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お返し

「大橋先生、目を覚ましてください!」


 屋上の床にうつぶせで倒れていた先生を、翔太と詩織は2人がかりで仰向けに寝かした。翔太は先生の様子をのぞき見るが、起きる気配がない。


「翔太…… まさか先生…… 死んじゃったんじゃ……」

「まっ、まさか!」


 翔太は自らの頬を先生の鼻先に近づけ、呼吸を確かめてみようとした、その時――


「うっ…… ん……」と息を吹き返した先生は……


 翔太の首に手を回し、顔を引き寄せ、


「――――っ!」


 2人は互いのくちびるを重ね合わせた。


「ひぃぃぃぃぃ! しょ、翔太ー! ななな、なにしてるのよぉぉぉ!」


 混乱して悲鳴をあげる詩織。


 目を瞑ったままの大橋先生は翔太の口の中に舌を入れ始める。


「ううっ――――!!」

「べ、ベロチュゥゥゥ――――――!?」


 詩織の悲鳴が最大点に達したとき、ようやく先生は目を開く。


「ぷはっ………… ななな、なにするんですか先生ー!」


「……あっ、ごめん!」


 自分の口を手の平で拭き取るようにして嫌がっている翔太と、その隣でまだ悲鳴を上げている詩織。

 共に自分が担任をしているクラスの生徒……

 教え子とのキス行為など、許されるものではない。

 しかも目撃者がキスの相手の彼女……

 大橋恵美子教諭の目の前には『免職』の二文字がちらついていた。


「ねえ、桜木君。互いに犬にでも咬まれたと思って、忘れることにしない? そうしてくれたら、先生、神崎さんが封印を解いてしまった鴉天狗をがんばって封印し直すから。どうかしら?」


 先生は一か八かの交渉に出てみた。これで駄目なら土下座しよう…… と。


「あー、それね。先生が気を失っている間に僕と詩織で全部お祓いしておきました」


「えーっ? あなた達2人で? どうやったの」


「ほら、この神器の扇ですよ。竜巻を起こして飛行中の鴉天狗達を地上に落として……」


「翔太と2人で悪霊退散のお祓いをしたんです…… ぐすっ……」


 ようやく落ち着いてきた詩織が説明に加わった。


 先生が周囲を見回すと、たしかにすでに鴉天狗の気配はなかった。自分が苦労して1羽ずつ封印してきた彼らをこの若い2人は瞬く間に退治したというのか……


「翔太ー、あなたに隙があるからあんなことされちゃうのよー!」

「えーっ!? 俺のせいなの?」

 詩織はやり場のない怒りを翔太にぶつけ始めていた。

 

 きっとこの教え子達はキスの経験なんてないのだろう。……と言うことは私が彼のファーストキスを奪ったの? 大橋先生は2人に同情した。そして――


「じゃ、あなたに彼のファーストキスをお返しするわ……」


 と、言いながら詩織のあごをくいっと持ち上げ……


「ううっ――――!」


 詩織と先生は熱い口づけを交わした。


 その後しばらくは詩織の悲鳴や怒号が鳴り止むことはなかった。


第五章 完結。

今回は主人公が大橋先生のため「閑話」という扱いにしました。

次回からはまた本編のスタートとなります。舞台が京都となります。お楽しみに。

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