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風の唄  作者: けんじ
13/28

心に触れて

結局メルクは俺たちが寝るまで帰って来なかった。そのくせ朝起きたらいつの間にかテーブルについてやがる。ちなみに俺が寝たのはリビングのソファーの上だ。そして気持ちよく眠っていた所を激痛と共に叩き起こされた。アリス曰く朝ごはんに起きてこなかったから、だそうだ。理不尽この上ない。その上それを見たメルクは俺をフォローするどころか『早くも尻に敷かれてるなァハハハ』だ。まあそんなこんなで朝食が終わるとメルクは俺を外に連れ出した。

「どうだ?風の国とは比べもんにならないくらい人がいるだろ」

本当に外には右を向いても人、左を向いても人、人、人、人。気持ちが悪くなるくらい人で賑わっていた。俺はてっきり街を案内してくれるのかと思ったがメルクは街を素通りし、街はずれの空き地で足を止めた。

「そういやお前、ずいぶんアリスに懐かれてたな、俺の時はまず一週間は口も利いてくれなかったのにな」

「そんな茶番はいいよ、何で俺をこんなとこまで連れてきた?」

するとメルクはニヤリと口角を上げ、傍に下げていた袋から剣を取り出して俺に放った。そして自分も剣を取り出す。

「さあ、剣のレッスンだ、どこからでもかかってきな」

これはチャンスだ。ここならアリスはいない。こいつさえ殺せればすぐに逃げられる。でもメルクはそう易々と死んではくれないだろう。そんなことはつい昨日俺自身の体で実証済みだ。

剣を右手に持ち、だらりと下げたままメルクの周囲を回って隙をうかがう。メルクは剣をくるくると弄びながら目だけで俺を追いかける。だが驚いたのはただそれだけなのに全く隙がないのだ。どこから攻めても落ちる気がしない。と、俺がちょうどメルクの真後ろに回った時、メルクの視線が外れた。目を左から右に移す一瞬、メルクの視界から俺が消えた。俺は大きく踏み込んでメルクの左側、剣を持っていない側に回りこむ。そして心臓めがけて剣を突き出した。


昼下がり、俺たちが家に帰るとアリスが昼食の準備をしていた。結局、俺はメルクに剣をかすらせることもできなかった。一番惜しかった最初のもあの後左手で剣の腹を弾かれ、呆気なく足をかけられてギブアップ。その後も同じように遊ばれ続けて終わった。おかげで体の節々が痛い。そして昼食が終わるや否やメルクは出かけて行った。食後も訓練を続けると思っていた俺は拍子抜けだ。しかし休めるのは有難い。と、思ってソファーに寝転んでいるといつの間にか眠ってしまったらしい。

「付き合って」

アリスの声で反射的に目が覚める。断ると後が怖いから仕方なくソファーから腰を上げ、付いていく。どこに連れて行かれるのかと聞いたら買い物、と返ってきた。もうそんな時間か、どうやら俺は大分長い時間眠っていたようだ。

街を歩いているとアリスはとある店の前で足を止めた。

「ここは調味料の店。大体の調味料はここで手に入る」

そう言って黒い液体の入ったビンを購入、その袋を俺に押し付けた。

「ここはお肉の店。店主は奥さんの尻に敷かれてる」

そして肉を二枚買い、やはり袋を俺に。

「こっちは魚の、あっちは野菜の店。どっちも新鮮さがウリ」

魚と、そしてりんごと紫色の粒がたくさんついた気持ちの悪い物を買い、当然のように袋は俺に。だんだんと増えてくる袋の山を抱えながら俺は気づいた。アリスは俺に街を案内しているんだ。そこでメルクの言葉が頭をよぎる。『ずいぶんアリスに懐かれてたな……』何も考えていないようでアリスもアリスなりに俺のことを考えてくれているのか。

「……聞いてる?」

アリスがジト目で俺を睨んできた。いやいつも半開きなんだけど。

「き、聞いてるって……」

嘘です。最後の方は聞いてませんでした。

「そ。じゃあこれ」

ズシリとまた両手の重石が増える。すでに俺の視界を塞ぐには十分な量の袋が俺の腕の中にはある。それの重量は相当なものだ。その上俺はメルクとの訓練で腕を酷使した直後だ。もう筋肉が悲鳴をあげている。

「なあ、まだ買うのか?そろそろこっちもキツイんだけど」

ダメ元で聞いてみる。すると珍しいことに素直にアリスは頷き、

「この店が最後」

そして袋がまた一つ増えた。

帰る道すがら、俺はずっと気になっていたことを質問してみた。

「お前らはさ……なんで俺を助けたんだ?」

「知らない。メルクに聞いて」

実はメルクにも同じことを聞いてはみたもののはぐらかされるだけだった。でも倒れていた俺を拾ってくれたのはアリスだということは教えてくれた。アリスが話したくないなら別に詳しく聞くつもりはないからいいけど。

ならばと二番目に気になっていたことを聞いてみた。

「あとさ、これ、全部今日中に食べきれんの?」

「……」


どうやら多めに買った食材は塩漬けにしたりして保存するらしい。しかもこれが世の中の一般常識だというから驚きだ。

「クロは何も知らなさ過ぎ。もっといろんなことに興味をもった方がいい」

「そうだな……殺して、殺して、殺して。それしか教わって来なかったし、教わろうとも思わなかったからな……向こうも教えるつもりなんてなかっただろうし」

するとアリスが申し訳なさそうに目を逸らした。

「ごめん」

「は?何が?」

「え……聞いちゃいけないことだったでしょ?」

アリスの方が動揺しているのがわかる。でも俺にはそれがなぜなのかわからなかった。

「そ……そう……気にしてないなら、いい」

心なしかアリスの瞳に畏怖の色が混じったのは俺の気のせいだろうか?


翌日、俺は昨日より早く目を覚ました。外はまだ薄暗く、日の出まではまだ時間がかかりそうだ。

「よう、今朝はやけに早いお目覚めだな」

昨日のごとくメルクはいたものの、アリスはさすがにまだ起きていないようだ。

「昨日みたいに起こされたらたまんないからな」

メルクはそうかい、とだけ言うとキッチンへ入り、何やらマグカップを二つ持って出てきた。

「ほれ」

マグカップの中には黒い液体に満たされている。メルクが美味しそうに飲んでいるということは害はないのだろう。俺は一口すすってみた。

「ゲッ、苦げえっ!」

色だけでなく味も酷いものだった。とにかく苦い。それ以外の味もあるのだろうが俺の舌が苦味以外を感じることができなかったくらいに苦かった。

「ハハハ、まだお前には早かったか」

「ったく、とんでもないもの飲ましやがるな」

俺がマグカップを置くとメルクの顔が少しだけ真剣になった。

「お前は……この先多分色んな苦難や困難を乗り越えなきゃならなくなる」

「そんなのお前には……」

お前には分かんないだろ、そう俺が言い切る前にメルクは続けた。

「俺には分かるんだよ。お前のことが手に取るように、な」

いつもおちゃらけているだけに真剣に話すメルクは気持ち悪くもあり、そして少し、ほんの少しだけ、怖かった。

と、思っていたのも束の間、後ろのドアが開き、目をこすりながらアリスが現れた。

「何、話してるの?」

するとメルクはいつものふざけた口調に戻って、

「と、いうわけでここに行け」

と、一枚の紙切れを俺に渡した。

「いや何がと、いうわけでだよ、どういうわけだよ何の脈絡も無いよな!?」

「じゃ、俺は行くから。アリス、案内よろしく」

めんどくさい、アリスがそう言う前にメルクは出て行った。いつの間にか朝の陽射しが柔らかく窓からは射し込んでいた。


「で、ここはどこなの?」

朝食後、直ぐに俺はアリスに引っ張られて家を出た。

「ロムじいのとこ」

「いやそのロムじいさんって誰なんだよ……」

「ちょっと遠いから急ぐ」

マイペースな奴だ。全く俺の話を聞いてない。まあ大丈夫か。

俺達は街を出てメルクと訓練をした森を横切り、大陸の東側、火の国からほど近い山に登っていた。この時点でもう既に日は半分以上地平線に沈んでいる。森の中を延々歩き回っていい加減無事にたどり着けるのか心配になってきた頃、遠くに灯りが見えた。

「こんにちは」

そこはこぢんまりとした山小屋だった。当然のように付近に民家は一軒もない。山の中にポツンと佇んでいた。

アリスは無遠慮にノックもせずドアを開ける。すると中には腰の曲がり、杖をついた老爺が一人。どうやらこれがロムじいのようだ。

「アリスか、こんな遅くにどうした?」

アリスは無言でメルクからもらった紙を差し出す。ロムじいさんはそれを目に近づけたり遠ざけたりしながら読み、ふふっと笑った。

「なるほどな、話は聞いておる。お前さんがハーメルンじゃな?ほれ、こっちに来なさい」

俺は手招きされるがままにじいさんに近づく。すると突然片手に持っていた杖を横薙ぎ、とっさに躱した俺の鼻先を掠めていった。少し余裕をもって躱したはずだ、と杖を見てみると先、普段地面に接している側から刃渡り数センチの刃が飛び出していた。仕込杖というやつだ。

「ほほー、その動体視力、反射神経、確かにメルクの言っていたとおりじゃな、ちょっと待っておれ」

「いやいや、待っておれじゃねぇよ!俺を殺す気か?」

このじいさん、メルクと同じ匂いがするな……

「その通り、じゃがあんたは死ななかった。つまりそういうことじゃ」

何がそういうことなのか全くわからなかったがとりあえず一安心した。それからじいさんは俺の体の隅からすみまでを採寸、そして意味の解らない質問を繰り返した。例えば利き腕とか利き脚、視力、歩幅、数えだしたらキリが無い。横をみるとアリスは椅子に丸くなってくーくー寝息を立てていた。自由な奴だな……


質問が終わると俺も眠るよう言われ、お言葉に甘えて眠ることにした。一日中山や森を歩き続けてヘトヘトだ。だから目を閉じた瞬間、俺は即眠りに落ちた。


俺は激しく鉄を打つ音で目が覚めた。アリスも同じようであくびをしている、眠るときも帽子は被っていた。

音のする方へ向かうとそこは鍛冶工房があり、その中心でロムじいさんが鉄を打っていた。

「おや、起こしてしまったかの、まだ少しかかるでな、薪割りでもしといてくれ」

「私はご飯作っておく」

アリスは早々に逃げやがった。かくいうわけで仕方なく俺は生まれて初めての薪割りに挑戦したがこれが難しい。人を切るのとは訳が違う。まず俺は斧を振るったことがない。だからうまく刃の部分が木に当たらないわけだ。それでもひたすら斧を振り下ろし続けているといつの間にかのめり込んでいたらしい。久々のアリスの魔法を食らってはっと気がついた。

「ご飯、できた」

俺がテーブルに向かうと向かい側にアリスが座った。

「あれ?じいさんは?」

「作業を中断するわけにはいかないって」

昨日の夜から休まずやっているのだろう。体は大丈夫なのだろうか。


結局、じいさんは日が暮れるまで休まず鍛冶を続けた。そして太陽の縁が地平線に掛かった頃、剣と鞘を持って俺に手渡した。

「これがお前さんの剣じゃ」

「俺の?」

俺は今まで自分のものというのを持ったことがなかった。俺の持ち物といえば自分の身体くらいのもの。剣を抜いてみるとその刀身は俺が今までに見たこともない程美しかった。

「お前さんはメルクの剣を見たことがあるかの?」

俺が剣を褒めようとするとじいさんは遠い目をしてそう言った。俺が首を縦に振るとじいさんはそうか、と言って地面に座った。俺もそれに倣う。

「あの剣は儂がいま作ったどんな剣よりも、そしてこれから作るどんな剣よりも美しく、強い」

俺が反論しようとするとじいさんはありがとう、とだけ返して話を続けた。

「もう何十年も前じゃったか、あの男が折れた剣を直して欲しいと持ってきた。あの剣を一目見たとき儂は感じたよ、あれは正真正銘、最高の剣だと。絶対に折れず、錆びず、刃こぼれしないという獣人製の剣の中でもあれは最高傑作じゃ。儂がどこで手に入れたのか聞いてもあの男は知らないと抜かしおった」

俺は驚愕した。獣人は確かに最高の鍛冶技術を持っている。しかしそれを人間のために振るうことはまずない。人間は長い間獣人を迫害してきたからだ。

「ま、機会があった聞いてみてくれい。さ、もう遅いから今日は泊まっていったらどうじゃ」

もう太陽は半分以上地平線の下だ。その上空気も大分冷え込んできてる。当然今日はじいさんの家に泊まっていくものだと、少なくとも俺はそう考えていた。

「帰ろ」

だからそう言ってアリスが俺の服を引っ張った時は俺は自分の耳を疑った。

「へ?」

「帰ろ」

どうやら俺の耳は正常に機能しているらしい。とすると次に疑うべきはアリスの頭だ。ここは山の奥、そして今は夜。こんな時間に山や森を歩き回るなんて正気の沙汰じゃない。

「帰ろってお前……大丈夫か?」

「道は分かる。だから……おねがい」

俺はじいさんと顔を見合わせた。今のアリスはどこかおかしい。焦っているような、怯えているような、そんな脆さを感じた。

「おいアリス……」

俺は迷った。このまま放っておけばアリスは一人でもここを出て行くだろう。せっかく拾ってもらった命だ。そう粗末にはできない。だが拾ってくれたのもまたアリスなのだ。

「私一人でも帰るから」

「あーわかったわかったよ。俺も行くから待ってくれ」

結局俺はアリスと一緒に夜の山に足を踏み入れた後ろでじいさんの声が聞こえた気がするけど気にするか。にしてもなんでアリスはそこまでして帰りたがるんだ?いや、この場から離れたがっているっていうか。道はわかっているとか言ってたがこんな暗闇で地理感覚なんて使い物になるわけがない。でも、それでも俺はアリスについてきた。別に何か考えがあるわけでも、土地勘があるわけでもない。単純に身体が勝手に動いた。今アリスを一人にしてはいけない、そう感じたからだ。


アリスはどんどん歩を進める。それが何か目的を持ったものなのか、それともただ歩いているだけなのかはわからない。でも俺にはアリスについていくしか選択肢はない。斜面を下ってはいるから少なくとも山からは下りているんだろう。耳を澄ませば虫達の合奏が聞こえ、空を見上げれば木々の隙間から満点の星空が見える。こんな状況じゃなけりゃ最高の散歩時なんだけどな。


おかしい。そろそろ火の国に通じる道に出てもいい頃だ。しかし俺たちが歩いているのは依然木々の茂る森の中。いくら道がわからなくてもさすがにこれはおかしいと分かる。

「おい待てよ、道間違ってるんじゃないのか?」

アリスは前を向いたまま目もくれない。仕方なく俺はアリスの肩を掴んだ。

「触らないで」

「聞けって、こんな暗闇じゃますます迷うだけだ。朝まで待とう」

なんとかなだめすかして立ち止まらせなくてはならない。どう考えてもアリスも俺も森の只中で迷子だ。とりあえず朝まで待つしかない。

「触らないでっ!」

手を振り払われた。自分から帰ろうとか言っておいて勝手な奴だ。と、ここで俺は何か気配を感じた。ガキの頃から人殺ししかやってこなかった俺だ。そんな俺が感じる気配といえば殺意か敵意以外に考えられない。数は……一つ、二つ……十以上。

「おい止まれ」

俺は強引にアリスの腕を掴み、強く引いた。当然アリスは地面に尻餅をつく。

「何する……」

「お前が何考えてるかはしらねぇがちょっと黙ってじっとしてろ」

残念なことにじいさんから貰った剣はアリスのどさくさで置いて来ちまった。素手で何とかなる相手ならいいんだが……

右側から一つ。暗闇に光る二つの光が俺に襲いかかる。山犬だ。ギラリと光る牙が俺とアリスに向けられる。俺はわざと腕を咬ませ、動きを止め、足ともう一方の手を使って力任せに口を反対に開く。ベキッと音がして山犬の顎の骨が砕け、肉が裂けた。そして心臓の位置を強打。心臓が止まったのを確認してから尻尾を掴んで地面に叩きつける。

「オラどうした、次来いよ次」

残念なことに俺の方から攻めることはできない。後ろにアリスがいるからからだ。

後ろから二、前から三。

右手の肉塊を盾にして後ろの三匹を跳ね飛ばす。前の一匹の大きく開かれた口に腕を突っ込み、内蔵を引きずり出す。そしてその腕でもう一匹の目潰し、そして最初と同じように顎を破壊、次は一度怯ませた後ろの三匹だ。三匹縦に並んで飛び掛ってくる。まず一匹目。左腕にべっとりと付いた血で目眩し、その隙に首を掴んで地面に叩きつける。足で頸椎を踏み砕いてから二匹目を躱す。そしてその体が目の前を通りざま心臓に当て身。最後は逃げようとしたところを尻尾を掴み、頸椎をへし折って終わり。

「クロ……それ……」

アリスは明らかに怯えている。これは……そう。俺を見る親父の目だ。

「どうした?」

「その……血が」

「いやこれは俺の血じゃないから」

ことの顛末はアリスも見ていたはずだ。ならばこれが俺の血じゃないことくらいわかりそうなもんだが。

「最後のは逃げてたのに」

「だからなんだよ」

「殺す必要、あった?」

「俺の邪魔をしたから殺しただけ。それがどうしたよ」

「……それが私でも?」

「え?」

「もし私がクロの邪魔をしたら……殺す?」

あまりのバカバカしい質問に俺は思わず吹き出してしまった。真剣な顔で何を言うかと思えば……

「おま……何言って……」

するとアリスは俺の顔を両手で挟み、ぐいっと自分の方へ引き寄せた。

「私は本気」

そのあまりに哀しげな表情に俺も何と言えばいいか迷ってしまったそれでも他に何も思いつくわけもなく思ったままを答えるしかなかった。

「だろうな。でもお前に魔法を使われちゃ俺は何もできない。そうだろ?」

そう言うとアリスはおもむろに目深に被っていた帽子を外した。今までわからなかった素顔が明らかになる。

「お前……その耳……」

木々の隙間から差し込む僅かな月明かりが映し出したのはアリスの耳。それも人間のものより尖っている。

エルフだ。

「怖い?エルフの私が」

エルフは基本的に他の種族を軽蔑している。だから人里離れた精霊の杜なんてところにひっそりと棲んでいると聞いたことがある。そしてその魔力は他種族と一線を画す。

「どうだろうな、でもなんで俺にそれを見せた?」

「あなたの心が知りたいから。それでもし……もしあなたにその資格があれば、託してもいいと思ったから」

まず色々と説明が足りない。何故エルフがこんな所に、人間と暮らしている?心が知りたいってなんだ?託す?

しかしそんな疑問を軽く吹き飛ばすような出来事が俺の目の前で起きた。

アリスが目を閉じるとその周りに俺にも見えるほどの精霊が集まってきた。そして精霊は大きなうねりとなってアリスを包み込む。すると今まで肩までしかなかったアリスの空色の髪が見る間に伸び、腰よりも長くなった。そして瞳を開くとその色も鮮やかな空色に変わっていた。しかし俺が真に驚いたのはこの先だ。

「ふーん、君がクロ君かぁ、アリスってば相変わらずネームセンスないなぁ〜」

それはアリスであってアリスではなかった。見た目はアリスだけど中身は完全な別物。本能が危険信号を鳴らす。俺は反射的に後ろに飛び退った。

「あらら〜、でもクロ、いい感覚してるねぇ」

目の前の何かは一瞬姿を消し、次の瞬間には俺の背後に現れた。不思議なことにその体はふわりと宙に浮いていた。

「まあ今回はアリスの頼みだからねぇ、特別だよ」

そう言うと俺が逃げる間もなく腕を掴み、舌を這わせた。すると山犬に咬ませた傷が見る間に、まるで時を戻すかのように消えていった。



それからのことはよく覚えていない。突然眠くなって、目が覚めたらあの時同様ベッドに寝かされていた。メルクもアリスもどうやって帰ったのかは教えてくれなかった。

それから四年、俺はメルクに色々なことを教わった。剣術はもちろんのこと、この世界で生きていくために必要なことを全て。しかしいつまで経ってもメルクの正体は掴めないままだった。

どうも!今回は投稿が少し遅れましたが決して忘れてたわけではありませんよ!……はい。嘘です。おもっきり忘れてました。

まあそんなことはともかく、最近は暖かくなって来ましたね、それはいいんですがね、来ましたよ。花粉。私は何を隠そう花粉症でしてまあ鼻水が止まらない止まらない……出掛ける際にはマスクとティッシュ(箱)が手放せなくなりそうです……

ではまた!

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