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注目を浴びている?

 翔太と一華の2人は、京都駅の玄関口で、壁にもたれかかっている。

 一華は携帯電話で誰かと連絡を取り合っているようだ。

 翔太は往来する人々を観察している。


「俺、ここは嫌いだ…… 色んなモノを見てしまうから……」


「ん? 何が見えるって?」


「結構な数の人達が悪霊とかモノノケの類いに取り憑かれている。小さいモノだと自然にどこかへ行ってしまうこともあるけど、中には厄介なモノもあるんだ…… 俺の力じゃ一人一人に対応できないから…… 見過ごすことしかできないのが悔しい」


「ふーん…… 翔君には見えるんだ…… あのさ、うちにも見えていた時期があるんよ!」


「えっ、そうなの? 今は?」


 翔太は目を輝かせて一華を見る。初めて同じ能力をもつ他人に出会ったのだから。

 しかし、一華は首を左右に振った。


「そ、そうか…… 今は見えないのか……」


「うちね、昔に詩織ちゃんと出会った頃までは色んなモノが見えていたよ。人形のモノノケと会話を交わすこともできたの。でも、うちにしか見えないモノがいるなんて、変わり者扱いされるのが怖くなって…… 全てを捨てた。神社の行事にも一切関わらないと決めたんよ。すると何も見えなくなった……」


「それで親父さんとの関係もあんな感じに?」


「それはうちが反抗期なだけで、それとは全く関係ないわー、あははっ」


 屈託なく笑う一華を見て、翔太は少し安心した。


 ちょうどその時、一華のスマホに着信があり、誰かと話し始める。

 電話を切るなり、


「じゃあ、うち、学校の先輩達と大阪に繰り出してくるから、あとは自分で何とかしてね。あ、お父さんには夕飯も食べてくるって言ってあるから、ここに8時集合。いい?」


 と、言い残してさっさと行ってしまった。




「えっ…………?」 




 哀れ見知らぬ土地で独りぼっちとなった翔太は、駅前で呆然と立ち尽くしていた。


「あいつ、親父さんから2人分の交通費として結構なお金を受け取っていたよな…… くそ、始めから俺と遊ぶ気なんかなかったんじゃないのか? それとも、俺がキ、キスの誘いに乗らなかったから怒っちゃったのか……?」


 彼は腕組みを壁にもたれかかり、独り事を呟いていた。一華に騙されたことへの恨み辛みが次々に飛び出してきた。それらを一通りはき出した後、詩織の顔がふと思い浮かんだ。


「詩織…… 怒っているかな。勝手に抜け出してきちゃったもんな…… 親父さんにはボディーガードを頼むって言われていたのに…… 神様にも……」


 神器の扇をじっと見つめる。

 この扇子には今回の旅行のために土地神から授かった幾つかの力が備わっている。

 それらをまだ1つも利用していないことは良いことなのか、それとも自分の怠慢なのだろうか。


 彼は目の前を通過するサラリーマン風の男性の、背中につかまる黒いモノと目が合った。

 小玉スイカぐらいの大きさの頭に2つの大きな目。頭の大きさに対して胴体はとても小さく二等身。しかし人間の身体にしがみつくには充分な大きさ腕が生々しい。


「目が合っちまったからには放っておく訳にはいかない!」


 翔太は精神を集中し、神器の扇を頭上にかざす。


「悪霊退散ー!」

 

 手剣を切るように振り下ろすと同時に、扇をパッと開く。

 すると金粉をまき散らしたような空気の塊がサーッとが飛び出す。


『ギャァァァー……』


 金色の空気に包まれた悪霊は悲鳴を上げながら消滅し、スーっと糸を巻き取るように神器の扇に吸い込まれていった。

 サラリーマン風の男性は、一瞬何かの気配を感じたように立ち止まるも、再び歩き出していった。


 土地神から授かった力の1つ【悪霊退散】は、霊力を扇子に蓄えていく能力である。土地神の半身とはいえ人間の翔太には制御できなくなる恐れがある。だから土地神には悪霊退散は詩織に任せておくようにと警告されていた。詩織に何かがあったときのために、今回の旅行限定で授かった力なのだが……


「や、やばい…… どうしよう…… みんなが…… みんなが俺のことを注目している……?」


 翔太の言葉とは裏腹に――

 京都駅前を行き交う人々はそれぞれの目的地に向けてただ歩いている。

 観光客のグループは案内図を指さして相談している。

 サラリーマンは携帯電話で話している。


 何も特別なことはない、ただの日常……


 しかし……


 ――無数の魑魅魍魎たちが一斉に翔太を睨んでいた――


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