邪神現る
「俺の悪霊を視る力が無くなった……?」
翔太の絶対的な自信が揺らぎ始める。
その様子を見て大橋先生は、
「上手ね詩織さん。あなた唄も上手だけれど、祝詞の詠唱も上手なのね。先生感動したわ!」
パチパチと拍手をしながら詩織に近づいていく。
詩織に何かをするつもりか? そう感じた翔太は動き出そうとする。
しかし何者かが彼の肩を掴んでで制止した。
「お主らには手の負えない相手だ。下がっているがいい……」
その手は黒装束姿の土地神のものだった。
彼はずいっと翔太の前に出た。
「か、神様いつの間に?」
「先刻からここにおったのだが目に入らなかったか。それもあやつの存在の影響か……」
土地神は大橋先生を牽制するように見つめながらそう言った。
「あいつの正体は何者なんだ。俺には何も視えないんだけど……」
「あれは悪霊の類いではないからな……」
「悪霊じゃない……? じゃあ一体……」
「お主はワタシの姿が見えるよな?」
「当たり前じゃないか!」
「それはワタシと契約を結んだからだ。それ以前はどうだった?」
「…………見えなかった」
「お主が見えるのは霊的な現象、言うなれば低次元の魑魅魍魎の姿だ。それに対して我々神は高次元の存在。だからお主には見えぬのだ。あの者の正体が……」
「…………?」
「……あれは神だ。ワタシと同じ神が取り憑いておる」
「――――!」
「神であり災いをもたらすもの…… 君たち人間は邪神と呼んでいる」
「じゃ、邪神――――!?」