31.
翌朝。
昨日、あんなことがあった為、彗は翔平に連れられて学校に行くことになる。今日はジーンズでスニーカーで、なのに手を繋いでゆっくり歩いてくれる翔平に、彗は益々哀しくなる。この優しさは、本当なら自分が受け取るべきものではないと知っているから。
何だが凄く惨めな気持ちだった。好きになってはいけないのなら、出て行くつもりだった自分を引き留めないでくれれば良かったのに。帰らない自分を捜しに来てくれなければ良かったのに。しかも、こんな打ちひしがれた自分をみんなが見ている。それこそ翔平の容貌は、たとえサングラスでその瞳を隠していても、女性達の心を一瞬で捕らえて離さないくらいのものだから。
八つ当たりだと判っていながら、彗は翔平の鈍感さを恨んだ。恋心を自覚した途端に失恋して、そんな様子を人目に晒すことになったのが、息もできなくなる程辛かった。
「………彗。体調が悪いんなら、休んでも良いんだぜ?」
歩調が遅れがちになるせいか、それとも内心の辛さが表情に出てしまう為なのか、翔平が立ち止まって振り向き、言った。
彗は黙って首を横に振る。今はまだ気持ちがついていかない。こんな状態で、翔平と静が並ぶ姿を見ていられる筈が無かった。
「じゃあ、もし学校で耐えられなくなったら電話しろ。すぐに迎えに行くから。」
やはり彗は黙って、小さく頷いた。これ以上優しくして欲しくなんかないのに、と思いながら。
学校に着き、校門の前で繋いでいた手が解かれた。
「………行って来ます。」
俯いたまま呟くと、頬に微かな感触があった。瞳を上げると、憂いのある瞳の翔平が、指先でそぉっと彗の頬に触れている。
「少し熱いんじゃないのか?本当に大丈夫か?」
多分、体温が高く感じられるのは寝不足のせいだろう。それとも悩み過ぎて知恵熱を出してしまったのか。そう決めつけて、彗は頷いた。
「うん、大丈夫。どうしても辛かったら電話する、から………。」
「………解った。」
頷く翔平に、彗は背を向けた。
今回も短いです。




