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狂気のナイフ

「ふざけるな! その女の仲間とわしらは契約を結んでおるんやで。豪遊させてやる引き替えに、その女とヤっていいことになってとるんやぞ!」


「う、うそや! 先輩たちがそんなん言うはずが……」


「わいらはうそはつかなあよ。イッちゃんはその先輩たちに売られちゃったんやで? かわいそーにな。せやけどわいたちがその心の傷を埋めてやるからよ。さあ、いこうか」


「そ、そんな……」


 涙目の一華は、紙バッグを両手で抱えたまま呆然と立ち尽くしている。

 一緒に大阪まで遊びに行くぐらいの仲である先輩に裏切られていた。一華にはそのことがショックだったのであろう。


 一華の様子を見た翔太は、再び呆れたような表情で言う。

 

「いや、だめだろうそれは! 本人の了解も得ずに…… そもそも了解があってもそれはだめだろ! あんたら大人なんだからその位わかるでしょうが……」


「そもそもはこちらの台詞だ。ひょっこり出てきやがったてめーはそもそも何者なんだ? イッちゃんの弟か?」


「いや、俺はイチカさんの1っこ下のただの知り合いですが?」

 それも今日初めて会った程度の知り合いである。


 それを聞いた男たちは互いに顔を見合わせて、


「はあー!? 1っこ下って…… おまえ小学生だよな?」


「ち、ちがう! 俺は中学校1年生、桜木翔太だ!」


「ええっ! ほなイッちゃん、まだ中学生やねんか? ガキやんか! どないする?」


「てっきりJKかと思っとったけどなぁ…… しゃーなー、服剥いて写真でも撮ってばらまいておくかぁ-」


 虎柄ジャンパーの男から発せられた信じられないセリフを聞いて、翔太は改めて男たちの全身をくまなく観察する。しかし、足の先から頭のてっぺんまで、どこにも悪霊の姿はない。男たちが悪霊が取り憑いているのではという翔太の推測は外れていた。

  

「や、やめて…… おねがい…… お金なら後から返すから……」


 イチカは首を振りながら後退するが、虎柄ジャンパーの男はにやりと笑いながら迫る。翔太は身を乗り出そうとするが、


「お前は大人しく見ていろよ」


 アロハシャツの男が翔太の背後から羽交い締めにしようと腕をまわす。


「――そういう訳にはいかないだろ」

「えっ ――ぐはっ!」


 翔太は瞬間的に足をかがめ低い姿勢から男の腹に肘鉄、そして顎に頭頂部で頭突きをくわえる。


「ぐわっ!」


 翔太の先制攻撃2発でノックアウト。男はあごを両手で押さえたまま倒れ込んだ。


 間髪入れず、いやらしい目つきでイチカのシャツの胸元に手をかけている虎柄ジャンパーの男の背後から、側頭部へ翔太の回し蹴りがヒット。


「ぐはっ!」


 虎柄ジャンパーの男は、脳しんとうをおこしたように、ぐしゃりと床に崩れ落ちた。


 翔太は喧嘩では負けたことがない。それが年上相手であっても、なめてかかる相手には負ける要素は見当たらないのだ。


「じゃ、帰ろうか。立てる?」


 腰を抜かしたように地べたに座り震えているイチカに向かって、手をさしのべる翔太。一華は涙をシャツの袖口で拭いて、軽くうなずき、手を重ねる。


 その時――


「なめるなクソガキがぁぁぁ――――!」


 アロハシャツの男がナイフを両手に持ち、翔太の背中へ向けて突進する。

 男の異変を正面から捉えていた一華は――


「あぶない、翔君――!」 


 翔太の手を後ろへ引っ張り、自らの体を盾にした。


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