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閑話【深淵の狩人】

頑張って短時間で書いたよ!

褒めて!

はい、ごめんなさい

ちょっと書きたくなったので書きました

 




 リンドブルム騎士団戦空隊が出発する数日前

 冒険者ギルドの酒場にて



 とあるパーティーが食事をしながら話し合いをしていた。


「なぁ、どうする?」


「・・どうするとは何をだ?」


 一人の男の質問に別の男が聞き返し、それに答える。


「そりゃあ、あの森の調査に参加するかどうかについてだよ。」


 今度は別の人物が反応した。



「私は気になるです。」


「あら、貴女あんな噂信じてるの?」


「あんな噂が流れたら普通気にならないです?」


「そりゃあ、興味は湧くわよ。でも、信じるかどうかは別の問題よ。」


「でもでも、結構な人達が助けられてるらしいです?」


 噂話にかなりの食いつきを見せる女は首を傾げながら食事を口に運ぶ。


「まぁ、確かになぁ・・・うちの領主様の娘さんも助けられてるらしいしな。」


「・・・俺達が世話になっている商人もだ。」


「そういやなんか言ってたな・・・」


 ぽりぽりと頭をかき、酒を煽る。

 一行は森の調査からとある噂の話へと移り変わる。


「にしても眉唾物よねぇー?あの森よ?なんだったかしら?あの森の名前。」


「・・・【深淵の森】。」


「あ、そうそう。それよ、ありがと。」


「・・・構わない。」


「その【深淵の森】から矢が飛んでくるなんてねぇ?」


 女がにわかに信じ難いといった様子で発言する。


「だが、そうやって助けられた奴も多くいるのも事実だ。この二週間程でだ。うちのルーキーも助けられたって話だ。」


「あのお馬鹿さんの事です?」


「・・・貴女って意外と毒吐くわね。」


「事実を言っているだけなのです。」


「まぁ、そうなんだろうけど・・・」


「・・・話の整理を。」


「おう、そうだな。んじゃあ、まず噂の話からだ。」



 曰く、森には何かがいる。


 曰く、それは莫大な魔力量を持つ。


 曰く、それはこちらを常に見ている。


 曰く、危機が迫れば矢が飛来し助けてくれる。


 曰く、それは森の中心から飛んでくる。


 曰く、それは何人(なんぴと)たりとも殺さない。


 曰く、それは魔獣でさえ殺さない。



「こんな感じだな。」


「で?ついたあだ名が?」


「・・・【深淵の狩人】。」


「カッコいいです!」


 4人は見事な掛け合いを行う。



「おいおい・・・本気で言ってんのか?」


「本気も本気です!」


「あたしはイマイチピンとこないわねぇ・・・」


「どうしてです!?カッコいいじゃないですか?どうして姿も見せずただ助けるその姿勢にグッとこないです!?」


「うーん、そういうものなの?」


「そういうものなのです!」


 和気藹々と話が脱線しかけた時、無口な男が口を開いた。


「・・・一部では『あの御方』ではないかという話だ。」


「「「・・・・ッ!」」」



 全員が一斉に口を(つぐ)んだ。


「それは・・・ないだろうな。」


「はいです。私も同じ意見です。」


「そうね。」


「・・・ああ、わかっている。ただ、そういう意見もあるというだけだ。」


「あの場所は確かに『あの御方』がいらっしゃいます。でも・・・」


 女はグッと唇を噛み締め、途中で声が途切れてしまう

 そこにもう1人の女が


  「やめなさい。その事は私達がどうこうしたところでどうにもならないわ。」


 先の男が再び口を開く



「・・・我々人族の罪だ。あの地は約束の地であり、罪咎(ざいきゅう)の地である。本来ならば人族は隔絶されてもおかしくなかった。だが、『あの御方』が全てを背負って下さったお陰で我々はこうしていられる。」


「「「・・・・・」」」



 重い空気が4人を包む。



 それもそのはず

 あの森はかつての和平の地であり、決別の地でもある

 歴史的惨劇の起こった悲しき場所。

 何者も寄せ付ぬ森へと姿を変えてしまった。



 すると、別の男が唐突に問うた。



「・・・そういや、何であの森が【深淵の森】って呼ばれるようになったか知ってるか?」


「・・・知っている。」


「私は知らないです。」


「言われてみれば、あたしも知らないわね。」


「そうか。なら、良い機会だから教えてやろう。あの森は三層に分けて呼ばれているのは知ってるよな?」


「はい。」「ええ。」


「理由はそれだよ。」


「はい?」「・・・どういう事よ?」


 漠然としたその答えに2人の女は戸惑いを隠せない。

 疑問に疑問が重なっていく。


「安心しろ。今からちゃんと説明するから。」


「はいです。」「ええ、お願い。」


 2人は男の方へと向き直る。


「まず、あの森は〈外層〉〈中層〉〈深層〉の三つに分かれる。

 〈外層〉が森の入り口から50kmまで

 〈中層〉が51kmから150kmまで

 〈深層〉が151kmから世界樹つまり森の中心まで

 ってのはわかってるよな?」


 2人は黙って頷く。


「まず、〈外層〉は魔獣も比較的弱く、木々も疎らでそれなりに広い。

 んで、〈中層〉は奥に進むにつれ段々と木々が生い茂り、視界と足場が悪くなってくる。ついでに、魔獣も強くなっていくオマケ付きだ。

 最後に、〈深層〉なんだが・・・」



 チラッと男は黙っている男の方を見る。


「どうしたの?」


 言葉が詰まった男に女が問う。


「いや、〈深層〉は俺も行ったことがなくてな?こっちはそいつの方が詳しい筈だ。」


 そう言ってもう1人の男を指差した。


「・・・・・」


 男は腕を組んで黙っていたが、やがて


「・・・わかった。」


 男が了承した。



「すまん。」


「・・・いや、いい。」



 話を振った男が申し訳なさそうに謝る。


 そして、男がただならぬ雰囲気で口を開いた。


「これは、俺が一度だけ別のパーティーで〈深層〉まで行った時の話だ。」


 男の雰囲気に呑まれ2人の女は固唾を飲んで聞く姿勢になる。



「あの森の〈中層〉を抜けた時、そこは一気に開けた。

 生い茂っていた草花がかなり減っていた。

 だが、そこは酷く暗かった。

 木々が高くまで生え、その枝葉が太陽の光を遮り、まるでその場所だけが夜の様になっていた。

 それまでの道も薄暗かったが〈深層〉程ではなかった。

 ただ、風が吹き抜けていたのを覚えている。」



 そこで男は言葉を切り、水を一口飲む。

 そしてゆっくりと再び語り出した。



「その時、俺のいたパーティーは5人だった。

 前衛・遊撃・後衛が1人ずつと支援2人の構成だった。

 だが、気がつくと俺と支援役の1人しかいなかった。

 疑問に思いながらも他の3人と合流しようと歩き始めたその矢先だった。

 何かを踏んだ事に気がついた俺とそいつは暗い足元にしゃがんでみると・・・」



 ごくり、と生唾を飲み込む2人

 男は震える手を抑えながら絞り出す様にして言った。



「はぐれたと思っていたパーティーの奴らが足元で死んでいた・・・・」


「「・・・・!?」」



 絶句する2人に男は続ける。



「死んだことにすら気付いていない様な顔をしていた。

 鋭利な刃物で切断された様にスッパリと首を()ねられているようだった。

 そして、俺が顔を上げるとヤツはそこに居た・・・真紅に染まった紅い眼を持つナニカが・・・これは後でわかった事だが、あれはサーベルティーガーらしい。」


 すると、女の1人が疑問を口にする。


「サーベルティーガーは茶色じゃなかったです?まさか・・・」


 その疑問に男は答える。



「いや、あれは特異個体だ。紅いのはそのせいだろう。眼と全身が(くれない)に染まっていた。」


「とくいこたい?」


 首を傾げる女。

 すると、もう1人が反応を示した。


「なっ!?特異個体ですって!?」


「・・・ああ。」


「何か知ってるです?」


「知ってるも何も超希少なのよ!何らかの原因で起こるんだけど、それは通常よりも魔力が多くて強い個体になるのよ!それに、危険度も跳ね上がるわ!」


 はぁはぁ、と息を切らして熱弁する女は続けて


「特異個体ならどんな能力を持っているかは未知数よ!それなら納得もいくわ!」


「・・・続けていいか?」


「え?あぁ、ごめんなさい。続けて。」


「・・・わかった。」


 男は若干頬を引攣らせながらも話を続ける。


「目が合った瞬間、俺とそいつは一目散に逃げ出した。

 アレはヤバイ。そう直感が働いた。

 だが幸いにも、ヤツが追ってくる事はなかった。

 もし、追いかけられていたら俺達は死んでいただろう。

 あいつと俺は一緒に逃げ出してから絶対に離れない様にしながら何日も森を彷徨った。

 そして、別のパーティーに発見され今ここに居る。


 そして、あの森の名の由来は〈深層〉より奥は闇のように暗く、そこへ行ったパーティーは必ず死者を出して帰ってくるか全滅する事からそう名付けられた。」



 男が語り終えると、ここに居ないであろうもう1人の事が気になった女が男に問う。



「?もう1人の方はどうされたのです?」


「・・・冒険者は辞めて俺の嫁だ。」


「「えっ!?結婚してたの(です)!?」」



 2人が同時に同じ反応を返した。

 そこに別の男が笑いながら



「そりゃあ、仲間が死んで何日も一緒に森を彷徨う過酷な状況で恋仲になるなって言う方が無理だろ。」


「た、たしかにです・・・」


「そうね・・・にしても、貴方よく心折れなかったわね?あたしなら心折れると思うんだけど。」


 ふと思った疑問を口にすると


「・・・仲間は大切だという事だ。」


「ああ、なるほど。よくわかったわ。」


 少しぼかして答えられたその意図に気付いた女は即座に切り上げる。


「そうです!仲間は大切です!」


「「「・・・・・」」」


「え?皆さん黙ってどうしたです?」


「いえ、何でもないわ。」


「若いっていいな。」


「・・・ああ。」



 若干一名わかっていない者もいるようだが・・・暖かな目で見守られながらその日はお開きとなった。







「で?結局どうするのよ?」


「ん?あぁ、調査行くぞ?」


「そうなんです?」


「・・・・」


「ああ。」


「結構あっさり決めるのね?」


「さっさと決められなかったから今決めたんだろ?」


「・・・違いない」


「それもそうね。」「はいです!」



 彼らが【深淵の狩人】に出会う事になるのはもう少し後の事である。





御指摘頂きました点を修正致しました

(2017/12/7 21:38)

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