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「お帰り。」
家に帰ると、何事も無かったかのように、静が台所に立っている。
四人がとりあえずソファに座ると、笑顔を向けた。
「お疲れさま。何か飲む?」
「………その前に、静。」
翔平の声が、若干重い。
「……何?」
「彗に付けたな?」
静はちょっと舌を出した。
「バレた?」
「当たり前だ。……どこに付けた?」
「彗ちゃんの宝物に……。」
「彗の宝物………?」
翔平は、自分の服の裾をつまんだまま隣に座る彗の瞳を覗き込んだ。
「彗、お前が肌身離さず持っている宝物って………何だ?」
彗は頬を赤らめて俯いた。
「静がそれに盗聴器と発信器を付けている筈なんだ。」
翔平が言うと、静が声を上げた。
「失礼ね!彗ちゃんには発信器だけよ!盗聴器は付けてないわ!でなかったら、拉致された瞬間に判ってる筈でしょ?!」
「………それもそうか。なら、良い。今日みたいなことがあったら困るから、発信器は付けたままにしておく。」
「英断ね。」
「盗聴器は付けるなよ?!」
「解ってるわよ。大体、翔が彗ちゃんを口説いてんのを盗み聞きして、何が楽しいの?!」
駿一が口を挟んだ。
「そりゃ面白いだろう!聞きたい!聞きたい!!」
「切られたいか?駿。」
「……いや、遠慮しとく。」
「それから、彗。」
呼ばれて彗は瞳を上げた。翔平の澄んだ瞳が見つめ返してくる。
「お前に信託の遺産が残っている。」
「……えっ?」
「お前のご両親がお前の為に残したものだ。」
「私、放棄した筈じゃ………。」
「これだけは生きていたんだ。」
いつの間にか彗は翔平の服の裾をしっかりと握り締めている。
「その大切なお金を、更に放棄しろとは俺には言えない。だが、放棄しない限り今後も狙われることは確実だ。」
彗は小さく頷いた。
「俺が護るつもりでいるが、今回のように、安全だと思っていた学校にさえも危険がある。どうするかはお前が決めろ。今すぐでなくて良いから。」
「………うん。」
と、翔平の顔が近付いてくる。思わず後ろに仰け反った彗をソファの背もたれが止めた。額に額が触れる。
「………やっぱりまだあるな、熱。少し眠れ。一緒にいてやるから。」
「………うん。」
頷いて、彗は翔平の後に付いていった。




