翼
遅れ馳せながら
ポイント・ブックマーク評価
誠に有難う御座います
とても励みになります故、これからも気が向けばで構いませんので評価して頂ければと思う所存に御座います。
この様に拙くはありますが、此れからもこの作品を読んで頂ければ幸いに御座います。
ピクニックから二週間が経った頃、自宅で空を眺めていた俺はふと立ち上がった。
「空がっ・・・!飛びたいっ・・・・!!」
「・・・今度はなに?藪から棒に。おにーさん変なものでも食べたの?」
隣でコーヒー(砂糖とミルクたっぷり)をすすっていたラウが呆れた様に言い、それに対し俺は
「何を言うか!空は人類の夢だ!浪漫だ!
空はいいぞぉ?澄み渡る蒼い世界。真っ白な雲海を行き、誰よりも高く上に行ける。何よりも絶景だ!」
「・・・・・・・はぁ」
力説する俺にため息を吐くラウ。
いや、だってさ魔法があるなら飛べそうじゃない?そういうの憧れだったんだ。
ラウはやれやれ、といった表情をしている。しかし、そこからハッ、とした表情になり
「おにーさん!ひょっとして頭打っちゃったの!?それとも、虎さん達に齧られた!?」
そう本気で心配してきた。
俺はラウの頭をぽんっ、と軽くはたき
「んなわけあるか。俺はいたって正常だ。」
「・・・じゃあ、本気で言ってるの?」
再びコーヒーを啜りながら聞いてくる。
「まぁな。」
ラウが何故、虎に齧られたかと心配してくれたのは、この前のピクニック以来あの二頭がこっちに顔を出してくれる様になったのだ。
それが嬉しかったのでまた肉をやったり、フリスビーで遊んだりして結構仲良くなってきたと思う。
まぁ、虎はあんまり反応がないし、狼はフリスビーを一回毎にわざと噛み砕くけど。
ただ、サティはたまに撫でさせてくれる。流石ネコ科だな、気まぐれだ。
・・・完全に飯くれる人としか認識されてないな。
独りよがりだこれ・・・うん、気にしない。だって、楽しいし。
かなり話が逸れた。
ラウが可哀想なものを見る目で
「おにーさん・・・なんというか。本当にアレだよね。人間っぽくないよね。」
「気にしたら負けだと思ってる。それに、俺はもう人間の形をした化け物だ。」
「・・・・そうだったね・・・」
あ、今諦めの目に切り替わった。
最後のも肯定されるとちょっと傷つくな・・・
「にしても、どうしようか?」
「どうするって何が?」
首を傾げて聞いてくるラウ。
「いや、飛行スキル創るのか、別の何かにするかどうしようかと思ってな。」
「あてがあるだけですごいよ、おにーさん・・・」
ラウがうんざりした様に呟く。
「いや、そうは言ってもな?結構迷ってるんだぞ。」
「すごく贅沢な悩みだね・・・おにーさん?」
「そうかもなぁ・・・ああ、いっそのこと天使みてぇな翼が生えねぇもんかね?そしたら、悩まなくていいのに。」
「あはは、おにーさんそれこそ無理だよ。いくらなんでも・・・・」
俺がそんな馬鹿な冗談を言い、ラウがそれに返してくれていた時、ソレは起きた。
ソレはラウが話している最中の出来事だった。
バッサァッッ!!
俺の背後からそんな音が聞こえた。
「「え??」」
俺とラウが見事にハモり疑問の声を上げ、この場に似つかわしくない奇妙な音と共に静寂が訪れる。
そんな中、俺は1人思考を回転させる。
・・・・俺の背中に絶対なんか生えた。
なんかすげぇ振り向きたくない。
だって、突然背後から翼を広げた様な『音』と『謎の違和感』があるんだぜ?
俺が冷や汗を流しながら固まっているとラウがゆっくりと俺を指差し
「おにーさん・・・それ・・・・」
「やめろ・・みなまで言うな・・・自分で確認する・・・」
「う、うん・・・」
指摘しようとしたラウを即座に止め、少しでも現実から目を背けようとするが、一向に違和感が消える気配はない。
そこで、俺は意を決して首を後ろに向ける。
すると、そこには
一対の大きな純白の『ナニカ』が見えてしまった。
俺はバッ、と捻った首を正面に戻し、ラウに聞く。
「なぁ、ラウ?せーのでいけるか?」
こくり、と頷くラウ。
「そうか。なら、これってさぁ・・・どうみても・・・せーの」
「「完全に翼だよなぁ(だよねぇ)・・・・」」
本日二度目のハモった瞬間であった。
とりあえずコーヒーを飲みながら気分を落ち着かせていた俺は
「なぁ、ラウ?どう思う?」
ラウに質問してみた。
「どう思う?って、おにーさんどうみても羽だよ。それも、天使が持ってる様な。」
「あぁ、やっぱり・・・」
流石の俺も頭を抱えた。
本来は生えるはずのないモノが生えてしまったのだ。流石に驚く。
しかし、そこは前向きにいこう。
「これ使って飛べるかな?」
「おにーさん・・・切り替えはやいね・・・」
「まぁな、もう生えちまったもんは仕方ねぇし。」
「うん。そこは素晴らしいと思うよ?でも、もうちょっと何かないの?」
せっかく俺の異常性に慣れさせてきたラウも今回ばかりは、流石にまだ抜け出せていないらしい。
「翼生えてラッキー。」
「ああ、うん。もういいや・・・」
呑気な事を言う俺にラウは諦めた様だ。
うん、それでいい。人生諦めが肝心だよ、ラウ?俺も諦めただけだし。
「で、これ使って飛べるかな?」
「さぁ?わかんない。やってみるしかないんじゃないかな?」
「そっか。なら、やってみようかな。」
やる事が決まれば即実行する事にした。俺は家から外に出て翼の確認をする。
すると、翼は自分の意のままに動く。
軽く羽ばたく、片翼だけを動かす。
翼をしまう、翼を出す。
簡単にやってみたが、普通に出来た。
まるで今まで使ってきたかの様に馴染んでいる。
ちなみに、翼をしまうとこれまで通り普通の人間と変わらない見た目で、完全に翼が消え去った。
どこに消えたの・・・まぁ、不都合がないならそれに越した事はないか。
「自由に動かせるのはわかった。問題は飛べるかどうかだな。」
「既に自由に動かせるのには、もう何も言わないよ・・・」
「そうしてくれ・・・しかし、これじゃ力だけで飛べないよなぁ・・・」
「そうなの?」
「おう。純粋に筋力が足らん。」
そう、人間にもし羽があったとしたら4m程の胸筋が必要になるらしい。
俺にそんな胸筋はないし、欲しくもない。
4mの胸筋とかキモいわ。
あ、でも腕に翼があった場合だからこの場合は肩甲骨か?どちらにせよキモいな。そんなもん要らん。
と、なると
「やっぱ、魔力頼みか。」
「そうだね。ドラゴンとか龍も魔力を使って飛んでるから。」
「あ、やっぱり。この世界にドラゴンとかいるのね・・・ん?ドラゴンと龍って何が違うんだ?」
ドラゴンと龍はどちらも同じ様に思えるが。
「おにーさん、そういえば知らないんだね。いいよ、私が教えてあげよう。」
「うっす、お願いします。ラウ先生。」
「先生・・・なんかいい響き・・・」
冗談のつもりで言ったんだが、気に入った様だ。わりと嬉しそうにしている。
「それで先生?何が違うんですか?」
俺が催促する様に聞いてみると、ラウの雰囲気が一転し真面目な顔になる。
「・・えっと、それはね?知能が格段に違うの。他にも色々あるんだけど。」
「知能?」
「うん、知能。
まず、ドラゴンは龍と比べて知能が低くて言語を操れないの。それでも、こっちの話してる事が分かるくらいには賢いからね?そして、龍よりかなり弱いから手懐ける事が比較的容易なの。人間の考えそうな事だね。
でも、あくまで龍と比べての話だよ?
ワイバーンとかああいうのをドラゴンって言うかな。種族の名称が俗称になってたら大体ドラゴンだね。
それで、龍はとっても賢くて強いの。言語を操って人間と会話できるくらい。そして、歳を重ねてるほど温厚で強くなっていくの。
ただ、若い龍はちょっと気性が荒くて危険。もし勝つ事が出来たら友達になってくれる事もあるみたい。でも、それも完璧に叩きのめすか、本当に死闘を繰り広げるかのどっちかじゃないと無理みたい。どちらにせよ、人間には荷が重いかな。
龍は上位龍と下位龍がいて、歳と強さでその判別がつけられるの。人間にはわからないと思うけど。
それに、龍にはそれぞれの名前があって種族名と自分の名前を持ってるの。
という感じだよ?」
「・・・・」
いつものラウとは違う雰囲気で何だか新鮮だ。
ゆるい雰囲気ではなく、本当に世界樹の精霊なんだという事を知らしめさせられた。
それに、『人間』という言葉にに少し棘を感じたのはどうしてだろう?いや、やめておこう。下手に首を突っ込んではいけない気がする。
「あれ?おにーさん?」
「あ、すまん。あんまりにもラウが物知りだったから、つい。」
「あー!また失礼な事言った!もう!これでも世界樹の精霊なんだからね!」
「ごめん、ごめん。」
「本当に反省してる!?でも、撫でてくれたら許してあげる!特別だからね!」
「おう、それくらいならお安い御用だ。」
そう言って俺はラウを撫で始める。やはり俺の知ってるラウはこうでなくては。
・・・しかし『特別』ね。深読みし過ぎか?
(それにしても、最近ずっとラウを撫でている気がするな・・・)
そう思いつつも俺はお礼を口にする。
「ありがとな、ラウ。勉強になったよ。」
「うん!どういたしまして!」
そこからラウが満足するまで撫でて続け、やっとの事で解放された俺は早速魔力を使って飛ぶ練習を開始する。
「うん、飛び立つ時のイメージとしてはヘリが一番かな。で、飛んでいる時は飛行機の揚力を発生させるイメージだな。」
何度か試行錯誤を繰り返した結果の結論だ。
どういう事か説明すると
まず、浮き上がるために翼の下に魔力の流れを作るのだが、これを翼面に対して上向きの垂直方向に流す。すると、ヘリコプターの様に垂直に浮かび上がる事が出来た。
Tをイメージしてくれればいい。上の棒線が翼で、真ん中の棒線が魔力の流れだ。
次に
飛行する時は、別の魔力の流れを作り翼を水平として斜め上と斜め下から板挟みにするようにして流す。この時に斜めに角度を付けるのがポイントだ。
完全に水平にしてしまうと、ただ魔力の流れを作るだけになるが、角度を付ける事によって推進力を得ると同時に揚力を得られる。
それにより、初速から尋常じゃないスピードを出せる事もわかった。
さらに、急激な方向転換や急停止・急発進も可能になった。本来なら掛かるはずの過重力もなく、自在にノーリスクで飛び回れる。
急上昇や急降下も上下の魔力流を調節する事で加速しながら急上昇・減速しながら急降下あるいは、一定速度での急上昇や急降下という謎の現象も可能になった。
速度の変わらない急降下ってなんだよ。
速度や旋回性などの機動力も充分であり、速度は最高速まで測る事が出来なかった。
速すぎてどこまで飛ぶかわからないからだ。
また、権能やマップとの連動も確認出来た為、俺1人で広範囲の索敵と爆撃が出来る様になった。
どこぞの人型決戦兵器も真っ青である。
速度・機動性・火力の3つを備え、どこからでも飛べる。しかも、俺一人で特別な装備も要らない。
うん、完全に戦術兵器だ。
俺がその気になれば一人で国一つくらいなら滅ぼせそうな高性能な化け物になってしまった。
ちなみに、火力というのは権能《弓》と《槍》の事だ。どっちも使えてしまった。
ひとしきりテスト飛行という名の遊びを終えた俺は、満足してやめる事にした。
「お、おにーさん?すごく速く飛んだり、急に止まったりしてた様に見えたけど大丈夫だったの?」
かなり心配そうに聞いてくるラウに俺は苦笑する。
「大丈夫だ、問題ない。」
俺がそう言うとラウは
「ほんとに?ほんとに大丈夫なんだよね?嘘ついてないよね?」
「心配性だなぁ、ラウは。でも、本当に大丈夫だから。」
安心させる様に言うと
「おにーさんがそう言うなら・・・でも、ほんとに嘘はダメだよ?」
「ああ、ついてないし、つかないよ。」
「・・・わかった。」
すごすごと後ろ髪を引かれる様にして引き下がった。
確かに、急上昇からの急降下や急発進・急停止と急旋回など曲芸飛行の様な飛び方に不安を覚えるのも無理はないだろう。
だが、俺は心配してくれる事も嬉しかったが、ラウの時々見せる暗いナニカが俺には気になって仕方がなかった。
俺はまたラウの頭を撫で始める。
「あっ・・・・」
少し驚いたのか声を出したが、特に抵抗する様子もなく、為すがままにされ、ラウはこちらに視線を合わせジッとしている
俺はそんなラウを見ながら考えていた。
ラウの『ここにずっと居てくれるのか。』、と聞いてきた時の声、約束した時の表情。
『嘘はつかないで欲しい。』、という念押し。
『人間』という言葉の棘がある様なニュアンス。
たったこれだけなら、過去に人間との間にナニカがあった様にも思える。
果たして、彼女がそのナニカを俺に話してくれる時がくるのだろうか?
もし、彼女の過去にナニカがあったのだとしたら・・・いや、他人がどう言った所でそれは偽善にしかならないだろう。
俺に出来るのは彼女といつもの様に一緒にのんびりする事くらいだ。
そう結論づけた俺はラウの目を見て
「ラウ?」
「どうしたの?おにーさん?」
不思議そうにこちらの目を見返して返事をしてくれる
そんなラウに俺は
「これからもよろしくな。一緒にのんびりしようぜ。」
そう言って、撫でるのをやめると
「ぁ・・・・・」
小さな声を漏らしたラウ。
どちらに対しての声なのかはわからないが
「続きは家に戻ってからな?」
俺はまた苦笑しながらラウにそう言って先に家の中へと戻った。
家の外に取り残された少女 アルラウネは先程まで青年に撫でられていた頭に自身の手を当てボー、っとした様子で一人こう呟いた。
「・・・・・・おにーさんってずるいや。」
しかし、少女は微笑みを浮かべその青年が入っていった家の中へと消えていった。
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ー時は少し遡りー
主人公達がピクニックへと行く前日
とある領地・とある領主の館にて
1人の男が書類を見ながら、片手で頭を抑えていた。
「これは・・・・そうか。なら早急に手を打とうか。」
短髪の赤髪に碧眼の優しげな瞳を持つ人物。
見た目はどう見ても20代後半くらいにしか見えない。
しかし、この男はリンドブルム領領主
名を【ルイス・リンドブルム】歳は33歳
かつては冒険者であったが、とある功績を打ち立てた事により貴族へとスピード出世を果たし、瞬く間に王国内にて上位の貴族に名を連ねる程となった恐ろしい男である。
「セル爺。」
ルイスが一言、誰も居ぬ執務室の空間でそう言うと
「如何様で御座いましょうか。ルイス様。」
一人の男が現れた。
身長は170cm程の細身で執事服に身を包んだ白髪の老爺。
音も無くいつの間にかその男は、まるで最初からそこに居たかと思う程自然に現れた。
「うん、セル爺を呼ぶ時って何時も心臓がドキドキするよ。」
柔和な笑顔でそう言うルイスに
「お褒めに預かり光栄に御座います。私めもまだまだ現役で働く所存で御座いますからな。」
老爺は笑いながらそう返す。
彼等は親しげに話し合う。それだけで、この領主と老爺の距離がどれだけ近いのかが伺える。
「所でこの報告書の事なんだけど・・・」
ルイスは真剣な表情に変わり、セル爺と呼ばれた男もまた表情を引き締める。
「拝見致します・・・これは・・」
驚いた様に反応を示す老爺。
「どう思うかな?」
「早急に手を打つ必要があるかと。」
「あ、やっぱりセル爺もそう思う?」
「はい、元よりかの森には危険な存在が数多存在致しますが、この様な事例は聞いた事が御座いません故。」
老爺のその言葉にルイスは思案する。
「そっか・・なら空戦部隊を調査隊として派遣しよう。規模はそうだね・・・現在の空戦部隊の4分の1くらいかな?」
そして決定を下し老爺に指示を出すルイス。
「承知いたしました。では、その様に手配を進めておきます。」
何一つとして異論する事なく指示に従う老爺。
「うん。ありがとう。」
「いえ、今や私めは執事ですからな。」
「そうだね。今じゃすっかり執事だ。頼りにしてるよ?前のセル爺もカッコよかったけどね。」
「ふふふ。有難う御座います。では、私めはこれで。」
見惚れる様な一礼をした後、扉から出て行くまでも無く姿を消した老爺。
ルイスは特に反応する事もなく椅子にもたれかかり、ため息を吐く。
「はぁ・・・あの娘が言っていたのはこの事か・・・」
その彼の手には一枚の報告書。
その文面は、彼自身が選び抜いた信頼できる人物からの報告であり、ルイスの娘を護衛を任せていた際の出来事が記されていた。
そして数日前、彼の娘が襲撃を受けながらも無事に帰って来た時の事を思い出す。
娘が襲撃を受けたと報告を受け、即座に執務を放り出してまで娘の帰還を待つルイス。
最初は剣を手に取り迎えに行こうとしたが、流石に使用人達の必死の説得により、渋々家の前で待つ羽目になった。
そして、娘の馬車が到着するやいなや扉を開け
『リーシア!!大丈夫だったかい!?怪我はしてないかい!?』
『お、お父様・・!?だ、大丈夫です。私には傷一つありません。』
『本当だね?無理はしてないかい?怖かっただろう?』
オロオロとしながら娘の心配をする彼に冒険者の頃の面影はない。
『本当に大丈夫ですから。それに、守って頂けましたし。恐怖はありましたがあの方のお陰で私は救われました。』
そう言って笑顔を咲かせる。
『ああ、うん、そうだね。確かに騎士達にはちゃんと手当を出さないとね。』
『いえ、それもですが、それだけではありません。』
『・・・どういう事だい?』
すぐに目を鋭く光らせ問いただす。
『私はあの森にいる方に守って頂きましたの。それはもう凄かったのですよ?
とっても優しくてあんなにも安心出来る魔力は初めてです。大きくて強くて暖かで、誰かの為に怒れる優しい魔力。』
うふふ、と少しうっとりとした微笑みを浮かべながら語る娘にルイスは、また悪い癖が出たな、と苦笑しながらも
『・・・・うん?あの森には人なんて居なかった筈だけど?たまたま通りかかった冒険者に助けて貰ったのかい?』
『いえ、あの森にはちゃんと人が居らっしゃいますよ?』
『え?』
質問した矢先に予想外の返答がきたことに驚くルイス。そんな彼に彼女は続ける。
『あの魔力は人の魔力です。間違いありません。それだけは保証致します。』
『リーシアがそう言うならそうなんだろうね・・・』
極度の魔力好きの娘がそう断言したのだ。
ルイスの娘リーシアは魔力マニアと言っても差し支えず、今までも様々な魔力を見てきた。
なにより
彼女は魔力の質や量・大きさなど彼女自身にしかわからない判断基準の元、魔力だけでどんな相手かを推測してしまえるのだ。
それが人であろうと魔獣であろうとだ。
魔力は訓練すれば誰でも見られる。
しかし、生まれつき魔力を見る事が出来るのは極稀な事であり、彼女はそれに該当する人物だ。
そして、その特徴とも言えるのが訓練して見える魔力とは違った見え方をしているらしく、魔力はその人物の投影図とさえ彼女は断言している。
その事について思考を巡らせ
「あの森には一体何が居るんだろうね・・・?」
天井を見つめ独り言を呟いたルイスは、その報告書に記されている【神の矢】とそれを放ったであろう【謎の人物】について様々な憶測を立てていた。
「少し前に観測された大規模な魔力反応にも関連があるのだろうか・・・・」
もし、そうであった場合
最悪の状況になってしまったらどうなるのだろう、考えただけでもゾッとする内容に彼は
「願わくばその人物が、我らに友好的でありますように・・・・」
願望を口にした。
自らが再び剣を取る事もまた、選択肢に入れながら。
作者「あれ?もっと和やかな作品にする予定だったのに・・・」
隊長「貴様の力量不足だな。」
作者「うん・・・・」
活動報告にて記事を作成しました(2017/10/11 21:41)
一部修正を行いました。
(2017/12/29 20:38)