【010 聖王国軍登場】
【010 聖王国軍登場】
〔本編〕
その時(ハクビがバルゴーを倒した直後)になるとバルゴーの部下達が、ハクビ達のいる場所に集結し出していた。
その内の一人が叫ぶ。
「隊長の敵だ! 一人残らず殺せ!!」
ハクビ、マーク、レナは十五人ほどの兵に周りを取り囲まれた。
ハクビには、マークとレナを守りながらこの囲みを突破する術がどうしても思いつかなかった。
ハクビ一人なら個人技でこの囲みから突破することも或いは可能かもしれない。しかし、マークとレナの二人の兄妹を守りながら……、となると事情はそう簡単ではない。
むしろ絶体絶命と言えるであろう。
その時である。
ハクビ達を囲んでいる兵以外の別の帝國兵があわてて走ってきた。その兵はあわてながら大声で叫ぶ。
「ソルトルムンク聖王国軍が攻めてきました! このままでは退路を絶たれます!!」
見ると白々と明け始めた朝靄の中、十数頭の騎兵が帝國兵をけちらしながら、こちらに向かってくる。
先頭は金の鎧に全身が覆われた重装備の騎兵であった。一目でゴールドナイトと誰の目にも明らかだった。
ゴールドナイトは最終段階の重装備の騎兵である。最終段階は國の王でないと任命出来ない称号のことで、ランクとしては第一段階、第二段階の上に第三段階があり、その第三段階のさらに一つ上のランクである。
当然その実力は折り紙つきである。少なくとも第一段階から第二段階で編成されているバルゴー隊長配下の帝國兵では、たとえ束になってかかっても敵うものではない。
ハクビ達を囲んでいた帝國兵は、我先へと散り散りに逃げ出し、後にはハクビ達三人と、倒れて苦しそうにしている瀕死のバルゴー隊長だけになっていた。
〔参考一 用語集〕
(神名・人名等)
マーク、レナ(コムクリ村の住人。マークが兄で、レナが妹)
ハクビ(眉と髪が真っ白な記憶喪失の青年)
バルゴー(バルナート帝國軍の白虎騎士団に所属する小隊長)
(国名)
ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅の建国した國)
バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯の建国した國。金の産地)
(地名)
コムクリ村(ソルトルムンク聖王国の南西部にある小さな村)
(兵種名)
第一段階、第二段階、第三段階、最終段階(兵の習熟度の称号。第一段階、第二段階、第三段階、最終段階の順に上がっていく)
ゴールドナイト(最終段階のゴールドホースに騎乗する重装備の騎兵。『金騎兵』とも言う)
〔参考二 大陸全図〕