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50 支持者支援者が一人


「じゃあいいですか」

「あっと。私は白ブドウ酒が」

 医師のトマ。


「後にしてください!」

 まだ作業場がギリギリの秩序を保っている刹那にミキサーの利点をわかってもらわなくてはならない。

 当然問題点、注意点の指摘や共有も忘れたくない。


「トマ先生、ドノヴァン薬師。もし、患者患畜だけじゃなくて、ご家族知り合いが歯とかお腹が弱っていたらどうされます?」

「どうって」

「酒飲んで諦め」

「トマ先生」

 十六歳の洋次が放つ重低音の牽制に首をカメみたいに収納するトマ。


「お、かーーゆ、かなぁ」

「えーーお粥は最後のシメだよ、せんせいーー」

 パタパタ。アンは本来なら鉄を熱する炉で焼き串を製作中。こんな乱暴な使用例を激怒しなけらばならないランスが、いい具合だから洋次もスルーしている。


「粥はとても良い選択の一つです。でも、こんな手法もあります。アンお願いしますよ」

「はいはいーーーい」

 別名、偽名は酒場化。真実はサバト集会場化している鍛冶屋の作業場に持ち込まれる食材。


「これは、また」

 アンが運んだのは食材が載せたお盆。当たり前、期待通りに顔をしかめる医師たち。


「稀人様。これはとてもお勧めできませんな。滋養としては、まずまずでも」

 完全合致ではないだろう。でも地球ではカボチャに似た野菜、干物の魚、そして繊維質だらけっぽい野菜。硬そうだったり筋張った食材を『ニコの店』から持ち込んでもらったのだ。


「ここでは好みとか食べ合わせは度外視してください。要は、普通」

 普通の食材ってナンだろうね。


「普通の食材でも、歯が悪いと胃腸が弱いと食べられません」

 そりゃそうだな対応のトマとドノヴァン。


「ですから、このミキサーです」

「この筒が?」

 ボロボロ。アンから受け取ったお盆の中身を筒、ミキサーに投入。


「蓋をします。実は、ここが大事なんで忘れないでください。そして、ハンドルを回します。アン」

「はいはいーー」


 ゴリゴリっ。

 一回テストしただけだったから不安だった。でもランスの刃物の鍛え上げと接続は上出来だ。硬いカボチャっぽい……今後はっぽは省略します……皮も粉砕してくれる。


「私じゃなくて、アンがハンドルを回している点も重要です。では、アン。ご苦労様でした」

「うん」

 トマとドノヴァンの目の前には木製の椀を並べている。その椀に、それなりに刻まれた食材が注がれる。固形物の表現になる置かれるではなく、液体に対する表現になっているのが誇らしい。


「これが、試作品でもミキサーの能力です」

 即席なのと安全性第一も差し引いて、現代日本で流通しているミキサーに比べてBB弾とサッカーボールくらい粉砕力は負けている。でも、サラージュの二人には驚きなアイテムだった。目を大きく開けて首を前後させている。


「おおっ」

 アンもビックリだった。


「この試作品だと粉砕だけならおろし金にも負けているけど、複数素材混合可能なのがミキサーの利点。お粥は煮てしまいますけど、ミキサーは食材を細かく砕いて食べやすくした上に生ジュースが飲めるので捨てるところがほとんどない点も利点です。でも、正直危ない」

「危ない?」

「なぜです」

「回転する刃で指を切断した事例が地球では頻発しているんです。蓋をしたのは、強調したのはその対策です。試作から量産に変われば、蓋を閉めないとハンドルが回せない構造にする。つまりハンドルは蓋と合体させて市場に出回らせるのが私の願いです。だから多少高価になる。だからお二人の協力が絶対に必要なんです」

「ツボの中の軸にハメこんでしる回転刃で砕くのか」

 トマは、椀に盛られた食材汁を匙で何度もかき混ぜている。厳密にはハメこみではないのだけど、トマの気分を害したくないので保留する。


「ああ、歯がないモンスター硬い食材を食べられる実証実験だけの食材ですから味はメチャメチャですよ」

「しかし、これは」

「だから」

 トマは、ミキサーで細分化させただけの食材を口に運んだ。煮ても焼いてもいないから、相当マズいぞ。


「使えますな、稀人様」

「あ、そうですか」

 支持者支援者が一人誕生した。



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