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約束

これ書いてる途中で初めて没ネタが出たよ・・・

(´・ω・`)

 



 数日前、思いがけず援護と言う名の掃討を行なった俺は再びまったりと過ごしていた。


 え?倫理観や罪悪感は無いのかって?外道が居なくなっただけだろ?経緯が何であれ結果的に罪悪なら駆逐する。それだけだ。


 何よりも女の子が襲われていたんだ

 男たるもの常に紳士たれ、だよ諸君。


 それに残念ながら俺はそんなもん前世に置いてきたからな。変わってる?そうだろうな。前世からこんな感じだし、まず関心が湧かん。


 俺は土地代の回収に突撃して来たラウの頭を撫でながら


「まぁ、基本的にやる事が無いからのんびりする事しか出来ないんだけどな。」


「急にどーしたの?おにーさん?」


 ラウが不思議そうな顔をして尋ねてくる。


「ここは長閑だなぁって思って。」


「あはは、この森を長閑と言えるのはおにーさんくらいじゃない?」


「そうか?」


「そうだよ?」


 どうやら、冗談の(たぐい)ではないらしい。


 それはともかく


「さて、今日はどうすっかなー?散歩でもしようかな?」


「おにーさん、お爺ちゃんみたい。」


「暇だからな。散歩は趣味だし。一緒に行くか?」


「行く行くー。」


「おっし、なら準備するか。」


 そうと決まれば早速準備する。


 とは言ってもインベントリ内に食料を放り込むだけだが・・・あ、これ散歩じゃねぇ・・ピクニックだ・・・・どっちでもいいか。


「どこにいくのー?」


「んー、湖かなぁ・・・」


「そういえば、そんなのあったねー。」


「おう、あそこは水が綺麗だし、森の中にある湖って感じがしてああいう景色が好きなんだよなぁ。」


「おにーさんって自然が好きなの?」


「まぁねー。」


「やっぱりー。」


 ちょっとラウの口調が移ってしまった。

 何故かラウが少し嬉しそうだ。


 ああ、ラウは世界樹の精霊だから、自然の好きな人間の方がいいのか?自然の化身って言っても差し支え無い存在だろうし。



 閑話休題(それはそうとして)



 俺の服装はジャージのままだ。楽だからな。

 ラウは白いワンピース


「んじゃ、行きますか。」


「おー!」


 俺とラウは出発する事にした。




 しばらくの間談笑しながら歩いた俺達は特に何かが起きるわけでもなく、湖へと到着した。


「着いたな。やっぱいいねぇ。こういうの。」


「そう言ってくれると、嬉し・・・・あっ!」


 突如として声をあげて固まるラウ


「ん?どうした?忘れ物か?」


「え、いや、そうじゃなくて・・・だって、あれ・・・・」


 ラウがゆっくりとある方向へ指を指す。

 ラウが指差した先には件の二頭の獣がいた。

 サーベルティーガーとフェンリルの特異個体だ。

 いつかの様に二頭仲良く湖畔に寝そべっている。


「ああ、あいつらなら問題ない。」


「ええ?どうしてそう言えるの?あの赤いのこの森の主だよ?」


 やっぱりあの虎の事だったらしい。


「この前会って撫でたから。虎は無害だし、結構可愛げがあったぞ?狼の方はちょっと威嚇されたけど。」


「え・・・・・?」


 絶句している。

 まぁ、そうなるな。この前警告した森の主と既に会っていたのだから。

 そういえば言ってなかったな。


「そん・・・な・・・撫でた・・・・?あの・・サーベルティーガーを・・・・おにーさんが・・・・?」


 頭を抱えながら蹲ってブツブツと何か言っている。


 驚くな、という方が無理な話か。

 にしても、驚き過ぎじゃね?


「ああ、そうだけど?そんなに、驚く事か?」


 すると、バッとこちらに顔を向け虎を指差しながら


「なっ・・・!?おにーさん、あのサーベルティーガーの事知らないの!?」


「いや、知ってるから言ったんだが?」


「その様子だと知らないんだね・・・」


 がっくりと肩を落としてそう言うラウ。

 え?なに?なんかあるの?


「えっと、すまん。どう言う事だ?話が噛み合ってない気がするんだが。」


「うん、噛み合ってないね。それは、もう見事に。」


「やっぱ、そうなのか。」


 どこかで話の焦点がズレていたようだ。


「うん。あのサーベルティーガーはね?ずっと前から居るんだけど、数年前にあの狼を拾ったみたいでね?それから、元々強かったのが更に強く・凶暴になっちゃって、目に付いた相手を問答無用で瞬殺するんだ。」


「マジデスカ・・・」


「マジだよ、マジ。」


 トンデモない虎だったようだ。

 瞬殺ってどの位の強さの相手をなんだろうね?驚く俺にラウは続ける。


「でもね?どうしてか、人間は絶対に殺さないの。攻撃はするけど、逃げたら追わないし、逃げなくても気絶させたの状態で森の外に放り出すの。そして、他の人間が来るまでそこで待ってるの。」


「は?何でだ?」


「わかんない。でも、人間に対してはどうしてなのかそうするの。」


 ・・・どうしてなのか。人間を殺さない理由?何かあるのか?気性が荒い様には思えないし、騎士道的な何かを持っているわけでも無いだろう、それにあの虎は賢い筈だ・・・・いや、実は殺さないのでは無く、殺せないとしたら?


 もしかして・・・・、と俺はある仮説を立てた。


「なぁ、ラウ?」


「なぁーに?おにーさん?」


「もし、魔物が人間に危険と看做(みな)された場合どうなる?」


「うん?そんな事?そんなの決まってるじゃん、討伐されるだけだよ?」


 何をいまさら、と言うような表情でこちらを見上げてくるラウに


『やはり・・・理由はそれだろう。』、と俺は1人納得する。そして、その仮説をラウに説明する。



「あの虎なんだけどさ。一回鑑定した事があってな?その時に、賢さを示す値がSだったんだ。」


「へぇー、あの虎さんそんなに賢いの?でも、それがどうしたの?」


「それだよ、それ。」


「え?何が?」


 いまいちピンときていないラウだが、俺は続ける。


「あの虎は賢い。すなわち、あいつは人間に害を成せば自分が討伐される事を理解している、という事は考えられないか?」


「あっ・・・・」


 確かに、という顔で納得しているラウに


「あくまで仮説だけどな。」


 と一応補足しておく。

 ラウは


「そう考えればしっくりくるね・・・すごいよ!おにーさん!今まで、わからなかった事がわかった!」


 はしゃいでいた。結構嬉しそうだ。

 てか、仮説だからな?わかってるよな?


 はしゃいでいるラウを置いて俺は、二頭の獣の下へと歩いて行く


「ちょっと!おにーさん!?」


 俺の突拍子も無い行動に、悲鳴の様な声を上げるラウ

 ちょっと顔が青ざめている


「大丈夫だって、見てろ。」


「そういうのが一番危ないの!」


 正論を並べるラウを尻目に俺が近づくと二頭は顔を上げて、こちらを見てくる。

 狼は軽く唸って威嚇している。


 俺はゆっくりと近づきながらインベントリ内より、10kg程の生肉のブロックを2つ取り出す。


 狼の方は肉に、虎は俺の方へと視線を向けている。


「食うか?」


 駄目元で聞いてみると


「ガウっ!」


 と、狼が元気よく返事をした。

 お前が返事するんかい・・・


 虎は沈黙している。


 俺は二頭の前に肉を置き、ゆっくりと離れる。肉をどうして持っているかって?たった今しがた魔力と交換した。


 すると、虎が起き上がりブロック肉の匂いを嗅いで、2つのブロック肉を一口ずつ齧ってから、1つを咥えて狼の方を向きそのブロック肉を目の前に置いて


「グル。」


 と合図するように鳴き、その瞬間に狼が肉を食べ始めた。

 どうやら、毒味をした様だ。この虎は確か、状態異常無効のスキルを持ってた筈だ。

 やはり、この虎はかなり賢い。


「美味いか?」


 虎はまだ食べてないので、狼に聞いてみると一度肉を食べるのをやめ、こちらを見て小さい声で


「ガウ・・・」


 と鳴いて再び肉を食べ始めた。なんだ、意外と可愛いところがあるじゃないか。

 というより、お前も言葉わかるのか・・・


 狼が食べ終わると、虎の前に置いてあった肉を虎が狼に渡した。狼はそれを食べる。

 あれ?食べないの?いや、量が少なかったか?


 そう思い、今度は30kgの肉塊を3つ程取り出し地面に置くと、また虎が一口ずつ齧ってから3つの内の1つに齧り付いた。


 おお、食べた。なんか、可愛い。

 二頭が肉を食べているのを見ていると


「お、おにーさん・・・」


「ん?なんだ?」


 後ろから恐る恐る近づいてきたラウに話しかけられた


「なんで、ご飯あげてるの?」


「特に理由はない。なんとなくだ。」


 日本で言うところの野良猫にエサあげるやつみたいな?我ながらいい迷惑だな。


 あれってかなり迷惑なんだよなぁ。本人は良くても周りの人達に迷惑がかかりまくる。良心からやってる人も居て、余計に質が悪い。

 最悪の場合、公共問題に発展しうるのが怖いところだ。


 しかし、それは日本でならの話だ。

 ここは幸い異世界でしかも広大な森の奥地だ。

 こんなとこでエサやるのは俺くらいだろうし、住んでいる人間も俺くらいだろう。


「えぇ・・・おにーさんそれでいいの?」


「いいんだよ。別に人肉与えてる訳じゃないし。」


「じ、人肉って・・・・」


 ラウが引いているが気にしない。

 そうこうしている内に、二頭が食べ終わったようだ。出した肉は全部食べてくれた。

 ほとんど狼が食ったけど・・・育ち盛りなのか?


「美味かったか?」


「ガウ。」「グル。」


 二頭とも返事してくれた。なんか嬉しい。


「そうか、そいつは良かった。またな、サティ、フェル。」


 そう言って俺は、二頭から離れた。



 あの二頭から、離れて木陰にやってきた時ラウから


「おにーさん、サティとフェルって?あの二頭の名前?」


「ああ、そうだけど?」


「どうやって付けたの?」


「紅い虎の方は、サーベルティーガーのサーベルとティーガーから頭文字をそれぞれ取って安直にサティ、で、狼の方はフェンリルから取ってフェル、ってな感じかな。」


 前に鑑定した時メスの表示だったから、女性っぽい名前にした


「え、あの狼さん。フェンリルだったの!?」


「なんだ?知らなかったのか?」


「フェンリルなんて初めてみたよ!」


「マジでか。」


「うん!だって伝説の狼だよ!?」


 ラウって結構歳食ってるよな?それなのに初めて見たってどんだけレアな狼なんだよ・・・


 そんな失礼な事を考えながら俺は


「うっし、あの二頭の食いっぷりを見てたら腹減った。飯食おう。」


「え!?ちょっとまってよ!そんなにあっさり流していい話題じゃないよ!?」


「いいんだよ、別に。あいつらが俺らに何かしらの害を成した訳でもないんだし。それより、飯だ飯。」


「うぅ、なんか納得いかない・・・それでいいのかなぁ・・・・?」


「深く考えるな。」


「う、うん・・・」


 強引に話を切り替え、昼食にする事にした。

 木陰にブルーシートを敷いてそこに座る。


 メニューはサンドイッチとコーヒーで、サンドイッチはシンプルにハムとレタスなどの野菜が挟んであるやつだ。


「なんか、色々と言いたい事があるけどおにーさんの事だし、もういいや・・・・」


 失礼な事を言われた気がするが、気にしない。

 変に気にしない事が一番だ。


「そうだな、そうしとけ。」


「あえて言うならおにーさんのせいだよ!?」


 なんだ、元気じゃないか


「そうは言ってもなぁ?慣れろ、としか言えないな。」


「うん、そうだね・・・今、色々と諦めたよ・・・」



 ・・・まぁ、いいか



「ほれ、食うぞ。ラウの分だ。」


「ありがと・・・」


 ラウがちょっとジト目で見てくる

 ふふふ、そんな目をしたって無駄だよ。


「はむ・・・あ、おいしい・・・」


「お、ほんとだ。美味いなこれ。」


 俺とラウはサンドイッチを食べ、コーヒーを飲みながらまったりと時間を過ごしていた。



 夕方まで過ごした俺たちは家に帰る事にした。

 湖でのピクニックが終わった後の帰り道で、突然口を開いたラウに



「それにしても、おにーさん?」


「ん?なんだ?」


「おにーさんってどこから来たの?本当にこの世界の人なの?」



 なんとなくその内聞いてきそうだな、と思っていた質問がきた、


「ああ、その事か。気になったのか?」


「うん、だっておにーさん私の知らないもの沢山持ってるのに、この世界の常識とか無いし。」


「すげぇストレートに失礼だな、おい。」


「だってそうだもん。」


「ま、違いないな。」


 俺は笑いながら肯定する。

 そして


「ああ、そうだ。俺はこの世界の人間じゃない。別の世界の人間で訳あってこっちに転生してきた。」


「やっぱりそうなんだ。それならこの森で住んでるのも納得いくね。でも、最後にはこの森から出ていくんでしょ?」


 俺の前を歩くラウの表情は見えない。驚いていない所を見ると、やはりあたりをつけていたのだろう。

 だが、俺から見たラウの背中は、何処となく哀愁を感じさせたのだった。


 そんなラウに俺は



「え?出ていかないけど?何で、こんな天国みたいな場所から出ていく必要あんの?追い出そうとする奴いたら全力で抵抗するぞ?」



 本心を早口気味に伝えた。

 なんとなく、本当になんとなくだが例え冗談でも『出ていく。』とは言ってはいけない気がした。



「あはは、おにーさん。それ、本気で言ってる?」



 何処となく、嬉しい様な、悲しい様な声色でラウは問うてくる


「本気と書いてマジだ。大マジだ。そもそも、俺に寿命なんてないし人間の街なんぞに行ったら化け物扱いされるわ。」


 この世界の文字など知らんしな、俺はおどけた様な声でそう言う。

 寿命が無いと言うのも事実だ。ローナから聞かされた事の1つでもある。


「・・・・本当に?本当にそう思ってる?本当にずっと居てくれるの?本気でそうしようと思ってる?」


 歩みを止め、前を向いたまま彼女は聞いてくる。


「もちろんだ。それに・・・」


「それに?」


「いや、何でもない。」


 そう言って再び歩き出す。


『それに、待ち人もいるしな。』そう付け加えようと思ったがやめた。勘が警告を鳴らしてくる、それ以上はいけないと。

 俺の勘はよく当たる。しかも物事が悪い方へ行く時は必ず勘が働く。この警告に逆らってはならない。逆らうと取り返しのつかない事になる。



「そっか・・・じゃあ、おにーさん。私と約束してくれる?」


「約束?」


「うん、ここから居なくならないって。おにーさん『は』嘘つかないよね?」


「・・そうだな。一時的に離れる事はあっても、住む場所を変える気はないな。」


 少しニュアンスが気になったが、そこに触れる事なく話を進める。


「じゃあ、いいよね?」


「ああ、約束な。」


 俺がそう言った時、森を抜け草原に出た。

 くるり、とラウは俺に振り向き夕陽をバックに



「うん!『約束』!」



 いつも通りの笑顔でそう言った。


 ただ、その笑顔がいつもよりも悲しげだった気がするのは、気の所為なのだろうか?



 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



 ー深夜ー

 世界樹の樹上にまた1人の少女が座っていた。


「ねぇ、––––––。今日はね?おにーさんとピクニックに行ったよ?とっても楽しかったんだ。–––––は惜しい事をしたね、一緒に来れば良かったのに。」


 少女は空にただ黙って輝く星と月を見上げ、誰かに話し掛けるように。


「それでね?びっくりする事もあったんだ。おにーさんがこの森の主やフェンリルにご飯をあげたり、その二頭に名前を付けて呼んでいたり、おにーさんがこの世界の人じゃなかったり。」


 誰も居ぬ星空の下、少女の独白は続く。


「でも、本当に楽しかったなぁ・・・––––以外と普通に話したのはおにーさんが初めてだからね。偶に、他の人間が来る事もあったけどその人達はみんな偉そうだったり、謙ったりしてつまんないから。私の事なんか見てくれないし。」


 先程まで微笑を浮かべていた少女は本当につまらない、といった様子で語る。


「・・・それで、おにーさんと『約束』したの。嘘つきの–––––と違って、おにーさんは『約束』を守ってくれそうだったから。」


 そのつまらない、といった表情から一転し少女は少し嬉しそうに語り出す。


「だからね?早く戻ってきてよ。––––も絶対おにーさんの事、気に入ると思うよ?」


 少女は願う様にその『誰か』に向かって語りかけるり

 その少女は以前の様な涙する様子はない。


「あはは、いまさらこんな事言ったってしょうがないか・・・・」


 しかし、やはり落ち込んだ様な声で空を見上げている。


「・・・もう・・いいかな?––––が戻って来なくても・・・おにーさんが居てくれるし・・・」


 少女は諦めた様に呟き。


「あーあ・・・なんだか・・・おにーさんに会いたくなっちゃった。でも、今からじゃ遅いし・・・明日も会えるよね。」


 数日前に出会った人間の事を考える。



「おにーさん・・・『約束』ちゃんと守ってね・・・・?じゃないと私・・・怒っちゃうよ?」



 その人が眠っている場所へ視線を移して少女はそう言った。



 そして、それを最後にその場から少女の人影は消え去り


 静かに輝く星々と月だけが残されていた。





コメントにて御指摘頂きました読点に関する修正を行いました。(2017/12/9 13:27)


一部修正を行いました。

(2017/12/29 15:03)

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