気づいたら悪役令嬢改め悪役令息でした?
乙女ゲームをやったことないので拙いですが見逃してください。
こういったものもアリだとは思うんですよね・・・。
あの、少し、私の話を聞いてもらってもよろしいでしょうか。
あ、はい。私、アーネスト家の三男のジェシー・アーネスト、3歳です。
3歳なのにどうしてここまで喋れるのかと言われますと、どうやら私は前世の記憶というものを持っていた次第でありまして。それを思い出したのがつい最近なのでございます。ですから、舌足らずな喋り方ではございませんし、少々丁寧に話しております。
両親にばれないよう、頑張って3歳児を演じてはおりますが、薄々感づいているようでして。
いえ、その話を聞いてほしいのではございません。
前世の記憶を思い出した時に、あることを思い出してしまったのです。
そう、この世界が、とあるゲームの世界なのだということを。
そしてこの私、ジェシー・アーネストが攻略対象ではなく、妨害キャラクターだということ。
悪 役 令 嬢 だったのだということを、思い出したのです。
私、男なのですが。
少し、私の前世についてもお話しましょう。私、前世でも男子ではあったのですが、貴賎なくゲームをプレイするゲーマーでして、乙女ゲームも手に取らせていただいてました。
死因は老衰と言いたい所ですが、感電死でございます。神様と言った存在とも話しておりません。
ちなみに年齢は享年45歳。とある茶店に勤めておりました。
死ぬ前にプレイしていたのがこの世界を背景としたゲーム、「マナストーリア~聖女と鐘~」、略して「マナスト」です。
真実の愛で世界を救う、シンデレラストーリーと銘打っていたこのゲームはRPGでもあり乙女ゲームでもあり、そしてとても特殊な部類に入るゲームでした。
ファンタジー学園ものではあるがモンスターとも戦いますし、最終的にはどんな手段を使ってもいいので魔王を倒すことが目的だった、と記憶しております。
それと、こういった魔王討伐モノだと普通は攻略対象がパーティの組み合わせなのでしょうが、これは違いました。別段、攻略対象者でなくともパーティを組めるのです。いいえ、むしろモブの方がバランスのいいパーティを組めるという、恐ろしく乙女ゲームしていない乙女ゲームでした。
絵も人気の人が描いていましたし、声優も豪華、アクションシーンやムービーも美麗なグラフィックを使い、戦闘難易度も選べることができ、ストーリー分岐も多かったため、アニメ放送や漫画化などされるほど大人気でした。人気ではあったのですが、掲示板を見ていて、誰も落とさずに主人公だけで魔王を倒したら英雄になるか魔王になるか選択肢が出た、という書き込みを見たときは思わず吹き出してしまった覚えがあります。やるゲーム間違ってないか、とね。
そんなマナストなのですが、確か攻略対象は第3王子(俺様)、騎士見習い(犬っ子)、魔術師見習い(人間不信)、大商人の息子(打算的)、宰相の息子(腹黒)、騎士団長の息子(無口)、魔術教師、剣術教師(堅実)、教師のメイン9人と、なぜか騎士団長、宰相、国王、そして隠しで魔王の総勢13人が攻略対象だったはずです。そうして対を成すように13人の悪役が存在します。大半は婚約者だったり恋敵だったりなのですが。
私としては、こういったシンデレラストーリーは胸糞悪い、と思っています。
婚約者がいないフリーの状態だったらいいのですが、よくもまあ、自分の我儘で婚約者だった人を最悪処刑にまでできるのだろうか、とつくづく思います。貴族に転生をしてからはもっと思った、と言いましょうか。いえ、今はまだ3歳ですけど。
それはまあおいておいて。私、ジェシー・アーネストは本来悪役令嬢のはずです。アーネスト家の長女として蝶よ花よと育てられ、我儘に、傲慢になっているはずでした。そして、騎士団長の息子と婚約関係を結び、魔術師見習いの義理の姉として主人公の前に立ちはだかる悪役として登場していたのです。
それがまあ、アーネスト家の三男として生まれたので甘やかされるはずもなく。
こうしてお話している所存でございます。
ああ、あと数年もしないうちに攻略対象魔術師見習いが我が家の養子として引き取られる、でしょう。婚約者は、知りません。
前世で読んでいたweb小説では、こういうのは、記憶を取り戻した令嬢が人間不信にならないように甘やかしてそして…というのがセオリーというものです。なのですが、私は男です。れっきとしたものが付いております。柔らかくもありません。
はあ。先が思いやられます。
紅茶でも飲んで落ち着きましょう。