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勇者以上魔王以上 大長編〜黒装束の策略〜 <前編>

作者: コロコロ

コメディクロスオーバー企画作品、初投稿です!

……………



ついに……この日が来たか……



ようやく……我が……再び現世に……舞い戻ってくる日が……



だが……この世には……今まで以上に……強い力を……持っておる者どもが……おる



潰さねば……障害となる者は……芽から摘み取らねばならぬ……



待っておれ……強き者ども……



我が……貴様らを……






滅ぼす。











〜龍二視点〜



「ほいっと。」

【ドサ】


サンサンと降り注ぐ暖かい日差しの中、干していた布団を取り込んで家のフローリングに置く。うぅむ、この若干焦げているような香りが眠気を誘うんだよな〜。


「…………。」


…………………。




「…ダイブ!」

【バフ】


欲望に耐え切れずに干したばかりの布団へダイブ。


「お〜〜〜〜〜〜〜………きもちぇ〜〜〜〜〜〜………。」


や〜っぱりたまんねぇよ…たまんねぇべこれ。寝ちまいそうになる。


あ〜でも今寝たら昼飯の支度が………ま、いいか。ハンバーガーでも買ってこさせてやるか。アルスに。クルルに買いに行かせたら頼んでたもんと違うの買ってきそうだし。しかも山ほど。前科あるし。


よし、そうと決まれば……寝るか!


お〜や〜す〜み〜♪








「リュウジさ〜ん。」


……。


「リュウジさ〜ん?」


……。


「…あの、リュウジさん?」


……。


「……。」


……。


「…………す〜……




リュウジさあああああああああああ【ズゴス!】あきゅ!!!」


さっから耳元でうっさいバカことアルスをうつ伏せの状態のまま殴り飛ばして廊下へと飛ばしてやった。あ〜スッキリ♪





「ひ……ひどいですぅ〜……。」


しばらくして、アルスが這い蹲るようにズ〜リズ〜リとリビングへ帰還。ドンマイアルス、俺の高尚な趣味(昼寝)を邪魔したからそうなるのだ。


「で?用件は何だ?昼寝邪魔したくらいのことだし、それなりの内容じゃなければフルボッコの刑に処すけど。」


寝ながらテーブルの上に置いておいた湯呑みから茶をズズ〜っと。言っておくけど、上半身のみ起こして湯呑み取ったんだ。断じて手がニュイ〜ンと伸びたわけじゃないかんな。


「えぅ!?う、え、え〜っと…。」


案の定、フルボッコの刑と聞いて顔を青くするアルス。それで内容忘れたらさらにボコボコにするつもりだ。


「…!あ、こ、これを!!」

「チッ、思い出したか。」

「殴りたかったんですかぁ!?」


もちのろんだこの野郎。


で、何か差し出されたのは………



「?手紙?」

「ポストに入ってました。」


ふ〜ん、今時白い封筒に入った手紙かぁ……最近はメールとかで用件知らせることが多い世の中、手紙なんて珍しい。誰からだ?


「差出人とかは?」

「それが…不明なんです。」


ふむ、つーことは直接ポストに入れたってことか……何でんな回りくどいことすんのかね?


ま、いいか。とりあえず立ち上がってから受け取って確認。


【ビリリ】

「どれ。」


封筒を破いて、中のを取り出す。


で、出てきたのは…



「…?何じゃこりゃ?」


五枚の細長い紙っぺら……いや、チケット?でも何故に五枚?


え〜と〜何々?


「…………………。」




…差出人はあいつか…。




「…なるほどね、五枚入ってるわけだ。」


相変わらず行動が意味プーだなぁあいつは……つーかこれ、今日じゃん。けっ、マジめんどい。


「…………………。」


…まぁ、若干興味もあるし…行ってみてしょうもなかったら帰るか。


「おい、お前ら。」


クルリと後ろを振り返る。




「クー…クー…。」

「むにゃ〜…スゥ…。」

「クピー…。」


………………………。




「ゲェェェェェェェットアップ!!!!」

【ドカァァン!!】



さっき俺が寝てた干したて布団の上にいつの間にか寝っ転がって熟睡してた三人娘に真空飛び膝蹴りをお見舞いしてやった。









〜数分後、学校グラウンド〜





『イェア!!テメェら全員揃ったかぁい!?おっしゃあ聞くまでもねぇなぁ!そんじゃあテンション上げてくぜ野郎どもがあああああああああ!!!』



……………ふぅ。


「…おい、龍二…あいつは…。」

「わぁってるっての。」


隣に立っている雅が耳打ちする。こいつも呼ばれたらしい。



状況説明。俺ら招待状をもらった奴ら全員…もとい、この学校のほとんどの生徒が学校のグラウンドに大集合。休日だってのに強制的に呼び出されて、ほとんどが不機嫌丸出し、後はめっさ眠そうな顔してる奴ら。俺は後者だ。



で、俺らの真正面にある朝礼台の上に立っているのは、全身黒尽くめの不審人物こと



『オラオラどしたどしたどしたどしたぁぁぁぁぁぁ!!??ロウテンションな連中ばっかじゃねぇの!?この体たらくどもがあああああああああ!!!』



……そしてクソやかましくウゼェテンション上げているバカこと、ライターである。無論、俺らを呼び出したのはこいつだ。



「うっせーぞテメェ!」

「休日に呼び出してんじゃねえよ!」

「今日ゲームの発売日だったんだぞ!」

「私の安らぎの時間、どうしてくれんのよ!」

「つーかオメェ誰だよ!」

「怪しすぎるっつーの!」

「警察行ってこい!」

「そして捕まれ!」

「この不審人物!」

「無駄にテンション上げんなや!」

「見てて汗出てくるでしょ!」

「お前なんか人形浄瑠璃の黒子でもやってろ!」

「そして死ね!」

「闇夜に紛れて宝石盗んでろ!」

「この泥棒猫!」


う〜ん、皆言いたい放題言ってんなぁ。


『…………。』


そして皆に罵倒されて黙りこくったライターがとった行動は…




『ダークネスクラウド!!!』

【ドッカァァァァァァァン!!】



武力行使だった。



『はい、ウザったらしい連中はポイしたんでっと!』


そして再びマイクに向かって喋りだすライター。さっき罵倒しまくっていた生徒数十名はグラウンドから吹っ飛んで星になった(注:死んでません)。


『ではでは、これより!!




“スペシャルサバイバルデスマッチ・イン・天高!死んだら負けよ♪大会”を開催したいと思いまーーーーーす!!!!』


『はあああああああああああああああああああああああ!!??』



全校生徒、全員分の叫びがグラウンドに木霊した。



「つーか何だそのネーミングセンスの欠片もない大会は!!」


そして一際大きくツッコミを入れた雅。さすがだな、ツッコミ王。


あ〜…つーかさぁ、こぉんな物騒な名前の大会にどうしてお前ら出てるんだ?とツッコミ入れたい奴も多いだろう。


でもな、このチケットにはそんな大会するなんて一文字も書いてなかったし、堂々とさ、こう書いてあったんよ。




『皆集まれー!集まらないとあなたのこっ恥ずかしい写真をバラまきますがそれでもいいんですか?○○○さん♪』




…と、最後にその受け取り人のフルネームが達筆に書かれてたんだよなぁ。無論俺にも。


でも俺だけには『出てくださいお願いします龍二様』って懇願されたんだが何故ゆえに?


『ち・な・み・に♪今からルール説明するけどそれ遮るかのように文句言ったら一撃死♪の技をプレゼントしまーす♪』


口を開こうとしていた全員が一斉に口をつぐんだ。さっきのダークネスクラウドを見て単なる脅しじゃないと確信したんだろう。


『さてさて、おバカさん達は見事に黙りましたね?フフフ、バカはバカらしく黙ってりゃいいだこのバァカ♪』


おお、今何か周囲からカッチーンて擬音が出てきたぞ?でも怒ろうに怒れない様子。


『では、ルール説明しまーす。


皆さん、それぞれ校舎のランダムの位置からスタート。半迷路化した学校を駆け巡り、途中で出くわした敵をぶっ飛ばしてください。基本的なルールはこれだけ。簡単っしょ?あ、でも奥深さ出したいから、手を組んでチームになるもよし、逃げ回るか隠れ続けるかで時間切れを待つもよし。敵と認識した相手はフルボッコして再起不能にするのもいいし、ジワリジワリと苦しめていくのもありでごんす♪時間切れになったら、生き残った人達だけ優勝、賞品差し上げます。なお、武器は各自ご持参しておられる方もおればいない方もいるようなので、ここにでっかい箱ありますからこの中から適当に武器選んでくださーい。』


そう言ってからライターが指パッチンすると、朝礼台の前にでっかい木箱が三つ、ヒュンと出てきた。


『あ、そうそう。一応この学校の周辺にはフィールドバリアー、すなわち結界が張られてるから、外に音も漏れないし見えないからいくら暴れても大丈夫。後自分の体力が無くなった時点で別空間へとワープ、大会が終わるまでそこから出られないのでよろしく。でもダメージはまったくゼロじゃなくてそのまんま伝わりまーす。

はい、ここで質問ある人ー?』


…ライターの問いかけに、俺を除く全員が互いに頷き合い…





『ざけんな!!!!!!!』





同時に叫んだ。


「んだよその大会!ふざけるなよ!」

「致命傷受けても死なずにダメージ残るって考えてみりゃ生き地獄じゃねぇか!」

「アホかぁ!」

「つーか完璧バトロワ的展開になってんじゃねぇの!」

「説明も無駄に長ぇんだよ!」


うむ、やはり皆言いたい放題だな。


『あーあー何〜?何言ってんの〜?ま〜ったく聞こえませ〜ん。』


そしてライターは小学生みたいに耳塞いで聞こえないふり。アホか。


『まぁ、とーもーかーくー。適当に戦ってください。俺は高見の見物といきますんで。』

「テメェ何様のつもりだ。」

『神様だ。』

「そのまんまの意味聞いてんじゃねぇよ。」


さすが雅だ。ツッコミに関しては右に出る者はいねぇな。これだけはこいつには勝てねぇ。


「…どうしよう、私自信ない…。」

「とゆーか突拍子過ぎじゃない?」


不安げな表情の香苗と花鈴。こいつらも脅されたかライターに。


まぁあれだよなぁ。非戦闘員であるこいつらがこんなバトロワみたいな展開についていけるハズもねぇか。


『あ、そうそう。結界の外には出れないけど、戦いたくない奴はサッカー場に集合。そこから戦ってる姿観賞できますんでよろ〜。』

『観賞ってアンタ!?』


全員見事にハモった。


『では、出場する人はこちらに集まってくださーい。因みに参加人数には限りがありますからお早めに〜。』


出場する奴がライターのいる朝礼台の前、欠場する奴らはサッカー場へ。


無論、欠場する連中の方が遥かに多く、ゾロゾロとサッカー場へと向かっている。出場しようとライターの前に集まってるのは血の気の多い連中、いわゆる不良系ばっかりだった。


「…まぁ、戦わないで済むに越したことないしな。」

「そうね、こんなのバカバカしくてやってらんないわ。」

「お腹減ったしな〜。」


当然、雅と花鈴と香苗はサッカー場へ移動を始める。


「リュウジさん、ボクらはどうするんですか?」

「見学しとくの〜?」


傍らででかいタンコブを頭に付けたアルスとクルルが問うてきた。何でタンコブ付いてんのかと?そりゃあれだ。俺が飛び膝蹴りゴッホン!……転んだ拍子に頭でもぶつけたんだろ。


「ん〜?んじゃ俺も見学しとくかね。」

「あれ?出るんじゃないのか?」

『珍しいな。貴様が出ないなんて。』

「変なの食った?」


とりあえずフィフィにはスーパーのビニール袋に突っ込んで袋の口を硬く結んでやった。中でガサガサ暴れて泣き喚いているがもう知らん。


「いやさ、俺眠いんよ正直さ。だからこういうのパスだ。」

「…実に私欲にまみれた理由だな。」


私欲にまみれちゃ悪いか。


「そういうオメェは出ないのか?」

「ああ…実はまだ足が治ってなくて。」


言って、右足のズボンの裾を少し捲り上げると白い包帯が巻かれていた。ああ、そういやこないだ怪我したって言ってたなこいつ。


「そーゆーわけだから、あたしも見学しておく。」

「そだな。無理すんな。」

『そういう気遣いはできるんだな、貴様。』

「はい?何か言ったか?」

『…いや、別に。』


腰から小声でエルが呟くが、よく聞こえんかった。


まぁ、いいや。とりあえず俺らメンバーは全員欠場ってことで。あぁ、ねみー。


『あ、そうそう。優勝賞品だけどさぁ。勝った人には願い事を叶えてさしあげっぞ?




例えば、あの人と付き合いたーい♪とか、○○山ほど食べたーいとか』

「参加するぜ!」

『はえええええええええ!!??』



その時、俺は地を蹴って飛び上がり、鳥の如く飛翔した。そして後方宙返りを数回決め、そして再び地面に足をつけた、高らかに宣言した。


さっきの行動にコンマ一秒かかってません。一瞬で移動させてもらいました。



「え、じゃボクも参加……します?」

「私もー!」


何故か疑問系のアルスに、ノリ的な感じで駆け寄ってきたクルル。あ、おいクルルお前が振り回しまくってるビニール袋には…あれ?何で袋ピクリとも動いてないんだ?


『よぉぉぉぉし案の定集まりやがったなぁこんちくしょうどもめええええええええ!!!』

『オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


視線をビニール袋から周囲へと目を向ける。先程の優勝賞品に目が眩んだのか、さっきの倍の人数もの生徒が武器を手に取って立っていた。俺はエルがいるし、アルスとクルルも剣をいつの間にか召喚していた。


そして相変わらずウザったいテンションのライターと一部不良の皆様。海の底に沈め。


『ルールはわかったなぁ!?うーし、そんじゃさっそくその命散らしてこいやワリャアアアアアアアアアアア!!!!』

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


だぁらやかましいっつーの。ここで消したろか。


『…あ、そうそう。今回は特別ゲストをお招きしておりますから夜露死苦!!』


古。


『ではでは、転送開始しますからじっとしててくださいねー?じゃないと一般人は四肢バッラバラになること必須ですから♪』


この言葉に、俺以外の周囲の連中が全員石像のように固まった。


『よし、それでは……



ドロンパ!』

【ボォン!】


アホくさい呪文を唱えると、俺らの周囲から白い煙みたいなのが湧き上がってきた。案の定、全員びっくりしているが動いたらやばいと本能が告げているので微動だにしない。


煙は、俺らを取り囲むと渦を巻くように動き、やがて周囲が見えなくなるほど白くなった。




「…………。」


しばらくじっとして黙っていると、煙が少しずつ晴れてきたようだ。視界がハッキリする。別に体に異常もない。


…まぁ、完全に異常がないってわけじゃないんだけどな。いや体のことじゃなく、状況が。


「…あ、あれ?」

「ここって…。」


隣を見れば、アルスとクルルが困惑していた。



つーかここ、俺らの教室じゃん。さっきまでグラウンドにいたのに。



…まぁ、こういうのってあんま動揺しないんだよな俺。何故か。



【ピンポンパンポーン】

『おーし、全員スタート地点に着いたかぁ!?』


っと、いきなり天井についてるスピーカーからライターの声が。なるへそ、放送室も乗っ取ったわけだ。


…ふむ、どうやらここが俺らのスタート地点ってことか…他の奴らは、別の教室かどっかだろうな。


『では!もう建前はいりません!!今から思う存分に……………





ぶっ飛ばし合ええええええええええええええ!!!!』



うるせえ。



『それでは、スペシャルサバイバルデスマッチ・イン・天高!死んだら負けよ♪大会、レディ〜……………』


………………。


『Goooooooooooooo!!!!』

【ドン!】


ライターの掛け声と同時に、校舎が揺れた。多分他の連中が一斉に部屋のドアを開けたからだろうな。


「じゃ俺らも行くか。」

「おー!」

「は、はい!」

『腕がなる…。』


エルお前腕ねぇじゃん。というツッコミは一応飲み込んで、教室のドアを開けた。




「うらぁぁぁぁぁぁ!!!」

「死ねええええええええええ!!!」

「くたばりゃああああああああ!!!」

【ドガ!バギ!グシャ!ボゴ!ベキ!ドォン!ボォン!ズドドドドドド!ドッカーン!バッコーン!ぽよ〜ん♪ズドガアアアアアアアアアン!!】




そしていきなり目の前に飛び込んできたのは……


ある者は刀を、ある者は銃を、ある者は槍を、ある者はビームサーベルを、ある者はライフルを、ある者はマシンガンを、ある者は薙刀を、ある者はロケットランチャーを、ある者は巨大ホンマグロを……


実に多種多様な武器を持った連中が仲良く(?)バトっていた。


「…って、魚武器にしちゃダメでしょ!?」

「大丈夫だ。あれ冷凍マグロだから硬度はピカイチ。」

「え…そうなんですか?」

「そうなんです。」

「…ってそういう問題じゃないです!?」


と、アルスとのやり取りによる気分転換も済んだとこで…



「とぉ。」

【バキィ!】

「ふべぶ!?」


手近にいた生徒を殴り飛ばし、強引に武器マグロを奪い取り、



「うりゃああああああああああ!!!!」


【ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!】


「があ!」

「ぐえ!」

「ぐは!」

「あうち!」

「ママーーーン!」


ハンマー投げの要領で思い切りぶん回して適当に薙ぎ倒してやった。


「むん!」


そしてビシィ!と決めポーズ!う〜ん、快感。


「う、うわぁ…。」

「リュウくん…すごい…。」

『とゆーより豪快だな…。』


呆気に取られてるアルス達をよそに、俺は手に入れたマグロを教室に放り込んでおいた。これ持って帰ろ。


「よし、行くぞ。」

「「は、はい!」」


見事に沈黙して生徒が死屍累々のごとく散らばる廊下をズンズン歩く俺と慌ててついてくるアルスとクルル。まぁ、これでだいぶ減ったかな?


とりあえず、俺らの教室は三階にあるんだから、そこからスタートした俺らも今三階にいるってことだな。じゃちゃっちゃと二階へゴー。


「うわ…。」

「ひゃ〜…。」


二階に下りて、その惨状を目にしたアルスとクルルは呆気にとられた。


二階も三階に負けず劣らず地獄絵図、生徒がボロ雑巾の如く散らばっていた。


…ふむ、切り傷を見る限り、刀で切られたようだな。それも名刀。ここにいる奴らの持っている刀は、どれもナマクラ刀。まぁ殺傷能力はあるにはあるが、ここまで綺麗に切ることはできねぇ。


つーことは、結構な手馴れの奴がやったとしか思えんな……………っと、お?



「リュウジさん、あそこ。」

「おぉ、わかってる。」


…向こうの方が騒がしい。ちょうど校舎の端らへん辺りだ。


…………………。


「うし、行ってみっか。」

『え?無駄な戦闘は避けるべきではないか?』

「いや、興味本位で。」

『おい。』


エルのツッコミは無視して、人が密集してるところへGO。



「そりゃあ!」

「ぐぁぁ!!」



走っていると、だんだん声が聞こえてきた。なるへそ、さっきの切り傷を作った誰かが大勢相手に奮闘してんだな。ん〜…誰だろ?



「死ねやああああああ!!」

「うわぁ!来るな、来るなぁ!」

「貴様ぁぁぁ!!私の優貴に何をするかあああああああ!!!」



……………………


検索中、検索中、検索中……………





あったあった、“優貴”というワードに該当件数、一件あり。


とすると…刀一本で戦ってる女は…。


…………



「せい!」

【ズドン!】

「ぐぶふぅ!」



まぁいいか。とりあえず加勢っつーことで、生徒一人に飛び蹴り。


「!おぉ、お前は…!」

「よぉ。」


間近で顔を見ると、ビンゴ。あいつだった。


「一応、手ぇ貸すぞ。」

「助かる!」


エルを引き抜き、逆手に持って腰を落として思い切り捻る。


一応、弱い方の広範囲技で蹴散らすか。



「お前ら、伏せてろ……『飛龍旋風牙ひりゅうせんぷうが』。」


【グオオオオオオオオオオオオオ!!】


大きく捻った腰を勢いよく戻し、軸足を利用して光速二回転斬りを放つ。同時に、切っ先から旋風が生まれる。


『うわあああああああああああああああああ!!!!』


ま、そういう技だから周囲の敵はたまったもんじゃない。全員吹っ飛ばされた。



「…っと。」


そして回転を終えた時には、俺ら以外壁にめり込んでたり遥か遠くにまで吹っ飛んで倒れてたりと、立ってる奴はいなかった。


「…相変わらずすごいな。」

「サンキュ。」

【キィン】


エルを鞘に収め、相手の方に向き直る。相手も伏せてる状態から立ち上がり、刀を収めていた。


「さて、と……


まさかんなとこで会うことになるなんてな、龍之。」

「フッ、お互い様だ。」


軽く微笑し、俺達は互いに拳を突き出した。これ、俺らの挨拶。


『…何故に貴様がここにいる…。』

「おお、エルではないか。久しぶりだな。」

『質問に答えてないぞ…。』


あ、そういやエル、一時貸してやったっけ?龍之に。


「リュウジさん、こっちも片付けました。」

「倒したよー。」

「お、二人ともお疲れさん。」


とっさにアルスとクルルに優貴の援護を任せておいてよかった。二人だって只者じゃねぇからな……優貴、ファイト。


「優貴〜!大丈夫か?ケガしてないか?痛いとこないか?」

「ちょ、大丈夫、大丈夫だから龍之さん抱きつかないで痛い痛い痛い!?これ尋常じゃないくらい痛い!?」

『や、やめい!素直に敵にやられた方がマシな状態になるから!ユウキが!』


思いっきり抱きついて優貴を苦しめる龍之。あ、言い方悪かったな、大変愛おしそうに抱きつく龍之。


「いや愛おしいないからこれ!?僕死にかけてるんですけど!?」


チッ、さすがツッコミ役。思考読めるのか。


「うし、とりあえず離れろ龍之。後でたっぷり抱きつけばいい。」

「……わかった。」


渋々といった感じで離れる龍之。優貴はめっちゃ安堵した表情になった。


「でぇ?お前らどうしてこんなとこにいんだ?何の予告もなしに。」


いっつも来る時はこいつら連絡入れてるのに珍しい。


「あぁ、いや…実は呼ばれて。」

「呼ばれた?」


…はい予想できた。


「……あの黒バカにか。」

「ライターさんです。」


アルス、あいつにはこの仇名がお似合いだ。


「チケットを二枚渡されてな。『是非お越しください。』とだけ書かれてあった。」

「ふぅん…。」


つーことは…ライターが言っていた特別ゲストっつーのは、こいつらのことか…



いや、待てよ?確かにこいつらは特別ゲストになるだろうけど……こいつらだけか?否、あの黒バカのことだ。他にも呼んでるはずだ。


…ふむ、ピンポイントで思い浮かぶ奴らが多すぎる。まぁ、後で考えるかこのことは。



「……しかも、優勝賞品は願いをかなえてくれるのだろう?……フフフフフ……。」

「「「…………。」」」


見事なまでの怪しい笑みに、優貴はもとより、アルスとクルルまでドン引きした。


「……そ、それよりどうするんですかアナタ達は?」

「フフフフ…優勝したら…優貴と…フフフフフフフフフ……♪」

「聞いてないですね。」

「アルス、聞く奴間違えてるぞ。」


今の龍之には何言っても無駄ってことだな。


「じゃ主導権持ってる優貴、どうする?」

「僕が主導権持ってるんですか!?」

「これ(龍之)が主導権持てると思うか?」

「……無理ですね。」


だろ?


「…何なら俺らと来るか?ここで会ったのも何かの縁だし、大勢いる方が楽しいだろ?」

「楽しいというのが意味わからないんだけど。遠足じゃないんですから。」


ごもっとも。


「…まぁ、僕らとしてはあなた達について行ったら心強いですからね。」

「リュウノさんも結構腕立つけど、二人だけだと不安だもんね。」

「そうですね…龍之さん、いいよね?」

「そしてその夜、二人は…………!?な、何だ優貴!?」

「ねぇどんな妄想してたの!?いつの間にそんな飛躍した展開に!?あぁやっぱ言わないでいいです何か今一瞬龍之さんのお父さんから殺気が飛んできた気がしないでもないから!」


想像力豊かだなぁ。


「だ、だからさ、龍二さん達と一緒に行動してもいいのかなって…。」

「あ、あぁ。もちろんいいぞ……優貴と二人っきりにはなれないけど…。」


最後、本音がチラリ。まぁいいさ。


「じゃ、手を組むって形で。」

「ああ。」


ガシっと龍之と優貴に握手。これで交渉成立っと。




「…ところで、フィフィちゃんはどこに?」

「ここ。」


ヒョイと掲げるのは、ビニール袋。すでに生気が感じられない。


「…………。」

「…………。」

「…………。」

「…………。」

『…………。』

「…………



さらばフィフィ。」

「生きとるわああああああ!!!」


バリィ!!っとビニール破って飛び出したのは赤く光る妖精。


「あぁ!フィフィ生きてたんだ!」

「よかったぁ…。」

「ビニールに閉じ込めておいてなぁにが『生きてたんだ』よ!!さっきまで仮死状態だったわよ!!」

「マジで死ねばよかったのに。」

「え?リュウジそれ本気?本気で言ってる?」

「よし、そんじゃ適当に進むぞー。」

「無視すんなぁああああああ!!!」


ギャーピーと騒ぐ虫は無視と限る。虫だけに。あ、ちょっと自分でもうまいと思っちゃった。








〜影薄雑草太郎視点〜



俺は佐久間 恭田だっつーのに何回言わせりゃわかんだよ!?いやだよそんな不名誉な名前の視点!?


…あ、あぁ、何で俺視点なのか言ってないな…実はな、俺も参加してんだよ、大会。龍二の野郎、俺のこと見てなかったな…。


何でも、優勝賞品が願いごとをかなえるとか…ならば、俺に女性との出会いを!という願いをかなえてもらうため、優勝してみせる!!


…まぁ、ぶっちゃけ戦うのは無理だから、逃げ回って。あぁ、俺ってホントこの作品だと凡人だよなぁ…一応ケンカ強い方なのに…トホホ…。



ただ、運がいいことに…



「い、一聖!駿!こっちだ!」

「いや、そっちはダメです恭田さん!向こうで抗争起きてます!」

「面倒ごとを避けるなら、こっちだ!」



俺は…良き友達である、一聖と駿との再会を果たしたのだ!!それに駿は俺らの中では戦闘経験が豊富…一番頼りになるぜ!



…ただ、ひっじょ〜〜〜〜〜〜〜に運が悪いことでもある。それは……





「待てこの影薄どもがああああああああ!!!」




……そう、“アイツ”だ!!!




「ま、待て和也!話し合おう!」

「ハハハハハハ!影薄の戯言なんか聞こえるかあああああ!」


何でよりによって龍二と戦闘経験のある鎌ブンブン振り回す最強野郎に出くわしてしまったんだ俺達はさぁ!?



「ぎゃあああああああ!?」

「ぐああああああああ!!」

「がはぁ!!」

「や、山本おおおお!!ぐはぁぁぁぁあ!」

「た、たじげで…。」

「げはぁ!?」



あぁぁぁぁ、次から次へと他の生徒達が鎌に切り伏せられていくぅぅぅぅぅ……。


「や、やばい…俺もう息が…。」

「諦めるな一聖!」


必死こいて走ったせいか、足フラフラの状態の一聖。かくいう俺もだけど。


考えてみれば、もう一時間近く走っている。駿は足速いし体力もあるからいいとして、俺はもうボロボロだ………捕まるのも時間の問題。


……………


クソ!かくなる上は……。



【ザッ!】

「!?恭田さん!」

「お前ら先に行け!ここは俺が引き付ける!」


急ブレーキをかけて、和也の方へと向き直る。あいつは今、逃げ惑う他の生徒を鬼神の如く切り倒しているところだ。こっちに来るまでには多少時間がかかるはず。


「いやでも恭田さん、戦えないだろ!?」

「戦うんじゃない、俺があいつをお前らから引き離すんだよ!!」


そう、俺とあいつじゃ雲泥の差…つーか、地下千階分と冥王星分の違いがあるだろう……自分で言ってて情けないけどな、ムチャクチャ。


「そ、そんな!?無茶です!」

「無茶でもやるんだよ!…それになぁ。」

「?」



「お前達は、今が活躍する時期だろうが……俺みたいな単なる影薄なんかじゃねぇんだよ。」



そうだ、こいつらはそれぞれ活躍する場がある。駿は戦えるし、一聖も主人公格となってるし。対して俺は、活躍する場が今んとこない…。



だから、やられるのは俺一人で十分だ。こいつらはこんなとこでやられちゃいけねぇんだ。



「早く行け。そして勝て……お前らの誇りにかけて。」

「「………。」」


「…わかりました。」

「駿!?」


…わかってくれりゃいいんだ…わかってくれりゃ…。




「じゃ俺も行きます。」

「わかってねぇじゃん!?」


ビシリ!と右の手の甲で俺の右隣に立った駿にツッコミ。


「フフフ、恭田さんばっかりにいい格好はさせないっスよ?」

「いやそういうわけじゃ…「それに。」?」



「確かに活躍の場はあるけど…俺だってれっきとした影薄同盟の一員っスよ?」



「し、駿……。」

「…まぁ、確かに俺だって最近じゃフミタンと同じような立場だけどさ。」


今度は左隣に一聖が立った。



「俺らの友情は、そんなことでは壊れはしない。そうだろ?」



「一……聖……。」


お前ら……。




【ドォォォォォン!!】

「ぎゃああああああ!!!」


……チッ、他の奴らは全滅か……。


「はっはっはぁ!オレに勝とうなんざぁ五千億年早ぇんだよ!」


頭上でブンブン鎌を振り回してからドン、と鎌の石突で床を突く和也。もはやあいつに勝てる奴はこの場にはいないだろう…。



…俺は確信した。逃げ切れない、と。



「……駿、一聖。」


二人に振り返ると、同時に頷いた。


「………見せてやろうぜ………




俺達、影薄同盟の意地って奴を!!」

「「おおおおおおおおおお!!!」」


そして同時に地を蹴って走りだす!



目標は……雨宮和也!!



「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!我ら影薄人生に!!一片の曇りなあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁし!!!!!」」」







〜龍二視点〜


【ドォォォォォォン………】

「おぉっと?」


何か校舎揺れたな。どっかの誰かが何かしでかしたか?


「リュウジさん、余所見は!」

「ほい。」

「ぎゃあ!!」


アルスの言葉を遮るかのように敵に裏拳かます。そういや今は一階渡り廊下で戦闘中だったっけな。


「「「うおおおおおおおお!!」」」


今度は前方から刀を振りかぶりながら突撃してくる三人の生徒達。隙だらけじゃね?


「よっ。」

【シュバン!】

「「「ぐはぁあ!!」」」


膝をついて横に一閃、三人同時に吹き飛ばす。


「はあああ!!」

「きゃああああ!!」


背後では龍之がマシンガン持った女子生徒を切り伏せていた。セーラー服と機関銃ってか?


「かかれええええええええ!!!!」

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』


っと、今度は前方から大群のお出ましか。


「ちょ!?あの数はまずいでしょう!?」


優貴、初っ端から逃げ腰になってどうする。そしてお前も戦え傍観するでない。


……つーかこんな百やそこらの人数による総攻撃で俺らを倒せるとでも?


……くだらない。



「はぁぁぁ……。」


左拳に氣を溜め込み……


「…『龍閃弾』!!」


一気に放出しつつ突き出す。



【ドォォォォォォォン!!】

『ぎゃらぱああああああああああああああああ!!??』



はい全員吹っ飛んで殲滅完了〜♪お〜いい感じに遥か向こうまで吹っ飛んでるね〜。


「…これで終わりか?」

「え……えぇ。」


アルス、そんな度肝抜かれたような表情すんな。いつものことっしょ?


「…ホント龍二さんはすごいですね…。」

「そうだな、教わりたいくらいだ。」

「僕の命の危機に瀕するからやめて。」


何か龍之と優貴がコソコソ話してるけど気ニシナーイ。


「にしても魔法撃ちすぎて疲れたわね〜。アルス、肩貸して。」

「…ボクの肩はイスじゃないよ…。」


って言いつつもフィフィに肩を貸すアルスは偉大だと俺は思う。


「でもさぁ、どうしてこんな大会、ライターさん開いたんだろうね〜?」

「暇つぶしではないか?」

「そんな理由でこんな物騒な大会開かないで欲しいな…。」


優貴がボヤくが、あいつならやりかねんよ?


『…リュウジ、ちょっと。』

「んあ?」


右手に持ったエルが話しかけてきた。


『実は先程から少し気になっていたことなんだが…。』

「おう。」

『……あの黒装束ライター、様子がおかしくなかったか?』


?は?


「何で?」

『…あのテンションが、何故か妙に芝居がかっていたような気がしてならないのだ。』


芝居?あのハイテンションがか?


『…いや、あくまで私がそう感じているに過ぎないのだが…。』

「……ん〜……。」


…………………………。


「…まぁ、気のせいってこともあるからな。今は考えないでおこうぜ?」

『…うむ。』


じゃこの話は保留っつーことで。



「ささ、ともかく行くぞ。」

『お〜。』


死屍累々の渡り廊下からB号館の一階廊下へと侵入。あ、俺らの教室があんのはA号館ね。




「……誰もいないわね。」

「そだな。」


フィフィの言う通り、B号館は何か妙に静かだった。音がするといや、俺らの足音だけ。あ、でも人の気配はすんだけど…ごく少数な。


そんで、そのごく少数の中に俺の知ってるような気配があった。それも結構近い。


…………ん?


「…明らかイヤな感じがするのだが?」

「うん…。」

「…どこかで待ち伏せでもしてるんでしょうか…?」


………………。


「…アルス、それ正解だ。」

「へ?」







【バキィガシャーーン!!】

『!?』


やっぱね。


前方の各教室のドアが破壊され、窓ガラスが割られて咄嗟に身構えるアルス達。


『荒木龍二いいいいいいいい!!!』



…出てきたのは、なんやかんやで俺に突っかかってくる腰抜けども(ファンクラブ会員)だった。数はざっと五十人以上。多すぎ。


確か…え〜………と。


「…あぁ、五大天ぷら親衛隊?」

『ちゃうわ!!!!』


あれ違った?あってると思ったんだけどなぁ。


「我らは五大天使親衛隊だ!今日という今日こそは、貴様を倒すぞ!!」

「積年の怨みを思い知らせてやる!!」


各自、それぞれ武器を手にして構える。つーか怨み買った覚えないし、第一突っかかってきたのあっちじゃね?


「!?お、おい待て!アルス様とクルル様がいるぞ!」

「銃持ってる奴は控えろ!アルス様とクルル様にケガさせるわけにはいかない!」

「…何でボクら様付け?」

「さぁ…?」


小首を傾げるアルスとクルル。大袈裟だなぁ、様付けって。


「…それと貴様、横におわす美人な方は誰だ。」

「はにゃ?」


横にいる?………ああ、龍之のことか。


「貴様、まさかその女性にまで手を…!?」

「何言ってんだ。龍之は優貴の所有者だろ?」

「いや逆だ。優貴が私の持ち主だ。」

「何だよ所有者とか持ち主って!?どっちも嫌だよ!」


さいでっか。


「……ならば、そこにいる男もろとも、貴様を成敗してやる!!」

「ええ!?何で僕まで!?」

「運命だろう?」

「そんな運命いやですよ!!」


諦めなさいって。



……つーか、さっきの気配の主はこいつらなんかじゃなかったんだけど…?



「かかれええええ!!我らの天使を渡すなああああああああ!!!」

『おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


っと、考えてる間に突っ込んできたぞ〜?


「来るぞ、下がっていろ優貴!」

「う、うん。」


身を挺して優貴を庇う龍之。健気やねぇ。






【ズドオオオオオオオオオオオオオン!!】

『うっぎゃああああああああああ!!??』


…あ、ファンクラブの連中いきなり吹っ飛んだ。


「アルス?何かしたか?」

「え?な、何も…。」

「クルル?」

「何もしてないよー?」

「じゃフィフィ。」

「するわけないでしょ。」

「龍之?」

「私にそんな芸当はできん。」

「……じゃ何だろな?」

「…僕には聞かないんですね…。」


できないだろお前?


う〜ん、見事なまでに横の壁、大穴あいたね〜。ファンクラブの連中もこれくらったくらいで吹っ飛ぶんじゃねぇよ。


………大体誰の仕業か予想できるんだけど。









「あはは!龍二くんはっけーん♪」



…ほれビンゴ。



「葵か。やっぱ来てたんだな。」

「まぁね〜♪」

「「………。」」


煙が立ち込める中、開いた穴から出てきたのは何気に交流のある里原葵。穴開けたのこいつだな確実。


で、横に付き添ってんのは〜…。


「よ、マーくんにアーちゃん。」

「「いきなりニックネームかよ!?」」


揃いも揃ってナイスツッコミを入れたのは、魔王ことマーくんと勇者ことアーちゃんだった。すまん、本名は忘れた。


「お前らもやっぱり?」

「そうそう。何か手紙が来てね?」


そう言ってピラっと見せたのは俺らと同じような招待状。今日は豪華キャスト勢ぞろいだなホント。


「それで、アルスちゃんとクルルちゃんに対抗しようかな〜ってことでマーくんとアーちゃん連れてきたんだぁ♪」

「…そんな理由か…。」

「リコさんの店の手伝いしてたら急に…。」


ドンマイ二人とも。でも同情はしない。


「…大変ですね、お二人とも。」

「頑張ってね〜。」

「「……はい。」」


さすが勇者二人と魔王二人、お互い気が合うようだ。


「あ、それでね龍二くん。」

「何だ?」







「私と勝負だー!!」

『何で!!??』



葵の爆弾発言に皆さんそろってツッコミいれた。



「…手を組めばよい話ではないか?」

「うん、そうなんだけどね?前々から龍二くんとは戦ってみたいな〜って思ってたし♪」

「そんな楽しそうに言うことじゃないと思うけど…?」


若干ゲンナリとした感じでツッコむ優貴。お前、雅の下で修行する気ねぇか?ぜってぇ二代目いけるぞ?ツッコミ王。


「葵、いくらなんでも唐突過ぎだろ…。」

「マーくんは黙ってて!私は今龍二くんと話してるの!」

「……。」


アッサリと引き下がるマーくんでした。弱。


「で、どうなの?やるの、やらないの?」


……ん〜〜……。


「…葵さん、さすがにそんな突拍子もないこと言われたら龍二さんだって」

「やるか葵。」

「「やるんかい!!」」


マーくんとアーちゃんのハモりツッコミはギネスもんだ。


「やったぁ♪」

「ちょ、リュウジさん!?」

「ホントにやるの!?」

「もちだ。何か悪いか?」


ここだけしか戦えんし、ちょうどよいわ。ザコばっかで飽きてたとこだし。


「……いえ、あなた方が戦ったら……。」

「…結界壊れるかもしれないもんね…。」

『………。』


おいこら全員揃って沈黙すな。


「大丈夫だよ、ほどほどに加減するから♪」

「同じく。」

「それでも不安なんですけど…。」


んだよー優貴ーネガティブな野郎だなー。


「……まぁいいか。ともかくさっさとおっ始めるとしようぜ?」


何てったって……





「うおおおおおお!!ターゲット発見じゃああああ!!」

「ブチ殺せええええええ!!」

「皆殺しじゃああああああ!!」





邪魔なザコがA号館から集まってきたし。


「わぁ!?物凄い数です!?」

「つーか言ってることめちゃくちゃ物騒!?」


はぁ〜あ…性懲りもなくザコどもが…。


「…アルスクルルフィフィ、お前らがザコを相手してろ。俺は葵を相手にしとくから。」

「え〜!?そっちの方が楽そうじゃん!」

「じゃあフィフィよ、俺の代わりに葵やってもいいぞ?」

「…遠慮しときます。」


だろ?それよっかザコの方が楽じゃん。


「龍之、アンタはアルス達の援護よろしく。」

「任せろ。」

「優貴、お前は龍之達のバックアップだ。」

「えぇ!?僕も!?」

「たりめぇだ。お前合気道できるだろ。」

「あなた達に比べたら雲泥の差だって!?」

「でもキレると恐いらしいじゃん?お前の妹言ってたぞ?」

「いや知らないよそんなの!?つか皐月そんなこと言ってたの!?」

「いいからやれや細切れか黒こげにすっぞ。」

「やりますやりますやります!!」


最初っからそう言え。


「じゃ、マーくんとアーちゃんも一緒にザコの相手よろしく〜♪」

「…まぁ、龍二くんを相手にするよりかはマシだな。」

「同感ですね…葵さん、任せます。」

「もちろん♪」


そっちはフィフィより物分りいいじゃん。




「さってと。」

【チャキ】


体を半転させ、若干腰を落としてエルの切っ先を下に向けて片手で構える。


「よ〜し!」

【パシューン】


葵の奴はどっからか剣を出現させて、正眼に構える。


……ふ〜ん、やっぱ様んなってんじゃん?葵の奴。


「……。」

「……。」


互いに無言……周囲ではアルス達がザコを相手に立ち回っているが、俺とこいつの間は静寂が流れているように思えた。


まさに、真剣勝負してるって感じだな。


「……そういえば龍二くん?」

「んあ?」


真剣な表情のまま葵が声をかけてきた。


「この大会の賞品て、確か願い事叶えれるんだよね?」

「まぁあいつの言うことだから不可能じゃねぇわな。」


一応あれ神だし。


「…龍二くんは何叶えてもらうの?」

「…そう言うお前は?」

「フフフ、決まってるでしょ♪」

「そうか…当然、俺のもわかってて聞いてるよな?」

「そりゃね。大体予想つくもん。」



「ラーメン百億年分。」

「プリン百年分!」



「「…………。」」



…意外と少なかったな…こいつの場合プリン億単位まではいくと思ったのに。


「…龍二くん、食べすぎじゃない?」

「そうか?いいじゃんよ別に?」

「……そうだね!」


深く追求しないで感謝感謝。


「……ね、賭けしない?」

「賭け?」

「そう。どちらかが勝ったら何か奢るって形で。」

「そんだと願い叶えてもらう必要なくなるんじゃね?」

「だから、別の物奢るっていう形で。」


ほぉ、なるへそ……。


「因みに私は〜………バケツプリン!!」

「んじゃあ俺は〜………バケツラーメン。」

「え、どっちもバケツ?」

「そうなるな。」

「………。」

「………。」



さ、てと〜………。



「そんじゃ、そろそろいいか?」

「オッケー。精神統一もできたし。」


さっきの会話の間で、互いに精神を統一させていたわけで、はい。


「そんじゃ、バケツプリンを賭けて………





勝負!!!」

【ゴゥ!】


最初に突っ込んできたのは葵で、剣を振りかぶりながら突進してきた。おそらく肉体強化を施しているのだろう、一瞬にして間合いを詰めてきた。


「そらよ。」

【ギィン!】


でもそんなの想定の範囲内。横薙ぎをエルで受ける。


「まだまだ!」


そっから素早く一足飛びをして間合いを離し、また詰めてきて怒涛の剣戟を見舞ってきた。さすが毎日のようにマーくんイジってるだけあって力はなかなかのもん。一時旧校舎に出てきた死神の比じゃねえな。まぁあれはあれで結構強い方の部類に入ってたけど、どこかしら俺の技と似てたから対処法はわかっていた。それに若干修行不足が否めない。

俺と同じ強さとか、第二の俺だかどうだか知らねぇが、多分俺がワープホールを開かずとも勝敗は見えていただろう。あ、言っとくけどあくまで予想だかんな。けなしてるつもりはない。


だが葵のは完璧我流な上、剣を体の一部の如く振るうため、ちとばかし見切りにくい……つっても俺のもまんま我流だけど。


「はぁ!」


っと、今度は頭、胴、腰を狙った光速三段突きときたか……しっかし。


【ギギギィン!】


全ての突きを叩き落し、防御する。こんくらい楽勝。


「は!」

「ひゃ!?」


すかさず回し蹴りを放ち、葵を退かせる。ただ、蹴りは当てるのが狙いじゃねぇ。距離を離させるのが狙いだ。


「いけ、『龍迅槍りゅうじんそう』!」


光速突きを葵の心臓目掛けて放つ。力のみに重点を置いた突きで、剣先から風が渦を巻くかのように伸びていくという、離れた位置からでも攻撃できる技。


「!よっと!」

「ぎゃあああああああああああ!!!」


横っ飛びで風を回避した葵の背後にいた男子生徒を貫き、吹き飛ばす。まぁあれはほっといていいや。


「まだまだぁ!お返し!」


体勢を立て直した葵の掌に、ちょうど野球ボールくらいの大きさの魔力の球が現れた。


「と〜ん〜で〜……」


そして大きく振りかぶり、マ○ナーズのイ○ローの如く華麗なフォームを取って…



「けええええええええええ!!!」



勢いよく俺に投げつけてきた。


球は寸分違わず、俺の胴目掛けて飛んでくる。


「……つまんね。」


一言そう吐き捨て、俺はエルをヤ○キースのマ○イの如く振りかぶり…


「明日に向かって〜…」


魔力球は俺のすぐ目の前まで来ている。


俺はそれ目掛けて…



「ホーーーーームラーーーーーーン!!!」



カッキィーン!と打ち返す。



【ドゴオオオオオオオオオオン!!】



魔力球は校舎の天井を突き破って二階で炸裂、大爆発を起こした。



『ぎゃあああああああああああああ!!!』


っとと、二階から瓦礫と一緒に結構な数の人が降ってきた。上でも抗争が起こってたみたいだな。


………うし、これ使お。


「そりゃ!」

【バキィ!】

「ふげう!?」


降ってきた一人の生徒を殴り飛ばし、葵を攻撃。


「何の!」

【ゴスゥ!】

「ぎゃす!?」


葵も同じく降ってきた奴を蹴り飛ばしてくる。


【ドス!】

「「ぐほぉ!?」」


そして互いに飛ばした生徒が正面衝突したと同時に…



「『覇龍獄炎掌はりゅうごくえんしょう』。」

「『双焔・極』!!」



俺は炎を纏った正拳突きを飛ばし、葵は突き出した両手から炎を飛ばす。


【ズゴオオオオオオオオオ!!】

「「ぎゃあああああああああああ!!??」」


二人の攻撃は見事にダブル生徒に命中、大爆発を起こした。あ、大丈夫大丈夫、この空間だと死なないらしいから。


「おりゃあああああああ!!」

「やあああああああああ!!」


煙の中に同時に飛び込み、剣を振り上げ、



【ガキィイイン!!】



互いの刃がかち合った。


「むんんんん……!」

「んぎぎぎぎ……!」


俺もちょっと力を加え、唇を噛みながら押す。葵も負けじと押し返し、それで刃がかち合った部分から火花が飛び出る。


「………。」


…ところがどっこい、俺がただ鍔迫り合いを続けるとでも?



「唸れ、黄金の稲妻。『金色雷鳴ゴールドサンダー』。」

「!?」


『覇龍獄炎掌』を放った直後からずっとエルに溜め込んでいた気力を、今ここで開放する!


【ドォォォォォン!】

「みぎゃああああああ!!」


金色の雷の直撃をくらい、いい感じに吹っ飛ぶ葵。同時に起こった爆発で周囲が振動する。


ま、これで終わり



「『エターナル・デッド・エンド』!!!」



…で済むわきゃねぇか。


「ほれ。」

「へ?【ギュオオオオオオオオオオオオ】ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁ」


突如現れた漆黒の穴の中に、手近にいた生徒を投げ込んだ。叫び声が穴から聞こえるが、やがて縮小していってゆくと同時に声も小さくなっていった。


「むむぅ……不意をついた技だったのに…やるね、龍二くん!」


華麗に着地し、再び剣を構える葵。さっきの一撃は効いたと思ったが、咄嗟に防御してやがったか。さすがだな。


「オメェこそ、今まで戦った中じゃランキングベスト5に入るぜ?」


因みにベスト5には、葵はもちろん、和也、日暮、金神、そんでキョウって奴も入っている。今回はあえて順位は言わない。え、旧校舎に出てきた死神?あぁ、あれは惜しいけど今んとこ7位。


「え、そうなの?何か照れるな〜♪」

「そうか?」


俺にとっては当たり前のランキングだと思うんだがな?


「まぁ、ともかく……ラウンド2といきますか?」

【チャキ】


「…フ、当然。」

【チャキ】


互いに武器を構えなおし、再び睨み合う。


「それじゃぁ、」

「もういっちょ、」



「「やったりますかぁ!!」」



同時に地を蹴り、剣を振りかぶった。













『まだだ……まだ足りぬ……もっと……もっと力を……!!!』

…え〜、葵さんが使ってた『双焔・極』は一時、『魔王様の悩みの種』の感想欄で使ってた技です。一応使わせてもらいました。


今回は前編というわけで、続きます。時間あるかなぁ?

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