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【039 ツイン城の戦い(三) ~初撃~】

【039 ツイン城の戦い(三) ~初撃~】



〔本編〕

 聖王国軍の騎兵が駆ける。迎え撃つ帝國軍の前面は、玄武兵団の精鋭の黒色槍兵隊シュワルツランツェンレェィターである。騎兵と槍兵の基本則からして、圧倒的に騎兵が不利である。両軍の距離が三メートルに縮まったその時、聖王国軍の騎兵が武器の槍をホースに装着したままで飛び降りた。

 騎兵はみるみる歩兵へと姿を変え、剣を抜き、黒色槍兵隊シュワルツランツェンレェィターに斬りかかった。

 一気に兵の基本原則の騎兵と槍兵の関係から、槍兵と歩兵の関係へと切り替わった。

 黒色槍兵隊シュワルツランツェンレェィターは、一瞬戸惑いはしたものの、苦手な歩兵とはいえ、互角の撃ち合いにもっていった。確かに、槍兵は歩兵が苦手ではあるが、そこには同レベルの場合という条件が前提で成り立っている。

 この時の聖王国軍の歩兵は、ファイター(第二段階)や、ソードマン(第三段階)にクラスチェンジしたばかりの兵に対し、帝國軍の黒色槍兵隊シュワルツランツェンレェィターは、アーマーナイト(第三段階)のベテランや、メタルナイト(最終段階)の兵であった。同じ第三段階サードランクの兵でも、クラスチェンジしたばかりの兵とベテランの兵では大きな差がある。

 数値化するのに意味があるかは分からないが、仮に第三段階サードランクへクラスチェンジしたばかりの兵がレベル一と考え、レベル十で最終段階トップランクへクラスチェンジするとした場合、ベテランとはレベル八や九ということになる。歩兵が苦手な槍兵にしてみても、このくらいレベル差があれば互角の戦いにもっていくことは可能である。

 そういう意味で今の両軍の先鋒同士のぶつかり合いは互角である。

 さて、聖王国の先鋒を騎兵と思わせて、突然歩兵となった中で、先鋒中央のハクビだけは、銀馬シルバーホースを駆り、ヴォウガー軍団長と斬り結んでいた。

 明らかに動きはハクビの方が、数段上であった。

 ヴォウガーの槍――漆黒の槍シュワルツランツは何度も空を切り、その度に自身の楯――獅子の楯レーヴェシルトによって、ハクビの二本の斧を受け止めていた。ハクビは下半身だけでホースを操り、ヴォウガーの右、中央、左と三方に移動しつつ、ヴォウガーを攻め立てた。ヴォウガーとしては苦々しい戦いの展開である。

 シルバーナイト(第三段階)の騎兵に、メタルナイト(最終段階)でベテランの域にまで達している自分が、互角の戦いに持ちこまれている。

“このハクビの動きは、既に騎兵という兵種の範疇はんちゅうではし量れない! さらに、レベルもトップランクの域に達している”ヴォウガーはそう感じた。

 しかし、ヴォウガーの思惑とは別に、見た目は槍兵のヴォウガーが、得意としている騎兵――それも自分よりはるかにレベルが低いと思われる敵にてこずっている様に見える。これは味方の志気に非常に影響していく。事実、先鋒同士の互角のぶつかり合いも聖王国の周りの兵のフォローも重なり、帝國兵がやや押されはじめていた。

 聖王国軍の中堅の槍兵百人のうち、五十人が実は弓兵或いは魔術を行使する魔兵であった。槍や重装備の鎧はカモフラージュであった。

 弓兵は第二段階セカンドランクのアーチャーやハンターで、黒色槍兵隊シュワルツランツェンレェィターの横から飛びだしてくる敵兵に、カモフラージュの鎧に隠していた矢を射かける。

 魔兵は同じく第二段階セカンドランクのソーサリーで、重たい鎧を脱ぎ捨て、黒いローブ姿となり、もっぱら攻撃呪文で、人の頭ほどの大きさの火球ファイアーボールを時速五十キロメートルほどのスピードで投げつけていた。もちろん帝國軍も黒色槍兵隊シュワルツランツェンレェィターの後ろから矢や魔法で攻撃をするが、巨大な体格ぞろいの黒色槍兵隊シュワルツランツェンレェィターが前では、前面の様子が分かりにくい そのため援護の矢や魔法の火球も目標物が見えないため、自然と放物線を描いて飛んでいかざるをえない。

 序盤の戦局は聖王国側の作戦勝ちの様相を呈しつつあった。最初の激突の寸前で、乗り捨てられたホースは、本来の持ち主である殿しんがりの歩兵を装っている騎兵が、口笛などを鳴らし呼び寄せた。七割にあたる七十頭が聖王国軍の陣地に戻ってきた。

 これは最終決戦の際の重要な騎兵となったのであるが、それは後筆にて……。




〔参考一 用語集〕

(神名・人名等)

 ヴォウガー(バルナート帝國四神兵団の一つ玄武兵団の軍団長)

 ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年)


(国名)

 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅ウバツラの建国した國)

 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯マナシの建国した國。金の産地)


(兵種名)

 第二段階(兵の習熟度の称号の一つ。下から二番目のランク。この称号を与える権限は町や村の長或いは地方領主以上の者が持つ。セカンドランクとも言う)

 第三段階(兵の習熟度の称号の一つ。下から三番目のランク。この称号を与える権限は中央の将軍や大臣以上の者が持つ。サードランクとも言う)

 最終段階(兵の習熟度の称号の一つ。一番上のランク。この称号を与える権限は國の王のみが持つ。トップランクとも言う)

 シルバーナイト(第三段階のシルバーホースに騎乗する重装備の騎兵。銀騎兵とも言う)

 アーマーナイト(第三段階の重装備の槍兵)

 メタルナイト(最終段階の重装備の槍兵。金剛槍兵こんごうそうへいとも言う)

 ファイター(第二段階の技量に秀でた剣兵)

 ソードマン(第三段階の技量に秀でた剣兵)

 アーチャー(第二段階の重装備の弓兵)

 ハンター(第二段階の軽装備の弓兵)

 ソーサリー(第二段階の魔兵。黒魔法に精通している兵)


(武器名)

 漆黒の槍(ヴォウガー軍団長の得物。「シュワルツランツ」と呼ぶ)

 獅子の楯(ヴォウガー軍団長がバルナート帝王から賜った楯。「レーヴェシルト」と呼ぶ)


(その他)

 黒色槍兵隊(ヴォウガー率いる玄武兵団の精鋭部隊。「シュワルツランツェンレェィター」と呼ぶ)



〔参考二 大陸全図〕

挿絵(By みてみん)


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