父と娘と。
「翔太お待たせー! 先に帰ってもよかったのに」
詩織が手を振りながら小走りに駆け寄ってきた。
「こういうときは先に帰って勉学に励むべきだぞ若者よ!」
詩織の父、下賀美神社の神主が言った。
土地神と同じようなことをまた言われ、翔太は苦笑いした。
翔太、詩織、詩織の父そして神が連れだって同じ道を歩いている。
詩織の父は饒舌だった。話の内容は詩織が生まれた時の話から、今日までの様々な苦労話など……つまるところ親バカそのものだった。
土地神はそれらの話を懐かしそうに頷きながら聴いていたが、その姿は父には見えていない。
詩織は顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
翔太は…… なぜ詩織の父がこんな話を急にし始めたのかを不思議に思っていた。
「下賀美神社の巫女は一子相伝の技なんだ。それを詩織がまだ10歳だったころに託さなければならなかった…… 当時はそれほど妻の体調が悪くてね。詩織には辛い思いをさせてしまった。親としてはそれは苦渋を飲む決断だったんだ。でも娘は真っ直ぐに成長してくれて……土地神様には感謝の毎日だよ。神よありがとうございます」
詩織の父は翔太の手をとり、
「桜木君、いつも娘を守ってくれてありがとう! これからもずっと娘を頼むぞ!」
「お、お父さん何を言ってるの?」
顔を真っ赤にして詩織が2人の間に入って止めようとするが……
詩織の父の言葉を聞いた土地神は、スッと翔太の身体に入った。
翔太の意識は薄れていく――
「はい、お任せくださいお父様、詩織さんはワタシがこれからもずっと守ります!」
と青い目を輝かせた翔太が力強く答えた。
その後、詩織の父は用事があるらしく道を外れた。
2人になった後は、詩織の様子がおかしい。
「ね、ねえ翔太……わ、私のことをよろしく頼むって、お父さんが言ったとき……はいって答えたよね……あ、あれってもしかして……」
「えっ、何?」
「だーかーらー、娘のことをよろしくって言われて『はい』って答えたのはどういう……」
「はあっ? おまえ何言ってるの、熱でもあるんじゃないか?」
翔太は詩織のおでこに手を当てる。
みるみるうちに顔を赤らめ、ぷるぷる震える詩織。
「あー、かなり熱っぽいぞ。早く帰って寝…… あれ?」
「ふざけるなー!」
たこ殴りしながら追ってくる詩織から逃げながら、
「何怒っているんだよ-、さっぱりわからないんだけどー」
「うるさい、うるさい、一度死んで出直してこいー!」
「おまえそれ、巫女が言っていい言葉じゃないだろうー!?」
2人の様子を見て、欅の木の上で土地神がケタケタと笑っていた。
第二章 完結。
翔太と土地神が出会いました。この2人、本当はとても強いのですが、当面は頼りなさげです。
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