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 アロハシャツの男が持つナイフが一華の胸に突き刺さるその寸前――


 翔太は崩された体勢から一華の腹部と背中を足でカニばさみし、渾身の力を込めてねじる。突き出されたナイフは海老反りの姿勢となった一華の目前を通過する。


 行き場を失ったアロハシャツの男が足をもつれさせて派手に転ぶと、すかさず翔太は立ち上がり、ナイフを握っている男の右手を蹴り飛ばす。ナイフは回転しながら床を滑ってコインロッカーに『カツーン』と衝突した。


「凶器まで持ち出しやがってただで済むと思っているのか!? 『中学生のガキ』相手に大人げないんじゃないですか-、おにーさん!」


 翔太は腰に手を当てて呆れたように言った。

 男は眉根を寄せて、

「て、てめーは何者や? ただのガキやあらへんな、格闘技でもやっとるのか?」

「ん? まあ、魔物や悪霊の退治なら一応専門家というか何というか……」

「なんやそら? まあ、ワイらも大人げなかったわ。すまんイッちゃん、また今度遊ぼうな。今回はワイらのおごりってゆうことにしておくわ」 


 アロハシャツの男はゆっくりと立ち上がり、両手をぶらっと上げて降参のボーズをしながら言った。

 気を失っていた虎柄ジャンパーの男を起こし、男達はとぼとぼと立ち去っていく。

 一華はそんな彼らの後ろ姿を見送り、翔太に礼をいおうと振り返る。すると彼は眉間にしわを寄せて怒ったような顔をしていた。


「翔君…… どこぞ怪我でもしたかいな?」

「なぜ俺を庇おうとしたんだ?」

「えっ? だって、翔君はうちを助けてくれたから。うちだって、翔君を助けたいと思ったんやもん」

「相手はナイフを持っていたんだぜ? 刺されていたかもしれないんだぜ?」

「そ、そうやね、今考えるとおそろしなってきたわ…… あの時は翔君を助けることしか考えていなかったから……」


 一華は両肘を抱え、おどけるようにぶるぶる震えて見せた。

 そんな一華を翔太はあきれ顔で見て、天井を見上げながらつぶやく。


「まったく、神社の娘というのはみんなそうなのか? どうして自分の身の安全よりも他人を優先させちまうんだ? それだから俺はいつもはらはらさせられるんだ!」


「神社の娘って、詩織ちゃんのことを言うてはる? 確かにあの子はうちよりも大変そうやね! そっか、翔君って本当に詩織ちゃんのことが大好きなのね。うらやましいわぁ、うふふ……」


「か、からかうな! さあ、神社に帰りますよ、イチカさん! 案内してください」  


 そう言って歩き出す翔太の背中に向かって、一華は小さな声で、


「そして…… ちょっと嫉ましい……」と呟く。


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