呼び出し
八百万の神や魑魅魍魎が登場する世界観で、長編モノを目指してします。
ラブコメ好きの作者なので、回り道しながらのストーリー展開となりますが……
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神崎詩織は2階非常用階段の踊り場にいた。
彼女は2年生女子の先輩3人に『呼び出し』を受けていたのだ。
その中の1人、つり目気味のサキは長い髪を掻き上げながら、
「あなた、ちょっと可愛いからって調子にのってるでしょう!」
低い声で詩織を問い詰めた。
「私、そんな……」
詩織は後ずさりし、非常階段の手すりに背中をぶつける。
ぱっつん前髪に肩まで伸ばした髪を二つ結びした彼女は、たしかに同性に妬まれるほど可愛らしい顔をしていた。小柄な身長と相まって、長身のサキには羨ましい要素が彼女にはたくさんみられた。
しかし今回の『呼び出し』はそれだけが理由ではなかった。
「あなた剛史から告られたでしょう?」
「サキはずっと前から剛史に目を付けていたのよ? この泥棒猫!」
サキの仲間の2人が詩織を威圧するように言った。
詩織は剛史という名のその先輩のことをよく知らない。
しかし『告白された』ということに思い当たる節はあった。
それは先週の事だ。昼休みに名前も知らない2年生に呼び出されて付いていくと剛史が待っていた。そこで次の日曜日に新町に遊びに行こうと誘われて……
(日曜日は神社の仕事があるからと断ったけど、剛史先輩のあれは告白だったの?)
詩織は恋愛関連の話題に疎い自分を自嘲するように薄笑いの表情を見せた。
彼女のその態度が、サキには自分を馬鹿にしたように見えた。
『パシッ!』
サキは詩織の頬を平手打ちした。
「あなた剛史に告られてお姫様気分なの?」
「サキ、手を出しちゃだめじゃん」
「アハハハ……」
詩織は頬を手で押さえ、その場にうずくまる。
なおも3人は追求の手を緩めない。
「この子、同じクラスの男子と付き合っているらしいよ」
「あー、あの小っちゃい子?」
「お姉さんがとっちゃおうかなー、えーと、名前は何だっけ……」
それは幼なじみの桜木翔太のことを指すのは明らかだった。
詩織はすっと立ち上がり、
「翔太には関係ないことでしょう? あの人には構わないで、お願い!」
とサキにすがりつくように懇願した。
「はあ? なに焦ってるのあなた……」
サキは口角をつり上げ馬鹿にするように言った。
「確かに私は剛史先輩に遊びに誘われました。でも、それは断りました。だから……」
サキにすがりつく詩織を引きはがすように仲間の1人が襟首を掴んで、
「もしかして本気にしたの? 私たちがアンタの彼氏を取っちゃうって?」
「ばっかじゃない? あんなチビだれが誰が相手にするっての! あんたらチビ同士仲良くやってなさいよ」
高笑いしながら3人は立ち去った――