黒い羽根
翔太は思わず大きな声で叫んでしまった。
詩織をはじめとして他のメンバーには彼が独り事を言って、突然叫んだように見えている。
「失礼ね桜木君…… あなた先生を邪神よばわりするの? 先生悲しいわ……」
そう言って大橋先生はゆらりと動き出す。
「先生はね…… 神様と契約を結んだの。先生の理想とする力を手に入れたのよ? あなたには分かってもらえると思っていたいたのだけれど…… 本当に残念…… 少しお仕置きが必要ね!」
先生は胸の位置で腕を組んで、サッと手を振った。すると『シュルシュルッ』と黒い物体が詩織、鈴子部長、三咲、サキに向けて放たれる。
翔太はそれを払いのけようとするが――
『パシィィィィ!』
強い静電気のような衝撃を浴び、身体が硬直して動けない。
黒い物体を放射すると同時に彼の周りに結界が張られていたのだ。
黒い物体は、彼女等の胸に突き刺さる。
身体がピクンとのけぞった。
黒い物体の正体は、鳥の羽根だった。
それはゆっくりと彼女等の身体の中に溶けるように入っていく。
「詩織――――!」
翔太が叫ぶが詩織は何も反応しない。
ただその場に立っている……
他の者たちも同じだ。
慌てる翔太を見て、大橋先生は満足そうに笑った。
『迂闊だった…… 巫女を連れて離脱するぞ! 結界崩し――!』
翔太と土地神は同化していた。
彼らは結界を破壊し、詩織の身体を脇に抱えて窓ガラスを突き破る。
空中に青い光の輪が出現し、それに足で『タン!』と蹴り、上昇する。
上昇する勢いが弱まったときに再び光の輪が出現し、更に上昇する。
そして、屋上まで到達した。