友人、それは狐の神様
二話投稿です。更新不定期すみません
相変わらずこんな駄文ですけどよろしくお願いします
日は完全に落ち、辺りが真っ暗な草むらの草を掻き分けながらただ進む
もはや何時間歩いたか分からない、そして何処に向かっているのかもわからない
遭難・・・ってヤツかと思うが、不思議とそんな感じはしなかった
そして、俺は一軒の屋敷に辿り着いた
「何でこんな所に・・・」
造りは古めかしいが屋敷自体は手入れが行き届いており、人が住んでいるかのように思えた
だが、それを確認する前に俺の体力が尽きたようだ
その場に倒れてしまった
蒸し暑い季節、その朝は当たり前に蒸し暑くやってくる
「ふぁぁ・・・眠いよぉ・・・」
「お姉ちゃん起きてよっ!!」
布団を引っぺがそうとする妹に布団にしがみ付いて抵抗する
毎朝こんな感じ・・・起きててもやる事がないから
最近は道を通る輩もあまりいない、崇める人も、お供えする人も
私達は、この閉ざされた神社の森で一生を終える
私達の使命は、真実を守り抜く事にある
でも・・・もう何から守ればいいのか分からなくなりかけていた
一生孤独であるはずの私達・・・決して人に存在を気づかれてはならない私達一族の名は・・・白狐一
族
しかし、気が付いた人が居た・・・気が付いてくれた人が居た
一人で境内で座っていた私に声を掛けてくれた人が
でも・・・恐らくもう会う事はない
私達は・・・人を何よりも恐れなくてはならないのだから
「起きてよお姉ちゃんっ!!人が・・・人がここに来ちゃった!!」
「!?」
思わず布団から飛び起きる
人がここへ?ありえない、それだけ人が住む場所から遠く深い森の中にここはあるというのに
「迷い人か・・・それともならず者か・・・」
どちらにせよ、口封じをしなくてはならない
私はいつも通りに巫女装束を身に纏って妹から人の場所と様子を聞いた
「えっと・・・門の前で寝てました」
「寝てた?外で?」
なんとも不思議な人が来たみたい
とにかく、この屋敷と私達の存在が人に知られれば、私達の居場所は無くなってしまう
当然、一族の使命も果たせない
私は小刀を片手に門へと向かった
「こ、この人です」
妹が指差す屋敷に迷い込んだ人は、だいたい私と歳が同じくらいの男性だった
「そう・・・伊羅、あなたは部屋に戻りなさい。この男は私が何とかするから」
「はい、お姉ちゃん気を付けてね・・・」
妹の伊羅を下がらせ、私は小刀の鞘を取り払った
小刀は銀色の輝きを放っており、触れれば皮膚一枚に軽く切れ込みが入る
「神の秘め事の為、人を殺める事を赦したまえ」
小刀に祈りを捧げ、そして目の前でうつ伏せになって倒れている男の首に小刀を向ける
「う・・・ふあ~っ」
小刀を当てようとしゃがんだ時、目の前の男が目を醒ましたようだ
「!?」
「あーよく寝た・・・」
思わず飛びずさり、門の影から様子を窺う
そして、顔を見た瞬間、私の頭から昔の記憶があふれだした
ある時の夏、一人ぼっちだった私と一緒に居てくれた人
「ーーーーっ・・・!!」
小刀を落とし、ただ呆然とその人を眺めた
もう会うことはないと勝手に思い込んでいたその存在は今、私の目の前に居た
「んー・・・つうか此処何処だよ、なんか別の世界に来てしまったって感じがあるな」
門の前で背伸びをしながら、その男性はこの屋敷の門に向かった
「・・・で、いつまでそこに隠れてるんだ?」
「っ・・・」
居場所まで・・・完全にこっちに向いて動く気配がない
私は・・・恐る恐る前に出た
「お、久しぶりだな。沙羅」
やっぱり・・・あの人だった
目覚めた俺を待っていたのは、幼き日のたった一人の友人である沙羅だった
相変わらず大人しそうな雰囲気と腰まで長く伸ばした銀髪が眩しい
「お久しぶりです・・・梓灯さん」
驚きが混じった少し涙目の沙羅は手に握る小刀を俺に向けている
その手は震えて、今にも小刀を落としてしまいそうだった
と、俺は自分の首下が湿っている事に気が付いた
首に手を当て、何が付いているのかを確認した
・・・手のひらには真っ赤な液体がベットリ付着しており、自分の頭で冷静に状況を分析してみた
少し前、俺は地面で寝ていた・起きたら小刀を持った沙羅が居た・そして自分の首に紅く溢れる血液
「・・・嘘だろ・・・」
何が起きたのかに気が付いた瞬間、俺の意識は一瞬で暗転してしまった
「あ・・・ああっ!!梓灯さんっ!!」
先ほど驚いて飛びのいた際、少し切っ先が彼の梓灯さんの首に触れていたみたいだった
梓灯さんの首からは止め処なく赤い血液が流れていた
私はすぐさま梓灯さんの傍らに駆け寄って呼びかける
出血している首を手で押さえて止血を試みるも、小さい手の隙間から血は外に出て行く
「いや・・・いやです・・・死なないでください!!」
私は無意識に 白狐の力を発動させていた
全てはーーー以前私を救ってくれた彼を助ける為に!!
「ん・・・おぁ・・・なんか重ぇ・・」
胸辺りにズッシリと重い重量感を感じながら俺は目を醒ました
えっと・・・久しぶりに再会した友達に首切られて、それから死んで
「いや、おかしいから。死んだのにまだこの世に残ってるとか・・・つうか何が乗ってんだ?」
首を起こし、胸の位置を確認する
そこにあったのは、なぜか寝ている沙羅の顔だった
何でここで寝れるんだよ・・・
「・・・俺も寝るか」
動くのも億劫な俺もそのまま睡眠に戻った
「お姉ちゃんをよくもっ!!」
・・・何この流れ
今絶賛目の前の女の子・・・恐らく沙羅の妹だな、スゲー似てる
「あーだから俺なんにもしてないから、落ち着いて落ち着いて」
「お姉ちゃんが人なんかに懐を許すはずがありませんっ!!」
あーもーどーしよー
とりあえず沙羅を抱っこして案内された部屋に寝かせた訳だけど、部屋を出た瞬間これだぜ
「つーか、人なんかにって・・・お前は同じ生物に向かって何言ってんだ?」
「えっ・・・そ、それは・・・」
おい、さっきまでの強気の姿勢はどうした?
つーかうろたえる姿まで沙羅と似てるってどうなんだ?
「・・・ま、普通じゃないってのは知ってたけどな」
「!?」
「俺は昔この神社で遊んでた時期があってな。沙羅とはその時からの親友だ」
そう、沙羅やこの目の前の子供のような白狐一族は普通の人間ではない
この神社に住まう、所謂、神の一族なのだ
多分、この情報は俺以外の全人類が知らない情報でもある
むしろ、白狐一族が今だその血統が途切れることなく続いている事すら誰も知らない
誰も・・・その事に気付かない
正直何で俺はあの時沙羅に気が付く事ができたのかすら分からない
でも、そのおかげで俺はたった一人の大切な友人を持つことができた
・・・まあ人間の友達ってのはお察しの通りだ
なんか自分以外の人ってのは・・・信じられないんだよな
「そ、そんな事が・・・」
「落ち着いたか?あと俺はその事は誰にも教えてない、記録もしていないから心配するな
それと、一族の約束事をそれで破ってしまったのならその罰は受けるつもりだ
沙羅は悪くないんだ。悪いのは聞いた無知の俺だ、だからあいつを責めるな」
そう、俺は人が知ってはならない事を聞いてしまった
そして、目の前の沙羅の妹はコクリと頷いた
「あなたの言っている事・・・信じます」
「信じる信じないは勝手だがあまり俺を信用するな。人ってのはホント信用に足らない」
「でも、さっき聞いた事は事実です」
何を思ったか、沙羅の妹は俺を真っ直ぐ見て言った
「じゃあなぜ分かる?」
「私の生まれ持った力は、”真実を見透かし、偽りを葬る事にあり”です。虚実か事実かは私は見えます」
「生まれ持った力?」
話を聞くと白狐一族はその存在故に一人ひとり必ず一つは能力を持って生まれるらしい
沙羅の能力は・・・聞いた事もないから分からないが
ま、いつか教えてくれる・・・彼女にとって俺が信用に足りる人間だとしたらだが
「つーかそれなら最初から分かってたんじゃないのか?」
さっきの話題
「えぅ・・・そ、それは・・・」
「おう、何だ何だそんなひん曲がった性格なのか?」
「こっ・・・この力を私が制御できてないからですっ!!」
うん、感情高ぶると耳と尻尾出てくるのも沙羅と同じだな
「・・・うっ・・・」
と、布団の敷いてある襖の向こうからごそごそと音が聞こえてきた
「起きたか?」
襖を開けて目を擦る幼馴染を横目で確認して、俺はある事に気が付いた
「おい、耳と尻尾でてんぞ?」
「へ・・・あ・・・すみません?」
何で疑問系なんだよ・・・
つうか寝ぼけてんな、足取りフラフラしてる
「お姉ちゃん・・・いい加減起きてよ・・・」
「いつもこんな感じなのか?」
「はい・・・」
「ご愁傷様」
「そくとうで嘘偽りない答えですね・・・」
すまない、俺自分に素直だからな
「ところでお前の名前は?」
「私ですか?。私は、白狐 伊羅 って言います」
「伊羅か。俺は梓灯 奏慈。シトウでもソウジでも構わない」
ポンと伊羅の頭に手を置いて撫でる
「ふみょ・・・」
気持ちよさそうにしてるな、耳と尻尾も出てきた
ちなみに耳と尻尾が出るのは見慣れた
「ところで、俺は帰れるのか?」
「えっとそれは・・・」
「ふぁっ!?し、梓灯さん大丈夫ですかっ!?」
「何がだ?つうか今更目覚めるのかお前は」
あたふたとせわしなくしている沙羅を見て笑う
そして・・・ここは白狐の屋敷
神の屋敷で俺は気楽にのんびりしていた
俺が居座って二日程経過した
そして、相変わらず俺は隙を付いて帰る方法をこいつらから聞き出そうとしてるのだが
・・・話が途切れるタイミングが神掛かっててなかなか聞き出せないでいる
「さて、そろそろ帰りたい」
「「え・・・」」
やめろ・・・そんな寂しそうな目で俺を見るな
「とりあえず帰るか帰らないかはお前等の返答次第だからな」
「「じゃあ帰れません!!」」
「帰るわ」
何この茶番
「で、本当は?」
「帰れない事はないですけど・・・梓灯さんは恐らく神隠しに遭ったって言われてます」
「ふむ」
まあ神隠しってのは間違ってない気がするが
「だって梓灯さん・・・目立つのが何より嫌いでしょう?」
「大嫌いだな。この世の全ての事象の何よりも嫌いだ」
「「・・・・・・・」」
おい、何でそんな悲しそうな目で俺を見るんだ
「・・・お前達の事じゃないからな?」
「「・・・・!!」」
顔輝かせてこっち見んな
つまり言い分はこうだ
神隠し事件に対する世間の熱が冷めるまでここに居た方がいいという事らしい
予想だが、この神隠し事件について事情聴取とか受けて変な事漏らしたら、沙羅達の平穏に危険が及ぶ可能性が出る
断じて、俺はそんな事望まない
仮に他の理由で彼女達に危険が及ぶのであれば・・・原因分子は撃滅する。ただそれだけだ
「ま、別に帰らなくてもいいんだが」
「えっ・・・!?」
「だってこっちの方が家めっちゃキレイだし」
そう、この屋敷は驚くべき恐るべし事実があるのだ・・・!!
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