土地神降臨
ただ真っ白な光に包まれた空間。
そこに翔太は1人たたずんでいる。
やがて黒装束姿の人物が空から降りてきた。
「…………」
「…………」
2人は無言で向かい合う。
「……ワタシはお前が好きではないのだ」
「はあ?」
黒装束が口火を切った。
「ワタシを馬鹿呼ばわりする人間は地獄へ落ちるがいい」
「…………えっ?」
「ワタシもあの娘を助けたいと願っておる。できるものならばな!」
「もしやあなたは土地神では?」
「今更取り繕ろうとしても遅いそ。地獄へ落ちるがいい!」
「あなたのようなイケメンな方が土地神だったなんて!」
「この顔は巫女のウケがいいからな……」
土地神は満更でもない表情を見せた。
「そのかわいい我が巫女が命を絶とうとしている。お前に選ばせてやろう! 巫女の命をあきらめるか、それともお前自身の命をあきらめるか、さあ選べ――――!」
土地神の声が翔太の耳に届いた瞬間、彼の視界が戻った。
コマ送りのような世界で詩織の身体はすでに2階の高さまで落下している。
翔太は詩織に向かって走り出す。
落下地点まで15メートルの距離だ。到底間に合わない、人の力では……
彼は土地神の言葉を思い返す。『巫女の命か自分の命か』そのどちらかを諦めろと言っていた。
ならば――――
「上等だイケメン土地神野郎ぉぉぉ! この命てめえにくれてやるぅぅぅ!」
全力で走る翔太の頭上に黒装束姿の土地神がふっと現れ……
「口の利き方から叩き直してやる必要がありそうだ」
翔太の耳元でそう告げ…… 2人の身体が重なり合う。
すると翔太の目はギラッと青く光り、青色の光の輪が進行方向の地面に広がる。
『タンッ――――!』
その光の輪の中心に足を付き、地面を蹴ると、
「うおぉぉぉぉ!」
これまでの人生で経験のしたことがない勢いでジャンプした。
間に合うはずもなかった詩織の落下地点の2メートル上空でキャッチ。
『ザザザ――……』
詩織の身体を抱きしめた状態で背中から着地した。