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133 一晩明けて土下座しています


「私たちの大陸では、全てのドラゴンは徹底的に管理されて自由気ままに夜道を歩きません」

「そうなんだ。知らなかったよ。モンスターの歯医者さんなのにね」

「それは」

「どうしてモジモジなの?」

 視線を落として、トーンダウンしているメアリー。確かついさっきまで洋次は指示違反で体罰中だったんだけど。


「サラージュには保有ドラゴン、飼いドラゴンがいないのでご説明を私が怠っていたの、で」

「あーー。カーバラのミーナー嬢がサラージュにドラゴンは禁忌だとか喋っていたねぇ」

 チラッと上目。


「怒ってますか?」

「何について? ドラゴン? サラージュにいないなら説明されても、仕方ないからね」

「そう。お詫びは後ほど」

「そう?」

 日陰になるほどの爆乳フルヘッヘンドをなで下ろすメアリー。お詫びならば……以下、自主規制。


「ともかくドラゴンに助けられたのは有り得ないです。ですから、偽のデスナイトだと結論します」

「そうかなぁ。ドラゴンって最終敵ラスボスの時もあるけど後半の雑魚キャラってパターンもあるよ」

「有り得ないです。何れにしても、今後はメイドでも私の指示に従って下さいまし」

 指揮棒みたいに指を振るメアリー。まだエメラルドグリーンの瞳が潤っているから、可愛くて仕方ないんだけど。


「では、稀人洋次には罰を与えますから、覚悟なさいませ」

「えーー」

「先ず、ウマを馬小屋にお戻し下さい。あ、モチロン晩ご飯はヌキです」

「お、おいメアリー」

 ふらつきながらも立ち上がる洋次。


「そりゃないよ。一日中働いたんだから」

「働くのは当たり前です。でも罰はバツですから」

「おーーい」

「それから、袋靴ブーツと手と顔を洗って、下さい。そしたら白湯を少々のお菓子を差し入れます」

「あ、そ」

 でも晩ご飯ヌキは抜きだ。


「なら、さぁ」

「甘えないで下さいね。私は怒っているんですから」

「メアリーぃ」

 とまあ。

 なんだかぐたぐたで、この日は終了する。




 で、一晩明けて土下座しています。両頬の紅葉も追加してます。

「申し訳御座いませんでした」

「信じられません」


 地球から異世界であるオルキアに転移した洋次がレンタルしている尖塔。つまり物見櫓のドデカ版の内部。城攻めの防衛策として結構内部は広くて便利な場所の地階に洋次は密着しています。


「もしも本物のデスナイトだったら、どうするんですか」

「はいごめんなさい」

「令嬢が住まわれるサラージュ城に仮に偽物でも危険な魔物を入れようとしていたなんて」

「重ね重ねごめんなさい。でも、アレ。本物」

「ですから」

「あ、瞬間震度二」

「なんですか、〝しんど〟って。洋次、聞いていますか? 只今説教をしているんですよ」

「そうでした、ごめんなさい」

「洋次。私の顔が見えますか?」

「その。全然見えません」

 だって土下座してるし、チラッて見上げてもチョモランマな胸が邪魔でメアリーの顔が見えません。


「ですよね。デスナイトだと偽物で私を脅かしたりするなんて怒りますよ」

「それはもう、怒ってい」

「ません」

 ビタン。平手が旋毛つむじに的中したんで、巨大ロボットで、キレちゃった人ちゃいますから。


「もう一発頭にお見舞いしましょうか」

「そんなに痛くないから」

「ダメージ量の問題ではありません。もしもの警戒心や危険の予測が足りないと申しております」

「はい、それに関しては仰る通りです」

「それ、とは限定的ですか?」

「いえ、全てメアリー嬢の申す通りです」

「あのですね」

「うわっ近っ」

 普段は固く頭髪を縛っているメアリーの数本だけの貴重な跳ねっ毛が刺さっている。


 だから。

 とても気持ちがいい。


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