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69 治療の後の婚宴

 こうして、貴族や上級公務員ではない、ハリスの町の顔役の子息とサラージュの町医者の娘に領主の娘が参列して祝辞を述べる異例の結婚式は滞りなく終了した。


「はいはーーーい。お代わりはいかかですかーー」

「アン、この肉巻き旨いぞ」

「でしょーー。イグーー、お皿運んでーー」

『ぎゅぅぅぅ』

 スゴい盛況ぶりだ。違うな、タダ酒タダ飯だもんな。


「これはマジ通り、文字通りのリアル『農民の婚宴』だな」

 結婚式はお祭り。

 食べて飲んで歌って踊って騒いで、ついでに主役を褒めて。


「洋次さ、様」

「メアリー慣れない物言いだからまた噛んじゃうんだよ」

 唇に指先を当てながらメアリーはちょっと。気持ちいつまでも見つめたい綺麗な顔を下にする。


「心配しましたけど治療が成功して安心しました」

「まぁあれは江戸時代の大道芸人と大差ない歯抜き屋と同レベルなんだけどね」

「でも成功です」

「あ、ありがと」

 メアリーは小皿に料理を取って洋次に渡す。肉料理がオルキア・サラージュ転移の初日以来初めてだったと料理を口にしてから思い出した。


「今日は今日。また明日がありますから」

「了解。今日は飲まないよ、お酒」


 サラージュに帰って翌日。

 洋次はミキサーが五台、しかも前払いで売れたことを知る。手練の販売員は、もちろんコンラッドと交渉したメアリーである。




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