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風の唄  作者: けんじ
戦乱
26/28

8センチ

その男は突然現れた。どこか飄々としていて掴み所が無い男。それでいて胸の奥には決して折れぬ芯を持っている、そんな男だった。


「エルフの秘酒ってのを飲みに来たんだが、どこに行けば飲めるんだ?」

まるで風だった。エルフの里に入るには絶対に結界を超えなければならない。当然招かれざる客が入ろうとすればその時点で拘束されるか殺されるし、そうでなくとも里随一の戦士であるリヴィアが気づかないはずがない。

だから驚いたのだ。いつの間にか自分の隣に座り、さも昔からの旧友のように話しかけてきたことに。

「……!」

反射的にリヴィアは後ろに飛び退き、拘束魔法をかけた。

だが魔法はその男の体を縛ることなく霧散し、消えた。

「おいおい、そう警戒するなって、俺はただ……」

「黙りなさい、人間。どんな手を使ったか知りませんがここから生きて帰れるとは思わないことです」

そう。今リヴィアと、そして男がいる場所はエルフの戦士の中でも選りすぐりのエリートが駐屯する拠点。現にリヴィアより一瞬遅れたものの周囲の戦士達も戦闘態勢を整えている。

「まあ待てって、俺も目的を達成したらすぐに帰るよ。エルフの秘酒、知らないか?」

「残念ですね、秘酒が作れるのは夏から秋にかけてです。それに余所者のあなたに飲ませる酒などありません」

口を動かしつつもう一度、リヴィアは男を拘束しようとした。だがそれもなぜか男に辿り着く前に霧散してしまう。

「そうか……残念だな……」

見るからに男はヘコんだ表情をして近くの机に突っ伏した。

「ま、じゃあしゃあないか。本当の目的を果たして帰るかな」

男は腰を上げ、無防備に歩きながらリヴィアの横を通って出口に向かおうとした。だがそう簡単に通す理由は無い。

男とすれ違った所で振り向きざまに足を払い、うつ伏せに床に押し倒すと腕を捻り上げ、ナイフを首筋に押し当てた。

本来エルフは他に類を見ないほどの魔法適性を持つがその反面、肉体は他のどの種族よりも脆い。だがそれでは里を守れないと考えたリヴィアは壮絶な鍛錬を積み、戦闘に耐えうる肉体を作り上げた。

「こんな野蛮な物を持ち歩くとは、流石人間だな」

男を組み伏せたままその背中に提げている剣を抜き取ろうと手をかけた。

「なあ、それだけはやめてもらえないか?とても大切なものなんだ」

「大切なものだと?こんな鉄の塊がか?」

つい先ほどまで横柄な態度を取っていた男が急にしおらしくなったのでリヴィアは動揺するとともに不思議と高揚感が胸の奥から立ち上ってくるのを感じた。

男の言葉を無視してリヴィアは剣を鞘から引き抜く。無骨だが銀色に美しく輝く刀身が露わになった。

「ん?何だ?」

その刃に何やら細かく文字が彫られているのに気がついた。

「ったく、人の物をジロジロと……」

リヴィアはぐるん、と視界が一回転するのを感じた。反射的に受け身を取り、軽やかに着地する。だがその目の前には一瞬前まで自らの体の下にいた男がこれまた一瞬前まで自分が手にしていた剣を背中の鞘に戻す所だった。

「痛てて……お前ちっとは加減しろよな?」

「関節の抑えは完璧だったはず……なのにどうして……」

「まあまあ、そういう時もあるって」

これまでにリヴィアの魔法を2度、そして血の滲む思いで習得した関節技もあっさり外された。

リヴィアにはこの男の正体は分からなかったがそれでも、認めたくはないが自分を遥かに上回る力を持っているということだけは本能が察知した。

にも関わらず今リヴィアは傷一つ負っていない。明らかに手を抜かれているのだ。そのことが戦士としてのリヴィアのプライドをいたく傷つけた。

「いいでしょう。ならばその剣、無理矢理にでも抜かせるまでです」

右手のナイフを左手に持ち替え、逆手に構える。そして呼吸を整え、大きく踏み込んだ。

男は前回同様軽く躱そうとしたようだが体の動きが鈍く、一瞬だけタイミングが合わない。

それはそうだ。呼吸を整えた直後、リヴィアは持てる魔力を振り絞って渾身の拘束魔法をかけたのだ。

そして動きが鈍ったその瞬間を逃さず喉元にナイフを突き立てた。


男は一瞬躊躇し、それでも剣に手をかけることなく踏み込んだ軸足を払い、大勢を崩させる。 リヴィアはそのまま無様に地面に倒れこむ……かに思われたがリヴィアの体が地面に着く直前にその姿は霧散し、跡形もなく消え去った。

「幻影……!」

男が気づいた時にはもう遅い。男がリヴィアの作り出した幻に気を取られている間、本体は背後に回り、回し蹴りを後頭部めがけて放った。

甲高い金属音が響き、リヴィアは後方へ吹き飛ばされる。

「あっぶなかった……」

鞘から8センチほど出した刀身を戻し、足元に落ちているナイフを拾い上げた。

「まさか幻影に本物のナイフを持たせるとはな」

流石に受け身を取ることができなかったリヴィアはテーブルや椅子の破片を払い、身をよじりながら立ち上がった。

「大丈夫……か?」

「どうかしましたか?」

見ると周囲の同僚の様子もどこかおかしい。皆リヴィアの方を見ては目線を逸らす。

目の前の男は何とも言えない表情でリヴィアを見ていた。

「私に何か付いていますか?」

「いや、付いてないんだな、これが」

「では何ですか、その顔は」

「いやだから付いてないんだよ。付いているべきものが」

何故今の今まで気がつかなかったのか、リヴィアは年相応の少女のように地面にへたり込み、上着を下に目一杯伸ばした。

リヴィアが着ていたズボンはツナギのような構造になっており、両肩にかけた紐で支えられている。その紐が先ほどの斬撃で切られてしまったのだ。運悪く両方とも。

「見ましたか?」

「もうちょっと色気が欲しかったな」

「……殺す」



まるで火のついた馬のようにリヴィアは暴れまわった。とは言ってもその時の記憶はリヴィアには無い。むしろ早く忘れてしまいたいくらいだ。

同僚の話によるとデタラメに魔法をぶつけて集落を壊し回ったらしい。

とにかく、リヴィアが落ち着きを取り戻すのは里の族長が現れてからだった。

「やめんかリヴィア!」

嗄れていても族長の声はよく通る。幼い頃から厳しく育てられたリヴィアの体はその一喝によって強制停止した。

「いやー助かりました。お婆さん」

「人間。お前は何をしにここへ来た?」

「ちょっとお話がありましてね」

そして男が族長に二言三言耳打ちすると族長は黙って男を連れ、神殿へと向かった。

どうもこんにちは!今回は時間がないので手短に済ませようと思います。


最近本を読む量がめっきり減った気がします。昔は毎日のように呼んでたんですが今は一冊も読みません。流石に読まな過ぎですかね……?

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