表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/239

94 豚の毛


「豚ぁ? そりゃ何日に一頭はシメているけどよ」

 シメ、家畜の屠殺の意味だな。


「毛はどうしています?」

「毛ぇ? 豚の毛かい?」

「まれびとーーアンはねぇ、豚の毛のベットで寝てるよーー」


 サラージュ唯一の食べ物屋、『ニコの店』。

 食堂とか惣菜屋と名乗っていないのは、座席数とか惣菜も売ったり売らなかったりと不安定なサラージュの経済と食料事情に関係している。


「汚れてなくて揃った毛をブラシにすることも、たまーーにあるが、まぁほとんど捨ててるな」

「捨て、て。そうか、歯ブラシの意識がないから」

「豚の毛で歯ブラシすんのか、冗談だろ」

 ド、タン。ニコのひと振りでアヒルらしい鳥の首が切断された。既に首をシメて死んでいるから音だけがスゴいので、ご安心を。


「その豚の肉を口から、舌で味わって美味しく頂いているじゃないですか」

「だけど豚だぞ、豚。その毛を口に入れるのか?」

「地球のアジアでは結構古くからの習慣なんですけど」

「はぁーー。まあモンスターの歯にツッコムなら構わないけどよーー。俺は嫌だねぇ、豚の毛なんてゴメンだ」

「そうですか。それで、豚毛なんですけど」

「ああ、じゃあ夜にでもって予定してたけど、今豚をシメるから、毛なら持ってけ。革はダメだぞ、売りもんになるからな」

「感謝します」

「ねぇねぇまれびとーー」

 つんつん、アンが背後から腰を指先ノック。


「ぶたの毛でなにするの?」

「毛を洗ってまとめて縛ってブラシをつくるんだ。これがると虫歯になりにくくなる」

 ならないとは断言しません。


「ブラシ?」

「そう。これもレームさんかホーローの協力が、いや」

「どしたのーー?」

 無意識に探偵ポーズを作っていた。


「豚の毛を口の中に入れる抵抗感を払拭意識改革。だとしたら姫、様だな」

「アンならぶたの毛だいじょーーぶだよーー」

「有難う、アン。でもアンは豚を潰すのに慣れてるから」

 慣れているニコですら豚の毛を口腔に入れる──挿れるなのかな? ──ためらいがある。


「じゃあ、試しに獣毛じゃない歯ブラシも試作するかな」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ