41 そしてタップリお説教されました
「メアリー、ご機嫌よう」、「じゃあね」、「やれやれ身体に堪えるよ」、「貴女もお疲れ様」、「こんなことだけでゴメンね」
種族も年齢、そして態度も表情もバラバラに城門で奉仕者を見送るメアリーに挨拶をする女性たち。
「で、ヴァン様、洋次」
「あ、怒ってる」
「うむ。メアリーの不機嫌顔も悪くはないな」
ピキピキ。メアリーの右手からプチ竜巻が発生している。これは、風属性の魔法発射五秒前か。
「メー姉ちゃん、バイバイ」
三、四歳の男の子。多分奉仕の戦力じゃなくて、お母さんと離れたくないから張り付いていた子供だろう。頭にサッカーボールより一回り小さいパンを載せている。
「ああ、今朝お城からモクモク煙が出てたのは、あのパンを焼く煙だったのか」
今晩から何日かパンのお代わり自由だとの期待は、完璧にハズれてしまった。
「落としちゃダメですからね」、「はぁーーーい」
子供にバイバイしているメアリーは、そりゃカワイイし綺麗だし上機嫌だ。でも。
「なぁに二人してみっともない会話されているんですかーー。領民の前でーー」
奉仕の一団が城外に消えた途端この豹変だよ。
「あ、怖い」
「メアリー、怖顔も程々が善いと存ずるが」
「あーー、そうですかーー」
洋次でも楽々お姫様抱っこしちゃえそうなメアリーが、迫っている。まるで巨人の足踏みだ。洋次は立ち竦んでいたし、ヴァンは馬車の窓を閉めたり、それ以前に馬にムチを入れる選択肢を忘れてしまうくらいの気迫に次の手が思い浮かばなかった。
「お二人とも、お立場をお考え下さいませ」
==で表記していいって細目のメアリーがあちこちプルプル揺らしながら、でもとっても怒っているのがわかる表情だった。
「「怖っ」」
そしてタップリお説教されました。




