力の意味を
爆音と共に白煙が辺り一面に立ち込める。メルクが起き上がる間もなくソフィアに槍を構えた男が襲いかかった。
「くそっ」
メルクは間一髪で槍を剣で受け止めた。金属同士がぶつかり合う甲高い音が響く。
「クク!ソフィアを連れて逃げろ!エリーは護衛、俺はこいつを抑える!」
早口で指示を飛ばす。そこには有無を言わさない強さと、そして少しの焦りをエリーは感じた。
「わ、分かった。でも……」
「無事に追いつく、早くしろ!」
言っている間にも攻撃は続く。袈裟斬りに振り下ろされたた槍を躱したと思いきやそのまま槍を一回転させて柄の部分で殴りつけて来る。それを剣で受けると逆方向から火柱が上がり、それも魔法で何とか防ぐと今度は炎を纏った槍先での突き。荒々しくも洗練された槍捌きと炎魔法の完璧な連携。メルクの目から見てもこの男ーシュウは圧倒的な強さだった。
「シュウ様!」
先程の爆発を聞きつけてユイが戻ってきた。ユイはシュウとメルクを一目見るとすぐに状況を察知したらしく細剣を抜き放つ。
「ユイ、お前は逃げた王女を追え、この男は俺が抑える」
「……分かりました」
踵を返して引き返す。
「させるか!」
足元に風を起こして加速、メルクはユイを追おうとするがシュウはメルクの周囲に炎の壁を展開、行く手を阻む。
「ちっ」
舌打ちをして急ブレーキ。すんでのところで炎の壁に激突するのを避けた。
その一瞬の隙を見逃さずシュウは炎を纏わせた槍を振るう。不安定な空中でメルクはそれを躱すことができず、背中に一筋の傷痕が刻まれる。しかしメルクは着地直後、振り切られた槍の柄を蹴り、がら空きになったシュウの体を蹴って何とか距離を取った。
『大丈夫?』
背中の傷のことだ。しかしこれは血こそ出ているものの、そこまで深いというわけではない。しかしシルが心配するのには訳があった。それは火の魔法の特質。それは侵食。少しの傷でも致命傷に至る。そう、何気なく投げ捨てた火種が木を燃やし、やがては森を呑み込むように。
「大丈夫……多分な」
メルクはもう息が上がっている。先程からあれだけ魔法を連発すれば当然の結果だ。それでも剣を握り直す。冷静にシュウを見据える。あの完璧な槍捌き、そして魔法の連携。それを崩すのは容易なことではない。何か一つ、あれば……そう考えた時、メルクに浮かんだ案は一つしかなかった。
「シル、いけるか」
メルクは全力で地面を蹴り、魔法も併用して一旦距離をとる。
「……うん」
シルもメルクにこれ以上精霊の魔法を使わせたくはない。いや、その気持ちは誰よりも強いだろう。しかしシュウを相手にそんなことを言っている場合ではない、ということも痛いほどに分かっていた。そうなれば力を与える他にない。それがメルクの命を奪う結果になるとしても。
「いけるよ」
ならばシルーメルクに宿った精霊王シルフィオールに出来る事はメルクにありったけの力を渡すこと、それが今のシルの決断、シルにできる精一杯だった。
二人は唇を重ねる。感じないはずの感触を確かめ合うように、それが魔力の受け渡し、それ以上の意味を持つものではないとしても。シルは恍惚の表情を浮かべ、その姿が薄くなってゆくのと対照にメルクの左の瞳が青く、空よりも青く、深く染まる。
『早く決着をつけないと不利なのはこっちだよ』
頭の中にシルの声が響く。メルクは無言で頷いた。火と風ではただでさえ相性が悪い上にメルクはこれ以上精霊魔法を使うわけにはいかない体だ。それはメルクが一番知っていた。
「その姿は……」
シュウに焦りが走る。目の前の敵から発せられる魔力、それは人智を軽く凌駕していた。シュウも優秀な炎使いだ。しかしそれゆえに圧倒的な力の差を肌で感じられずにはいられなかった。槍を握りなおし、全力で火球を展開、一斉にメルクに叩きつけた。しかしその一瞬の後、爆煙を切ってメルクが肉薄する。
「くっ」
既のところで槍で受ける。しかしメルクの連撃は止まらない。
「このぉぉぉぉッ」
受けられた剣を風で押して無理矢理振り抜き、また無理矢理返す。シュウが堪らず一歩下がるとその分だけ踏み込み、剣を振り続ける。鋼と鋼が激しくぶつかり合う甲高い音が幾度も響く。ついにシュウの槍に限界が訪れた。高速の連撃に耐え切れず柄にヒビが入る。シュウは魔法で距離を取ろうとするがその隙も与えず振り切った剣の慣性と風魔法を掛け合わせた回し蹴りで槍をへし折る。さらに地面に足を着けることなく蹴りの慣性を利用して後ろ回し蹴りをシュウの脇腹に打ち込む。この時シュウには二つの選択肢があった。魔法を中断して防御する道と蹴りよりも早く魔法を発動させて回避する道だ。シュウは後者を選んだ。シュウはこれまでに魔法の規模も、発動速度も誰にも負けたことがなかったからだ。しかしその僅かな傲慢が判断ミスを招き、直撃を食らってしまう。脇腹に鈍い痛みと共に肋骨が砕けたのが分かった。思わず地に膝を着く。死を覚悟した。しかし来るはずの剣が来ない。それどころかメルクの姿はシュウの前から消えていた。メルクはシュウの止めよりもソフィア達の援護を優先させたのだ。
爆発の直後、メルクの指示でソフィア達は町の出口に向かった。東大陸側の、だ。西大陸には火の国があり、そちらに逃げると挟み討ちになる可能性が高い。来た道を戻ることになるが今はそんなことを言っている場合ではない。出口まで残り僅か、というところでククは背後から何かが高速で突進してくるのを感じた。咄嗟にソフィアを抱えて横に跳ぶ。そのすぐ横を細剣が掠めて行った。
「あれはあの時の……」
それはシルがスープをかけた、門の前でずっと見張っていた、あの少女だった。エリーは短剣を構える。今はメルクは居ない。ソフィアを守ることができるのは自分一人、その緊張感と使命感で短剣を握る手に自然と力が入る。
「クク!ソフィアを連れて逃げ……」
エリーが言い終わる前に高速の突きが繰り出される。エリーはそれに反応することが出来ない。これを回避出来たシュウやタケルの方が異常なのだ。細剣は正確にエリーの心臓を狙う。
「させません!」
細剣の軌道が僅かにずれ、エリーの左肩を貫く。ククが細剣を横から殴りつけたのだ。獣人特有の動体視力と反射神経、そして運動能力をフル活用した一撃だった。
「獣人……」
ユイの注意が一瞬ククに向く。それをエリーは見逃さなかった。素早くユイの懐に潜り込む。ここでアクランタでのメルクとの特訓の成果が出ていた。ユイは細剣で応戦するが間合いが近過ぎて思うように動けていない。ついにエリーの短剣がユイの脚を深く穿つ。
「どうだ……!」
しかしユイは顔色一つ変えず、短剣の刺さった脚でエリーを蹴る。油断していたエリーは不意を突かれて後方へ飛ばされる。ユイは脚から短剣を引き抜く。傷口から鮮血が溢れ、服を赤く染めてゆく。それに少しだけ後悔する。しかしすぐに気持ちを切り替え、次の目標をククに定めた。
剣を向けられた瞬間、ククは無意識に拳を握り、半身の体勢をとる。ククは戦闘の訓練なんて受けたことはない。刃を向けられるのは初めてではないがそれに戦うという意思が込められたものは初めてだった。
ユイがクク目掛けて踏み込む。そしてその切っ先がその喉元に触れる直前、ユイは体、頭を後ろに反らせる。そのすぐ前を一本の短剣が素通りした。エリーが左手で短剣を投げたのだ。思わずエリーの口から舌打ちが漏れる。しかしユイは体を反らせたことで僅かに細剣の伸びが不足し、ククの喉を捉え損ねる。その一瞬の間をククは見逃さなかった。いや、体が、太古から受け継がれた闘争本能の血によって突き動かされた。細剣は短剣の防御に使ったため使えない。ユイはククの拳を残った左腕で受け、かつ後ろに跳躍した。後ろに跳ぶことで前方からの衝撃を逃がそうとしたのだ。しかしククはそれも構わず腕を振り抜いた。ユイの左腕に強烈な衝撃が走る。そして殺しきれなかった勢いで後ろのレンガ造りの家に激突した。
間髪入れずにエリーが短剣で攻撃を入れる。横に転がって躱すと次はククの蹴り。それを回避しても次はエリーが……ととても初めてとは思えない連携でユイを足止めする。だかあくまで足止め。ユイにとっては躱そうと思えば躱しきれなくはないがこちらの攻めも連携でいなされる。つまり膠着状態だ。だがユイにはシュウだけではメルクに勝てないという焦りがあった。あの巨大な竜巻のような大規模な魔法を使いでもされたらいくらシュウでもどうしようもない。しかしその焦りはエリーと、そしてククにとっても同じだった。もしメルクが精霊の魔法を使えば命が危ない、だからこれ以上使わせないで、とのシルの言葉が繰り返し脳内で繰り返される。双方が焦燥感を感じた中でどちらが有利かといえばそれは当然精神と、そして肉体を強化されたユイに軍配が上がる。
ククの正拳突きを体を捻ってギリギリで躱し、腕を掴んでククの怪力を利用して投げとばす。その直後にエリーがフォローに入ろうとするがそれを投げ飛ばしたククを盾にする。するとエリーの短剣が止まった。すかさず一瞬でエリーにククをぶつける。すると空中で二人が縦に、ユイから見て平行に折り重なる。そこを二人がまとめて殺そうと心臓に刃を向けた。もうだめか、そう二人が諦めかけたその時、何かが高速でユイに突進、ユイは反応する間もなく吹き飛ばされる。
「メルク……」
「どうして……」
メルクの左の瞳は蒼穹。エリーとククがフライハイト、そしてアクランタで見たものと同じ、精霊の力を使った証だ。
「お前らどうして……そうか」
メルクは左目に手を当てる。
「シルが言ったんだな、でも心配すんな、俺がそう簡単に死ぬ訳ないだろ?」
メルクは笑って見せる。しかしククには荒い息遣いが、不規則な心臓の鼓動が聞こえた。とても心配せずにいられる状況ではなかった。
メルクは二人を庇うようにユイとの間に立ち塞がる。
「貴様……シュウ様はどこだ」
ユイは剣を構え直し、メルクを睨む。メルクはシュウと戦っていたはず。それが今目の前にいるのだ。シュウがどうなったかは考えずとも予想できる。
「さあな」
「貴様は危険過ぎる……死ぬのは私だけで十分だ」
メルクは地を蹴り、ユイに接近する。メルクは確かに走って移動したのだがエリーにはそれが瞬間移動にしか見えなかった。瞬きをして、再び目を開けた時にはもう既に剣を振り下ろしていた。ユイですら反応できていない。
シュウは腕を砕けた肋骨を抑えながら足を引きずってメルクを追いかける。力の次元が違った。角を一つ曲がればリムルのメインストリートだ。そこにユイと、ソフィアと、エリーとクク、そしてメルクが居る。あの圧倒的な力の前にユイ一人では余りにも無力だ。シュウは普段から信心深い方ではないが、今回初めて『神頼み』に頼る他なかった。
角を曲がる。遠目にユイとメルクが見える。今、まさに殺されようとしているユイが。フライハイトで殺されたトウマの、両腕が切断された遺体が、目に浮かぶ。自分は余りにも無力だ。腹心の部下を無残に殺され、今も護りたいと、そう思った部下さえも死の淵にいる。自分の両手からこぼれ落ちてゆく。自分に最力があれば、すべてを圧倒し、二度とこぼれ落とさないだけの、全てを護りぬく力があれば……
『貴様の願い、受け取った』
頭に聞き覚えのある声が響く。
「貴方は……ヘリオス」
『貴様に問おう。貴様の力の意味とはなんだ?それに答うるならば俺、火の精霊王、ヘリオスは貴様が望むだけの力を与えよう』
「俺にとって力は……守るため。二度と失わないため」
「っつ!」
ソフィアが頭を押さえてしゃがみこむ。メルクがそれに一瞬気をとられた瞬間、突然空から何かが物凄い勢いで飛んてきた。それがメルクとユイの間に割って入る。それが地面に落ちた爆風でメルクはエリーのいるところまで吹き飛ばされる。
「何だ?」
『あれは……』
シルが絶望した声で呟く。飛んできたものは槍だった。大ぶりの両刃槍。柄は深紅で穂先は銀色に輝いている。
空から飛んできた槍は確かにシュウが宝物庫で見たものと形状は同じだった。しかしあの時とは違い、たった今作られたような光沢にメルクに匹敵する魔力を放っていた。槍はひとりでに浮かび上がり、シュウの手元に収まる。それはまるで自分の体の一部のようにシュウの手に馴染んだ。
『メルク……あれはマズいよ』
「分かってる」
火の魔法と風の魔法では相性が最悪だ。その上あの槍に宿っているのは精霊王。例え両者の精霊王の力が拮抗していたとしてもシュウとメルクの魔力が違いすぎる。シュウの潤沢な魔力ならば精霊王の魔法の威力を十二分に発揮させることができる。現状、勝ち目はゼロに等しかった。
「それでも」
メルクは剣を杖代わりにして立ち上がる。
「ここで逃げる訳にもいかないだろ?」
ちらりと横目でソフィアとエリー、そしてククを見る。ソフィアが何か言おうとしたがそれが言葉になる前にメルクは一歩、踏み出した。
「『私が死ねば』なんて言わせるかよ」
シルにしか聞こえない程小さな声で呟く。メルクは大きく深呼吸をし、また一歩、踏み出す。そして全速力でシュウに特攻を仕掛けた。
しかしシュウの意思とは無関係に展開された炎の壁に阻まれる。熱風がメルクの頬を撫でた。
「このおおおッ!」
今度は風を使った連撃と背後からの鎌鼬の嵐。それも連撃は壁と槍に阻まれ、鎌鼬は炎の壁に当たると同時に消えてしまう。鎌鼬は真空の刃だ。そして風は気圧が高い方から低い方へ流れる。炎の壁によって低気圧を発生させ、流れてきた風で鎌鼬を無効化したのだ。
シュウは槍の柄の先で地面を強く叩いた。すると地面から無数の火柱が上がる。メルクはそれをあっさり躱すがシュウの狙いはまさにそれだった。火柱をメルクに躱させることでメルクをその位置まで誘導したのだ。メルクが気づいた時にはもう時既に遅し。シュウが銀色の弧を描いて槍を振るう。メルクの右腕が飛び、苦痛の表情が浮かぶ。ここで仕留めなかったのには、トウマは両腕を切断されて殺された。ならばこの男にもその苦しみを味わわせてやろう、というシュウの私情が介在していた。と、なれば残る左腕も切断することになる。しかし溢れる殺意をこらえ切ることはできず、空中でメルクの腹部に槍を突き刺す。そしてそのまま横に振りぬいた。メルクの胴体と口から鮮血が噴き出す。
「メルクーー!」
シルの悲痛な叫びが街に木霊する。
シルはメルクの命の火がどんどん細くなってゆくのを感じた。当然だ。度重なる精霊魔法の使用。そして今は右腕を切られ。体をほぼ半分に切断されたのだ。失血量だけでも十分に致死量に達している。シルも覚悟を決めた。メルクに唇を寄せる。そしてありったけの魔力を注ぎ込んだ。メルクの身体に入りきらなかった魔力が付近の風精霊を活性化させる。
「や……めろ……」
それはもう言葉になっていない。しかしシルは唇でそう読み取った。
シルは精霊王。概念が意思を持ったものだ。つまりその存在を支えているのは莫大な魔力。シルは魔法を使ってメルクの傷を癒すのではなく、自身の魔力を直接メルクに流し込んで内側から修復している。当然だがメルクの身体に入った魔力は戻らない。シルは魔力を使い切ってしまえばその存在を支えるものが無くなり、消えてしまうのだ。しかしシルは躊躇いなく魔力を注ぎ続ける。その姿が薄く、儚くなってゆくのと対照にメルクの傷は時間を巻き戻すかのように癒えてゆく。
「私ね」
シルは唇を離して言葉を紡ぐ。
「短い間だったけどメルクと一緒に過ごす時間は楽しかったよ、メルクが昨日私と一緒で後悔してないって、そう言ってくれた時凄く嬉しかった」
シルの瞳から一雫、涙が溢れ、メルクの顔に落ちた。感じるはずのない感覚。しかしメルクは確かにそれを感じた。
「でも……でもね、私だってメルクと手を繋いだり、おんぶしてもらったり、キスだってちゃんとしたかった。それが当たり前にできるみんなが羨ましかった。だから……私がメルクにしてあげられるのはこれくらいだから……生きて」
そう言って涙の混じった満面の笑みでシルは空色の小さな、小さな粒となって消えた。
「おい……冗談だろ……シル……」
メルクはいるはずのない、触れるはずのない姿を抱きしめるように腕を振るが掴むのは虚空ばかり。
『シルフィオールか……』
シュウの頭の中でヘリオスは呟いた。
「シルフィオール?」
シュウとしては突然メルクの隣に見知らぬ女が現れたのだ。いまいち状況を把握できていない。
『精霊王は俺一人ではない。他にも精霊王はいる、ということだ。それよりもあの男……道理で違う《・・》訳だ』
「違う?」
「精霊王の魔法は強力な反面、器にかかる負荷が尋常ではない。だからこの槍のように『物』を器とする。だがあの男は自身の肉体に直接精霊王を取り込んでいた。フン、よくもまあ今の今まで生き残れたものだ」
「そうか。だが今はそんな事は関係ない」
シュウが今まで攻撃をしなかった、いや、できなかったのは活性化した風精霊によってヘリオスの槍が使えなかったからだ。シルが消えてそれがなくなった今、シュウを阻める者は誰も居なかった。
「待ちなさい」
予想もしなかった人物にシュウの足が止まる。
「貴方の狙いは私一人の筈です。私を殺せばそれで終わりの筈です。この人を殺す理由はない筈です」
ソフィアがシュウとメルクの間に立ち塞がった。無謀な賭けだ。いや、賭けにすらなっていない。しかしソフィアには黙って見ていることなどできなかった。守られてばかりだった恩返しの思い、そしてシルが命を賭して救った命を見殺しになどできなかった。考えるより先に体が、心が、動いた。しかしソフィアの運が良かったのはシュウの任務がソフィアの殺害ではなく生きたままの連行だったことだ。このままメルクを殺そうとすればソフィアが盾になるだろう。だからシュウはメルクを殺すのを諦めるしかなかった。しかしメルクは今気を失っている。それに精霊王の力を無くしたメルクに、さほどの脅威はない、そうシュウは判断した。
「分かった。お前が風の国第三王女ソフィア ルナ レ テンペスタだな?」
ソフィアは無言でうなづく。
「来い」
シュウはユイに目で合図する。ユイはソフィアの体を調べ、刃の欠けたナイフを捨てた。
「ソフィア……」
「私は大丈夫です。エリー、クク、メルクさんをお願いします」
それだけ言ってソフィアはシュウ、ユイと共に火の国へと向かった。
どうも!この物語も佳境に入って参りました。シルの退場は実は登場当初から決まっていました。退場が決まっているキャラを書き続けるのは辛かったです。
さて、最近めっきり冷え込んできましたね、毎日朝が寒くて……布団から出られません。これからもっと気温は下がります。皆さん体を大事に。ではまた!