おにーさんなら私を受け入れてくれるのかな・・・・・?」
不安げな瞳が曇る夜空を見つめていた。
「あーあ・・・私おにーさんに嫌われたくないなぁ・・・・もう・・おにーさんのバカ・・・」
少女は己の過去を思い出し、あの青年にそれを告げる日が来るかもしれない事に怯える。
「流石におにーさんでも・・・ううん、おにーさんならきっとわかってくれる・・・」
少女はまた孤独へと追いやられる恐怖を感じ、それを振り払うようにして己の願望を口にする。
「ああ・・・怖いなぁ・・・」
もう少しだけ、そんな思いが頭をよぎり
今宵もまた夜は更けてゆく。
作者「もう少し!もう少しで書きたい話が書けるんだ!」
《《《《期末テスト》》》》
作者「畜生!!!!」
少々修正致しました(2017/11/28 7:38)
一部修正を行いました。
(2017/12/29 21:20)