邪魔者は消しましょう
『邪魔者は消せばいい』という言葉。
はたしてそれは学校の教師から出てくる言葉だろうか……
「あ、あの…… 消すってどういう意味なんでしょうか……」
詩織が訊いた。するとサキは苦虫をかみつぶしたような表情で答える。
「あなたが想像している通りの意味だと思うけど。あっ、だからといってすぐに『はい、そうですか。じゃあ消しましょう』と行動したわけじゃないのよ? まずはあなたを脅して身を引くならそれで済まそうと思って……」
「それであの日、私は先輩に呼び出されたわけですか……」
「そうよ。でもあなたはすでに剛史の告白に『ノー』と答えたと言うじゃない。だからウチとしてはそれ以上どうかしてやろうという気持ちはなかったの…… 一昨日の帰りに、あなたたち園芸部の活動中に剛史が声をかけようとした現場をみるまでは……」
詩織は一昨日の花壇での作業場面を思い返していた。たしかにあの時、剛史は何かを言おうとしていた。恐らくは悪霊に取り憑かれて襲ったことを改めて謝罪したかったのだと思うが、サキはそれを別の意味に捉えていたようだ。
「その直後に大橋先生に会ったの。先生は私を校門前で待っていたかのように寄ってきて…… 2人で話をしているうちに、だんだんとあなたに対する嫉妬心が大きく膨らんできて…… 夜、学校に戻って花壇を荒らしたの。翌朝あなた達が慌てている姿を見て、何だか気持ちがスッキリした」
「いやー、そこまではっきりと言われると返ってこちらも仕返しをしやすいというか…… うわっ、冗談だよ、本気にするなキミたち!」
和やかな表情のままサキに向かって移植ゴテを振り上げた鈴子部長を、詩織と三咲が2人がかりで羽交い締めにした。
「それでスッキリしたのに、なぜ悪霊に取り憑かれるような状態に成り下がったんだ?」
翔太が呆れるように尋ねた。
「それは…………」