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戦慄の静岡駅

 金曜日の朝10時。桜木翔太と神崎詩織は静岡駅新幹線ホームに佇んでいた。


 東京駅から名古屋行きこだま号に乗っていた2人は、会話の内容から京都へ向かうことを知ったサラリーマン風の男性から、間違えて乗っていることを知らされたのである。

 自力で田舎を出たことのない2人には、新幹線を選んで乗るというのはハードルが高すぎた。 

 

『次は団体専用列車が入ってきます。一般の方の乗車はできませんのでご注意ください』


「くそー、次も乗れないんだってよ!」

「ううっ…… 私たち無事に京都に着けるのかしら……」


 東京駅までは翔太の母が見送ってくれたものの、新幹線のホームまでの見送りは遠慮したのが間違いの始まりだった。都会に慣れていない2人にとって、今回のミッションは『はじめてのおつかい』級の難易度である。しかも安全を見守るスタッフなどはもちろんいない。あるのは……


「いざとなったらこの神器の扇で何とかしてやるから大丈夫だ。安心しろ詩織!」

「安心できないよー! それでふらふら飛んでいくって言うの? やだよー……」

 もしもそんなことをしたらSNSで話題沸騰になること間違いなしだが、彼らにはそんなことは分からない。

「神様は京都までは付いて来れないからって、この扇に色んな力を封印してくれたんだ。これで変身だってできるんだぜ!」

「本当? どんな姿に? ちょっと見てみたいかもー」

「おっ、そ、そうか? じゃあちょっとやって……」


 翔太が神器の扇を天にかざそうとしたそのとき、ホームに団体専用のぞみ号が入ってきた。


「――――!」


 車内から漂ってくる霊気に翔太は驚愕する。

 彼の表情から、詩織はただならぬ事態が起きようとしていることを理解する。


「翔太…… 何が視えたの?」

「とても強い…… 魔物が車内にいる…… しかも2体だ!」

「2体も? 誰かに取り憑けているのかしら……」

「分からない。しかし鴉天狗の比ではない強さを感じる。油断するな詩織!」

「う、うん……」


 2人は動きを止め、身構える。

 詩織は鈴を右手に、翔太は右手に扇を持ち構えている。

 共に学生服の2人がポーズを決めている。

 一般客からどう見られているかなど気にしている余裕はないのだ。


 しかし……


『ピンコンピンコン…… プシュー……』


 団体専用のぞみ号は何事もなく次の停車駅へ向けて走り去っていった。


「ねえ、翔太……」

「ん? なんだ?」

「私たち、すごーく注目されているのだけれど、もう構えを解いていいよね」

「ああ、一先ず危機は去ったようだ。じゃ、列に並ぼうか……」

「そ、そうね……」


 2人はそれぞれの荷物を持って、自由席の列に並び直した。 

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