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幕引き

『邪神のペースに乗せられるな! 奴は人の心の隙間を突いてくる。とくに嫉妬の感情を増幅させる能力に長けているようだ』


「あら、そこにいらしたの、下賀美神社の土地神様。うちの生徒が粗相をしたようで申し訳ありません。きつく指導しておきますのでこちらへ引き渡してくださいませんか?」


『あいにくだがそうもいかんのだ。少年はどうでも良いが巫女は渡せん!』

「先生には神様が見えるのか! おいっ神様、どうでも良い少年って俺のことか?」

「ねえ翔太、何がどうなっているのか分からないんですけど!」

    

「ええい、ややこしいことになっているわね! もういいわ、あななたち、やっておしまい!」


 大橋先生の命令により、サキ・鈴子部長・三咲が2人に襲いかかる。

 3人はそれぞれスコップ・移植ゴテ・草苅鎌を振り上げている。

 

「詩織、俺から離れるなよ!」

「えっ? あ、はい……」


 詩織を庇うように左腕を後ろに回し、翔太は扇子を右手で構える。


 サキが振り下ろすスコップを扇子で巻き取るようにいなし、サキの右腕をつかみ足を払う。サキは身体をくるっと半回転させられ、背中から屋上のコンクリート床に叩き付けられた。


 翔太の頭を移植ゴテで刺そうと手を伸ばす鈴子部長だが、翔太が広げた扇を一振りするとつむじ風が起こり目をつぶる。動きが止まったところを閉じた扇でポンと頭を叩くと気を失った。


 部長の身体を詩織に預けて三咲と対峙する。


 鎌を持った三咲は3人の中では最も手強そうだ。『鎌が』ではない。三咲は普段から詩織と翔太の関係に嫉妬していた。嫉妬心を操る能力に長けている邪神に支配されている彼女は強い。


「アンタ…… いつもいつもいつも、詩織とイチャイチャして気にくわないのよ……」


 腹の底から出したような低い声で三咲が恫喝してきた。

 

 翔太はその言葉の意味を深く考えることはなかった。

 一方で、詩織は初めて明かされた三咲の本心に驚愕した。


(三咲は私たちのことを応援してくれていたはずなのに……)


 同年代の友達の女心を理解するには詩織はまだ幼かったのである。


「アンタなんか、消えちゃいなさい――!」


 鎌を斜めに振り下ろす――


 その動きを読んでいた翔太は、右手に持った扇子でガード…… するも、それは三咲のフェイントだった。


「えーい!」


 『ドカッ』と三咲のトーキックが翔太の右脇腹にヒットする。


「うっ――!」


 右脇腹を庇うように右手を下ろす翔太に、更に追撃が――


 三咲は左足を軸にして身体を回転させ、右足で翔太の頭部を回し蹴り。


『バキィ――!』


 翔太は…… 沈んだ。


「翔太ぁぁぁぁ!」

 

 鈴子部長を介抱していた詩織の叫び声が屋上に響き渡った。


 手すりの上にちょこんと乗っかり戦況を見ていた土地神が、やれやれといった仕草をして翔太の身体に同化する。


 三咲はゆらりと詩織に向かって歩き出す。


 翔太の身体に同化した土地神は、三咲を後ろからギュッと抱きしめる。


「えっ!?」


 三咲と詩織が同時に声を発した。


「あ、アンタ、なにやって…… んの?」


 抵抗しようとした三咲からスッと力が抜けていく。

 だらっと下がった腕から、


『カツーン……』


 と、鎌が落下した。


 ――浄化完了っと……――


 心に直接伝わる土地神の言葉により翔太が目を覚ます。

 三咲を後ろから抱きしめている自分の状況を見て……


「あ、あれ? 俺、何をやって…… ん? 詩織さん?」


 詩織は大きな目をさらに見開き、大きく口を開いてわなわなさせていた。


『お主はその娘とよろしくやるといいぞ。巫女はワタシのものだからな』

「は、はめやがったな、神様!」

「しょ、翔太ー! 何やってるの? 離れなさいよー!」


 痴話げんかのようなものが落ち着き、2人は騒ぎの元凶である大橋先生を探したが、すでに音楽室へ戻って仕事をしていた。

 今回は痛み分けということで互いに幕を引くことになった。



第四章 完結。

中途半端な幕引きだと思いましたか? はい、作者もそう思います。

現段階では大橋先生は翔太の敵ですが…… これ以上はネタバレになるので書くことはできませんが、

彼女は悪人ではありません。だから戦いの決着は当面は持ち越しとなります。

第五章はその彼女が主人公となる閑話です。お楽しみに。

ここまでお読みいただきありがとうございます。よろしければ評価をいただけると嬉しいです。

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