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真打ち登場?

『バサッ……』


 一華の背後から風を切る音が聞こえ、一陣の風が彼女の頬をなでるようにすぎていく。振り向いた先に巫女服を着た詩織が走って来ているのが見えた。


 ――このままでは詩織ちゃんを巻き込んでしまう――


 そう思った一華は来てはいけないと伝えようとするも、父母を失ったショックで声が枯れていた。

 首を横に振りそれを伝えようとする一華の顔は涙でぐしゃぐしゃに濡れている。


 しかし詩織の視線は上に向いていた。


 一華は詩織の視線の先を辿っていく―― 


 30メートル上空を飛んでいる龍の更に上空に黒装束姿の翔太がいた。


「えいや――――!」


 『パチーン』と音をさせて龍の鼻っ面を神器の扇で叩く翔太。

 黒龍はうなり声を上げ、一華の母の身体を口から離す。


 翔太は黒龍の鼻から首に向けて『タタタ……』と駆け下りる。

 首元から下方にジャンプして、一華の母を抱きかかえる。

 神器の扇を『バサッ』と仰いで空中で体勢を整えて着地する。


「おわっ、とっと……」


 一華の母を抱きかかえたままの翔太は、その重さで後ろに倒れそうになる。

 そこへ詩織が駆けつけて翔太を支える。


「お…… おかあさん…… ごめんなさい、おかあさん!」


 母に抱きついて泣き叫ぶ一華。

 詩織は一華の背中をさすって落ち着かせようとする。


「遅れてごめん、イチカさん。お父さんも大怪我はしているけれど意識ははっきりしているよ、イチカさん!」


 翔太は一華の父をおぶって運んできた。


「本当に? 本当に生きているの?」

「イチカ…… おまえは怪我はないか?」

「お父さん――――! お母さんが私を庇って龍に咥えられて大怪我しちゃったよー!」


 父にすがり付いて泣く一華。一華は初めて母を『お母さん』と呼んだ。その頭をなでながら父は傷だらけの顔をほころばせてゆっくり伝える。


「大丈夫だよイチカ。私たちはお前が立派な大人になるまでは絶対に死なない。それが死んだ母さんとの約束なんだよ」


「えっ……」


 一華は父の言葉に驚き、父と母の顔を交互に見る。詩織に介抱されている母は、顔を一華に向けて優しく微笑んだ。


「イチカさん、ご両親を任せるけどいい?」


 翔太は龍を見上げながらいう。


「うん…… もう大丈夫。父と母は私が守るから!」


 一華は横に寝かせた父と母の手を握り、力強く答えた。


「よし、さすが白加美神社の巫女さんだ。それに引き替え、うちの巫女さんは着替えるのが遅くて助けが遅れちゃったから本当にすまない!」


「はあーっ? 翔太今それを言うー!? あなたは変身するだけで済むけれど私は着替えが必要なんだから仕方がないでしょう?」


「だから詩織はパジャマのままで良かったじゃん」


「いやよパジャマで外に出るなんて! それにこの服は私の戦闘服なんだからね!」


「な、何なのあんたたち…… こないなところで仲間割れなの?」


 一華は顔をゆがめて翔太と詩織のやりとりに横やりを入れた。


 我に返った2人は咳払いをして、龍を見上げる。

 龍は地上の出来事には関心がないようで、優雅に空中を泳いでいる。


「いくぞ詩織!」

「はいっ!」


 詩織を脇に抱えて、神器の扇を一振りする。


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