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言葉の綾

「大橋先生が何故ここに? 今日は日曜日なのに……」


 大橋先生は翔太の学級担任。そして翔太以外の人間では土地神の姿を目視できる唯一の存在――その正体は邪神と身体を共有する25歳独身女性である。


「あのねぇ、中学校の先生は休日でも部活の指導があるの! さっきまで吹奏楽部の練習に付き合っていたのよ。帰宅部のあんたには分からないでしょうけどね!」


 大橋先生は土地神に正座させられている翔太の頭を人差し指でコンコンと叩きながら日頃の不満をぶつけ始める。教え子であるはずの翔太へ向かって――


「部活動の顧問なんてタダ働きみないなもんだから……休日の部活動手当なんて、4時間以上の活動に対して日当が1250円なの。子どものお駄賃並なのよね、やってらんないっての、もう!」


 大橋先生は口元のほくろが印象的な細身で美しい顔立ちの女性なのだが、いつも表情に暗い影を落とし、まさに『薄幸の美人』という感じ――そして不満をため込んでしまうタイプの女性だ。


「で……今日は何の用? 部活の指導も終わったし、私は早く帰ってごはん食べて風呂入って寝たいんだけど! そしてぇ……今夜もぉ……イケメンの彼とぉ……うふっ!」


「大橋先生……教え子の俺の前でそんな発言していいんですか?」

「はあー? どうせ、お子ちゃまなあんたには意味も分からないでしょう?」


 大橋先生は人差し指を翔太のおでこに当て、ちょんと押した。

 その態度にムッときた翔太は、その手を払いのけて言う。


「お、俺はお子ちゃまなんがじゃないぞ! し、詩織と……ね、寝たんだから!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――!?」


 大橋先生と土地神が同時に声を上げた。


 確かに翔太は一華の策略により詩織と同じ部屋に寝た。

 翔太は真実を言ったまでのことだが……

 翔太の言葉には邪神を宿す女と土地神の2人をミスリードするには充分な破壊力をもっていた。


「な、なんということだ……我が巫女がこの男の手に堕ちただと……? まだ早すぎるだろう……いや、永遠に早すぎるだろう……くっ、我が身の不徳の致すところ……先代の巫女に何と申し開きすれば良いのか……くっ……」


 土地神は屋上のフェンスを両手で握りしめ、おでこを繰り返しぶつけながら苦しそうに呟いている。


「な、なんなのこの子……まだ13歳でしょう? あどけない顔をしていながらその中身は性の権化だとでもいうの? 私もこの子と二人っきりになったりしたらやられちゃうっていうの?」


 大橋先生は一歩、二歩と後ずさりする。

 そして翔太から充分な距離をとってから、Tシャツの裾を持ち上げる。


「おい、服を脱いで何をするつもりだ? 男日照りでとち狂ったか、邪神よ」

 おでこを腫らした土地神が声をかけた。

 彼は落ち着きを取り戻していた。

「はあー? 違うわよ。変身して今のうちにこの子を退治しておこうと思ってね……」

 大橋先生は変身する際、背中から生える翼で服が破れるのを嫌い上半身裸になるのが常である。

「まあ落ち着け邪神よ。少年が言っていることが真実かどうか、見極めてからでも遅くはあるまい。私が確かめに行ってくるから、その間に頼みたいことがある。この土地ではお前にしか頼めないことなのだ」

 

 腕を組んだ土地神と、Tシャツを着直した大橋先生が正座を続けている翔太ににじり寄っていく――   


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