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今日は哲平の帰りが早い。
昼食が済んで早々に、駿一は単車に乗って迎えに行った。翔平にしても駿一にしても、仕事柄、車よりは単車の方が動きやすく扱いやすいのだ。
静が淹れたコーヒーを飲んでいると、携帯が鳴った。ディスプレイを見ると、真樹の携帯になっている。この家に戻ってきた頃に番号を教え合ったのだ。
昨日のことがあった為、翔平は通話ボタンを押したが、沈黙を通す。躊躇いがちな真樹の声が聞こえた。
『………あの、すみません、翔平さん。どなたか知り合いに、彗の迎えを頼んだり、しましたか?』
翔平は慌てて携帯に怒鳴った。
「彗の、迎えって、何のことだっ?!」
『彗、熱を出して、保健室で寝ていたんです……。それで、お兄さんが迎えに来たって話だったのに、彗を抱えていたのが翔平さんとは違う人で、それにいつもバイクなのに今回は車だったから変だと思って、一応念のために電話したんですけど………。』
「ナンバーは見たか?」
『見えませんでした。でも、車種は黒のセドリックでした。』
「解った。………真樹。本当は気まずかっただろう?ありがとうな、連絡くれて。」
『はい。』
通話を終えて、立ち上がりながら翔平は静に言った。
「彗が拉致された。アイツ等、俺の名を騙って学校にまで乗り込んで、彗を攫いやがった。絶対に赦しちゃおけねぇ!ちょっと行ってくる。」
「了解。彗ちゃんの位置については逐一連絡入れるから。」
「ああ。頼む。」
翔平は単車のキーを手にして飛び出した。
哲平を迎えに行っていた駿一にも、静から連絡が入る。それを受けて、駿一が哲平に言った。
「哲。お前は翔の仕事ぶりを、その目で見たことは無いんだよな?」
「うんっと、ゴキブリ退治くらい?」
「あんなのは仕事の内に入らねぇよ。アイツに本気で仕事させたらどうなるか、良い機会だ、見学に行くか?」
「良い機会って?」
「彗ちゃんが拉致されたんだそうな。」
「兄さんがヘマしたの?」
「いや、違う。学校の中で白昼堂々攫われたって話だ。更に翔を騙っていたらしいから、奴らは確実に血を見るぜ?!」
「ふうん。見てみたいな!」
「解った。じゃあ俺達も行ってみようぜ。」




