表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/96

下賀美神社の巫女

 雑木林の中を更に歩いて10分、やがて神社の鳥居が見えてくる。


 詩織はこの神社の宮司の一人娘である。


 社務所兼住居の詩織の家に入ると、詩織の父が2人を出迎えた。


「詩織、帰ってきて早々にすまないが客人が来ているんだ。広間に通してあるから話を聞いてあげてくれるか?」


「うん、じゃあ着替えてくるから翔太は先に広間で待っていてね」


 そう伝えると、父と共に奥の間に消えていった。



 

 翔太は広間の先客にぺこりと一礼し、広間の隅に座る。


 来客は翔太もよく知っている佐々木のお婆さんだった。


 孫が大阪の大学へ進んだが最近は実家へ戻ってきているらしい。


 佐々木のお婆さんとぽつぽつと世間話などをしていると、詩織が広間にやってきた。


 彼女は巫女の衣装に着替えていた。


 巫女服姿の詩織は堂々とした振る舞いだ。


 普段の泣き虫な彼女とはまるで別人のようである。


 詩織は上座に座る。


 佐々木のお婆さんは孫の様子が変で心配しているという相談を持ちかけた。


 ふんふんと頷きながら詩織は老婆の悩みを聴く。


 翔太はその時……


 ――老婆の背中にしがみつく霊の姿をじっと見つめていた――


 やがて巫女服姿の詩織が祝詞を唱える。


 翔太が視ている霊は、祝詞が始まると同時にぷるぷる震える。


 祝詞が終わると詩織は天井を見る。いや、彼女はそのずっと先を見ていた。


 数十秒後、ふっと息を吐いて、詩織は老婆に土地神の言葉を伝える。


「お孫さんはこの山ノ神村地区で実家の農業を継ぐべきか、大学を出て都会の企業に就職するかを決めかねているようですね。優しいお孫さんじゃないですか。お祖母さんの身体の事も案じているようですよ。あなたにそのことを伝えるのが恥ずかしくて言えなかったんです。」


 詩織の言葉を聞いた佐々木のお婆さんは目から涙をあふれさせ、感謝の言葉を伝えた。 


 詩織は合わせた老婆の手を両手で包み込み、彼女自身の言葉を付け加える。


「佐々木さん、土地神はいつでもあなたを見守っています。あなたとお孫さんに幸せが訪れますように……」


 老婆は深々と頭を下げ去っていく。


 詩織の父はそれを見届けてから奥の間に下がった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング

↑↑ランキングに参加中。クリックお願いします↑↑

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ