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61 誰かとお茶会を


「カーバラのミーナー様ですか?」

「今回依頼を受けた患者なんです」

「洋次、姫様から五メートル以上離れてください」

 メアリーが中々カミーラとの面会許可をくれなかった。頼んで待たされること小一時間。

 ドア越しでもミーナーってライジン族。日本人的には鬼っ子か雷様に似た患者について尋ねたかったのだけど。そりゃもう待たされた。


「ところで洋次」

「はい」

 カミーラが、ふわふわヒラヒラのドレスを着ている。シミも宝石類ですら一つない黄金色のドレスは、文字通り永遠の金と春の花々を連想させる。十二歳のカミーラは季節に例えると確かに春。ピッタリな装いだ。

 でも。


「このドレスは去年の春祭以来です」

 ひらひら。カミーラは軽いステップ。さらに身体を捻るし、自分でドレスの裾を摘んだり引っ張ったりしている。


「タイヘンお綺麗です。で、カーバラ令嬢ですけど」

 そしてカミーラの一挙一動すると、仄かに花の香りが漂っている。


「メアリーがちゃんと焼き鏝(アイロン)をしてくれましたから、すぐ着れました」

 洋次の待機時間。およそ一時間。


「姫様」

 どうやら公式の場では令嬢レディ。普段は姫様と使い分けているメアリーだ。


「洋次の用事を」

「あらあら」

 白い手袋で、まさかのお嬢様高笑いのポーズを作るカミーラ。高笑いはしてないけど。


「さすが稀人との経験豊かなメアリー。それは確か〝おやじぎゃく〟ですね」

「あーーー」

 ギラギラと装飾を堆積する成金戦法じゃなくて、カミーラの年齢に応じた衣装の選択などは、お見事だと『いいね』してあげたい気持ちもある。


「よろしいですか?」

 だけど、今現在は依頼人を待たせている。


「はい、なんでしょう」

 頬が微妙に赤いカミーラが期待している言葉は、カーバラの困った姫の情報ではないようだ。


「まさに萌える春って色ですね」

「そうでしょう。洋次は素敵です」

「……そろそろ秋ですけど」

 メアリーの真っ当なボヤきはきっと風の精霊たちに吹き飛ばされてしまったんだろう。何事もなかったようにはしゃぐカミーラと洋次。


「そんな素敵なドレス。今すぐどなたかとお茶会しちゃいそうですね」

「え、ええ!」

 指を組んで激しく同意するカミーラ。


「私も末席に加わりたいのですが」

「どうしてです。洋次は稀人。きっと国王陛下とでも対面叶いますよ」

「いやーーそうでしょうか」

 無理くり作戦強行。



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