校門前
翌日の放課後、校門では2人の男が詩織の帰りを待っていた。
「お主は先に帰って勉学に励むがよい。巫女の相手はワタシが引き受けるから」
「それは無理ですよ? 普段の詩織には神様の姿は見えないのだから!」
昨夜、土地神に『口の利き方を叩き直された』翔太が答える。
「……まあいい。それにしても我が巫女はまだ来ぬのか?」
土地神はため息をつきながら校門にもたれかかる。
すぐそばをランニング中の女子テニス部の集団が通過する。
彼女らには土地神の姿は見えていない。
この世界で土地神の姿を見ることができる人間は翔太だけ……
翔太にはそのことが少しだけ誇らしかった。
詩織は今頃、詩織の父と一緒に校長室にいるだろう。彼女を襲った3人の男子生徒とその親による話し合いの場が設けられている。ただ、男子生徒本人たちの記憶がひどく曖昧なこともあり、話し合いというよりも一方的な謝罪に終始していることだろう。
女子に続いて、今度は男子テニス部の集団が土地神のすぐそばを通過する。
途端に嫌そうな顔をする土地神を見て、先ほどの『誇らしさ』がどこか遠くの空に飛んでいった。