落下する身体
翔太は非常階段の方へ向かって走っていた。
やがて非常階段を視界に捉える。
そこで目にしたのは……
――3階から落下中の詩織の姿だった。
それはまるでコマ送りの世界だった。
少しずつ落下する彼女を見て、彼は死を直感する。
もう彼女と話すことができない。
もう笑顔を見ることができない。
もう…… 会うことができない。
翔太は全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。
どんな危険からも詩織を守ろうと決めたのに……
守り切ることができなかった自分が不甲斐なくて……
心が張り裂けそうになる。
最後に浮かんできたのは土地神と交信する巫女姿の詩織――
翔太は全身全霊で神に怒りをぶつける。
「あいつは…… 詩織は、お前の代わりに土地の人々を救ってきたんだ! 神よ、お前はあいつを救わずに見捨てるというのか? お前にはあいつを救えないのかよー、ばかやろぉぉぉぉ!」
声がかすれるほどに大声を出した翔太は頭の中でブチッと音がしたように感じた。
(あっ、頭の血管が切れた? 詩織と一緒に俺も死ぬのか……)
そう思ったのだが……
ふと気付くと彼の周囲は真っ白な光に包まれていた。